番外編 その一 『初めての友達』
八雲琴音のお話。第二章の幕間のあとのお話です。
人との繋がりに、大した意味を感じない。
この世界に生まれて二十六年、彼女はそう思い続けてきた。
最初からそう思っていたわけではない。
小学校の時から仲が良かった人もいたし、今では疎遠になってしまったが、その記憶は確かに残っている。
それが変わったのは、自らの価値観が形成された時なのかもしれない。
人は皆、それぞれ自分本来の考えや意思がある。
だから、周りと違う意見を言う時だってあるし、それを我慢して意見に流される人もいる。
彼女の場合は、その価値観があまりにも達観していたことだ。
人間は、一人でいることを忌み嫌うのか、仲の良いグループの輪を形成して、そうして人間関係を形成していく。
彼女は違っていた。
自らの価値観が周りと合わないのか、どのグループとの歯車が合うことはなかったのだ。
それで、何か気に病むことはなかった。
イジメだとか、そういうことがあったわけではない。
陰口は叩かれていたのかもしれないが、それも気にしていない。
そもそも、気の合わない人間がいても何もおかしくもないことなのだ。
だから、彼女はそういう風に納得して、何も悩み、考えることもなかった。
そうして、大人になっていくにつれて、彼女の価値観は社会という大きな壁にぶつかった。
これは、彼女も予想外なことであった。
仕事に関しては、特に問題があったわけではない。むしろ、完璧であり貢献したという自負さえある。
だが、周りの人間はそうは思わなかったようだ。人間関係の弾みから、遂に彼女は社会の一部から切り離されてしまった。
その時、彼女は初めて心に傷を負った。
自分という存在が、彼女の価値観が、社会から全否定されたような気がしたのだ。
それでも、次を頑張ればいいと、そう思っていた。
でも、次はなかった。
この世界の裏側の住人のことなど何も知らないが、彼女は拉致されてしまった。
暗くて、狭い牢屋の中に入れられ、彼女は悟った。
これが、人生の終わりか、と。
後悔があったわけではない。
ただ、どうすれば良かったのか、それがその時になっても分かることはなかった。
人間関係を大事にすれば、こんなことにはならなかったのではないか。
そうすれば、あのバーでヤケ酒なんてせずに、定時退社して家に帰宅できていたのではないか、と仮定の推測をしてしまう。
でも、さっきも言った通り、それを後悔しているわけではない。
もとより、そんなことは彼女には無理だったのだ。
誰かに流されて、そんな人生を彼女は送りたくなかったのだ。
そんなことを自問自答しながらいると、暗闇の中から足音が聞こえた。
耳を澄ましながら、その足音はこの牢屋へと近づいてくるのが分かって、彼女は身を隠そうとした。
あわよくば、牢屋の鍵を奪って脱出しようと考えたのだ。
だが、暗闇から現れた男は、鍵を開けようともせず、なぜか鍵を壊して牢を開けた。
妙に感じていたが、チャンスであると感じた彼女はその男の後ろに回り込み、牢屋にいた時に見つけたナイフを使って後ろから脅した。
だが、その男から話を聞くと、彼女を助けにきた者だった。
助けにきたというよりは、偶々居合わせたというのが適切なのだろうが、それでも彼の仕事の内の一つだ。
彼女は、助かるのだとそう期待した。
だが、それでも助けに来てくれた男のことを信用しているわけでもなかった。
この男が死ねば、彼女はまた危険に晒されることになってしまう。
その最悪の想定を考えていた彼女は、半ば無理矢理に男から武器を借りた。
拳銃なんて使ったことはなかったが、一発撃っただけで要領を得ることはできた。
特殊部隊の男は、ずっと彼女に危害を及ばないように必死だった。
それがこの男の任務であることは百も承知ではあったが、あまりにも必死だったので、少々面を喰らってしまっていた。
どうしてここまで必死になれるのか、彼女には理解し難かった。
今まで、ここまで彼女のことを考えて動く人なんていなかったからだ。
彼女は考えた。
この男は、彼女には無いものを持っていると。
それを少しでも知りたいと考えて、彼女はこの男の側についていこうと考えた。
道中は色々あった。
映画のような破茶滅茶な展開が続き、本当に死ぬかもしれないと思ったことも多々あった。
生き残れたのは、本当に奇跡だとそう思えた。
「本当、色々あったな」
記憶の中を振り返りながら、八雲琴音は外の様子を眺めていた。
こうして、落ち着いていられるのもいつまでなのかは分からない。
また、あの日本で起きたような出来事がこの場所で起きてもおかしくはないのだ。
そうなれば、どうするべきだろうか。
仕事も何も無くなってしまったが、不自由の無い生活はある。
それもいつまで続くかは分からないが、平穏な時間は好きだ。
それを失ってしまうと考えると、少しだけ怖くも感じてしまう。
「あっ、琴音さん。ここにいたんですね」
ふと、後ろから琴音へと声を掛けたのは神田静蘭であった。
彼女は、あの日本での生き残りの一人であり、特殊部隊の一人である神田慶次の妹である。
彼女の経歴も、かなりの訳ありとのことで伺ってはいるのだが、琴音はあまりそこには踏み込んではいない。
もとより、興味があったわけでもないのだ。
それ故に、あまり関わろうとはしてこなかったのだが、静蘭は琴音と話そうとしてくる。
「元気ないですね。何かあったんですか?」
「あなたは元気そうね。別に何もないけど、どうかしたの?」
「えーと、特に用は無いんですけど、良かったらお話したいなぁって思って」
えらく気安いものだった。
そもそも、琴音でさえも自覚しているのだが、こんな素っ気ない女に話し掛けようなんて考えるのも物好きだなと思う。
「……私と話しても面白くないわよ?」
「そ、そんなことないですよ? 私、琴音さんみたいな女性と話してみたかったんです。兄さん達と仲が良いとも聞きましたし」
「そんなはずないじゃない」
一体誰が流したデマやら、溜め息さえ出る。
出水とは普通に会話こそ出来るが、他のメンバーについてはそうでもない。
むしろ、愛想が悪かったこともあって、距離を置かれているだろうと感じていたのだ。
「……そうですか? 皆さんがそう言ってましたけども」
「それ、出水が言ったの?」
「いえ、兄さんや笠井さんが言ってました。静蘭も仲良くなれるから話してこいーって、さっき言われたんですよ」
そう言って、静蘭はにこやかな笑みを浮かべる。
つくづく、よく分からない。
どうして自分みたいなのと仲良くなりたいのだと思うのだろうか。
「……私のことはほっといていいわ。今は一人でいたい気分なの」
「そう……ですか。分かりました! また、何かあれば言って下さいね!」
そう言って、静蘭は琴音のいる部屋から出て行く。
そして、琴音はため息をついた。
「はぁ、どうして私ってこんな馬鹿なのかしらね」
自分の弱さに、琴音は嫌になる。
弱さというのは単純だ。
元々、今までは気づかないフリをしていたのだが、琴音は何かと人を遠ざけようとする癖がある。
それは、本当に嫌だからという意味ではなく、自分の言葉が相手を傷つけてしまう意識があったからだ。
実際、それで何度も人を傷つけ、何度も仲違いをしたこともあった。
だから、今度も同じことだろうという思いもあって、その癖が無意識的に出てしまっていたのだ。
「でも、今更ね。私は面倒臭い女なんだから」
今更、変わろうなんて考えるのはお駒がしいにと程がある。
琴音は諦めるように、また窓の外を見て、一人黄昏れるようにしていた。
△▼△▼△▼△▼△▼
特にやることもなく、自室でいるのにも飽きた琴音は外を歩いていた。
外に出たからといって、何かやれることがあるわけでもない。
ここは日本人だけがいる、アメリカの中でもかなり端に寄った辺鄙な場所だ。
農作業や施設の建設等、仕事を割り振られる日本人も数多くいるが、今日の琴音は休みでもあった。
「子どももいるのね」
琴音の視線の先には、まだ小学生の年頃の子ども達がいた。
彼等は皆でボール遊びをしているのだが、それは楽しそうではある。
あんな地獄のような日本を生き延びた筈なのだが、その気持ちの入れ替えようを見ても凄いものだ。
大抵の日本人は、ここに連れ来られて絶望していたのだ。自分達の住む場所を失い、それを新たに提供されたところで、日本という国を失ったというのは、大人達にとっては苦しいものがあったのだろう。
まだ子どもだから、という考え方もあるかもしれないが、だからといって辛いことを思い出すのも違う。
「楽しそう、ね」
ボール遊びをする子ども達を見て、琴音は鼻を鳴らした。
一人一人が皆、笑顔で楽しそうなそんな様子だった。
それを見た琴音は、その子ども達と自分の子どもの頃を投影することが出来なかった。
彼女にあのような思い出はなかったからだ。
「……はぁ」
恥ずかしい話だが、少しだけ羨ましくも感じた。
あのように、無邪気に純粋に共に一緒に遊べるような友人がいれば、少しは人生も変わっていたかもしれない。
と、虚しく思いを寄せていた時、ふと一人の子どもがこちらへと近づいて来ていた。
「お姉さん、ボール下さい!」
「……え?」
手を振りながら、琴音へと向かってそうお願いする子ども。琴音のすぐ足元には、ボールが転がってきていた。
それを拾い上げ、手を振っていた子どもの所まで歩いて、琴音はそのまま手渡しした。
「ありがとう、お姉さん!」
「――ぁ」
お礼を言われて、琴音は戸惑った。
子ども、だからというわけでもないが、初めてだったのだ。誰かに感謝されるというようなことは。
「――?」
戸惑う琴音を見て、首を傾げる子ども達だったが、そんなことを気取られるのも恥ずかしいので、すぐに首を振って気を取り直すと、琴音は子ども達を見て、聞いた。
「ねぇ、君達は今、楽しい?」
どういう質問なのか、自分で言ってて分からなくなってしまっていた。
ただ、純粋に疑問をぶつけた琴音に対して、子ども達は不思議に思うこともなく、笑顔のままで答える。
「うん! 楽しいよ! 友達と遊ぶのは楽しいから!」
「――そう」
当たり前の返答を返され、琴音は
「お姉さんも一緒に遊ばない? 今、ドッジボールしてたんだ」
子ども達は笑顔のままにそう誘ってきた。
まだ小学生に成り立てだったかのような年齢の子ども達だ。
琴音がそれに参加しても性格上、大人気ない事をしそうになると考えていたので、すぐに答えは出せた。
「ううん、大丈夫よ。お姉さん、やることあるから。君達も暗くなる前にちゃんと帰りなさいよ」
「うん、分かった! またね、お姉さん!」
子ども達は手を振って、そのまま元の場所へと走って行った。
琴音がその場を離れる最後まで、ずっと手を振っていたのだが、琴音も手を振りながらその場を後にしていった。
自分は何をしているのだろうか、と疑心に溢れる。
今更、自分を取り繕ったところで本当の自分を隠し切ることなんて出来やしない。
極めて合理的な性格なんてものは、隠そうとしても話している内にボロが出やすいものだと、琴音自身にも分かっていたことだ。
それなのに、中途半端なままでいようとする自分に心底嫌気が刺す思いであった。
「私が変わることなんてない。今も……これからも……」
ただ、その考え方でいようと考えていると、胸がむず痒くなる。
それが一番楽な生き方だと、そう結論付けたにもかかわらず、妙に心が締め付けられるのはどういうことなのか、本当のところは辛かった。
「あっ、いたいた。琴音ー!」
そんな時、少し遠くの場所から琴音の名を呼ぶ声が聞こえた。
その方向を見ると、声を掛けたのは同じく日本で共に生き残った人、出水陽介であった。
「あんた……」
「なんだよ、辛気くせー顔してるな。今から静蘭達とトランプでもしようぜって話しててさ。お前も来いよ」
本当に、この男は何かとタイミングが悪い時に絡んでくるものだった。
思えば、初めて気を許したのも、この男であったのかもしれない。
最初は、ただのセクハラ野郎だとばかり思っていた琴音ではあったが、出水という男は、琴音を死なせないように日本では奔走してくれたのだ。
だが、それでも琴音にとって、自分の価値観を変えてくれる人だとまでは思ってはいなかった。
「私はいいわ。どうせ、私が全勝するんだし」
「おっ、言ったな? じゃあその減らず口を叩きのめしてやるよ」
出水はそう言って、屈託の無い笑顔で誘ってきた。
皮肉のつもりで言ったつもりが、どうやらこの男には意味が無かったようだった。
遊びに参加したところでどっちみち、琴音が場の雰囲気をぶち壊してしまうということは予想がついていた琴音は、本気で断ろうとしたその時、
「あっ、琴音ちゃん。ここにいたんだ! 探したよ」
「おー、やっと見つけたか。どこ行ってたんだよ、お前」
続々と集まるようにして、椎名、修二の二人が集まってきていた。
まるで、二人とも琴音のことを探していたかのような口振りだった。
「なんで……」
琴音が一緒にいたところで、きっと誰かを傷つけてしまうだけ。
そう考えて、一人でいることを望んだにも関わらず、ここにいる者は皆、琴音を求めていた。
その考えが理解できなかった。
無愛想で、身勝手で、傲慢な自分になぜ、こうも絡もうとするのか、琴音の人生観では分かりようもなかった。
「皆、お前を探してたんだよ」
「――え?」
出水が、琴音の心の中の疑問に答えるようにして、口を出した。
「こんな場所でまで一匹狼を気取る必要もないんだ。何に悩んでるか知らないけどさ、何かあるなら頼れよ。皆、俺と同じことを思ってるぜ」
「……意味が分からないよ。私が何に悩んでるってのさ」
「おっ、じゃあさっき子ども達のボール遊び見てて羨ましそうにしてたのは、一体どこの誰なんだろうなぁ?」
冗談で言ったつもりなのだが、その態度にイラッときた琴音は出水を睨みつける。
「ごめんごめん」と、琴音の機嫌を損ねたことに気づいた出水は手を合わせて謝罪すると、
「皆と一緒にいるのは嫌か?」
「嫌、じゃなくて……私と一緒にいれば誰かが傷つくんだよ。間違いなく、今までもそうだったから――」
心情を吐露するように、琴音はそう告げた。
出水にはもう琴音の考えはお見通しだったのだろう。
だから、琴音ももう、今更隠し通そうとは考えてもいなかった。
「そんなもん、何度でもチャレンジしてみたらいいじゃないか」
「――え?」
石ころを蹴りながら、出水はそう呟いてみせた。
「一度や二度、かどうかは知らねえけどよ。失敗したら次、もう一回チャレンジすればいいんだ。簡単に言うって思うかもしれないけど、悪いことじゃないだろ? 少なくとも、俺はお前を突き放したりなんてしないぞ」
「――――」
出水の言った通り、本当に簡単に言うものだと思われた。
でも、彼は、それで失敗しても離れないと言った。
それが、琴音の中で何かが揺れ動いていた。
「ほら、多分そう考えているのは俺だけじゃないぞ」
「え?」
出水が首だけをクイっとある方向へ向けて、琴音も釣られるようにその方向を見ると、そこには少し前に琴音が突き放した人、神田静蘭が居た。
彼女は、前回と変わらない裏表のない優しそうな表情をしていた。
「琴音さん!」
「あんた……」
なんて、声を掛けるべきか、琴音は迷った。
素っ気無い態度で突き放したのは、ついさっきのことだ。
だから、琴音には話しかける権利はないのだと、そう錯覚していたのだった。
「ごめんなさい、一人でいたいって言ってたのに、しつこく声を掛けちゃいまして……」
「――――」
あろうことか、静蘭は琴音の予想とは逆に、さっきまでの琴音の話したことに対して、反したことに謝罪していた。
その言葉の意味が分からず、琴音は何も言い出せないままだった。
次第に、頭の中でその意味を理解しようとして、それは口に出ていた。
「あんたは、私とどうしたいの?」
それは、振り絞るかのような質問だった。
自分自身でも、どうしてそんな質問が飛び出したのか、静蘭の返答次第では後悔さえしてしまいかねないほどであった。
しかし――、
「私は、琴音さんと友達になりたいんです」
「――え?」
「皆、話していました。琴音さんは良い人だって。ただ、私は話せる友人が少ないから、琴音さんのようなお姉さんと話をしてみたかったんです」
「――そんなの、他人から聞いた印象でしょ? 本当の私は、そんな良い人じゃないよ」
琴音は自身でも分かっていた。
そんな客観的な意見では、後で静蘭自身が後悔するだけだと。
だから、そんな軽い理由で友達になろうなんてことはやめといた方が良いと、そう伝えようと考えていたが、
「そんなことないです! 日本で初めて会った時だって、出水さんを治療する時も親身になって手伝ってくれたじゃないですか。私は知っています。琴音さんは、誰かの為に尽くせる人だってことを」
「そんな……筈……」
あるわけがない。
そう言いたかった琴音であったが、声に出すことが出来ない。
自分の心の中が、感情が、ぐちゃぐちゃになっていくようなそんな感覚であった。
どうして、自分なんかと一緒にいたがるのか、いても最後は傷つけ、離れていくのは分かり切っていることなのに。
それなのに、琴音は静蘭を突き放すことが出来なくなってしまっている。
それはつまり――、
「琴音さん、一人でいる時、どうしてそんなに悲しそうなんですか? 私は、そんなに弱い女じゃありませんよ?」
「――ぁ」
「ここにいる皆も、兄さんだって同じです。誰も、琴音さんのことを嫌いになる人はここにいませんよ」
まるで、総意見のように皆が琴音のことを優しく見つめている。
それでも、琴音の心は相反する感情がせめぎ合っていた。
たとえ、静蘭の言う通りに皆が琴音を受け入れることになったとしても、簡単に自分の心を許せるわけではなかったのだ。
そうして、揺れ動く感情の中、出水が間に入って言った。
「じゃあさ、こうしよう。さっき、俺達とトランプしても絶対に勝てるって言ったよな? 本当に俺達に勝てるって言うんなら、琴音の好きにすればいい。俺達の誰かが勝ったら――」
「勝ったら?」
出水の次の言葉を尋ねるように、琴音が問いただす。
そして、出水は歯を見せ、笑いかけながらこう言った。
「お前は俺達を受け入れろ。なぁに、勝てるんだったら問題ないだろ?」
「……随分と勝手ね」
「俺が勝手じゃなかった時なんてあったか?」
意趣返しのようにそう返され、琴音もフッと笑った。
本当に、勝手な男だった。
ここにいる者達もそれは同じだ。
誰も彼も、自分の話を聞かない、勝手な者達だ。
だけど――、
「良いわ。そこまで言うんならボッコボコにしてあげる」
「おっしゃ、言質取ったぞ! 静蘭、お前のタクティカル戦術で琴音をボッコボコにしてやれ!」
「お前が勝つんじゃないのかよ」
出水の言葉に、修二がそうツッコミを入れてため息をついていた。
静蘭はずっとニコニコとしていて、皆で遊べることを喜んでいるような様子だ。
「私、この手のゲームじゃ負けなしよ。覚悟しなさい」
そうして、琴音は皆と一緒に遊ぶことを決めた。
琴音の言う通り、本気を出せば勝つことは揺るぎなかっただろう。
でも、その結果は意外な結末になることを、琴音も、その場にいた皆が分かっていた。




