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2.警視庁

 俺は刑事課に配属になった。

 先輩たちには昨日、挨拶をしている。

 今日は二日目だった。

「柏木!」

 課長がお呼びだ。

「なんですか?」

「お前、死体は平気か?」

「え?」

「今、殺人の報が入ってな。本部が担当することになった。それでお前に行ってもらいたい」

「同伴のものは?」

「そうだな……」

 課長が室内を見渡す。

「吉澤!」

 冴えない顔の男性刑事がやってくる。

「お前らタッグ組んで現場行ってくれ!」

「はい」

 吉澤刑事が返事をする。

 吉澤よしざわ 浩輔こうすけ。25歳の巡査長だ。

「柏木、聞いてるのか?」

「え? あ、はい。現場ですよね」

「早く行ってこい!」

「はい!」

 俺と吉澤刑事は死体が見つかったという千代田区のマンションへ向かう。

 現場である一室では、鑑識がすでに作業を行っていた。

 俺は鑑識の邪魔にならないよう、現場へと上がった。

「うわ……」

 リビングに男の死体。

 腹部を刺された状態で倒れている。

 傍らにはもちろん、被害者の霊。

「嬢ちゃん、あんたには俺が見えてるみてえだな」

 と、霊が声をかけてきた。

 なんで殺されたの?

「死んじまったから全部言うけどよ。俺、生前は暴力団員でな。ヤクとか売り捌いてぼろ儲けしてたんだけど、さっきやってきた男に問い詰められて、刺されちまった」

 なるほど。

「あんた、男か?」

 え?

「聞こえてくる声が男っぽくてな」

 ご名答。

「でもどこからどう見ても女にしか……」

 あの世行けばわかるよ。

「あの世、か。どうせ俺みたいなやつ、地獄だろ」

 そんなことはない。

「そうなのか?」

 おう。善悪関係なく同じところへ行くから安心しろ。

「そうか。ありがとな。あと、犯人は絶対捕まえてくれ。じゃな」

 男の霊は消えていった。

 この能力、使い方によっては役に立つな。

「柏木さん?」

「え?」

「ボーッとしてどうしたんだい?」

「あ、いえ……」

 被害者と駄弁だべっていた、とはいえない。

 あ、名前聞いてねえ!

「鑑識さん」

「ああ、吉澤さん。被害者は小暮こぐれ やすし。金龍会の構成員です」

「金龍会……」

「小暮はヤクの売人で、荒稼ぎしていたようです」

「エントランスの防犯カメラは?」

「カメラの映像に不審な人物が映っていましたが、顔はわかりません」

「そうですか」

 俺はエントランスに移動する。

「管理人さん、カメラ映像見せて下さい」

 俺は防犯カメラの映像を見る。

 事件直前と直後で、フルフェイスのメットを被った何者かが映り込んでいる。

 事件直後の映像を確認していると、何者かが出ていったあと、黒のFDがマンションの前を横切る。ナンバーは見えなかった。

 関係なさそうにも感じるが、一応インプット。

 俺は現場の部屋に戻った。

「柏木さん、どこに行ってたんだい?」

「カメラ確認してました」

「なにか映ってた?」

「フルフェイスの不審人物なら」

「不審人物、か」

「そちらは?」

「物取りは薄いかな。怨恨だと思うよ」

「そうですか。あ、私、金龍会行ってもいいですか?」

「行くなら付き合うよ」

 俺と吉澤は金龍会の事務所を訪ねた。

「何用じゃわれ!」

 俺と吉澤は警察手帳を提示した。

「け、警察!?」

 驚き戸惑う構成員たち。

「小暮 泰、知ってますね?」

「あ? 小暮?」

「先ほど、遺体で発見されました」

「い、遺体?」

「はい」

「殺しなのか?」

「恐らくは。それで、小暮のヤクの顧客リストを見せてもらえませんか?」

「ほらよ」

 構成員が顧客リストのデータが入ったUSBメモリを渡してきた。

「ありがとうございます」

 俺と吉澤は金龍会の事務所を出た。

 警視庁に戻り、顧客リストを確認する。

 俺は顧客リストの住所を全てメモし、陸運局へ向かった。

「柏木さん、どうして陸運局に?」

 俺は職員に手帳を提示すると、メモした住所で黒のFDの登録がないか確認してもらう。

 すると、一件だけヒットした。

「行きましょう」

 ヒットした住所に向かう。

 表札に神澤とある。

 ピンポン、とインターホンを鳴らすと、高校生くらいの男の子が出てくる。

「警察です」

 と、手帳を提示する。

「け、警察?」

 戸惑う男の子。

「お父さんにお話があるんだけど……」

「よ、よかった。僕じゃなかった」

「あ、君には覚醒剤取締法違反で話聞くからね」

「え?」

「お父さん、いる?」

「お父さんは仕事だけど」

「どこで働いてるの?」

「水道局だよ」

「吉澤さん、この子お願いします」

「え? ちょっと!」

 俺は水道局を当たった。

 職員に手帳を提示する。

「警察?」

「こちらに神澤かんざわ 紀之のりゆきさんはいますか?」

「神澤さん? ちょっと待ってて下さい」

 職員が年配の男を連れてきた。

「私が神澤です。警察がどう言ったご用ですか?」

「ここではあれなので、署の方へご同行願えませんか?」

「わかりました」

 俺は紀之を連れて警視庁へ。

 取調室に入れ、話を聞く。

「単刀直入に言います。広域指定暴力団金龍会の構成員である小暮 泰が殺害されました。殺害したのは、あなた、ですね?」

「な、なんの話ですか?」

「あなた、黒のFDに乗ってますよね? 現場の防犯カメラにも黒のFDが映ってました」

「それだけでなんで私が犯人にされるんですか?」

 俺は懐からUSBメモリを取り出した。

「それは?」

「小暮 泰が売り捌いていた覚醒剤の顧客リストですよ。ここにはあなたの息子さん、孝之たかゆきくんの名前が書いてありました」

「孝之の?」

「ええ。あなたは何らかの理由で孝之くんが覚醒剤を使用していることに気づき、彼が小暮と接触するところを見たんです。それで、あなたは小暮を訪ね、問い詰め、殺害した。違いますか?」

「……FDだけで私に辿り着くなんて」

「それだけではありません。もしこのメモリが確認できなければ、あなたには辿り着きませんでしたよ」

「……申し訳ありませんでした」

 その後、紀之は逮捕され、孝之も覚醒剤取締法違反容疑で取り調べられ、更には金龍会も芋づる式に確保、解体された。

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