表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
迷宮白書  作者: 深海 蒼
66/69

66話


 行方不明になった高木との再会と現在の動向、そして目的であるワームホールを製作する為に混沌の力を利用する為に行うダンジョン攻略。拳児達とは別のダンジョンで高木が行う事と最終的な目標が確定した事を神殿に知らせる為、拳児達は高木と会談した翌日に神殿へと再び赴いた。朝であったが普段通り聖堂の清掃をしていた修道女に案内を頼んで神殿の奥に進み、いつも通り神殿の面談室に通された所で、司祭であるマリーナと共に現在神殿に残っている唯一の日本人、菅原がやって来る。マリーナの肩にはやはり真っ白な鴉が停まっており、マリーナ達が席に座った所で、拳児が口を開く。


「今日の用事なんですけれど、昨日高木さんに会いました。で、今高木さんは別個で他のダンジョンを攻略していて、俺達と同じで混沌の力をリソースとして安全に使用する為のようです」

「ふむ、そうなのか……。何か、強制されているとかそういった事は?」

「何も無さそうでしたね。少なくとも初対面の時のような怒気を巡らせていた訳でも無く、平静に話し合いをしましたよ。最終的な目標は、混沌の力をリソースにして、古代魔法で地球に帰る事です」


 菅原からの問いかけにも冷静に返事を返し高木の最終的な目的を告げると、菅原は苦笑しながら頷いた。


「ま、それしか無いだろうね、目的なんて。納得は出来たが、何故独断で行動を?」

「どうしても帰らなくてはいけないって言ってました。将来を誓った人が居て、もうすぐ挙式だったはずなのだそうです。なので、俺達だけに任せるだけより自分も動いた方が効率的だと」

「それは……」


 拳児の言葉に菅原は高木の気持ちを慮って沈痛な表情を浮かべてから、眉尻を下げる。


「仕方無いな、それは。俺達よりも帰りたい理由の重みが強そうだ」

「そう思います」


 菅原の言葉に綾子も苦笑しながらその事実を受け止め頷くと、マリーナの肩に留まっていた真っ白な鴉が嘴を開く。


『具体的な混沌の力の制御方法は制御可能なリソースへの置換?それとも他の方法?』

「知恵の女神アウロラ、だっけ。詳しくは分からないけれど、ダンジョンの機能を利用して制御すると言っていたけど詳細は高木さんも分からないみたいだった」

『……今の時点で結論を出すべきでは無い、か』

「そうだな。あ、その件で高木さんから連絡があるんだけど、あんた達サイドの存在に関して」

『私達サイドの存在に対して?』


 拳児の言葉に納得してから少し考えていた知恵の女神だが、拳児の言葉にその鴉の瞳をパチパチとさせてから首を捻るのを見てから、拳児は鴉に告げた。


「あんた達の中で内通者とか造反者とかを探すのを止めて欲しいっていうのと、高木さんを追いかけ回さないで欲しい。高木さんも高木さんサイドに居る神々も動きにくくて計画に支障が出るから、今は高木さん達を自由に動かして欲しい。これは俺達からの要望でもある」

『……造反者、内通者を見逃せという事?』

「神々だろうと人間だろうと個別に思想があるなら、全員が同じ方向を向いて動いてる訳じゃないんだから、お互いに利用し合う程度の認識でフリーで動かしておいても良いだろ、別に」

『我々の中に造反者が居るという事自体が大きな問題。これは世界の神々の秩序にも関わる』

「いやこの世界の秩序とか俺達には関係ねぇし」


 鴉を通して語りかけてくるアウロラの発言をバッサリと切り捨てた拳児の言葉に、アウロラとマリーナは思わず肩を動かして硬直するが、それに構わず拳児は言葉を続ける。


「結局俺達にとってはここは違う世界だから、俺達が元の世界に帰れた後の事とか、正直どうでも良いんだよね。そりゃ混乱が無い方が良いとは思うけど、俺達が居なくなった後の事を心配してやる必要って無いでしょ、俺達には」

「ほぼほぼ偶発的にこっちの世界に移動させられた事故の被害者状態なんだから、この世界の秩序とかそういうのはこの世界の人に任せるんで、私達は元の世界へ帰る為にダンジョン攻略を行うだけです」

「ま、それはそうだな」


 拳児の露悪的な言葉に続いて恵も正直な感想を述べてから、菅原も二人の言葉に同意して頷く。その様子を見てマリーナが、軽く苦笑を浮かべながら口を開く。


「中々反論に苦慮する言葉ですね。確かに菅原様達はこの世界とは別の世界の方々、本来この世界に居る事がイレギュラーなので、それを正すという行為を行った後の事は、我々こちらの世界の存在の役割でしか無いですね」

『無関心』

「神が死んだ世界の出身者に神に関心を持てと言うのは無理があるからね」


 マリーナに続けてあまりにこの世界の神々に対する関心が一切無い発言にマリーナとアウロラが呟くが、フランがそれを切って捨てる。神が死んだ世界の無宗教者に信心深さを求めるのは無理があるというものだった。


「なので、こちらの要望としては造反者を探すとか高木さんを探すとかは止めて、成り行きを見守ってて下さいって事で」

『……分かった。そもそもこの世界にあなた達が来たのは本当にイレギュラーな事態、その本人達の要請であれば可能な限り叶える。こちらとしても難しい事では無く、混沌の力の制御とは別の事にリソースを割くのも勿体無い』

「じゃ、お互いの意見が一致したという事で、よろしくお願いします」

『分かった』


 拳児の言葉にアウロラは同意をして見せて、再度その嘴を開く。


『高木の動きは分かった。今後のあなた達の動きで条件が揃い次第、ダンジョンの機能を利用した混沌の力の方向性を操作して負担を減らす儀式を行う』

「儀式か、それでダンジョンの機能を動かして混沌の力を制御する、か」

『そうなる』

「じゃあ高木さんの方にもその儀式が出来る存在が付いているって事で間違い無いわね」


 アウロラの説明にフランが当然の事に辿り着き言うと、鴉が大きく頷く。


『私のように神、そしてマリーナやセシリアのような神の声を聞ける信心深い存在が高木の側にも存在する。具体的にどういう意図かは分からないけれど』

「そこは本当にどうでもいいから、こっちはこっちで粛々とダンジョンの機能制御の為にダンジョン攻略を頑張りますよ」


 アウロラが高木側に居ると思われる信心深い存在の事を仄めかすが、それに恵が苦笑しつつ今はダンジョン攻略を一番優先して行う事を告げる。とりあえず今は、高木の提示した元の世界に帰る手段を実現するのが一番の優先事項で、その為のダンジョン攻略を高木だけでは無く拳児達の方でもしなければならないのは何も変わらない。だから最優先で、ダンジョンを攻略するという事を拳児達は目指すのだ。そんな決意を改めて胸に秘めた拳児は、グッと軽く拳を握りながらアウロラに問いかける。


「で、探索するエリアは『朝露の森林』含めた残り5つのエリアで合ってるんだよな?」

『合ってる』

「そういう返事は変な音に変換されないのね」

『秘事に対してこちらが具体的な回答を行うと認識障害が発生する、YES、NO程度であれば何も問題は無い』

「なるほどね」


 奇妙な音を返事に出さなかったアウロラにフランが頷くと、綾子が続けて質問をする。


「それで、エリアで何が待ち構えているとか、特殊な挙動があるとか、そういうのは教えてもらえないんですか?」

『こちらから具体的に指示を出す事は不可能。冒険者ギルドの資料等から各自調べて解答を導いて欲しい』

「一応神殿でも過去の事象について確認をしていますので、何か分かり次第共有いたします」

「分かりました」


 綾子の問いかけに神々から具体的な指示を貰う事が不可能であると理解した拳児達は神殿、マリーナ達の協力とギルドの資料を漁ってダンジョンの秘密を探る必要性を実感して、全員で顔を見合わせてから頷く。


「じゃあ、俺達は早速ダンジョンの事について、資料を当たってきますよ」

「また何かあったら情報の共有をよろしく頼むよ」

「えぇ、菅原さんの方も、よろしくお願いします」


 拳児達が早速動き出したのを見て菅原達もそれ見送る為に席を立ち、拳児と菅原は握手をしてからそれぞれ資料を当たる為、移動を開始するのだった。、


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ