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Levelモルフ  作者: 太陽
第四章 『人類の希望』
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第四章 第一話 『暗殺稼業をする男』

 そこは、東アジアに位置する国家、ネパールの東南にあるダーランと呼ばれる都市であった。

 十九の地区に分かれたこの都市は、多種多様の民族が居住しており、国の公用語とは別に多言語都市でもあった。基本的な公用語はネパール語ではあるが、そういった多種に渡る民族がいることによって、文化による発展もめざましいとされていた。

 しかし、それは平和な時代があったからこその発展でもある。

 ネパールは……いや、この東アジアに属する多くの国はとある問題を抱えていた。

 隣のまた隣、同じ島に繋がれた別の国では紛争や弾圧、テロといった問題が頻発していた。

 それも、最近になってからは歴史上、最悪な状況ともなっていた。

 かつて、日本で起きた細菌テロ、人間に感染し、人間を死なせて、その人間を動かすといった、ありえないような細菌ウイルスがテロリストの手に渡ってしまっていたのだった。

 その影響が他国へと渡り、このネパールの中にもその感染者が現れているといった状況である。

 現在、ネパール国内は混乱の渦と化しており、このダーランという端に近い都市も例外ではなかった。

 魔女狩りのような、感染者の疑いのある者に対して、暴徒達が弾圧しようとしたり、その近辺では感染者が人を襲うなどといった最悪の状況を生んでしまっていたのだ。


 これは、そのダーランと呼ばれる都市から始まる一つの物語。

 希望へと進む為の序幕でもあった。


「金目の物は……ちっ、大して持っていないな」


 そこは、誰もいない民家の中。死体となった人間の持ち物を漁る男は、金になりそうな物が見つからなかったことに舌打ちをしていた。

 この死体は、この男が殺したわけではなかった。

 既に、この民家に侵入した時から、民家に住む者は絶命していたのだ。

 その原因は大方、細菌ウイルスの感染者の疑いからきた魔女狩りの被害だったことは、男も知っていた。


「嫌な時代になったもんだよ、今じゃ、殺しの依頼も少ないってのに」


 殺された男を気の毒に思うわけでもなく、ただ自身の利益が薄まることに毒ついていた。


「まあいいや。とにかく、盗めるもん盗んだらこの国からもおさらばするか」


「盗みはしたら駄目だよ?」


「——っ!」


 その声を聞いて、咄嗟に身構えた男は声の聞こえた入口のドアへと振り向く。

 そこには、若い女性が立っていた。

 見た目からして、この国の人間とは思えない、だが、アジアに住む人間に近い顔つきをしている。


「警戒しないで、私はあなたの敵じゃないよ」


「意味が分からねえな。だったら何の用だよ、嬢ちゃん?」


 軽口を叩くように、女へと尋ねかける。

 そうして時間を稼ぐようにして、男は視界に入る情報を整理していく。

 主に逃げ道を確保する意味での行為なのだが、その理由は明確であった。

 この女の服装、明らかに危ない側の人間であるということに気が付いたのだ。

 面倒事が嫌いな性質でもあるので、逃げるのが得策だと、頭の中では算段を立てつつある状況でもあったのだが、


「私が用があるのはあなた。え、と、一応聞いておきたいのだけど、あなたってモルフに感染しない人なんだよね?」


「――モルフ?」


 聞き覚えの無い単語を聞いて、男は首を傾げた。

 そして、ふと違和感も覚えた。

 この女に、敵意を感じなかったのだ。


「あっ、ごめんなさい。知らないよね。私の名は椎名真希、あなたと取引をしに来たの」


「取引? いや、それよりも……日本人、だと?」


 目を見開いて、男は椎名のその顔を見る。

 確かに、その面持ちは日本人そのものであった。

 あの、人類史上最悪の災厄と噂され、総人口の九割が死んだとされる事件の生き残りということなのだ。


「あなたがモルフに感染しない体質だってことは調べがついているわ。だから、私と一緒に来てほしいの。この最悪な状況を変える為に、アメリカへ――」


「モルフだか何だか知らねえけどよ、どうして俺がお前の言うことを聞く義理がある? 俺のことを知っているってことは、俺の本業についてもお前は知っているんだよな?」


「知っている。暗殺者なんでしょう? お金を貰って、それで依頼を受ける」


「話が早いな。だったら、ここで自分が死ぬ可能性については疑わなか――」


 その瞬間、男の目と鼻の先を掠めるかのように、銃弾が一発通過し、柱へと直撃した。


「――っ!」


「待って! 殺さないで! 私なら大丈夫だから!」


 男は状況の悪さに歯噛みし、椎名は殺しにかかろうとした潜むスナイパーへとそう伝えた。

 恐らくだが、この民家は囲まれている。

 会話も聞かれていることから、迂闊な発言は危険でもあるだろう。


「それで? 俺を脅しに来たのかよ」


 椎名からすれば、手も足も出すことができないこちらを問答無用で連れていくようにすれば、問題なく思うままだ。

 だが、そんな素振りは見せず、椎名は対話を意識するように男の顔を見ると、


「私は、あなたと取引をしに来たの。あなたの血は間違いなくこの世界を救うきっかけになる。だから、話を聞いて」


「……俺がお前についていったとして、報酬は何だ?」


「私のじゃないから、あまりこんなことは言いたくないんだけど、お金から言い値でも聞くわ。どう?」


 こちらの欲しいものを理解するように、椎名はそう答える。

 その何でも分かっているような口振りも癪ではあったが、言い値で報酬を決められるのならば悪い話でもない。

 だから、あえてめちゃくちゃな金額を提示してやろうと男は口元を歪めた。


「じゃあ、十憶だ。俺が世界を救えるかもしれないんだろ? だったら、それぐらい貰ってもいいよな?」


 押し引きを間違えれば、無理矢理連れていかれるリスクもあったのだが、ここでビビるわけにもいかなかった。

 ただでさえ、いきなり殺そうとしてくるような連中にやられっぱなしなのは許せなかったからだ。


「うん、分かった! 十億で良いのね。ありがとう、あなたのおかげで本当に何とかなるかもしれない!」


「ええ……?」


 ほぼ即答といってもいいほど、呆気に取られる返答を聞いて、男はたじろいだ。

 そこまでする価値が自身にあるということに、動揺を隠せなかったのだ。


「それじゃ、早速行きましょう! 大丈夫、ヘリの手配はもう済んでいるから」


「いや、待て待て。とりあえず説明を――」


 話の流れについていけないと悟った男は、詳しいことを聞こうとしたその時だった。

 椎名のいる民家の入口から、勢いよく中に入ってきた人間が椎名へと襲い掛かろうとしてきたのだ。


「おい、危ねえ!」


「ふっ!」


 暴漢に肩を掴まれそうになる直前、椎名は咄嗟に身を翻し、右足を大きく振り上げて、上段蹴りで暴漢を吹き飛ばした。

 そのまま、暴漢は民家の中にあるタンスへとぶつかり、そのまま地に伏してしまう。


「なっ、マジかよ」


 見た目や体格からみても、明らかに力の無さそうな女性にしか見えなかったにも関わらず、自分より大きな相手をねじ伏せたのだ。

 その意外性に驚く間もなく、椎名は内ポケットから無線機のような物を取り出すと、


「清水さん!」


『気をつけろ! 外はモルフだらけや! こっちで少しでも数減らしとくから、お前らはそこからはよ逃げろ!』


「分かりました!」


 通信機から聞こえる男の声から、恐らく先ほど銃弾を飛ばしてきたスナイパーだということはすぐに理解できた。

 だが、それよりも、先ほども聞いたモルフという単語に眉を寄せて訝しげにしていると、


「急いでここから離れる! モルフがたくさんいるって!」


「ちょっと待て。さっきから言ってるモルフって何なんだ!?」


「後で全部説明する! とにかく、ここから——」


 説明する余裕はない。そのことは状況の悪化ですぐに理解することが出来た。

 民家の窓や扉から、多数の暴漢達が押し寄せてきたのだ。

 どいつもこいつも、明らかに普通の人間とは思えない虚ろな目をして、それでもこちら側へと視線だけは向けていた。


「早く! こっちから逃げるよ!」


「ちっ! 指図すんな!」


 椎名の指示に従い、裏口から逃げようと二人は走った。

 まだ、後ろからあの暴漢達は追いかけてきてはいないが、それでも急がなければすぐにでも追い付かれるだろう。

 後ろを気にしつつ、男は椎名へと確認するように尋ねた。


「おい、お前、拳銃は持ってるか?」


「え、一応使うつもりはないのが一丁あるけど……」


「なら、そいつを寄越せ。心配するな、取引は聞いてやるよ」


 椎名は頷くと、腰にかけていた拳銃を男へと渡す。

 このまま裏切られるリスク等を考えないのも大概だが、男としても裏切るつもりは今のところはない。

 とにもかくにも、今は現状を打破する方が最優先なのだ。


「鍵開けたよ! 早く行こう!」


「いや、先に後ろの一人を仕留める。お前は先に行け!」


「ダメ! 今はあなたも――」


 椎名が袖を引くように逃げることを勧めるが、男は銃口をこちらへと近づく暴漢へと向けると、


「デインだ」


「え?」


「デイン・ウォーカー。それが、俺の名前だ。覚えとけ」


 デインは自分の名を告げると、拳銃の引き金を引き、暴漢の右足を撃ち抜いて無力化させた。

 暴漢はそのまま足を崩して倒れるが、それでも這うようにして無言のままにデインへと近づこうとする。


「ちっ、奇妙な奴らだ。本当に生きているのか、こいつらは?」


「生きていないよ! 早く逃げよ、デイン!」


 後ろ手を引かれ、そのまま二人は民家の外へと出ていく。

 外には、同じようにして民家が周囲に立ち並んでおり、逃げ場としては塀を乗り越えるぐらいしかありそうになかった。


「おい、どうするんだよ、ここから?」


「ひとまず、表通りに出ましょう。銃撃音でモルフが集まるだろうけど、清水さん達がなんとかしてくれる筈だし……」


「……モルフってのは、さっき襲い掛かってきた奴らのことか?」


「うん……感染者については聞いたことがあると思うけど、彼らはもう既に死んでいる身だから、痛みを感じることもなく襲い掛かってくるの」


 聞くだけミステリーな要素が多いが、確かに、先ほど足を撃った相手は、倒れはしたものの痛みに苦しむわけでもなく、這いずってでも近づこうとしてきていた。

 つまり、椎名の言っていることは疑う部分はあれど、信憑性は十分にあったのだ。


「お前は、あいつらのことについて良く知っているということか?」


「全部が全部を把握しているわけじゃないけど、大体は把握してる。私自身とも無関係な話じゃないから……」


 椎名は、何かを思うように俯いてそう語った。

 その意味を、デインは理解することは出来なかったが、今はここで逡巡している余裕はなかった。


「とにかく、さっさとここから離れるぞ。事情はその後に聞いてやるよ」


「……うん」


 民家の出口を叩くような音が聞こえて、ここに留まる理由が無くなった二人は、民家と塀の細い道を通り、そのまま歩道を走っていった。

 道中、地面に倒れていたモルフと呼ばれる化け物は、恐らく、椎名の取り巻き連中が排除したのだろうということだけは分かり、そのまま山中が近いということもあって、そこへと避難する形で事なきを経ることとなっていた。

 デインは、取引こそには応じたが、事情を把握出来ていない以上はまだ、行動を共にするかどうかについては決めかねてもいた。

 いくら報酬が法外なレベルなものであっても、自身の身の危険が大きく付きまとうならば、そこまでするメリットが見込めなかったからだ。

 今は言う通りに行動しているのも、椎名の取り巻きを撒くことが現状難しいという事情があったからに過ぎない。

 つまり、この後、椎名から聞く事情次第では、途中で逃げることも視野に入れなければいけないという状況でもあった。


「それで? ここなら問題ないだろう。そろそろ聞こうじゃねえか。俺を連れて行こうとする理由ってのをよ」


 山中にある、少しだけ開けた草原の上でデインは椎名へと尋ねる。

 人の気配がないその場所は、誰の邪魔も入らない絶好の隠れスポットといってもいいだろう。

 椎名の取り巻き連中は未だ、どこかに潜んでこちらの動きを見張っている可能性もあることから、下手な動きをするつもりもデインとしては頭になかった。


「私があなたに接触しようとした理由はさっきも話したと思うけど……あなたがモルフウイルスに感染しない体質の疑いがあるからなの。どんな人間であろうと、普通はモルフに感染すれば誰でも例外なく死ぬ。例外っていうと、『レベル5モルフ』っていう感染段階があるんだけど、あなたがもしもその感染段階なら、一度話を聞かないといけなかった。違うなら、それは人類にとって大きな希望にもなる」


 椎名は真剣な眼差しで、デインを見つめながらそう答えた。

 モルフウイルスに感染しない存在。その事実について、確かにデインは心当たりがあった。

 大衆がいる場で一度、奴らに噛まれたことがあり、そのままねじ伏せて逃げたのだが、特段、体に異常がなかったものなので、特に気にすることもなく過ごしてきたのだったが、


「『レベル5モルフ』ってのは、ウイルスに感染しても死なない存在みたいなもんか?」


「うん。モルフの力を有した状態で、そのまま生き続けられることができる超常的な存在。デインはモルフに噛まれたりしたとき、その傷口が再生したりしなかった? もしも『レベル5モルフ』なら、その傷は数分もしない内に再生するはずなの」


「再生はしなかったな。というか、いくらなんでも非現実的すぎやしないか?」


 そう答えた矢先、椎名は驚くような表情を作りながらも座っていた岩から勢いよく立ち上がり、


「本当!? なら、やっぱりあなたは……」


 求めていたものが目の前にあるかのように、椎名は喜んでいた。

 いまいち、要領が掴めなかったデインは少しイライラしていたので、軽く椎名をにらみつけると、


「おい、話を戻すぞ。つまり、俺がモルフとやらに感染しない体質だから、俺の体を調べ上げたいってことか?」


 椎名の目的を予測するように、デインはそう推測を立てて問いかけた。

 その推測に対して、椎名は否定するまでもなく、軽く頷き、答えた。


「そう、可能なら、その血液を少しもらうだけでもいいの。できる限り現地ではなく、私たちのいるアメリカまで来てもらえれば、そこで取引の報酬は渡すわ。だから、お願い。私と一緒にアメリカまで来てほしいの」


「はぁ、随分と勝手なお願いだな。人体実験紛いのことをされて、俺が殺されない保障はどこにある?」


 その可能性は、デインが深く考えられる根拠でもあった。

 たとえ、椎名に悪気がなくとも、椎名のバックについている連中の考えは分かるはずもない。

 下手をすれば、お役御免になったところで消されかねない可能性だって十分にありうるのだ。

 それは、報酬の金額を見れば誰だって思うことでもあった。


「そんなことは絶対にさせない。私なら、絶対にそうさせない自信があるから」


「その根拠は?」


 追撃するようにそう問いかけ、椎名は少しだけ目を伏せて、答えた。


「――私は、今さっき説明した『レベル5モルフ』だから」


「――――」


 その言葉を聞いて、デインは目を見張った。

 椎名の言葉の意味は、それこそ非現実的な物言いでもあったからだ。


「あなたも知っていると思うけど、日本で起きたあの災厄は、実は元々、私を連れ去る目的もあってのテロでもあったの。私の仲間達が助けてくれたおかげでどうにかなったんだけど、『レベル5モルフ』は普通の人間とはまるで違う、特異体質になった人間みたいな感じなのよ」


「人間、ね。化け物みたいなものじゃねえか、それじゃあ」


 その言葉に、椎名は少し悲しげな表情を見せて、それでも笑いながら、


「そう……ね。否定は出来ないよ。その通りだと思う」


 言葉尻が小さくなっていき、椎名は何かに耐えるようにして、体を震わせた。


「……悪かったよ。少しからかってみただけだ。それで、もしも俺の身に危険が起きるかもしれないなら、お前が盾になるってことか?」


「必ずそうするわ。私が死のうとすれば、絶対に上は許そうとしない。それが、私に出来る最低条件になる」


「なるほどな」


 取引条件を理解したデインは、両手を握りしめて少しだけ考えた。

 椎名の言うことを真に受けるのならば、デインの身の安全は保障されたようなものだろう。

 だが、まだ信用に欠けるとするならば、それは椎名も話していた『レベル5モルフ』という存在のことであった。


「ちなみに、お前が『レベル5モルフ』だっていう根拠はどう証明する? それが嘘だってんなら、この交渉は無意味になるぞ」


「それなら今から証明する。見てて」


 椎名はそう言って、ナイフを取り出した。

 何に使うつもりなのか、デインは椎名の動きを見ていたが、椎名はそのまま持っていたナイフを自らの指に当てがると、軽くだが指を切った。


「っ!」


 痛がりながら、デインは何をしているのか、訝しげにそれを見ていたが、その意味はすぐに理解することが出来た。


「……マジかよ」


 椎名は血が垂れ流れるその指を見せつけながら、その傷が再生する瞬間をデインへと見せた。

 その現実を目の当たりにしたデインは、驚きながらも確信することが出来た。

 椎名は紛れもなく、異常な体質を持った人間であることを――。


「モルフはどの感染段階においても再生能力を持ってる。その能力を、私は自在に扱えるの。他にも、身体能力を底上げしたりすることも出来たりはするんだけど……私は才能がないから、訓練を受けた人間と同じぐらいの動きしか出来なかったりするわ」


「……お前以外にも、その『レベル5モルフ』の力を持つ奴がいるのか?」


「それについてはごめんなさい。守秘義務があるから詳しくは話せない。同じ力を持つ人に出会ったことはあるけど、その人はもう死んでしまっているから……」


 何かを思い出すように、椎名は握る拳に力を込めていた。

 過去に何かあったのだろうが、それをここで聞く術はないだろう。

 それよりも、懸念することはあった。椎名が『レベル5モルフ』の身体能力の底上げさせる力を上手く扱えていないのだとすれば、他の人間、つまりは軍隊のような訓練された兵士がその力を有することになれば、脅威といっても過言ではないのだ。

 どれほどの力になるかは想像もつかないが、相対したいとは思わないのも事実だ。


「分かったよ。ひとまずはそれで信じてやる。それで、これからどこに向かうつもりだ?」


「ここからさっきの民家の方向にもう一度向かうことになるけど、五キロ近く先にヘリを待機させてる。そこにまずは向かいましょう」


「了解だ。じゃあ、行くとするか」


 デインは立ち上がり、椎名へと手を伸ばした。

 交渉成立という暗黙の了解の意味を込めた握手であり、椎名もそれを分かってのことか、その手を握り返した。


「ありがとう。あなたのおかげで、世界は救われるわ」


「暗殺者が世界を救うってか。皮肉な話だな、おい」


 ふっと、デインは少しだけ笑い、椎名も同じようにして笑顔を見せた。

 目的地はアメリカ本土。地球の裏側という気の遠くなるような距離の長さだが、二人はそこで取引を成立させることとなった。


第四章スタートです。

主人公はヒロインである椎名真希がメインとなります。

また、本話よりデイン・ウォーカーと呼ばれる青年が登場しましたが、彼が笠井修二に続く第二主人公の立ち位置になります。


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