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ロッケリシア

さあ、始めよう

 




 高校三年生の夏、俺こと雨宮幻夢あまみやげんむは死んだ。

 正確に言うならば、受験勉強中に寝落ちして夢だと思ってたら本当だった。



「ここは……?」



 目の前には荒野が広がっており至る所にミサイルでも落ちない限りできないようなクレーターが出来上がっていた。さらに、それは現在進行形で次々と生み出されている。そして、それを作りだしているのは、まぎれもなく自分と同じ人間たちだった。



「なっ!?」



 だが、なかには人間と異なる者たちがいた。

 翼がある者、獣のような姿の者、体が骨のみで構成されている者、およそ人間ではありえないような巨躯を誇る者、種も見た目も違う者たちがその身を切り刻み合い、潰し合い、貫き合い……なにかに突き動かされるように殺し合う光景に絶句し、ただそれを見ていることしかできなかった。

 しかし、その者達は幻夢の方には一切目もくれず、まるでそこにいないとでも言うように殺し合っている。

 何故自分が襲われないのかと思いつつも、この状況を理解することはできずにいた。



「一体なんなんだここ……?」


「ここはロッケリシアさ」


「っ!?」



 ふとつぶやいた言葉に予想外のところから返事が来た。声のした方へ後ずさりながら振り返ると、そこには!……



























 そこには誰もいなかった。



「はっ?」


「いや、上だよ、上」


「上?  うわっ!」



たしかに|そこには(・・・・)いいなかった、そこには……普通、上にいるなんて誰も思わない。しかし、確かにそこには宙に浮いた人間が居た。

 見た目は完全に小学生の女の子が宙をふわふわと浮かんでいる。ただ、日本ではありえない白髪に瞳の色は真っ赤、白目の部分がありません。つまり、人間ではない。幻夢をからかっていたようで、ケラケラとひとしきり笑うと、急に雰囲気を変えて威厳を出してきた。まあ、見た目が小学生なので威厳も何もないのだが……



「僕の名前はビィラム。君たちの世界でいう神というものだよ。君には僕たちの世界ロッケリシアに転生してもらいたい」


「拒否権は?」


「もちろんなし♪」


「なんで俺?」


「たまたま?」


「なんでそこで疑問形なんだよ。はっきり言ってお前胡散臭いし、俺には何が何だか全くわからん。冷静でいられる自分に驚いてるくらいなんだが……」


「まあ、いきなりだったね。順に説明はしていくとして、まず第一に君は死にました。で、その魂を僕が君たちの神からもらった。そしていまここにいる。ここまでOK?」


「NO 俺死んだの?」


「死にました。死因は熱中症、君水分補給しなさすぎなんだよ」


「マジかよ……じゃあ次、髪って何?」


「それ間違ってるし、神ね神、毛髪と一緒にしないでくれる! 神って言うのは、君たち地球でいうと全知全能らしいけど、そんなことは全くなくてね。せいぜい星の生命が滅ばない様に管理する管理者みたいなもんだよ。そして僕たちもこのロッケリシアから生きるためのエネルギーを貰ってる。WIN WINの関係にいるってことだよ。地球は一柱の神が管理してるんだよね~、本当にアイツ頭おかしいよ。ロッケリシアには現在僕を含めて十柱の神が管理しているんだ。」


「管理者か、結局人間ではたどり着けない頂上の存在ってことには変わりないんだな。というか、地球には一柱しかいないのか?地球にはたくさんの神がいたはずなんだが……宗教が崩壊するぞ。」


「まず、人間がたどり着けないかといわれたら、違うと答えよう。僕たちは元が人間というか下位種からの進化の果てにたどり着く、到達神と元からそうなるように生まれてくる原種神がいる。どっちが上ってわけでもないけど、基本は到達神は原種神の下について神のイロハを学んでいくね。地球の原種神はアイツ一人だね、そして到達神はそれこそたくさんいたよ。今はそれぞれ色々な星に移ったけどね。かくいう僕も地球ではアレスと呼ばれていたね」


「はっ!?アレスって戦神!?」


「形式上はね、僕あんまり戦好きじゃないんだよね~。こっちではゲームの神様してるよ。んで、僕は一応師匠であるアイツから僕の眷属をってことで君が来んだよ」


「つまりは俺はプレゼントか?」


「そうなるね、いや、そんな事……そんな事あるかな。ごめんね本当に、悪いようにはしないからさ」


「いや、普通に生きていければいいよ。記憶の受け継ぎとかチートみたいなスキルとか……そういえばこの世界はどんな世界なんだ?」


「そういえばいってなかったね。ここロッケリシアは剣と魔法の世界を目指したんだけど、中途半端に出来ちゃっけね。魔法はそもそも使える人がほとんどいないし、剣というより銃に近い物が完成しちゃってファンタジーぽくなくなっちゃんたんだよね。科学は頑張ってる人たちが中々発達させ始めちゃったし……地球でいう産業革命手前のイギリスに魔法が加わって大変なことになってるって感じだね。それに、他の神たちも地球とか他の星から人連れてきちゃってるし、飯テロなんかすごいよ」


「なんかすごいな、レベル的には今の日本とあんまり変わらないんじゃないか?」


「ほとんど変わんないね。というか君も案外肝が強いよね、後ろでまだ殺し合いが続いてるってのにさ」


「そういえば、でも俺襲われてないんだけど。これ実は映像だったりするのか?VRみたいな」


「正解だよ、ただしリアルタイム中継なんだけどね。実はこれ、ある種族の結婚式だったりする」


「嘘だろ、どこぞの戦闘民族ですらこんなことしないぞ。てか、何故この映像を俺に見せる?ん、まさか!」


「そういうこと。君にはこの結婚した二人の子供になってもらうよ」



 ちょうどその時結婚式とは名ばかりの殺し合いが終わった。最後まで残っていたのは、うん、あれ天使だね。だが、史実の天使とは違い翼はなく、代わりに四対八枚のダイヤ型の何かがある。何かじゃわからない、だって光が収束して形を成しているなんてありえないだろ。髪は銀髪、瞳はルビーみたいな色だ。服は……あれは服か?羽衣みたいだ。しかし、男だ、羽衣で男だ。イケメンでもな、なんか変態にしか見えない。



「そうか.....あの子が勝ったか」


「ビィラム知ってるのか?」


「まぁね、あの子は僕を信仰している種族の子だよ。髪と瞳が僕に似ているだろ、そのせいで迫害されてたんだ。神に似るとは不敬なってね。僕たちは全体の管理者だから、個人に対しては眷属を通してしか干渉できないんだよ。しかし、良かった、本当に良かった」


「まさかあの男の為に俺は呼ばれたのか?なんかもうじりつしてそうだけど?」


「あの子も目的の一つってだけさ、君にやってもらいたいことは他にもあるさ」


「ところで新婦が見えないんだけど、どこかにいるのか?」


「ん?上だよ、上。」


「デジャヴ感が半端なんだが、上ええええぇぇ!? なんだあの空中要塞!?」


「あれが花嫁の城さ、氷姿要塞シビリムだよ。魔王族の主城、どの種族よりも神に近い種族だよ。魔王といっても悪の大王ってわけじゃないし、あくまでも種族の名前だから安心してね」


「さっきから現実離れ過ぎて何が何だかさっぱりだ。ただ、聞き捨てならないのは花嫁が王族だと!俺をどうする気だ!」


「仕方ないんだよ。この世界では、僕を信仰する種族はほとんどいないし、今子供を成そうとしているのはあの姫しかいないんだよ。他神の種族に手出しすると最悪、神同士の戦争になってしまうかもしれないし……お願い!あの子の子供として生まれて!色々とお土産はつけるからさ♪」


「俺チートは嫌いなんだ。普通の子として生まれればそれでいいんだよ」


「それじゃあ、僕の立つ瀬がないんだよ。他の|みんな(神)にも笑われちゃうんだよ!お願い、一つでいいから受け取ってくれないかい?」



 そう言うとビィラムは頭を下げた。



「はっ?嫌だけど」


「大丈夫、ごく普通のやつだからさ。それにロッケリシアでは生まれた時に1つスキルを持って生まれるんだ。だから逆に無いと生まれから大変なことになって、君の言う平穏は訪れないと思うよ」


「わかったよ、一つだけだからな」


「本当かい!ありがとうね♪」



 一瞬ビィラムが悪い顔をしていたような気がしたが、今はただの笑顔を浮かべているだけだった。いったい何を考えているのか。



「それじゃあ、さっそくだけど君にはロッケリシアに行ってもらおうか。君がある程度大きくなったら、神言でも使って君に伝えるからよろしくね。」


「ああ、わかった」


「じゃあ送るよ」




 そう言うとビィラムが腕を振るう。すると、空間が裂けて中から真っ黒な何かが大量に溢れてきた。身の毛がよだつようなそれはゆっくりと幻夢の方へ蠢きながら寄ってくる。よく見るとそれは人の手の形をしており、まるで幻夢を自分たちの仲間にしようとしているようにも見えなくなかった。



「ビィラム!本当にこれ平気なのかよ!」


「安心してよ。そいつらは見た目はアレだけど、優秀な運び手だから。某クエストのマ〇ハンドみたいなやつだからさ~」


「すんごく気味悪いんだけど!本当にこれしかないのかよ!てかビィラム、お前地球の現代に絶対来てるだろ!」


「だって僕はゲームの神様だよ。日本の文化は素晴らしいね♪ そろそろ本当に時間が無くなってきたから行ってらっしゃい!」


「うう気持ち悪い……行ってきます」



 こうして俺は地球からロッケリシアへと転生したのだった。この後何が起こるかも知らずに……












―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



「フフフ、精々君には期待しているよ。雨宮幻夢君♪」



 幻夢が攫われていった虚空を眺めながらビィラムは一人ほくそえんでいた。あの時一瞬だけ見せた本当の笑顔とともに……

読んでくださってありがとうございます。

活動については活動報告の方で随時連絡します

改善点や誤字・脱字等教えてください。

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