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フェアリー・リトライブ  作者: 天沢壱成
『桃太郎編』
13/15

『一章』.13 雨ー④

 

 強ければ、何も取りこぼすことなどないと考えていた。

 

 母が死んで、父親は仕事を理由に去っていき、一人きりで祖父の家で過ごし、鍛錬の日々を送って。

 

 ただ、自分が強く在り続ければ、自分の大切なモノは失わずに済むのだと。弱いから無くなった。何もできないから母は死に、父は消えた。

 

 ならば。

 誰よりも強くなって、誰にも負けない唯一の存在になれば、掌から何もこぼれ落ちることなどない。

 そうやって、がむしゃらにがむしゃらに、ただひたすらに走り続けて。


 ――気づけば、誰も救えない『弱者』になっていた。


「おいおいどうした。テメェの力はこンなもンかよ、桃太郎ォ!」


「……桃浦流剣武術――朝焼!」


 犬童の爪が懐に届いた――否。届く寸前で身を捻って躱し、脇腹を掠め、微かな痛みが走ったが気にしない。

 太一は捻った体を戻すのと同時に、犬童の腹部に掌底を叩き込む。この技はほのかを一撃で沈めた、『捻り』を重要とする打撃方法だ。足、腰、腕、手首、掌。それら全ての『捻り』を一つの力の流れとして捉えて一点に集中し爆発させる。

 

 ドン……ッ‼︎ と。

 「朝焼」が犬童に直撃した。

 

「……知ってるか? 犬は嗅覚だけじゃなく、目もいいンだ」


 にやりと笑った犬童。

 彼の言葉と表情に眉をひそめた太一だが、その理由はすぐにわかった。

 掌底が、当たっていない。直撃したと思った感覚はなんだったのか。太一の掌は、犬童の腹部、その手前で止まっていたのだ。


「……な、んだ」


「目がいいッてことは相手の攻撃が見えるってことだ。見えるってことは判断能力が早いとも言えンだよ。……で、どうしてお前の攻撃が俺に当たンねェのか。ーーそれは、ここがオレの「テリトリー」だからだ」


 ーー犬は自分の居場所を「テリトリー」として認識している。

 「テリトリー」の外では温和でも、「テリトリー」内だと他の犬に攻撃的になる。

 このように、犬は自分の「テリトリー」には敏感で、空間認識能力に長けているのだ。

 それを、その犬の特性を、犬童は応用した。


「まァ、テメエには理解できねェと思うがなァ」


「……お前は」


「死ね、桃野郎」


 ーー空間が、急速に広がり爆発した。



△▼△▼△▼△▼



「……ハッ。こンなもンかよ、噂の桃太郎サマは」


 橋の下。

 草も土も、まるで小規模の爆発があったみたいに爆ぜていた。地面にはクレーターがあり、その中心では桃浦太一が倒れている。

 そんな彼を見下すように、犬童狼牙は立っている。

 実に拍子抜けといった態度だ。

 自分の力を試すまでもない相手を倒しても、経験値になんてなりはしないといった表情。

 白い髪の、『犬』を名に持つ少年は、太一は用済みとばかりに振り返る。

 

 雨が橋を打つ音が響く。

 犬童は目を細めた。


「……誰だ、お前」


「通りすがりの美少女よ」


 日本人然とした美貌に、艶やかな黒髪をポニーテールで束ねている少女だった。華奢な体のその少女はスポーティで動き易い装束で身を包み、けれど勇ましく立っている。

 織月かぐや。

 今代の『かぐや姫』が、『犬』の前に立ち塞がる。


「……『猿』でも『雉』でもねェな。お前、別の話の住人かァ?」


「さぁね。アンタみたいなゲテモノに教える義理なんてないわ。私はアンタの後ろで寝てる男に用があんのよ。分かったならそこ、どいてくれる?」


 値踏みするような犬童の言い方に対して、かぐやはサラッと受け流すみたいに簡素な態度を取る。彼女の対応に犬童はイラつく素振りは見せず、ただ一言、「ハッ」と笑った。

 かぐやは平然と歩き始め、犬童の横を通り過ぎた。

 そして、気絶している太一をかぐやがおぶった瞬間――犬童がノーモーションで五指を揃えた爪突きを繰り出した。


「やめといた方が身のためよ」


「……へェ」


 犬童の爪突きは、かぐやの翡翠の風で作られた防壁に防がれていた。かぐやが防壁を解くと、犬童は両手を軽く上げて戦闘意欲がゼロなことを証明する。

 

「テメェの方がそっちのカスより面白そうだが、今はやめといてやる」


「それはどうも。だけど一つ忠告しておくわ」


 かぐやは犬童に視線をぶつけることなく橋の下から出ていく。雨は当たらない。緑の風が雨を弾いて、二人が濡れることはない。

 犬童は面白げに眉を上げた。

 かぐやが次に何を言うのか楽しみなように。

 そして、かぐやはこう言ったのだ。


「あまり舐めた態度取ってると、自分の骨を咥えて死ぬことになるわよ」


「……そいつは楽しみだ」


 犬童を橋の下に残して、かぐやは太一をおぶりながら去っていった。

 

 ――雨は、まだ降っていた。



△▼△▼△▼△▼



 ――ねぇ。太一はどういう男の子になりたい?



△▼△▼△▼△▼



「……っ」


 体に走った痛みに覚醒を促されて、桃浦太一は目を覚ました。

 

 一番最初に視界に入ってきたのは、知らない天井だ。白い天井。簡素だけどキレイで落ち着きのある、洋風のそれ。

 体を起こせば、知らない部屋だ。

 必要最低限しかない部屋。

 花の香りがした。

 太一は何となく目線を彷徨わせて、とある場所に目を留める。


 勉強机だろうか?

 その一角に、写真が一枚、立てかけられている。

 幼い少女と大人の女性が映っていた。


「私とお母さんよ」


「……かぐや」


 太一の心を読んだみたいにそう言ったのは、部屋のドアを開けて入ってきたかぐやだった。彼女は両手にマグカップを持っている。湯気が立ち、仄かにコーヒーの香りした。


「お母さんはね、先代の「かぐや姫」なの」


 言いながら、かぐやは太一にマグカップを渡して、机の写真を手に持った。それから、彼女はイスに腰かけて、


「お母さんはスゴイ「かぐや姫」だった。歴代最高峰とまで言われていて、それはもう誰もが認める英雄だった」


 訥々と語るかぐやの声を太一は黙って聞いていた。こっちから話してくれとは頼んでいない。だけど、そうやって無感情にあしらって遮ろうとは思わなかった。

 聞き入る、と表現した方がいいかもしれない。

 同時に、気になったのだ。

 彼女の過去が。


「だけどね、お母さんは「かぐや姫」の『お務め』で死んだ。かぐや姫の『お務め』は少し特殊でね。桃太郎みたいに「敵を倒して終わり」じゃないのよ。……五回目の『お務め』だった。そこで、お母さんはしくじった。だから……死んだ」


「……かぐや」


「悲しかった。悔しかった。私を置いて死んだお母さんに怒りさえ覚えた。どうして独りにしたのって、どうして死んじゃったのって。……でも、一番許せなかったのは自分自身。織月かぐやっていう、世界で一番「弱虫」な女が許せなかった」


 マグカップを持つかぐやの細い両手が微かに震えていた。己の不甲斐なさが許せないように。

 湯気立つコーヒーの水面には、後悔に眉を寄せるかぐやの顔が映っている。


 彼女も、母を亡くしていた。

 その事実は太一に大きな衝撃を与えた。

 かぐやの母親は太一と同じだ。

 歴代で一番、皆からの期待が厚かった。


 そして、かぐやの気持ちも痛いほどわかる。

 母を失ったあの苦しみは、想像以上だから。


「だからね。私は強くなろうって決めたの」


 顔を上げてかぐやはそう言った。

 太一は、彼女の顔を見て呆然とした。

 笑っていたのだ。

 眦に涙を浮かべながらも。


「だって、許せないじゃない。弱い自分のままでいるなんて、絶対に許せないじゃない。そんなの、天国でお母さんに胸張って報告できないもん。……ま、まぁ私が天国に行けるかは分からないけどね、あはは」


 などと最後に苦笑を浮かべてはいたが、信念だけは貫いているように思えた。

 ……そうか、と。太一は納得する。

 だからコイツは、こんなに強いんだ。

 鬼童丸に負けても、勝ち目なんてないと分かっていても、立ち上がれる。

 母に誇れる自分で在りたいとおもっているから。

 そういう、理想が胸にあるから。


 では。

 桃浦太一の場合はどうだろうか。


 少年は、天国で母に叱られたいのか? 

 一度や二度はいいかもしれない。空白の時間を埋めるように怒ってくれた方が嬉しい。

 でも、ずっと怒られっ放しなのも嫌だ。

 褒めてほしいんだ。

 頑張ったね、と。

 褒めて、ほしいんだ。


 ……太一はコーヒーの水面に映る自分の顔を見た。


 酷い面だ。

 なんだこの悲壮感に満ちた顔は。

 まるで悲劇の主人公のような。

 

「……オレは。自分が最強だと思ってた」


 太一は語る。

 自分の気持ちを。

 かぐやはそれを、真摯に、静かに耳にする。


「歴代最強とか言われて持ち上げられて、ガキの頃から喧嘩は負けたことないし。桃太郎とか急に言われてもよく分かんなかったけど、鬼なんて大したことないって思ってた。……だけど、そんなことはなかった」


「……」


「オレより強い奴なんて腐るほどいた。世界は広いなんて言葉があるけど、その通りだった。自惚れてたんだ、どうしようもなく。オレは、あの頃と何も変わらない。母さんが死んだ時と何も変わっちゃいない。……オレは、弱いままの桃浦太一だ」


 だからもう戦えない。

 あれだけ強くなろうと決めてたのに誰も守れなくて、それどころか鬼じゃない相手にも負けた。

 犬童狼牙という、本来なら仲間になるはずだった男に。

 

「……オレは弱い。だからもう、戦うのが嫌だ」


 本音だった。

 戦いたくない。

 それこそが、どこにでもいる普通の高校生の小さな本音だった。

 負け戦に挑むほど、バカな話はないのだから。

 これ以上戦ったところで意味なんてない。どうせみんな鬼童丸に殺される。

 自分が死ぬことよりも、みんなが死ぬ方が嫌なのだから。


 ……だからもう、戦いたくない。


「じゃあアンタは、ここで諦めて死ぬの?」


 と、かぐやにそう言われ、太一は顔を上げた。

 彼女は太一を真っすぐ見ている。


「あっちの世界にいる人たちと、こっちの世界の人。ウラもほのかも、みんなの命を諦めて、アンタはここで死ぬの?」


「……」


 太一は一瞬、返答の言葉を探すのに手間取った。と、いうよりも、声が出なかった。口は動くのに、言葉を形として出す声が、出なかったのだ。

 諦めて死ぬ。

 でも、それは。

 仕方のないことだろう。


「……お前が」


「ん?」

 

「お前がいるだろ、かぐや。お前がみんなを助けてくれ。お前なら、きっと鬼童丸に勝てるから」


 笑った。

 太一は笑ってそう言ったのだ。

 実に無理矢理だした笑みではあったが、それでも笑って言った。

 かぐやなら勝てる。

 ゲノスを使えるかぐやなら、きっと。

 こんな、何の力もない太一なんかよりよっぽど可能性があるのだから。


「……だから。お前が「桃太郎」としてみんなを救ってくれ」


 そうすれば。

 〈桃源界〉も「現実界」も助かる。

 ウラも、ほのかも、かぐやも、みんな。

 かぐやはそっと息を吐いた。彼女はマグカップをテーブルの上に置き、立ち上がる。

 太一はそれを、「了承」と捉えた。

 自分の考えを、彼女は呑み込んでくれたんだと。

 

 ……よかった。

 これで、やっと『楽になれる』。


「――ふざけんのもいい加減にしなさいよ!」


 ゴキィ! と。

 かぐやの細く小さい拳が、太一の顔面にめり込んだ。突然の衝撃に、太一は驚く暇もなく倒される。マグカップは布団にこぼれることなく、何故か宙に浮いていた。

 床に倒れたのは、太一だけだ。

 少年は赤く腫れた頬の痛みなんて気にせず、かぐやを見た。

 少女は、怒っていた。

 まるで、不甲斐ない友を見るように。


「かぐ、や……?」


「いつまでそうやって女々しく膝を抱えてるつもりなの、アンタは! 私が桃太郎になる? 自分は戦えない? さっきから聞いてりゃ弱気な発言ばかりして……。この際だからハッキリ言わせてもらうわ。今のアンタは本当にダサい。キモい。意気地なし。死ねって感じなのよ。……ついさっきも言ったけど、鬼に一度や二度負けたくらいでめそめそしてんじゃないわよ! 見てるこっちがイライラすんのよバカ!」


 怒鳴り散らすようなかぐやの言葉の圧力に、太一は面食らう。

 そして当然とばかりに、かぐやは放ち続けた。

 太一に抱いていた鬱憤、苛立ち、悲しみを。


「アンタが最強とか桃太郎とか、もう今は関係ない! そんなのどうでもいいのよ! 男が喧嘩に負けたままでいいのかって話を私はしてんのよ! それなのにさっきから戦えないとか弱いとか腰抜けみたいなことばかり言って。しかもなに、挙げ句の果てにはどこぞの馬の骨に橋の下で伸されるなんてダサいにも程があるわ。今のアンタを見たら、亡くなったアンタのお母さんも情けなくて顔を合わせられないでしょうね」


「……母さんは関係ねぇだろうが!」


「大アリよ! だってアンタは、お母さんと過ごしたこの世界を見殺しにしようとしてるんだから!」


「……っ」


 それを出されると反論なんてできなかった。

 見殺し。

 母との思い出が詰まった世界を、自分が諦めたせいで潰す。

 太一は唇を噛んだ。

 そして、次の瞬間に、太一の胸ぐらはかぐやに掴まれて、グイッと引き寄せられる。

 ともすれば息がかかるくらいの距離で、言われた。


「アンタはどういう男になりたいのよ。どんな自分なら満足して死ねるのよ」


 ーーねえ。太一はどういう男の子になりたい?


 いつの日か、母に言われた言葉を太一はふいに思い出した。

 喧嘩をして怒られて、泣いたときに。

 あの時、太一はなんて答えたか。

 確か、そうだ。

 あの時太一は泣きながら……。


「……手を」


「……」


「友達の手を、離さない男になりたいッ。泣いてたり、助けを求めていたら、手を掴んで助けてあげる……そんな男になりたいんだ……ッ」

 

 かぐやが太一の胸ぐらから手を離した。

 太一はその場でへたり込み、俯いた。

 

 それこそが、少年の理想。

 少年が思う、母に会っても恥ずかしくない男の在り方。

 力が強い者の宿命、なんてカッコよく言うつもりはない。

 でも、この力を得たからには絶対に理由があるはずだ。強さには意味が必要だから。その意味を履き違えないように生きて、そして、いつか、友と呼べる相手が出来たなら、なにがあっても味方でいて、守れる存在になろうと。

 

 では。

 ならば。


 鬼に負けたくらいで、己の信念は崩れるのか?


「本当は分かってた。わかってたんだっ。こんなんじゃダメだってことくらい。だけど、鬼童丸に相手にされていない現実と、負けた事実を受け止めきれなくて、オレは「立ち上がれないフリ」をしてただけなんだ」


「……うん」


「慰めてもらおうって考えてたわけじゃない。優しくしてもらって、同情されたかったわけでもない。……ただ、自分の不甲斐なさが嫌になって、戦いたくないって逃亡を繰り返して、行き止まりで立ち尽くして、引き返せなくなってただけだ……」


「うん」


「だけど。それじゃダメなんだよな。男が一回、大見栄を切ったなら、最後まで見栄は張り続けなくちゃいけないんだよな……。じゃないと、あの世で母さんに笑われて、友達を無くしちまう」


「……じゃあ、アンタはどうするの?」


「もう。らしくないのは終わりにしたい。下を見るのは、もうやめだ」


 鬼童丸と戦うのは怖い。

 友達が傷つくのも見たくない。

 だけど、自分が動かなきゃ周りが不幸になって、友達が立ち上がってるのにそれを見てることしか出来ないなら。

 桃浦太一は挫折も後悔も死への恐怖も断ち切って。

 少年は立ち上がった。

 そして、力強い眼差しと顔で言ったのだ。

 

「戦うよ。もう、逃げない」


 母に情けないところは見せられない。

 かぐやが、友達がここまで言ってるんだから。

 

「じゃあ。私が負けた時は、アンタが私の代わりに戦って、私を守ってね」


「オレが負けた時は、お前がオレを助けてくれ」


 これは誓いだ。

 絶対に違えられない約束だ。

 これ以上、みっともないところは見せられない。

 

 ……だから。



△▼△▼△▼△▼



「かぐやちゃん。太一くんは?」


 桃浦家のリビング。

 そこで千歳がお茶を飲んでいると、かぐやが入ってきた。確か、彼女は太一を探しに行くと言って家を出たのだが。

 てっきり戻ってくるなら二人一緒だと。

 喧嘩でもしたのか。

 もしくは、連れ帰れなかったのか。

 いくつかの不安を抱いた千歳とは裏腹に、かぐやはどこかスッキリした様子で、ブランクを打ち破ったプロのスポーツ選手の背中を誇らしく見るような顔で、言った。

 視線は、外に向けられている。


「売られた喧嘩にお釣りを返しに行きましたよ」


「……?」


 千歳は首を傾げた。

 どういう意味なのか、かぐやは説明する気はなさそうだ。

 多分、太一とかぐやだけが知っていればいいことなのだ。

 かぐやは笑って、最後にこう言っていた。


「ほら。雨の後の空はキレイでしょ」


 ――雨は上がり、外には澄み渡る青空がどこまでも果てしなく広がっていた。



△▼△▼△▼△▼



「……一度敗れた獣は勝者に尽くして死ぬってのが自然の掟なンだけどなァ」


「そうか。ならオレは大丈夫だ。だってオレ人間だし」


「……で? 今更なにをしに戻ってきた?」


「お釣りを返しに」


 河川敷、その橋の下。

 ポタポタと、雑草が広がる地面に水滴が垂れる。その水滴が、水溜まりに落ちては波紋が広がり、そこに映る少年たちの顔を揺らしている。

 拳が握られる、力強い音が鳴った。

 

 桃浦太一が一歩、踏み出した。

 犬童狼牙が、唇の端を歪めて笑う。


「駄賃は出ねェぞ? 桃太郎」


「きび団子は出せねぇぞ、犬っころが」


 直後。

 二人の男が激突した。

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