68話
2025年最後かも?別日もあるかも?
冒険者の聖堂で長時間の調べ物をした翌日、拳児達は全員へガティの鍛冶屋へと向かった。調べ物の成果は上々で、ダンジョンで時たま起こる異変の情報を発見する事が出来ていた。頭をフル回転しながら調べ物をしたのは久しぶりだった為、全員が精神的疲労で帰宅した時、屋敷のポストにガティから武器の用意が完了したという手紙が入っていた為、翌日に全員でガティの店に向かったのだ。少し久々となるガティの店だが、建物は増築中のようだが店自体は営業しているようで、拳児達は普段通り店のドアを開いた。
「いらっしゃいませー!拳児さん方お待ちしてました!」
「久しぶりです、ノリシラさん」
入るといつも通り店番をしていたノリシラが笑顔で迎え入れてくれたので挨拶を返す。するとその声を聞きつけたマルタさんが、横の小部屋からヒョイと顔を出して笑みを浮かべた。
「来たかい、久しぶりだねぇ」
「マルタさん、久しぶりです。村から戻ってきたんですね」
「やる事全部終わらせたからね。今ガティを呼んでくるよ」
「お願いします」
久々に顔を合わせたマルタにも笑顔で挨拶をするとすぐにマルタは鍛冶場へと向かい、少しすると大きな樽を抱えたガティが作業着のままやってきた。煤を少し纏いながら武器の入った樽を持つガティがその樽をドスンと店の床に置いて、拳児達に笑みを向ける。
「おう拳児!お前らの新武器がコレだ」
「ありがとうガティ、助かるよ」
「おう。ただまぁコレらはちょっとしたおもしれー能力があるんだ、教えてやるよ」
「面白い能力?」
「あぁ」
樽を置いたガティの言葉にフランが少し不思議そうな表情を浮かべて問い返すと、ガティは樽の中から棍を一つ取り出して拳児に言う。
「拳児、お前の今持ってる棒にこいつを軽く当てるから、防げ」
「当てるの?別にいいけど」
ガティの言葉にそのまま拳児は荷物袋から普段遣いの棍を取り出して軽く構えると、ガティは自身の持つ棍に少し魔力を纏わせてから軽く振った。カツンと軽く当たった時に音が出た程度の衝撃が棍に通ったが特に問題は無い。だがその後1拍置いてから、再び棍に軽い衝撃が走り、それに気付いた拳児は目を見開いた。
「えっ、衝撃が2回来た?」
「おめぇが言ってたゴーレムの1回振っただけで2回衝撃が来るってやつだ。あのゴーレム本体に刻印が刻まれててな、バラしてみたら見つけたんだ。月鉱石みてぇな神秘を持つ金属じゃなきゃ使い物にならねぇ刻印だが、ルナヘルム鋼に仕上げて武具にしてやればこの通りってもんよ」
「おぉー、凄いわねガティさん」
「まぁな!!」
ガティが説明した内容に素直に感心する恵に、ガティは笑顔で返す。それからガティは全員に言った。
「じゃ、こいつはお前達のもんだ、しっかり使い方を練習して上手く戦ってくれや」
「本当に助かるわ」
ガティに礼を言いながらマリエルは樽から杖を取り出す。今回の依頼では高純度の魔力増幅効果のある結晶体を手に入れていた為、グローブにある物とは別に杖にして使えるようにマリエルは依頼をしてガティはそのまま作ったという訳だ。結晶体を固定する為に結晶体は見えるが多角形にガッチリ固めた杖の先端に少し重量が乗っているが、必要経費と考えマリエルはそのまま軽く振ってみて、具合の良さに笑みを浮かべた。レテスも同様、スタッフと呼ばれる長杖を受け取り重量等を確かめていた。そうして全員が新しい武装を軽く触っていると、ガティの後ろから声がかかる。
「ガティ、礼の友人か」
「あぁ親父。そう、こいつらが俺のダチだ」
「あっ、ガティのお父さんですか。どうも、拳児です」
ガティの背中から現れたガティよりも少し背の低いレプトリアンの男性を見て、拳児は頭を下げる。爬虫類顔なのは同じだが、ガティとは違い鼻の下部分に小さなヒゲのような触覚が4本生えたその顔を笑みに変え、ガティの父親も頭を下げた。
「俺はティジーだ、息子が世話になっているな」
「こちらこそ、ガティにはとてもお世話になっています」
ガティの父親の言葉に再び礼をしてからマルタが一旦村に戻っていた理由を思い出してから、拳児はガティに問いかける。
「そういや村からこの街に移住する計画だったんだよな。じゃあガティの兄弟も居るんだな」
「いや、兄貴達は来てねぇよ」
「んん?村ごと移住する計画じゃなかったっけ?」
「最初の予定じゃそうだったんだがなぁ」
拳児の問いかけに一旦ため息を吐いてから、ガティが言葉を続ける。
「上の兄貴二人と他の村人の何人かが土壇場で村に残るって言い出したらしくてな、何人かは村に残って復興を目指すんだとよ」
「……それが無理そうだから移住するって話じゃなかった?」
「そうなんだがなぁ」
ガティの説明に微妙な表情を浮かべた拳児の言葉にガティも再びため息を吐いたが、そこでマルタが口を開く。
「ノーティもダンティも欲を掻いてんだよ。自分が村長になって復興させて、領地を治める貴族様に取り入ろうって寸法さ。それに思惑はどうあれ移住なんてしたくないって言い出した年寄り達も同調しちまったんだ」
「あまり、先行きの展望は明るく無さそうですね」
かなりグダグダな話に綾子がつい口を挟むが、マルタもティジーもそれに苦笑しながら頷いた。
「上手く行けばありえない話ではない、程度だがあそこから復興したなら確かに貴族に良い顔を出来るだろうな。俺は無理だと思ったからこうしてガティの店の世話になる事にしたが」
「ま、一応無理そうだったらいつでも街に来いとは言ってあるけどねぇ。2人とも頑固な部分があるし、廃村になるまでしがみつく気しかしないよ」
ティジーとマルタの言葉に軽く諦めの感情が混ざっているのを感じはしたが、彼らの後にフランが口を開く。
「いよいよとなった時の為に、この店を大きくした方が良いですね」
「ま、そういうこった。俺ぁ自分の鍛冶の腕を世界に認めさせてぇだけだけどな、商売として上手く行ってるからこのまま店を拡大していくつもりだ!」
「そういや増築もしているみたいだし、物理的にも大きくなりそうね」
「おうよ」
ガティの宣言にマリエルが同調して笑みを浮かべながら口を開くとガティもニカッと笑みを浮かべて頷く。名実共にビックになるという分かりやすい目標に向けて日々仕事に勤しんでいるガティの言葉に拳児も笑顔を浮かべながら言う。
「じゃあ今日は、夜に食事会でもしませんか?屋台とかで酒とか食べ物買ってきてパーっと歓迎会みたいにしましょうよ。ガティのお父さん以外のこっちへの移住者の方もみんなで」
「おっ、そいつはいいな。確かに母ちゃん達が帰って来てまだ数日で落ち着いてない状態だったし、ここいらで一つ飲み会といくか!」
「じゃあお酒と食べ物をたくさん買って、盛大にパーティーだー!」
「わーいっ!」
ガティが同意した後で恵が盛大なパーティー宣言を上げると、ニアが同調して一緒になって両手でバンザイをして喜びを表現する。今夜の予定はこのままパーティーをする事にして、ガティの故郷の人々を慰労しながら楽しむかと、拳児は酒と料理のラインナップを頭にいくつか思い浮かべながら計算をするのだった。




