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Levelモルフ  作者: 太陽
最終章 『終末の七日間』
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Phase2 第二十二話 『痛みを知れ』

「さて、二人きりになりましたね」


 死体塗れの戦場地帯で、シャオとライの二人きりになったことで、シャオは落ち着いていた。

 正直、彼らがここに残っていないことを喜ばしく考えていた。

 このまま彼らがこの場所に留まっていれば、ライはいつか出水達へと牙を向けていただろうからだ。

 これで、シャオもライと真っ向から戦い合えることとなる。


「随分と余裕だねぇ。腕、傷だらけだけど痛くないの?」


「痛覚による耐性訓練は地獄を見るほど受けてきましたからね。何度も骨を砕かれるあの痛みに比べれば些細なものです」


「――あはっ」


「何かおかしなことでも?」


 シャオの言葉を受けて、嫌らしい笑みを浮かべるライに、シャオは何隔てなくそう問いただした。

 そして、ライは器用に手に持つナイフをクルクルと片手で回しながら、


「お兄さんも大概壊れてるじゃん。普通のオモチャはそんなことしないよ?」

 

「でしょうね。僕が普通じゃないことに偽りはないですよ。でも、それはあなたも同じことだ」


 ライのことを精神が壊れた人間と解釈していたが、それはシャオも例外ではなかった。

 暗殺任務や諜報活動に至るまで、確実に遂行する為にシャオはあらゆる地獄の訓練を受けてきたのだ。

 しかし、その経験があるからこそ、シャオはライにどれだけ痛みを伴う攻撃を受けたところで意に返さない。


「……それにしても、全身の皮膚を刃状に変異させる力、ですか。『レベル5モルフ』は全員、この力を使えるのですかね」


 戦闘が小休止に入ったところで、シャオはライの異形な能力について考察を開始してみた。

 ライが言うには、あの刃への形状変異は体の一部分的なものに止まらない筈だろう。

 全身の皮膚を刃に変異させられるならば、青龍刀による斬撃は通らないことになる筈だ。

 これは、シャオにとってはかなりマズイ状況になっていることを示している。


「しかし、笠井修二さんはあの鋼線使いの女との戦闘ではそれを使わなかった。――使えなかったと解釈するのが正確かもしれない、再生能力は同じようですが」


 メキシコ国境戦線での笠井修二と鋼線使いの女、碓氷氷華との戦闘で、笠井修二はライのような特性を一切発揮していなかった。

 あの死に物狂いの戦闘で、出し惜しみなんてする余裕もなかった状況下でそれを使わなかったとすると、笠井修二はまだ『レベル5モルフ』の力をフルに発揮できなかったと解釈するのが妥当だ。


「……ともあれ、今はどうやってあの攻防一体の姿から仕掛けるか、それを考えなくてはなりませんね」


「何か独り言を話しているようだけど、もう動いていいかなぁ? 待ちくたびれちゃったよ」


 シャオが分析している他所で、ライは手の五指を開閉させている。

 時間を稼いだところで、シャオには何の得にもならないだろう。万が一、ライに傷を与えたとすればむしろそれはデメリットが大きい。

 ライには再生能力があり、手をこまねいてしまえばたちまちに傷は塞がってしまう。

 問題は、どうやってライに致命傷を負わせるかにかかっている。


「じゃあ、そろそろ終わりにしようか。お兄さん?」


「――――」


 待たせてくれることも、ライは許してはくれない。

 シャオを殺す為、ライは前傾姿勢に入り、一気にシャオへと詰め寄ってくる。


「っ!」


「ほらほら! どうしたのかな!?」


 今までとはまるで違う。ライは体の至る箇所を刃状に変異させて、シャオへと襲いかかる。

 投げナイフでの攻撃とはまるで意味が違っていた。あれはまだ、一本ずつ対処が出来る点を考えれば、やりようはあった。

 今、ライが仕掛けてきているのは全身を使って同時にシャオへと波状攻撃をしてきていることだ。

 同時にナイフの刃が襲いかかってくるその攻撃に対応が出来ず、シャオは止まりながらの防御ができない。

 躱しながら、上手く流し切ることが精一杯だった。


「ヒャハハハッッ!! 防げる!? 無理だよね!? オモチャに僕の攻撃は防げないでしょ! 次はどうしようか!? そろそろ指の一本でも切断して見せようか!?」


「……あまり調子に乗らない方がいい」


 ライの変幻自在な戦闘スタイルに防戦一方だったシャオは、踏み足を変えた。

 そして、右手の青龍刀でライの猛攻をいなしながら、左手は何も持たない状態で、大きく足を踏み込んだ。


「――はっ!!」


 発勁という言葉がある。力の発し方、その技術と意味し、殴る蹴るという用法とは異なる。

 中国武術を修めた人間は、頸を鍛える為により洗練された鍛錬を日々行なっている。

 例えば人を殴ってみたとしよう。その時、殴られた対象は当たった箇所によっては骨が砕け、その一部分においては酷く痛むこととなる。

 しかし、発勁とは殴る行為とはまた違っている。

 

 ライとの攻防の中、シャオは重心を滑らかに移動させた。

 そして、全体重を乗せた極限なまでの運動量が、ライの懐へと迫っていく。

 運動量→接触→作用。この三つの工程が同時に起こり、そして――。


「がっっ!?」


 傍目から見れば、それはただの突き飛ばしにしか見えないだろう。

 しかし、腹部を刃状に変異させて防御の体勢を取ったライであっても、シャオの発勁を防ぎきることは叶わない。

 そのまま鈍い音が鳴り響き、小さく華奢な体ごと、ゴミを投げ捨てるが如く吹き飛ばされていく。


「ぐ……はっ!? うぉえ……何……が?」


 背中から崩れ落ち、すぐに立ち上がることができないライは、初めて味わう腹の内側からの痛みに悶え苦しむ。

 外傷はまるでない。なのに、腹の内側、その中身がズタズタに引き裂かれたかのような強烈な痛みが絶え間なくライへと襲いかかっていた。


「しっ!」


「――っ!?」


 その瞬間をシャオは見逃さなかった。

 痛みでシャオのことすら気にかけることが出来ないライへと、シャオは右手の青龍刀でもってライの首を刈り取ろうとした。


 ――が。


「……ちぃ」


「ふ、ふひひひ。惜しかったねぇ? ねぇ、何をしたのかな?」


 下卑た笑みを浮かべるライは、咄嗟に首を皮膚を形状変異させ、刃状にすることでシャオの青龍刀による斬撃を防ぎきる。

 ほぼ意識外からの攻撃に近かったのだが、それでも届かない。


 そして、シャオは切り替えが早かった。

 すぐさまライとの距離を離したシャオは、手首に巻いていた包帯を解き、それを右肩へと巻きつけて血を止めようとする。


「――――」


「応急処置、するんだぁ? それよりもその左手の方が痛そうだけど?」


「左手よりも肩の方がこの戦闘では重要になる。そう判断したまでです」


「あはっ! やっぱりお兄さんはおかしい人だなぁ!」


 ライは痛みに苦しみながらも、その余裕さだけは崩さずに笑う。

 ライが指摘したシャオの左手。それは、先ほどライへと放った発勁での攻撃が、手のひらを使った行為によるもの。発勁がライへと届いたと同時、ライは瞬時に腹部を刃状な変異させてしまい、シャオの左手はズタズタに切り裂かれていた。


 すぐにでも応急処置が必要な状態ではあったのだが、シャオは左手はそのままにして、ライに抉られた右肩を止血しようとしていた。


「しかし、僕より重傷なのはあなたの方です。『浸透頸』――、今、あなたの体内は僕の全身の運動量を上乗せした打突によって深く響いている。……背骨ごとぶち破るつもりでしたが、そうはいきませんでしたね」


「く、ははははっ! でもお兄さんは攻撃してこない、それって僕への攻撃手段がないからに他ならないよね?」


「確かにその通りですが、あなたの手の内はもう明かされた状態だ。履き違えない方がいい、詰められようとしているのはキミの方だと」


 ライへの攻撃手段が現状、ないことを肯定したシャオは臆していなかった。

 むしろ、追い詰めているのは自分の方だと、その強気な姿勢はライからすれば奇妙なものだろう。

 そうして、ライが立ちあがろうとしたその時だった。


「……? な、んだ?」


 立ちあがろうとしても上手く立ち上がることも出来ないライは、自身の体の様子に違和感を示す。

 その違和感だけを、シャオだけは知っている様子でライへと徐々に近づきつつ、


「言ったでしょう? 浸透頸、あなたの体は波打つように衝撃が持続化している。破壊と再生を間に合わせようにも、即座には動くことはできない。ざっと見積もって五分といったところでしょうか。それまでにキミの体の弱点を炙り出す」


「――っ! こんなもので……僕が……っ」


「もちろん、現時点ではキミの全身刃に対抗する手段はないつもりでしたが、試したいことは幾つかある。まずは一つ一つ行きましょうか」


「何を――っ!?」


 ライの真正面に立ったシャオは、分散した三節棍を一本の棒に固定し、その棒先でライの頬を殴打する。

 当然、頬を刃状に変異させることで防御姿勢を取ったライであったが、その衝撃までを緩和できたわけではない。

 ほぼ無防備でそれを受けたことで、ライの華奢な体ごと転がされていく。


「痛みは残る、が、致命打にはならない。これはダメですね」


「いったいなぁっ! ぶべっ!?」


 ほぼ無抵抗、いや、そもそも浸透頸によるダメージの影響で何も出来ないライに対して、シャオは冷徹だった。

 続いて、シャオは意識外の攻撃でもって、青龍刀の刃先を首へと向けて勢いよく刺し込もうとした。


 しかし、


「……部分変異、というよりかは弱点だけをカバーしていたというのが正解ですかね。これもダメ」

 

 試行錯誤を繰り返すように、シャオはライの体の弱点を暴く為に実験をしている。

 首に刺さろうとした青龍刀は動きが止まり、そこも刃によって防がれていた。

 見た感じでは攻撃を受ける瞬間に体を部分的に変異させたものというのがシャオの推測だったのだが、それは違っていた。

 ライの体は、致命傷を負うであろうその部分に関しては事前に変異させている。つまりは、再生でどうにかなる箇所については無防備な状態を貫いていたのだ。


「薬品関係も試してみたいところですが、そんなものはここにはありませんしね。さて、どうしたものか」


「っ、ははっ! お兄さん、イカれてるね! 明らかに普通じゃない! こんな小さい子どもにそんな仕打ちでいいのかな!?」


「子ども? 何を言っているんです? あなたは自分で『レベル5モルフ』と自己紹介していたわけですよね? なら、もうあなたを人間として扱う必要はない。喋る猛獣程度の解釈で十分でしょう」


「無茶苦茶だなぁ、僕、お兄さんのことみくびっていたようだよ」


「随分と余裕の様子ですが、まだ試していないことがあります。恐らくですが、これは当たりじゃないのかなと考えているものがあるんですが、覚悟はいいですかね?」


「何に気づいたと?」


 ライへの攻撃手段に、シャオは当たりをつけたように話したことで、ライはじっと屈み込んだ姿勢で問いただした。

 飛びかかられたりでもすれば、シャオの体はそこでズタズタに引き裂かれるのだが、シャオは物怖じすることなく平然としている。

 ライ自身もそれをしなかったのは、シャオの反撃を警戒しているからであった。


 そして、シャオはライの問いかけに対し、一言でこう言った。


「キミの体、外側は刃になっているそうですけど……内側はどうなっているんですかね?」


「――――」


 沈黙が場を支配した。

 まるで、それが答えだと言わんばかりの状況に、シャオは薄く笑うと、


「やはり、そういうことですか」


「――調子に乗らない方がいいよ、お兄さん……」


「おや、さっきまでの笑顔はどこにいったんです? まだ僕は何もしていないのですが?」


「なら、本気を見せてあげるよ」


 ゆらりと立ち上がり、ライは痛む内臓を気にすることもなく、ナイフを手から離した。

 武器を手放したと、そうシャオは解釈はしない。もとより、全身刃物人間であるライの異形な能力がある以上、たかだかナイフの一本が無くなったところで手数が減るわけではないからだ。

 ではなぜ、彼はナイフを手放したのか?

 その理由は現段階では明らかにはならなかった。


「お兄さん、どうして人は痛みを感じるとそれを嫌うと思う?」


「……答えなくてはいけませんか?」


「お兄さんなら理解してくれると思ったんだ。僕は物心がついたその時から……いや、きっと生まれた時からそうだったのかもしれない。皆が避けて通ろうとする痛み、嫌っているそれを、僕はむしろ嬉しくさえ感じているんだ」


 ぐちゃぐちゃと、妙な音を立てながら聞くも絶えない論理を口にするライ。その妙な音の元は、ライの体の中から生じている。


「痛みを嫌う理由を僕には分からないんだ。だって、それこそ生きている証じゃない? 僕はね、何度も何度も人を刺し殺してきて、ずっと思ってたんだ。どうして、人間は痛みから逃れようとするんだろうって」


「――――」


「そんなにおかしいことでもない筈だよ? お兄さんだって、ちゃんと受け入れているから平気なんでしょ? あははっ! そうでしょ!?」


 少しずつ口調がおかしくなっていきながら、その体全体さえも徐々に変異させていくライを見て、シャオは警戒する。

 これは、これは想定していた展開とは違う、マズい状況なのかもしれないと、心に焦りを感じ始めていたのだ。


「お兄さんは僕の全てを受け止めてくれる。だから……今から僕がやることも全部受け止めてくれるよね? 簡単に壊れないオモチャだってことは知ってる。だから、だからだからダカラダカラダカラダカラダカラッッッッ!! イイヨネッッッッ!!?」


 これまでとは違う声帯で叫び、ライは変わり果てた姿に変異してシャオの前に立ち塞がる。

 その姿は、もはや人間の皮膚がどこにも残ってなどいない。顔も、首も、肩も、腕も、指も、腰も、足も、つま先も、その全てが飛び出すようにして刃があり、完全なる全身兵器と化している。

 どこをどう攻撃しても、どう攻撃を仕掛けられたとしても打つ手も残さない、最悪の姿へとライは変貌したのだ。


「サァ、ドウシテクレヨウカナァ????」


「……なるほど、これは困りましたね」


 その姿を一目見ただけで、シャオは自身が窮地に立たされていることを再認識する。

 現状、持っている武器だけで太刀打ちすることは困難だ。逃げることさえ、ライは許さないだろう。


 そして、全身刃物人間と化したライは、ゆっくりとその体を動かしていき――。


△▼△▼△▼△▼△▼△▼


「はぁっ、はぁっ、はぁっ!!」


 息を吐き、吸い、そして立ち止まることもなく、生き延びた三人の生存者は走り続けた。

 吸う空気がとても重く感じる。足はガクガクと震えて、とてもじゃないが全力で走るなんてこともできない。

 そして、言葉も発さずに走る三人の一人、出水陽介は足を止めた。


「ま、待ってくれ……」


「出水、大丈夫?」


「だ、大丈夫だ。ポークセンさん、話がある」


「なんだ? ……キミ達は日本人だな。なぜこんな場所にいるのかも聞きたいところではあるが、今は避難が先決だ。すぐに離陸地点へと向かう為にも、急ぐんだ」


「――ポークセンさん。聞いてくれ」


 話を後にしようとするポークセンに、出水は真剣な声音で呼び止めた。

 出水の表情は辛く苦しそうで、額から多量の汗が流れ落ちていた。

 どう見ても一大事な状態の出水に、ポークセンも気を遣ったのだろう、足を止めて振り返る。


「なんだ?」


「……シャオを置いていけない」


 ただ一言、それを言う為だけに出水はか細い声でそう伝えた。

 そして、ポークセンは歯を食いしばると、


「っ、ふざけるな! どういう状況かは分かっているだろう!? あの化け物とタイマンでやり合うなんて馬鹿げてるんだ! 今戻ったところで……もうあの男は死んでいる!」


「でも……だからといって見捨てられない……」


「今のキミに何が出来る!? 立つことも精一杯じゃないか!」


 ポークセンに指を刺され、まるでその通りだと言わんばかりに出水の体は時間と共に容態が悪化してきている。

 無理もなかったことだ。いくら目覚めたとはいえ、出水の体は絶不調に極まるほどによろしくない。

 あくまでギリギリの状況下にいたことで、出水はここまで来ることができただけだったのだ。


「……一般人にこれ以上無理をさせることは俺にはできない。黙ってついてきてくれ」


「――――」


 それでも何かを言い続けるつもりなら無理矢理にでも連れて行くと、そう言外に出水へと伝えるポークセンは、再び前を向く。

 琴音に肩を貸しながら、出水は地面に顔を下ろすと、


「……俺の隊長なら、逃げなかったよ」


「あ?」


「きっと、どこまでいっても俺は俺なんだ。ポークセンさん、あんたの判断は何も間違っちゃいない。俺があんたの立場だったなら、きっと同じことを言っていただろうさ。……でも」


 首に掛けたネックレスを手で掴み、出水は憂う様子でポークセンの判断に間違いはないことを改めて伝える。

 そして、


「俺はこれ以上、誰かを見捨てることなんて出来ない」


 言い切り、地面に落ちていたアメリカ軍の小銃を出水は拾った。

 どこまでいっても我を貫き通すと決めた出水に対し、ポークセンは舌打ちして、


「勝手にしろ! 俺は言ったからな!? 死に急ぎたいなら勝手に死ね!」


「ありがとう……ございます」


 見放され、そうされることを出水は良しとした。

 その様子を黙って聞いていた琴音も、ポークセンの側につくわけではなく、出水の側にいたまま、その肩を持って、


「私もあんたについていく。あんたのことだから、止まらないことはどうせ気づいていたしね」


「ありがとう……琴音」


「――っ」


 ポークセンは拳を握り、二人まとめて残ると聞いたことでその足を止めた。

 そして、出水達はそのまま振り返り、シャオのいる戦場地帯へと舞い戻っていく。


 誰もいなくなったセーフゾーンで、ポークセンは未だ動かずにただ立ち竦んでいた。

 本当、馬鹿な奴らだ。せっかく助かった命を投げ出すなんてどうかしてる。

 あの少年、ライと陸軍との戦闘の最中、ポークセンは何も出来なかった。

 ただ、仲間が死にゆく瞬間を黙って見続けていただけだった。

 その悔しさは、ずっとポークセンの心の中で蟠りとした残り続けていたのだった。


「――ちくしょう」


 勝てる勝てないの問題じゃない。きっと、あの出水という青年はそう言いたかったのだろう。

 ポークセンについてこいと言わなかったのは、見解の相違があったからに違いない。

 ただ、それでも、それでもだ。


「ふざけやがって……っ!」


 ポークセンは拳を握り続けて、暗転した空へと顔を上げた。



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