第60話 湯治したくない?
保健室に行った僕らは、保健室の先生に治癒魔法で手の傷を治してもらった後、少々様子見ということで、保健室で休憩していた。
……えっちな意味でないよ?
「どうだった?僕の血の味は」
「非常に美味でしたわ!でも、贅沢言うともうちょっと野菜を食べてもらえたらうれしいですわ」
「……ドロドロだった?」
「……ちょっと、こってりでしたわ」
最近若さにかまけて野菜を食べてなかったからなぁ。
そろそろ野菜食べるか。
「私としてはもうちょっとさらさらしていた方が好みですの。でも味は今まで食べたどの料理よりも美味でしたわ!」
「それは喜ぶべきなのかな?」
個人的に、吸血鬼は人間の血を全部吸い尽くして結果的に殺してしまうイメージがあるんだけれども。
「いいえ、今の時代にそんな事はおきませんわ」
「昔はあったって感じ?」
「そうですわね、昔は人権という考え方そのものがありませんでしたから」
「……現代に感謝」
「ふふ、そうですわね、男性は特に生きづらい時代でしたものね」
「……そうだね」
そうだったのか、僕はまず何よりも歴史の勉強からした方がいいかもしれない。
「……実は一つお願いがあるのですが…」
「なあに?」
「今後、定期的にあなたの血を頂きたいのですが…も、もちろん、負担にならないようにしますし、むしろお礼としていくらか…」
「おん、ええで」
「いいんですの!?」
「おん」
「へ、変に覚悟を決めた私がおバカみたいですわ…」
「いや、別に僕が吸血されたとて、大した影響はないんでしょ?貧血になるくらい?」
「……そうですわね」
「ん、その間はなんだい?まさか僕も吸血鬼になったり…」
「影響は!!ないですわ!!!!」
「勢いで誤魔化すな!絶対なんかあるだろ!!」
「気を付けますわ!!!」
「それで済む問題なのか!?」
「それで済む問題ですわ!」
「そうか!!がんばれ!!頼むぞ!!」
「よろしくってよ!!!!オーホホホホホホホホホホ!!!」
「はーっはっはっはっは!!!」
「君たち!うるさい!怪我人絶対安静!」
「すみません」
「ごめんあそばせ!」
お互い変なテンションになってしまったようだ。保健室の先生に怒られてしまった。反省。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
―――――――――――
次の日。
今日も例によって、生徒会室に来ていた。
もちろん、聖女にお礼をするためだ。どら焼きを持参して。
どこのド〇えもんだ。飽きないのか?
いや、どら焼きはうまいけれども、そんな毎日食べてたら飽きるだろ、流石に。
「今回もありがとうございました」
「はい、無事でよかったです。手の具合はどうですか?」
「全く問題ないです。この通り」
傷一つない、きれいな手。魔法とは実に便利だ。
「今の保険医は非常に優秀ですからね、私が学校に紹介したのですよ」
そうして聖女はお茶を飲んで一息ついた後に言う。
「さて、私はなにもお礼を聞きたくてあなたを呼んだのではありません」
「どら焼きですか?」
「違います」
違ったようだ。
「では何用ですか?」
「まず、一言、あなた、誘拐されすぎです」
「すみません」
「いえ、本来あなたが謝る必要はないのです、ですがね、限度があると思いませんか?」
「すみませーん」
「まあ短い期間で対策という対策もとれなかったこともあると思いますが」
「さーせん」
「しかし、少々あなたも疲れたのではないですか。精神的にも、肉体的にも」
「そっすねー」
「……ちょっと返事が雑ではありませんか?今回はあなたにいい話を持ってきたのですよ」
「いい話すか?」
「はい、あなたを最高級の湯治へ招待しようと思います」
「湯治?」
「そうです、温泉に浸かって、心と体を癒してください」
「温泉があるのですか?」
「はい、今回は森の都 フラグルニルーに向かってください」
「フラグルニルーということは…」
「はい、ルグレットの実家です。言伝はしてあります」
ルグレット先輩とは、ルグレット・フラグルニル。スラっとしたモデルのようなスタイルにふわふわとした短めの柔らかそうな金髪、目元は花のように優しく微笑む美人なエルフさんのことである。
ルグレット先輩の実家、温泉だったのか…
「が、学校は…」
「こっちで公欠扱いにしておきます。出発は明日の朝。校門で待っていてください」
「わ、分かりました…」
「よろしい」
「では、失礼します」
さて、挨拶も終わったし、家に帰って湯治の準備でもするか。
学校がないのはうれしい反面、みんなと会えないのは少々悲しいところである。
あ、どのくらいの学校休めるのか聞き忘れた。
ま、いっか。二泊三日ぐらいで帰ってこれたらいいな。




