第一章 図書委員の眞壁 3
昼給食の時間になる。班を作り、机を合わせて食べることを義務付けられている空間では、さして仲良くない人々と顔をつっつき合わせながら昼食をとらなければならない。
親しくない人たちとする食事は苦痛だ。眞壁は食べる行為は好きだったがこの時間は嫌いだった。
六人用のテーブルクロスをロッカーから出して広げる。給食の香りがふわりと漂った。先週出たカレーライスが付いたらしき跡が鮮明に残っている。
テーブルクロスは1週間に一度、持ち回りで持って帰って洗濯をする。先週持って帰る当番だったのはたしか笹橋だ。
笹橋の方を見るとむこうもこちらに気がついたようだった。
「何?」
「クロス、持って帰った?」
「持って帰ったけど。」
声色も、表情も変えずに嘘をついた笹橋に眞壁はそれ以上何も言わなかった。
たちが悪いな、と密かに思った。他の男子は自分以外の班員にいかに強引に押し付けるか考えている。そのことしか考えていない。もし押しつけられなかったから持って帰って洗濯して持ってくる。
人と揉めることをせず、ただし汚れたクロスを持ち帰ることはせず涼しい表情で嘘をつく。性根が真面目な眞壁は嫌悪を覚えた。
汚れたテーブルクロスをかけて、眞壁は給食を取りに行く。列に並んで自分の番を待つ。先頭にいるのは今日の日直だ。眞壁のクラスには日直が担任の給食を1番に取りに行かなければなかないというルールがある。日直が給食を取りに行っている間、担任はただ座っている。
眞壁は自分の給食が盆に置かれるのをじっと眺める。今日の給食は小松菜をメインにしたものだった。小松菜のおひたしに、小松菜炒飯、小松菜入りのお吸物、小松菜のパウンドケーキ。
放送委員がかけているアニメの主題歌を聴きながら全てが盆に乗った今日の給食を自分の席に持って帰る。席につき、鞄から本を取り出す。
全員が静かになって「いただきます。」をするまで食べることは許されない。全員が静かになるにはかなり時間がかかる。
アニメの主題歌、男子が大盛りを要求する声、女子が口汚く話す声、担任が給食当番の盛り付け方に文句を言う声、給食の匂い。眞壁は一人読書の海に沈んだ。