ダメの烙印
シナリオの公募落選作品です。
小説ではないけど投稿サイトがないので・・・。
○ゲーム会社・情報システム部
ゲームの宣伝ポスターが壁に貼ってある。
パソコンでプログラミング作業中の芦原
耀(27)。時折ネクタイが息苦しく感じ、
結び目をしきりに触ったりして落ち着き
がない様子。
○フラッシュ
課長(52)が、提案書を机の上に叩きつ
ける。
課長「ダメだ」
○ゲーム会社・情報システム部
カタカタとキーボードを打つ耀。
○フラッシュ
課長、別の提案書を机の上に叩きつける。
課長「ダメだ、ダメだ!」
○ゲーム会社・情報システム部
凄まじい勢いでキーボードを打つ耀。
○フラッシュ
馬鹿にしたように笑う課長。
課長「芦原、お前ほんとダメな奴だな」
○ゲーム会社・情報システム部
ぐったりする耀。
ぼそぼそと自己暗示をかけるように呟く。
耀「俺はダメ、ダメ、ダメ、ダメ、ダメ……」
と無意識に「dame」とパソコンに打ち
込んでる。
画面いっぱいに「dame」の羅列が――。
次の瞬間、白目を向いてぐらんと椅子か
ら転げ落ちる。
○メインタイトル「ダメの烙印」
○田舎の風景
コバルトブルーの海。
水面が太陽に反射して煌めいている。
海岸沿い。
三両編成の電車、通り過ぎて行く。
○あわら屋・表
青い屋根瓦に白壁の住居兼民宿。
「民宿あわら屋」の看板。
看板に止まった蝉が煩く鳴いている。
壁にはイルカの絵が描かれたサーフボー
ドが二つ立て掛けてある。
○同・食堂
日焼けした大学生の二人組、内藤翔(21)
と武井拓海(21)が海鮮丼を食べている。
内藤「うまいな」
武井「うん、おいしい」
二人、ガツガツ食べる。
芦原明美(57)、厨房から二人分の味噌
汁を持ってくる。
明美「はい、どうぞ」
とそれぞれの前に味噌汁を置く。
武井「ありがとうございます」
明美「どう? あわら屋特製海鮮丼の味は?」
内藤「めっちゃうまいっす」
明美「そう? 良かった」
明美、にこにこしながら厨房へ下がる。
そこへジャージズボンを引きずりながら、
ダラダラと耀がやって来る。
耀「(欠伸)ふあ~」
内藤と武井、目を合わせないように俯く。
耀、隣のテーブル席にドカッと座り、わ
ざと聞こえるように「はあー」とか「ふ
ぅー」と溜息を吐く。
内藤と武井、小声で話す。
内藤「拓海、早く食べて海行こう」
武井「うん……」
耀「(大声で)あ~あ~!」
内藤と武井、耀をちらと見る。
耀「いいよなあ、ほんと大学生は。夏休みに
はサーフィン、冬にはスノボーってか?
暇だよなあ」
内藤・武井「(食べ続ける)」
耀「でもさ、俺知ってんだよ。本当はサーフ
ィンがやりたいんじゃなくて、ナンパが目
的だって。ここに泊まりに来る奴は大抵そ
う」
と鼻をほじる。
内藤、聞き捨てならないと箸を置き、
内藤「いや、俺らは普通に好きっていうか」
耀「(過剰に反応)え? 好き?」
武井「僕たち純粋にサーフィンが好きなんで
すよ。だから、ナンパとかそういう軽い気
持ちでやってるんじゃないんです。(内藤
に)ね?」
内藤「ああ」
耀、感心したようにうんうん頷きながら、
耀「へぇ~そっか、純粋に好きかあ~。何だ
か尊敬しちゃうなあ。そっかそっか~」
内藤・武井「……」
耀「ところで――(と鼻くそを飛ばし)」
内藤・武井「……?」
耀「お前らってアレか? 童貞か?」
内藤、遂にカチンときて立ち上がる。
武井「翔ッ!」
咄嗟に内藤の腕を掴んで止める武井。
内藤、怒りを鎮める。
しかし、耀は相手がかかってこないと見
るや否やファイティングポーズをとって
挑発。
耀「お、何だ? 何だ? やるなら相手する
ぞ? だがいいか? (得意顔で)俺、め
ちゃくちゃ強いよ?」
その時、「耀!」と頭をおぼんで思いっ
きり叩かれる。
耀「イッテェ……何すんだよ!」
振り返ると明美が腕を組んで立っている。
明美「お客さんの邪魔しないの!」
耀「は!? 邪魔してねぇよ、コミュニケー
ションだよコミュニケーション!」
明美「なーにがコミニュケーションよ。から
かって憂さ晴らししてるだけじゃない」
耀「(図星だが)そんなんじゃねぇし……」
明美「ったく、ひょっこり帰って来たかと思
えば、店の手伝いもしないで毎日ダラダラ
ダラダラダラダラダラダラ……」
耀「(遮り)だからあ! 言ってんだろ。や
りたい事探してるんだって」
明美「やりたい事やりたい事って、家と海と
コンビニにしか行ってないくせに何をどう
探してるわけ?」
耀「それは、まあなんつーか……」
明美「せっかく再就職したのに、まーた辞め
ちゃって。あんたには我慢ってものが足り
ないのよ、我慢ってものが」
耀、拳をぎゅっと握り、
耀「(ぼそっと)かーちゃんには……」
明美「え?」
耀「かーちゃんには分かんねんだよ、俺の苦
悩が!」
と飛び出して行く。
呆れる明美。
明美「何が苦悩よ、一丁前に……」
とグチグチ言いながらて、腰をさすって
厨房へ下がる。
ぽつんと残された内藤と武井、肩身狭そ
うに海鮮丼を食べている。
○海水浴場(朝)
砂浜にぽつりぽつりと足跡。
その先を耀が猫背気味に歩いている。
耀、立ち止まり、
耀「クソッ!」
と片足のサンダルを思いっ切り飛ばす。
しかし、大して距離は飛ばず、三歩ほど
先に落ちる。
耀、辺りに人がいないか確認すると、ケ
ンケンしながらサンダルを拾いに行く。
と近くに誰かが作ったであろう砂山を見
つける。
耀「んだよこれ! 邪魔だっつーの!」
耀、砂山をガシガシ蹴る。
崩れる砂山。
耀「(フン!)」
すると、「えーん」と泣き声が聞こえる。
耀、ハッと横を見る。
女の子(5)がおもちゃのシャベルとバ
ケツを持って泣いている。
女の子「お城こわしたーわたしのーこわした
あー!」
耀「へっ? 城!?」
壊した砂山を見る耀。言われてみればお
城だったような……。
女の子「(号泣)えーーーーん」
耀「ちょ、泣くなよ、泣くなって!」
耀、女の子を宥めていると、父親らしき
いかつい男(36)がやって来る。
いかつい男の声「おい」
耀「(見る)」
いかつい男「うちの子泣かせたんお前か?」
耀「いや……その……」
いかつい男「作り直せ」
耀「え?」
いかつい男「城や。作り直せ」
耀「で、でもですね、だけれどもですね……」
いかつい男、耀に詰め寄って、じっと睨
み付ける。
体が硬直する耀。
いかつい男「グダグダ言わんとやれ!」
耀「はいッ!」
耀、急いで砂を掻き集める。
○サーフショップ『BLUE OCEAN』・店内
ショップ店員の石蔵葵(23)。
葵、客を出口まで送る。
葵「ありがとうございましたー」
ショップ袋を持った客、出ていく。
入れ違いにヘロヘロの耀がやって来る。
耀「葵ちゃーん! ハアハア……」
葵「何だ、芦原さんか」
素っ気ない態度でレジカウンター裏へ行
く葵。
耀「もう参ったよお~。変な関西弁の奴に絡
まれちゃってさあ」
とその辺の椅子を引いて腰かける。
葵、裏でゴソゴソしながら、
葵「へー」
耀「ま、俺がかる~く片手でやっつけたんだ
けどね、かる~く。シュッシュッ」
とこれ見よがしにジャブを打つ。
葵、裏から箒を持って来る。
耀「?」
葵、耀を追い払うように箒で掃く。
耀「ちょいちょいちょい!」
葵「邪魔です。どいて下さい」
耀「俺、一応客だよ?」
葵「いつも見てるだけじゃないですか。しか
もずーっと同じの」
耀「違う違う、これでも考えてるんだよ。買
うか、買わないか」
葵「(じろり)」
耀「ほんとほんと。あ~分かった! (と立
ち上がり)疑うなら例の持って来て。俺が
本気だってとこ見せるから」
葵「嫌です」
耀「(手を合わせ)お願い」
葵、溜息。
○同・表
壁に立てかけられたサーフボード。髑髏
から目玉が飛び出ている奇抜な絵が描か
れている。
耀が腕を組み、まるで絵画を鑑賞してい
るかのような難しい表情を浮かべ、
耀「(顎を触りながら)バスキアだね。スト
リートだね。反社会性を感じるよ。うん」
葵「で、買うんですか?」
耀「ん~どうしよっかなあ」
葵「ほらあ、やっぱ買わないじゃないですか」
耀「違うんだよ。メッセージをね、この絵の
メッセージを考えてるわけよ」
葵「サーフィンするのにメッセージがどうと
かどうでもよくないですか?」
耀「それじゃあこれを描いた絵師に申し訳な
いよ。ちゃんとメッセージを理解してから
購入しないと」
葵「あの……、正直言ってもいいですか?」
耀「どうぞ?」
葵「葵にはやらない言い訳にしか聞こえない
んですけど?」
耀「人によってはそう聞こえちゃうかもね」
葵「いや、実際そうだし」
耀「(言い返せず)……」
葵「とりあえず難しい事考えないで、海に飛
び込んじゃえばいいんですよ。ドボーンて」
耀「そんな簡単に言われてもなあ」
葵「ふーん。ほんとは怖いんだ?」
耀「そういうんじゃないよ。そういうんじゃ
ないけど。ただ、メッセージをね――」
葵「(遮り)んじゃ、予約しときまーす」
と「よやくちゅー」と付箋に書いて、
その付箋をサーフボートに貼る。
耀「あ……」
葵「支払いは、なる早で」
葵、にっこり微笑む。
○近くの浜辺
ポケットに手を突っ込んで歩く耀。
耀「強引なんだよなあ葵ちゃん……」
と何かに躓く。
耀「(足元を見る)ん?」
履き潰したスニーカーの片方だ。
耀、スニーカーを拾う。
耀「なんじゃこりゃ?」
前を見るとまた何か落ちている。
今度はぼろぼろの日本語辞書。
またその先に何か落ちている。
白い封筒。
耀、拾って中を見る。
英文の手紙で、冒頭に「family」と書い
てあり、家族宛の手紙らしい。
耀「家族へ……?」
ざっくり目を通す。
文末に進むほど文字が乱れている。
そして最後に「good-by」の文字。
涙の痕か、少し滲んでいる。
耀「……」
ザザッ――と波が打ち寄せる音。
耀、ハッと波打ち際を見る。
チャックの開いた大きなリュックを背負
った金髪の男性(アメリカ人)が倒れて
いる。
耀「!」
耀、駆け寄る。
耀「おい! 大丈夫か!? おい!」
倒れているのは、ウィル(29)。無精ひ
げを生やし、顔色が悪い。
ウィル、力なく目を開けて、耀を見る。
ウィル「ダレ……ですか?」
耀「生きてるのか? 生きてるんだな!?」
ウィル「はい……助け……て」
耀「助ける! 助けるから死ぬな!」
ウィル「み、水を……」
耀「水!?」
ウィル「リュックに……」
耀、リュックの中からペットボトルを出
すと、体を起こして飲ませてやる。
ウィル「(飲むと)アリガト……生き返り…
…ました」
ガクッと首を擡げるウィル。
耀「おい、起きろ! おーい」
耀、ウィルの頬をペチペチ叩く。
○あわら屋・一室
ウィルがおでこに冷却シートを貼って、
布団で寝ている。
○同・食堂
対座する耀と明美。
その間を飛び回る蚊。
明美、うちわで蚊をバシッと叩く。
逃げた。またバシッと叩く。
バシッバシッという音だけ響いて、気ま
ずい雰囲気が流れる。
耀、居たたまれなくなり、席を立ち、
耀「まあ……そういう事だからよろしく」
と出て行こうとするが、
明美「待ちなさい」
耀「(振り返り)んだよ。いいだろ泊めてや
るくらい。部屋も無駄に空いてんだし」
明美「素性の知れない外人でしょ?」
耀「だから?」
明美「不法入国とかヤクの売人とか訳ありな
人だったらどうすんのよ?」
耀「(鼻で笑い)ドラマじゃねんだから。普
通に観光客だろ」
明美「どうだかねえ、あんたが拾って来るく
らいだから、わっかんないわ」
耀「(ムッとし)何だよそれ」
明美「信用ならないって言ってんの」
二人、睨み合う。
耀「……とにかく、泊めるったら泊めるから
な!」
とドアの方へ歩いて行く。
明美、団扇で扇ぎながら、
明美「タダで泊めるほどうちに余裕はないよ」
耀「(足を止め)泊まる金くらい持ってんだ
ろ。多分」
耀、出て行く。
明美「まったくあの子は……。イタタ……」
腰を押さえる明美。
○同・一室(夕)
カナカナと鳴くひぐらしの声で、ウィル
が目を覚ます。
とぼんやり耀の顔が見える。
ウィル「(辺りを見回し)ここは……?」
耀「うちの民宿」
ウィル、おでこの冷却シートを剥がし、
ウィル「スミマセン迷惑を……」
耀「別に気にしなくていいよ」
ウィル「いえ、おカネ払います」
ウィル、体を起こし、ポケットからくし
ゃくしゃの千円札を何枚か出す。
耀、困ったなと頭を掻いて、
耀「そういうつもりで連れて来たんじゃない
んだけど、うちにも煩いのがいてね……」
ウィル「いいです。丁度、泊まるとこ探して
た。助かりました」
とお金を差し出す。
耀、遠慮がちにお金を受け取り、
耀「じゃあ、死のうってわけじゃ……?」
ウィル「シノウ?」
耀「いや、何でもない。こっちの話」
耀、お金をポケットにしまう。
ウィル「そういえば名前をまだ……」
耀「あ、そっか。んと、マイネームイーズ…
…」
ウィル「日本語でオーケイ」
耀「だ、だよな!」
二人、くすりと笑う。
耀「芦原耀ね」
ウィル「ウィルです。よろしく」
と手を差し出す。
耀「よろしく」
二人、握手を交わす。
○同・廊下(夕)
明美が手すりを使って、腰を庇いつつ歩
いてくる。
明美「アイタタタタ……」
そこへ耀が歩いて来て、すれ違い様に、
耀「あ、今話してきたけど、いい人っぽかっ
たし、お金もちゃんと貰ったから」
明美「そう……イタタ……」
耀「だから心配いらないって言ったろ? ち
ょっとは自分の息子信用しろよ」
明美「イタタタ……」
耀「んじゃ、後は頼んだから」
耀、去って行く。
明美、腰を押さえながらしゃがみ込む。
明美「イタイ、イタイ……」
耀、漸く異変に気が付いて、
耀「? かーちゃん?」
○円山接骨院・表(夕)
おばあちゃんが杖をつきながら出て来る。
○同・待合室(夕)
長椅子に座る耀と明美。
明美は腰にコルセットを巻いている。
その隣で漫画を読んでいる耀。
耀「それにしても情けねーな、腰やられるな
んて」
明美「あんたが苦労かけるから、腰も悲鳴上
げたのよ」
耀「腰まで俺のせいにされちゃたまったもん
じゃねぇわ」
と漫画のページを捲りクスクス笑う。
明美「(ちらと見)店、任せたからね」
耀「(顔を上げ)俺に言ってる?」
明美「あんた以外誰がいんの」
耀「マジかよ……」
受付(女)の声「芦原さーん」
明美「ほら」
耀「……」
明美「ほらッ」
明美、顎でしゃくって急き立てる。
耀、漫画を閉じて渋々立ち上がる。
○あわら屋・一室(夕)
襖を閉め切った薄暗い部屋。
古い扇風機のモーター音。
ウィル、リュックから長細い木箱を取り
出すと蓋を開ける。
中身は真新しい和包丁だ。
ウィル、それを手に取り物憂げな表情。
○同・厨房(夕)
耀、まな板の上の魚を捌こうとしている。
魚はまだピチピチと跳ねている。
耀「暴れるな、暴れるなって」
やっと手で押さえつける。
耀「お前もさ、もっと自由な人生があったか
もしれないのにな。可哀そうに……」
その言葉に反応したのか、魚の尾鰭がぴ
くっと動く。
耀「御免ッ!」
耀、包丁を振り下ろす。
○同・一室(夕)
ウィル、和包丁を木箱にしまう。
と深い溜息。
トントン――とノック音。
ウィル、木箱をリュックの下に隠して、
ウィル「はい」
戸が開くと、耀が顔を覗かせる。
耀「ごはん出来ました~」
と、しおらしくお辞儀。
ウィル「今行きます」
ウィル、腰を上げる。
○同・廊下(夕)
部屋から出て来るウィル。
耀、頬をボリボリ掻いて、
耀「あんま、期待しないでな」
ウィル「?」
耀「いつもはかーちゃんが飯作ってんだけど、
幸か不幸か腰痛めてさ。部屋で寝てんだよ」
ウィル「大丈夫? 何か手伝いますか?」
耀「ノーノー。お客なんだからゆっくりして
くれればいいから」
ウィル「そう?」
耀「先、食堂行って待っててくれ。俺は他の
奴ら呼んでくる」
ウィル「はい。それでは」
ウィル、一礼して去って行く。
耀「今時、律儀だねえ」
と腕を組み感心していると、少し開いた
ドアの隙間から、扇風機が回っているの
が見える。
耀「? つけっぱじゃん」
耀、中へ入る。
○同・一室(夕)
耀、扇風機を止める。
と蒸し暑く、Tシャツをパタパタさせ、
耀「あちぃ……」
と窓を開ける。
ふわりと心地よい風が入り、軒先に吊る
してある風鈴がチリンと鳴る。
耀、少し風に当たって、部屋を出る。
と床に置いてあるリュックに軽く躓く。
耀「?」
リュックの下から、半分蓋の開いた木箱
を見つける。
耀、拾って蓋を開ける。
耀「これって……」
風が吹いて、風鈴の音が激しく鳴る。
○同・角の廊下(夕)
部屋のドアをドンドン叩く耀。
耀「おーい、いるかー?」
ドアが開き、内藤と武井が目をこすりな
がら出て来る。
武井「(欠伸し)何ですかあ?」
内藤「いい感じの肉食べる夢見てたとこなん
すけど……」
耀「そんな呑気な夢見てる場合じゃねえよ」
内藤・武井「……?」
耀「お前らのどっちか、確か外国語学部って
言ってたよな?」
武井「僕ですけど……」
耀「じゃあこれ、中身なんて書いてあるか分
かるか?」
とポケットから海で拾った例の手紙を出
す。
武井「見ていいんですか?」
耀「いいよ。俺のじゃないけど」
内藤「よくないでしょ」
耀「いいから。重要な事なんだよ」
と武井の胸に手紙を押し付ける。
武井、仕方なく受け取って、
武井「知りませんからね……」
と手紙を広げ、目を通す。
読み進めると表情が徐々に曇って行く武
井。
耀「で、何て?」
武井「これ……誰のですか?」
耀「ウィルってアメリカ人の。海で倒れてる
の見つけてうちに連れて来たんだけどさ」
武井「連れて来ちゃまずかったんじゃないで
すかね……」
耀・内藤「?」
武井「この手紙、要約すると遺書ですよ。先
行く不幸をお許し下さい。今までありがと
う。さようなら……」
耀「やっぱそうか……」
内藤「知ってて連れて来たんすか?」
耀「だってほっとけるか? ほっとけねえだ
ろ」
内藤「へぇー何か意外っすね」
耀「何が?」
内藤「他人の事とか気にしないタイプだと思
ってたんで」
耀「馬鹿、俺はこう見えて色んな事を気にし
すぎるくらい気にしてるタイプだよ」
内藤「(フッと鼻で笑う)」
耀「鼻で笑うな、鼻で」
武井「とにかく、それとなく本人に事情聞い
た方が良くないですか? 何かあってから
じゃ遅いですし……」
耀「でもどうやって?」
内藤「いつもみたいに適当な感じで」
耀、頭をガシガシ掻き毟って、
耀「わっかんねえよ……!」
武井「大丈夫ですよ。自然な流れで聞けるよ
う僕らも協力しますから。(内藤に)ね?」
内藤「うん」
耀「……そう?」
○同・食堂(夕)
食卓を囲む耀、ウィル、内藤、武井。
一同、無言で食事をしている。
ウィル、刺身を一切れ箸で摘まむ。
それが妙に分厚くて、
ウィル「(眉をひそめる)」
耀、沈黙を埋めるように話し出す。
耀「しっかし暑いよなあ、夏って。逆に冬は
寒いもんなあ。どうしてだろ? 地球って
不思議。ハハハハハハ……(と空笑い)」
武井「(ぼそっと)不自然すぎ……」
耀、内藤に身振り手振りで「何か言え」
と合図を送る。
内藤「(口パクで)俺が?」
耀「(頷く)」
内藤、徐に手を挙げて、
内藤「……ちょっといいっすか?」
耀「ん? 何だ?」
内藤「実は俺、悩みあるんすよね……。何か
こう、人生色々と辛いっていうか……」
耀「あるある。分かるよ。うん」
武井「(ぼそっと)だから不自然すぎ……」
内藤「どうしたらいいっすかね」
耀「そうだなあ、そんな時は一人で悩まない
で誰かに相談してみるってのはどうだろう。
例えば俺達とか――(とウィルをチラ見す
る)」
ウィルは刺身を箸で摘まんだまま固まっ
ている。
耀「ウィル……?」
ウィル、箸を置き、
ウィル「包丁……」
耀「包丁?」
ウィル「貸して下さい」
ウィル、立ち上がり厨房へ向かう。
耀「ちょ、早まるな!」
耀、追いかける。
○同・厨房(夕)
耀、ウィルの前に立ちはだかり、
耀「落ち着こう、一旦落ち着こう!」
ウィル「どいて下さい」
ウィル、耀を押し退ける。
耀「ぬあっ」
ウィル、洗い場でざっと手を洗い、引っ
かけてあった手拭いを取って頭に巻く。
きりっとした職人の顔つきになるウィル。
耀「へ……どゆこと?」
何事かと内藤と武井もやって来る。
ウィル、発泡スチロールの中に入った鯵
を手に取り、
ウィル「これ、いい?」
耀「ど、どうぞ……」
ウィル、包丁を手に取ると慣れた手つき
で魚の鱗を剥がす。
小気味良い音が聞こえてくる。
耀、内藤、武井、手元を覗き込む。
鯵があっという間に、三枚おろしになっ
ていく――。
耀・内藤・武井「おお~」
耀「上手いなあ、どっかで習ったのか?」
ウィル「スシ屋で習いました。ニューヨーク
の」
武井「ていうことは寿司職人?」
ウィル「でした」
耀「でした?」
ウィル、包丁を置く。
ウィル「もう辞めました。お店のタイショウ
に握りが甘い、客に出せない、ダメ、言わ
れて……」
耀・内藤・武井「……」
ウィル「スミマセン、こんな話楽しくないね。
忘れて下さい」
ウィル、皆に背を向け続きをやる。
丸まった背中が寂しい。
耀「な、もっかいさ、握ってみる気ないか?」
ウィル「(振り向き)?」
耀「ごはんもいっぱい余ってる事だし」
耀、炊飯器の蓋を開ける。
炊き立てのご飯がこんもり。
ウィル「でも……」
耀「ちょうど、寿司食いたいと思ってたとこ
ろなんだよ」
ウィル「……」
武井「僕も食べてみたいです。ウィルさんが
握る寿司」
内藤「晩飯あれだけじゃ足りないっすよ」
耀「ほらほら、皆もこう言ってる事だしさ」
ウィル「(少し考えて)皆さんはそういうな
ら……やってみます」
ウィル、頭に巻いたタオルを締め直す。
○同・食堂(夕)
ウィル、握った寿司をテーブルの上に置
く。米の一粒一粒が光って美味しそう。
耀、内藤、武井、ごくりと喉を鳴らす。
ウィル、頭に巻いた手拭いを取って席に
着く。
ウィル「どうぞ……」
耀・内藤・武井「いただきます!」
各々寿司を頬張る。
内藤「うん、旨い」
耀「うめぇじゃん。何だよ、うめぇじゃん」
武井「固さも丁度いい感ですよね」
耀「(寿司を頬張り)うんうん」
ウィル「お世辞……アリガト」
耀「お世辞じゃねえよ。本当だって」
ウィル「だけど……、タイショウにダメ言わ
れました。だから多分……」
ウィル、俯く。
一同、沈黙。
と内藤が徐に口を開く。
内藤「一つ、聞きたいんすけど……」
耀・ウィル・武井「?」
内藤「何で寿司握ってたんすか?」
ウィル「それはスキだから……」
内藤「だったら、ダメって言われようがやれ
ばいいじゃないっすか」
ウィル「(え? と見る)」
耀「や、言うけどさ、一回ダメって言われた
ら自信なくすもんなんだって。何かやろう
って思っても俺じゃ無理だよなーって」
内藤「じゃあ、ずっと落ち込んでるつもりで
すか?」
耀「そういうんじゃ……(とウィルを見る)」
ウィル、俯いている。
内藤「ないんでしょ? ないならダメならダ
メなりに前に進むしか他に方法ないじゃな
いっすか」
耀「うん。お前が言う事は正しいよ。けど、
正しすぎて辛いんだよ」
内藤「?」
耀「皆が皆さ、お前みたいに強くて自分に自
信あるやつばっかじゃねえの。世の中の大
半は弱くて余裕なくて不安で自信ねえの」
内藤「俺だってないっすよ」
耀「は? どこがだよ。お前が自信なかった
ら俺はどうなんだよ!」
内藤「(立ち上がり)知らないでしょ。俺の、
何を知ってんすか!?」
耀「そりゃまあ、よくは知らねえけど」
内藤「ほら」
耀「だけど――」
武井、「あのぉ」と手を挙げる。
耀・ウィル・内藤「?」
武井「本当に翔は自分に自信あるタイプじゃ
ないですよ?」
耀「え?」
武井「何があったか詳しく聞いてないですけ
ど、凄く落ち込んで部屋から一歩も出られ
なくなった時期があったんですよ」
耀「(内藤に)そうなの?」
内藤「まあ……(と座る)」
耀「ふーん……」
武井「でもある日、部屋から出て来て僕に言
ったんです。『俺、ダメなままで行くわ』
って」
耀「ダメなまま?」
内藤「あの頃は、理想の自分と現実の自分と
のギャップで動けなくなってたんすけど、
ダメでいいんだと思ったらすげぇ楽になっ
たっつーか、不思議と動けるようなって、
出来る事が増えて……(と俯く)」
武井「翔?」
内藤「(顔を上げ)だから、不安なまま、自
信ないまま、完璧じゃなくていいから前に
進めばなんとかなるもんだって俺は思った
んすよ。馬鹿っぽい考えだけど、いいんす
よ馬鹿で。その方が人生楽しいっすよ」
耀「……」
ウィル「ショウの言うとおりですね……」
耀・内藤・武井「?」
ウィル「カンペキはできない。ダメならダメ
なりに、周りがどう言ってもやるしかない
ね……。自分で選んだスキなことだからこ
そ……」
耀「好きな事か……」
一同、沈黙。
武井「何か……、湿っぽい空気になっちゃい
ましたね」
ウィル「スミマセン、ワタシのせいね……」
武井「ウィルさんのせいじゃないですよ」
耀「よーし!」
とテーブルをドンッと叩く。
ウィル・内藤・武井「?」
耀「仕切り直して食うか!」
武井「そうですね。お腹空きましたもんね」
耀「んじゃ、(と手を合わせ)いただきます」
耀、味噌汁を啜る。
耀「うん、ちょっとしょっぱいけどイケる。
お前らも飲めよ」
内藤「じゃあ」
武井「いただきます」
ウィル「(少し遅れて)……ます」
各々、味噌汁を飲む。
耀「どうよ?」
武井「少ししょっぱいけど」
内藤「これはこれで……」
ウィル「おいしいです」
耀「な?」
一同、笑う。
○海・全景(早朝)
夜が明けていく。
○同・一室(朝)
ウィルがリュックの中身を出して、何か
探し物をしている。
とノック音。
ウィル「はい」
耀がドアを開けて顔を出す。
耀「今いい?」
ウィル「?」
×××
対座する耀とウィル。
耀が例の手紙をウィルに渡し、
耀「これ」
ウィル、受け取って、
ウィル「これ……どこにありました?」
耀「その、海で倒れてる時に拾って。返そう
と思ってたんだけど……」
ウィル「中、読んだ……?」
耀「悪い。気になって」
ウィル、物思いに手紙を見つめ、
ウィル「そうですか……」
耀「(俯く)」
ウィル「一度……です……」
耀「?」
ウィル「一度、本気で死ぬこと考えました…
…。その時書いたものです……」
耀「うん……」
ウィル「だけど、書いてる内にこう思うよう
になりました。『まだ他にやる事あるんじ
ゃないの?』と」
耀「それで日本に?」
ウィル「はい。日本へ行けばもっとスシのこ
と知れると思いましたから」
耀「そっか。何だかんだ言ってウィルは凄い
よな、ちゃんと行動してんだもん」
ウィル「テルもすごいですよ?」
耀「俺が?」
ウィル「海でワタシを助けてくれました」
耀「それはだって当たり前じゃん」
ウィル「んーん、中々できることじゃないで
す。無視することもできました。でも、し
なかった。それでここまで運んでくれた。
めんどくさいはずなのに」
耀「……」
ウィル「テルはもともと行動できる人です」
耀「そうかな……」
ウィル「そうですよ」
と手紙を破いて灰皿に置き、ライターで
火をつけるウィル。
耀「あ……」
ウィル「もういらないから」
紙が燃えて、灰になっていく。
○同・耀の部屋
耀、じっと封筒を見つめている。
その封筒には『遺書』と汚い事で書かれ
ている。
耀、それをくしゃっと握り潰すと、ゴミ
箱へ捨てる。
耀、ほっと一息。
と襖が開く。
耀「!?」
目の前に腕を組んだ明美が立っている。
耀「か、かーちゃん……」
明美「ここにいたのね」
耀「え、まあ……。つか、腰は?」
明美「おかげ様でこの通り」
明美、腰をぐるぐる回す。
耀「そりゃいい事で……」
明美「『いい事で』じゃないわよ。何なのあ
れは?」
耀「……あれ?」
明美「皿は出しっぱなし、風呂の栓は抜いて
ない。表は泥だらけ!」
耀「あ~うん。その話はさ、後にしてくんな
いかな? 俺今から行くとこあって」
明美「何処に?」
耀「ちょっと海に……」
明美、ちょいちょいと手招く。
耀、「ん?」と顔を近づける。
明美、両頬を掴んで引っ張る。
耀「イタイ、イタイ!」
明美「今すぐやれ」
耀「ちぎれりゅ、ちぎれりゅ(千切れる、千
切れる)」
明美「今すぐやるか?」
耀「イタイ、イタイ!」
明美「やるのか?」
耀「はなへ、はなへ(離せ、離せ)」
明美「やるな?」
耀「はひ……」
明美、にっこり笑って手を離す。
耀、赤くなった頬を撫でる。
○同・浴場
タイル張りの浴槽をたわしで磨く耀。
後ろを見ると明美が怖い顔して見張って
いる。
耀「見張ってなくてもちゃんとやってるよ」
明美「何か言ったー?」
耀「いえ、何も」
○同・表
耀、ぶつぶつ言いながら箒で掃く。
耀「こんな事やってる場合じゃなねんだよな
あ……」
また後ろの方で明美が耀を見張っている。
明美「そこ、ゴミ落ちてる」
と指差す。
耀「分かってるって」
明美「(別のところを指差し)ほらそこも」
耀「分かってるっての!」
○同・厨房
皿を洗う耀。
と蛇口を止めて、明美がいないか辺りを
見る。どうやらいないようだ。
耀、抜き足差し足で裏口から出る。
○同・裏庭
出て来る耀。ふぅと一息。
ゴホンゴホンと咳払いが聞こえる。
耀、恐る恐る前を見る。
明美が仁王立ちになって行く手を塞いで
いる。
耀「げ……」
明美「やる事はお見通しです」
耀、両手を合わせて、
耀「頼む! マジでどうしても海へ行かなき
ゃなんないんだよ」
明美「行ってもぼーっとしてるだけじゃない」
耀「違う。今度は違う」
明美「?」
耀「続きは帰ったらちゃんとやるから! 今
だけはどうか、お願いします……!」
深く頭を下げる耀。
明美「どうしても今じゃなきゃいけないの?」
耀「(顔を上げ)はい」
明美「明日じゃダメなのね?」
耀「今、今じゃないとまた言い訳してやらな
い気がするんだよ俺……」
明美「何だかよく分かんないけど……」
耀「(じーっと見つめる)」
明美、はあーと息を吐き、
明美「行って来れば?」
耀、ぱあっと笑顔になり、目をキラキラ
させると、明美の手をガシッと握る。
明美「!?」
耀「恩に切ります!」
耀、タッと走って行く。
明美「ったく、しょうがないわね」
明美、くすりと笑う。
○海岸沿いの道
背筋を伸ばし、風を切って走る耀。
カモメが数羽飛んでいる。
○サーフショップ『BLUE OCEAN』・店内
耀が息を切らして入って来る。
耀「あ、葵ちゃん……!」
しゃがんで小物商品を陳列している葵。
葵「(きょとんとして)芦原さん?」
耀「予約したサーフボードを……」
葵「はい?」
耀「買いに来た……」
葵「あ~あれ……」
耀「そう、あれ!」
葵「あれならさっき売れちゃいましたよ?」
耀「え、売れた? 誰に?」
葵「関西弁のいかつい系の人に」
耀「関西弁……」
×××
(フラッシュ)
ガンを飛ばすいかつい男。
いかつい男「作り直せ」
×××
耀「嘘だろ……」
葵「確かめてみます?」
耀「いや、いいです。はい……」
葵「じゃ、もう帰って下さい。私、こう見え
てめちゃくちゃ忙しいんで」
と立ち上がって、レジカウンター裏へ。
耀「ちょっと葵ちゃん、俺に冷たくない?」
葵、裏でごそごそしながら、
葵「そうですかあ? これでも寛容な心で受
け入れてあげてるんですけど?」
耀「そうだったのか……」
葵「まだ何か?」
と手に箒を持っている葵。
耀「も、もう少しだけ話さないかな? 何処
かで美味しいダージリンティーでも飲みな
がら」
葵「間に合ってます」
葵、スマホの待ち受け画面を見せる。
葵と男が仲睦まじく顔を寄せ合った写真。
耀「(見て)お兄さん……じゃないよね?」
葵「はい。もちろん」
耀「そ、そっか……」
とふらふら店を出て行く。
葵「さようなら~」
葵が手を振る。
○海水浴場・トイレ前
しょんぼり歩く耀。
耀「はあー、どうっすかなあ……」
と三毛猫が目の前を横切る。
耀、猫を目で追う。
追った先、トイレの壁にイルカのサーフ
ボードが二つ立てかけてある。
耀、傍へ行って、じっとイルカの絵を見
つめる。
耀「(顎をさすり)ほーう、なるほどね……」
そこへウエットスーツを着た内藤と武井
がトイレの中から出て来る。
武井「……何してるんですか?」
耀「(振り向き)え」
武井「僕達のボード見てましたよね?」
耀「ああ、いやなんつーの? このイルカの
絵、ラッセンっぽいっつーのかな。サンク
チュアリ感あるわ~と思ってな」
武井「(内藤に)何言ってんの?」
内藤「さあ? ほっといて行くぞ」
武井「だね」
内藤と武井、サーフボードを小脇に抱え
て歩いて行く。
耀「ちょ、ちょ待って!」
内藤・武井「(振り向く)」
耀「実はその……」
耀、恥ずかしそうにもじもじする。
内藤・武井「……?」
耀「二人に、お願いがあるんだけど……」
内藤と武井、「?」と顔を見合わせる。
○あわら屋・食堂
明美が布巾でテーブルを拭いている。
ウィルの声「オカミサンですか……?」
明美、「?」と顔を上げる。
髭を剃ってさっぱりしたウィルが立って
いる。
明美「あらやだ。いい男……」
明美、髪型を整える。
ウィル「テルたち知りませんか?」
明美「ああ、海にね、行ったみたいよ?」
ウィル「そうですか……」
ウィル、引き返す。
明美「ちょっと待って」
明美、厨房へ行く。
ウィル「?」
明美、厨房から炭酸ジュースを二つ持っ
て来るとウィルに差し出す。
明美「はい。これ持ってって」
ウィル「いえ、悪いです」
と押し返す。
明美「いいからいいから」
明美、ウィルの手を持って、ジュースを
持たせる。
ウィル、俯いて、
ウィル「でもワタシ、いろいろ迷惑かけてま
すから……」
明美「いいのいいの、迷惑かけない人間いな
いんだから」
ウィル「……」
明美「ほら遠慮しないで」
ウィル、ジュースを受け取って、
ウィル「スミマセン……アリガト」
明美、微笑む。
○海水浴場
色とりどりのビーチパラソルが立ってい
る。
ビーチパラソルの下、内藤が耀のジャー
ジを着て座っている。
そこへウィルがジュースを持ってやって
来て、内藤の後ろ姿を見つける。
ウィル「ショウ」
内藤「(振り向き)あ、ウィル」
ウィル「ここでしたか、探しました」
と隣に腰を下ろし、ジュースをあげる。
内藤「(受け取って)サンキュウ」
ウィル「服、どうしたの?」
内藤「それが海坊主に……」
ウィル「ウミボウズ?」
×××
浅瀬。
耀が内藤のウエットスーツとサーフボー
ドを借りて武井に教わっているところ。
耀、波に乗ろうとするが、中々サーフボ
ートの上に立ち上がれない様子。
×××
浜辺。
ウィルと内藤がジュース片手に耀の様子
を見ている。
ウィル「テル、がんばってるね」
内藤「まあ珍しく……」
ウィル「波、のれるかな……?」
内藤「乗れるんじゃないっすか」
ウィル「?」
内藤「立ち上がりさえすれば」
ウィル「(笑み)そうね」
二人、ジュースをぐいっと飲む。
×××
浅瀬。
武井が耀に合図する。
耀、ボードの上に腹這いになる。
波が来る。
耀、水を掻いて、遂に立ち上がる。
が、屁っ放り腰。
(おわり)
主人公が何故サーフィンなのか?がよく分からなかったかな~と。
SEの設定もいらないかな?
あとは斬新な切り口がなかった。
冒頭も説明がうまくなかったかな。
他・・・何かあれば感想よろしくお願いします。