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掌編・オアシスの天使

作者: 御殿あさり

 もう何日歩いただろうか。誰もいない砂漠で私は独りさまよっていた。

 食料はもう尽き、水もあと少しという状況だ。

 こんなことなら別の道を選べばよかった、せめてもう少し買い物をしておくんだったと後悔するが、もう遅いことは十分わかっている。

 遠くにオアシスが見える。あれは幻想だろうか、それとも現実だろうか。

 どうせ幻想だろう、という諦観と、どうか現実であれ、という祈りの狭間で、己の生存本能に身を任せて遠くに見えるオアシスへと駆け出した。



 オアシスは、幻想であった。

 気がつくと、目の前には豪華絢爛な邸宅があった。

 私の旅路もついに終わったか、と、まだふわふわとした頭でそう思う。

「ああ、目を覚ましましたか」

と、鈴のように美しい声が聞こえるので、そちらを向くと、そこには黒髪の乙女がいた。

 肩まで伸びた髪は絹のようにつややかで、水浴びを済ましてきたからであろうか、水滴が光り、彼女の美しさを際立たせている。純白の服は、一見シンプルでありながら、花をモチーフにしたワンポイントが可愛らしく、着る者の美しさを引き立てる。

 天使であろうか。

「顔色は……、悪くないですね」

 優しさに満ちた瞳で天使がこちらを覗き込む。

「では、中に入りましょうか」

と、こちらへ手をのばす。

 その手を掴み、立ち上がろうとして。

 私はよろめき、たおれてしまった。

 彼女が私の上に重なってくる感覚を最後に、私はもう一度、意識を手放した。



 夜空が見える。

 周りを見ても、オアシスは存在しない。

 やはり幻であったのだ。

 私は体を起こそうとして、ふと気づいた。体が、街を出発した頃のように軽い。

 ふと肩掛けの袋に目をやると、中身が大量に詰まっている。それは、干し肉であったり、薬草であったりした。水筒にも目一杯水が入っている。

 はたして彼女は、天使か。

 それとも、神であったか。


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