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第二十話 仲間 

 

 ――――――――――――――――





 それは悲惨な話だった。常人が狂ってもおかしくならない方がおかしいぐらいである。



「この苦しみをどうやって紛らわせればいいの?」


「……」


「ねえ? 誰か教えてよ……」


 音江のその言葉に飛若は無言になる。この女郎蜘蛛の尋常じゃない程の迫害を語り、飛若は何も答えられなかった。



「あなたも苦しんでるわね……私には分かるわ」


 すると、女郎蜘蛛は何故か悲しそうな表情で飛若を見た。


「一つ聞いていいか?、そんな姿をしてまで、なぜ村の人間達を皆殺しに出来ないんだ?」


 飛若は人を喰らう化け物が何故わざわざ村そのものを襲わず、森の中に来た村人を襲うなどという、こんな回りくどいことをするのかが気になった。



「分からない? 弱かった頃よりは多少強くなったけど、化け物の私でもたった一匹なのよ~? いくらなんでも人間共が群がって一斉にかかって来たら勝ち目はないわ~」


「だから村から出て、森の中をウロウロしてる人間ばかり狙ってたんだな。」


 いくら化け物でも、人間の集団の行動と連携には単独では敵わなかった。



「だったら、何故あの村は最初から自分達でお前を退治しないんだ? 何故わざわざ余所者の俺達に頼んで……」


 するとそこで


「……!?」


 話す途中で彼はその真意に気づく。


「分かった?」


 女郎蜘蛛のその言葉に彼は無言で首を縦に振った。


「所詮そんなものよ……。」


 女郎蜘蛛は笑いながら飛若にゆっくりと近づいてくる。


「あなたも私と同族の匂いがするわ〜。そんな感じがする〜」




 その時


 ドクン!


「ぐっ……!」


 突如、背中の鼓動が高鳴り始めた。


(何だこれは……?)


「可哀想な子ねぇ~。一人ぼっちで〜」


 ドクン!ドクン!ドクン!ドクン!ドクン!



 背中は音江がどんどん近いて来るたびに、その鼓動の高鳴りが強くなっていく。


(この女を……殺せと……言ってるのか?)


 唯一、人を憎んでいるこの呪いの反応を見た飛若は、そう感じた。


(この女は……こんな醜い姿になってでも……まだ人間として認めるのか……この呪いは……?)


 右腕はまるで殺せ!殺せ!と煽ってるかのように鼓動を鳴らし続ける。


「でも大丈夫。私と仲間になりましょ~?」


 その一言で飛若は一瞬、反応する。


「仲間………?」


(人を殺さなきゃ化け物になってしまう俺に……仲間……?)


(この女は……俺と唯一分かり合える……仲間……?)


「あなたはもう寂しい思いをしなくていいのよ~?」


 音江は優しい笑顔で彼の頬に触れた。




「仲間になりましょ~?」



 その瞬間、


 シュピン!


 飛若は腰に佩いてる上古刀を咄嗟に引き抜き、女郎蜘蛛の首を斬り捨てた。彼女の跳ね飛ばされた首はまるで手鞠のように転がり、その巨体は力尽きてその場に倒れて地響きが鳴る。



「なんで……? どうして…………?」


 首だけになってしまった女郎蜘蛛は悲しい表情で涙を流しながら喋った。



「俺は……自ら化け物になりたいと思ったお前とは……違う……!」


 飛若は体を震わしながら、女郎蜘蛛に言い放った。




「俺は……人間だ!!」


 彼は自らを強くそう主張した。




「やっと……仲間に……出会えたと……思った……のに……」



 首だけとなった女郎蜘蛛はやがて、そのまま目の光を失い絶命した。



「……」



 彼はその女郎蜘蛛の首を見下ろすと、やがて彼女の髪を鷲掴みにして首を持って帰る。


 そして、飛若は帰る前に木にぶら下がっている作兵衛達に近づくと、その蜘蛛の糸を刀で切り、作兵衛達を地面に落とした。



「どわっ!」


「がぁ!」


 気絶していた作兵衛達は地面に落ちて叩きつけられた瞬間に目覚めた。


「いててて……!」


 叩きつけた箇所をさすり始める彼らは、ふと我に返った瞬間、



「あああああああああああああああああああああ! 化け物め! どこ行った!?」


 さっきほどまでいた女郎蜘蛛の存在をすぐに思い出し、その場で阿呆みたいに騒いで怯えながら刀を振り回し始めた。飛若はそんな彼らに近づいて落ち着かせようと声をかける。



「大丈夫だ。化け物は俺が殺した」


 飛若は作兵衛達の前に現れてそう伝えるが、ここで事が済めばどれだけ良かったことか。


「おのれ~! この物の怪が!!」


 作兵衛達はなんと発狂しながら、一斉に彼に向かって刃で襲いかかり、矢を放った。



「って! なんで俺に攻撃するんだ!?」


 飛若は慌てながらはそれらを避け、刀で受け流すが、



「黙れ! 人を喰らう物の怪め!」


 飛若の声は作兵衛達の耳には全く届かなかった。



「やめろ! 奴は本当に俺が殺したから刀を下ろせ!!」


「うるさい! 俺たちを喰う化け物が!!」


 飛若の説得を一切聞かない彼らに対し、飛若はこのままじゃラチがあかないと察して、作兵衛達の前に女郎蜘蛛の首を見せつけた。



「ほら! この通り! この通り俺が殺した!!」



 これでやっと事が済むと飛若はホッと一息をした瞬間、



「う、うわあああああああああああああああああ!」


「この化け物めえええええええええええええええ!」


 だが、作兵衛達はその妖怪の首を見た瞬間、逆に物の怪が自分達の前に顔を現わしたと勘違いしながら取り乱し、尚も飛若に襲いかかった。首だけなのにも関わらず、



「だから、やめろって言ってんだろ!」


 飛若は何度も首を見せつけて説得するが、彼の声は作兵衛達に全く届かない。もうとっくに死んでいるのに……。




「たくっ! やめろって………!」



 飛若は遂に怒りを震わせながら、右手の拳を握り締め、



「言ってんだろうがぁ!!!」



 作兵衛達の頭に思いっきりゲンコツを食らわした。彼らは頭を押さえながらその場で悶絶する。



「いててて…! あれ? 飛僧ではないか?」


 作兵衛達は飛若を見て、ここでやっと正気に戻った。


「なんだお前か! 気をつけろ! 物の怪が近くにいるぞ!」


 それでも作兵衛達はまだ今の状況を分かっていなかった。



「だ、か、ら、俺が殺したつってんだろうがぁ!!」


 飛若は作兵衛達にまたもその女郎蜘蛛の首を見せつけた。



「お、お主が殺ったのか……?」


「さっきからそう言ってるだろ!?」



 飛若は目が飛び出るかのように凝視しながら怒鳴る。



「悪いの~飛僧! つい物の怪と勘違いしておったのじゃ!」


「それ以前に!俺と刀を交わった時点で相手が人間だと思わないか!? 普通気がつくだろ!?」



 飛若はそう突っ込むと、作兵衛はわざとなのか、ニヤニヤと笑いながら答える。



「分からぬぞ~? 刀を持った物の怪かもしれぬ」


「屁理屈言ってんじゃねえ!!!」



 そんなこんなで正気に戻った作兵衛達との妙な会話は終わり、彼らは女郎蜘蛛の首を村に持ち帰った。




 ――――――――――――――――





 飛若達が女郎蜘蛛の首を持って村に着くと、村人達は彼らの姿を見て感嘆の声をあげ、彼らの前に集まってきた。



「おお! 遂にやってくれましたか!」


「これで村が救われたぞ!!」



 村人達は大喜びをする。



「ほら。化け物の首だ」


 そう言って飛若は女郎蜘蛛の首を村人達に見せつけると、



「うぇ……見ただけで吐き気がする……!」


「気味の悪い物の怪め!」


「ざまあみろ! 儂等を喰らう化け物め!!」


「死んで当然だ!!」


「これが正義だ! これが制裁だ!」



 などと村人達は女郎蜘蛛の首にそう罵った。



「いや~お強いですね~。これで私等は今宵は枕を高くして眠れます」


 村人達は嬉しそうに飛若達を褒め称えると村長が彼らに対してこう言った。



「物の怪を退治してくれたあなた方様の為に、今宵はお礼にご馳走を用意します。どうかお召し上がりくださえ!」


「おお! それは何ともありがたいな!」


「へへへ! 酒あるかな~?」


「今夜は腹一杯食えるぞ!!」



 作兵衛達は大喜びをするが、その中で飛若は無表情で村長達に近づいてこう言った。



「実は俺はまだやる事が残ってんだ」


「おや? 一体何かございましたか?」



 村長は疑問な表情で飛若の顔を伺うと、



「ああ、こういうことさ!


 その瞬間、


「ぎゃっ!」



 作兵衛達と村人達は驚愕した。飛若は突然腰の刀を抜き放ち、いきなり村人の首筋を斬ったのである。


「うわあああああああああああああああああああ!」


「きゃあああああああああああああああああああ!」


 鮮血が飛び舞うその光景を見た村人達は悲鳴を上げるが、飛若続いてもう一人の村人を斬り、更に次々と男女関係なく村人達を襲った。


「だ、だれかああああああああああああ!」


「逃がすかよ!」



 飛若は逃げようとする村人を自慢の早足で追いつき、容赦なく切り捨てた。


 中には竹槍を持って抵抗する者もいたが、飛若はその者に対しても引かずに太刀合い、槍術を心得てない素人のその刺突を上手く避けて、そのまま剣先の突きで胴体を刺して殺す。



「どうやら飛僧の奴、乱取り(略奪)をするようじゃのう」


 すると、作兵衛が前に出ると、突如腰の太刀を引き抜いた。



「乱取りじゃ! 飛僧に続けえええええええええ!」



「はははははははははははははははははははは!!」


 作兵衛は狂気を浮かべた笑みを浮かべ、手下を率いてそう命じた瞬間、彼らは笑いながら飛若に続いて村人達を襲い始めた。


 村人達はその突然の奇襲になす術も無く、ただ逃げ村の中で逃げ廻る。


 阿保の衆である彼らも、やはり正真正銘の悪党衆であり、村人達を襲っては殺し、捕まえては縄で縛り上げ、金目の物を奪い始めた。


 やがて、しばらくすると、村人達の大半は殺され、生き残った者は村長を含む村人十数人が縄で縛られて捕らえたれていた。



「ひいいいいいいいいいいいい! お助けえええええええええええええ!!」


 捕らえられた村人達は死の恐怖に怯える。


「とりあえず、ここにいる奴らで全員です! あとは一人残らず殺しやした!」


 虎丸が作兵衛に報告すると、


「よくぞやった!」


 作兵衛が虎丸に褒め称えて、そのまま飛若に近づいた。


「しかし飛僧。これは一体どういうことだ?」


 作兵衛はいきなり村人達を襲い始めた飛若に質問すると、


「黙ってそこで聞いてな」


 そう言って飛若はゆっくりと村長達の前に近づくと、その場にしゃがんで彼らに話しかける。


「村長さんよ。何故俺達に物の怪退治を頼むのか分かったぜ」


 村長達はギクっと体が反応する様子を見た飛若は、自分の思った事が間違いないと察して彼らにそのまま真相を彼らに言った。



「どうせ金銭どころか砂金すら無いんだろ?」


「なっ!?」


 作兵衛達はそれを聞いた途端に驚いた。物の怪退治をして報酬を貰うという話は全くの嘘だったと証言する飛若に対して。



「気になったんだ。こんな貧相な村に本当に金なんてあるのかをな。だが、あるにしてもないにしても本来余所者を受け付けないお前らは金なんていう高価なものを渡すとは思えないし、どころか逆に俺達を追い出す筈だ。でも何故、俺達を追い出さないどころか逆に招き入れたんだ?」


 村長達は顔中汗だらけになりながら、その問い詰めに答える。



「そ、それはあなた方様に物の怪退治をお頼みしたくて……!」


「お前らが群れて一斉に挑めば倒せない相手でもないだろ? 何故わざわざ俺達に頼むんだ?」


 飛若は村長達に尚も問い詰めると、彼らは顔を青ざめて何も言えずに黙ってしまう。



「答えは、お前らは一人も犠牲が出ないように俺達を利用しようとしたんだろ?」


「な、なんじゃと!?」


「ずっと邪魔者だった音江を始末させる為に、そして自分達でしでかしてしまったこの村の呪いの事を、かわりに俺達で始末させ、そしてまた最後に俺達の隙を狙って、始末しようという魂胆だったんだろ?」



 飛若のその言葉で作兵衛達は驚愕し、縛られた村長達は青ざめる。


「め、滅相もございません! 儂等はそのような事など考えても………」


 村長が否定したその直後、



「お頭!」



 いつの間にかいなくなっていた泥吉の声が聞こえた瞬間に一同全員が振り向くと、そこは少し離れたところにある倉の前に立っていた。


 欲深い泥吉の事だからおそらく、倉の中で金目の物がないか漁っていたのだろ。



「お頭! 倉の中に何故か鍛丸のガキがいましたぜぇ!」


 泥吉は何故か口と体を縄で縛られた鍛丸を抱えると、その縄を解いた。



「んん……ぷは………! あんちゃん! そいつらいきなりオイラに襲いかかってきて倉に閉じ込めたんだ! そいつら、『あいつらとは仲良くあの世に逝かせてやる』と言って、オイラ達を殺そうと企んでいたんだ!!」


 鍛丸の明かしたその真実に、その場の者達は驚きの余りに石のように固まってしまった。


「あんちゃん! この村めっちゃやばいところだよ! こんな事なら、さっきあんちゃんについて行った方がよっぽどまだマシだったよ!」


 飛若は鍛丸の言葉を聞いて再び村長達を見た。




「ご馳走するとか言って、どうせ食い物に何か入れて殺すか、寝込みを襲って殺そうと考えたんだろ? どんな方法で殺そうとするか分からんが俺達の約束破る気満々だったじゃねえか。報酬も何もかも全部嘘だった訳だ」


「そして、お前らは俺達を始末した後、最後にこの村は誰一人も犠牲が出ず、長く平和になりましたとさ。めでたしめでたし。という物語で締めようとした訳だ!」




「き、貴様らああああああああああああああああ!」


「この畜生共がぁ!!」


「俺たちをハメやがったな!!」


「よくもナメた真似を………!!」


「ぶっ殺してやる!!」



 作兵衛達は逆上して、武具を構えて村長達を殺そうと近づく。


「ひっ、ひいいいいいいいいいいい! どうかお命だけはああああああああああああああああ!!」


 村人達は今から殺される恐怖に怯えて命乞いをしたが、作兵衛達の怒りは鎮まらず、刀を上に掲げた瞬間、


「やめろ」


 飛若は自らの上古刀で横にして彼らを遮った。


「邪魔するな! 飛僧!」


 作兵衛は飛若に怒鳴るように言い放つが、それでも彼は激怒している作兵衛達を止めた。



「こいつらは殺させねえ」


「何を考えておる!?」



 飛若のその言葉で村長達は少しだけホッと一息をする。自分達の命が助かる道が少しだけ見えたと思いながら。


 それを見た作兵衛達は飛若が村長達を助けようとするその行動に全く理解出来なかったが、彼のある一言ですぐに理解した。



「俺がこいつらを皆殺しにするからだ」



 その場にいた者達はへ? という顔で飛若を見ると、彼は両手で上古刀を上に構えた。



「ひゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」



 村長達の悲鳴と共に飛若は一人残らず村人の頸を斬って皆殺しにした。





 こうしてこの村は誰一人も生かされずに滅んでしまった。







 ーーーーーーーーーーー







 その後、飛若達は村の小屋や蔵を全て漁るが、彼の言う通り砂金すら全くなかった。


 かわりに米、粟、稗、黍、豆などの穀物といくつかの銅銭を見つけ、彼らはそれを均等に分け与えた。


 米と銅銭は貨幣に入るので次の町までとっておき、残りの穀物は旅先の食料に使う事にする。


 そして、一通り村で物を漁り尽くした飛若はすぐに荷造りを終えて、女郎蜘蛛の首を持って、村を出て行った。


 それから飛若は、しばらく丘の上まで歩いて行くと、そこで立ち止まり、眺めのいい丘の頂上で穴を掘た。


 そして、そこに眠っているかのように優しい顔をした女郎蜘蛛の首をゆっくりと置くとそのまま穴に埋めて、その辺で見つけた平たく大きい石を立てる。


 そう飛若は彼女の為に首塚を作ってあげたのだ。彼はその首塚の前に座って手を合わせた。



「……化け物になりたいなんて……愚かだ…………」



「でも……それでも人を捨てたかったんだな……人を許せず…………」



 飛若はかつて音江と呼ばれた人間の女性を哀れみ、せめてもの弔いで祈りを捧げた。







 人間を捨て、化け物になろうとした若い娘が、その化け物にもなりきれず、ましてや飛若の呪いにすらも化け物として認めて貰えなかった者の最期の末路であった。


 音江はどんなに醜い姿をした化け物になっても、飛若の呪いだけは彼女を人間として認めていたのである。いや、むしろ、飛若の呪いは彼女の事を所詮はただの人間としてしか見ていなかったのかもしれない。






 その後、しばらく祈りを続けていた飛若ようやく立ち上がる。


「じゃあな」


 彼は音江の首塚に別れを告げると、鍛丸と共に再び旅立とうと足を進めた途端、



「だから何で俺たちに着いて来るんだ!?」


 その後ろに鞍馬衆六人が二人の後についてきて、彼は作兵衛達に怒鳴り始めた



「決まっておろう! 儂はお前を気に入った!」


 作兵衛は飛若に指差ししながら、そう告げた。


「つまり何が言いたいんだ!?」


 怪訝な表情を浮かばせた飛若に対し、作兵衛は彼に迫る。



「儂の鞍馬衆に入れ!」


「はっ?」


 飛若はポカンとした表情をする。作兵衛の言っている事が全く理解出来なかった。



「その歳であの冷徹さ、あのキレ具合、中々に儂は惚れたぞ」


 作兵衛は顎髭を撫でながら、飛若を悪党が集う鞍馬衆に誘い始めた。



「へへへ!来いよ~!」


「入れよ~!」


「可愛がってやるからさ~?」


「楽しいぞ~?」


「最初は大変だが俺たちの世話から初めような~!」



 どうやら作兵衛の手下達は雑用が欲しくて飛若を誘っているのだろう。だが、作兵衛はまたもや驚く事を言い始めた。



「何を言っておる? 儂は飛僧を右腕として迎えたいのじゃが?」



「「「「「へ?」」」」」


 その途端、手下達は疑問な表情を浮かべながら、一斉に作兵衛を見た。



「お主らとは比べるまでもない。磨けば儂の右腕としてそれ相応の働きが期待出来る! そして挙句は若頭としても迎えとう!」


「お、お頭……若頭は俺の筈じゃ………!」


 すると、虎丸が自分に指差ししながら、そう言って出て来ると、



「いつから虎丸が?」


「い、いや………!」


 どうやら虎丸は今まで自分が若頭を務めていたと勘違いしていたらしい。だが、実際に違う事を作兵衛にキッパリと言われた途端に彼は落ち込んでしまう。



「もう何なんだお前らは!? 早く行くぞ鍛丸!」


「あ、あんちゃん!」


 彼はそう言うと鍛丸の手を引っ張って、その場から逃げる様に走り出した。



「待て~飛僧!」



 それでも作兵衛達は飛若の後をしつこく追い続けた。彼は一体どうやったらこいつらと縁を切れるのかを必死に考えながら逃げ続ける。




 だが、今思えば、この作兵衛との出会いもまた運命だったのかもしれない。



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