表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
俺の転生体は異世界の最凶魔剣だった!?  作者: まさみゃ〜(柾雅)
三章 神を冒涜する腐敗都市
81/81

71 変貌

 獣の顔は二つあり、男の顔の右側から鋭い犬歯を持った何かの頭生えている。また、膨張した身体には所々に人の目が付いていた。それでも体毛は濃く、人の肌はもう見えない。見えたとしてもそこは肌色ではなく、くすんだピンク色だ。

 元々男が持っていた両手斧を片手で引きずりながらそれはフラフラと寄って来る。


「へっヘヘっ……サいっ高な気ブンだzE……?」


 目の焦点が合っていない。部下らしき男たちは変身した男の様子を見て困惑の様子を隠せていなかった。


「コッチは最悪な気分だよ気持ち悪い……」

「ソうKAァ……ヨっ!!!!」


 両手斧が、片手斧の様に軽々と片手で振るわれる。それを何とか躱したはいいが、ピュルテさんの支援が無かったら絶対に反応できなかった。

 ……振り下ろされた斧が地面をえぐった瞬間は特に血の気が引いた。


属性付与(エンチャント)……(ポイズン)


 メラン=サナトスに毒性をさらに付与することで毒の効果を上昇させる。そして男……いや、双頭の獣に俺は斬りかかった。ついでに思考を加速させ、双頭の獣の繰り出すカウンターなどの攻撃に備えるようと試みる。けれど双頭の獣の動きは攻撃以外は鈍い方で、攻撃時にカウンターなどに備える必要は無かった。

 双頭の獣は身を捩って回避するが、上手くバランスをとることが出来なかったらしく、軽く切り傷を作ってしまう。そこから黒死の名に恥じない魔剣の毒が回り始めた。


「グッ……」


 変身したばかりだからか、慣れない身体を思うように動かせていないようだった。双頭の獣は黒く変色し始めた傷跡を片手で抑えながらこちらを睨むのみ。今なら更にダメージを与えられるのではないだろうか?

 しかし一歩踏み出そうとして突然、俺の視界は切り替わり、誰かの視点の映像が目の前に流れてきた。


「っ!?」


 それは俺がさらに双頭の獣を斬りつけた時に、奴の胸部から飛び出してきた無数の牙の様な骨の様な何かが俺の身体を貫くというもの。

 一歩踏み出した状態でその映像が流れてきたため、俺は直ぐに追撃を止めた。しかし、一体さっきの映像は何だったのだろうか……?


「……ガフッ」


 獣の方の口から赤黒い液体が吐き出される。おそらく血……なのだろう。少々辺りに鉄の臭いが充満し始めている。


「そろそろ限界なのか?」


 剣を構えたまま問いかける。

 奴はただ、獣の顔で此方を睨むのみ。その喉からは、痰が混じった様な濁った呼吸音が聞こえてくる。


「GLAAAAAAA!!!!」


 人を辞めた、そんな言葉が思い浮かぶ。

 両手斧を捨て、本能のまま鋭利な爪を振り回すその様はもう、かつて自身が人だった事を忘れている。

 俺は、爪を避ける事しか出来なくなった。


「くっ……避ける事に手が一杯だ……」


 避ける事に集中しなければ間違えなく喰らう。

 だが暫く回避に徹していると、奴の動きが鈍くなってきた。そして、その時に俺はとある事に気がついた。

 奴は何かに絡まれいる。

 よく見ると、奴の周囲には細かい蜘蛛の糸が絡み合っていた。


「アトラか! よくやった!」


 そう叫びながら俺は、爪を避けたと同時に奴の太い首に剣を突き刺した。


「これで……トドメ!!」


 致死量の毒を己の身体の感覚に任せて注ぎ込む。

 そしてそれが決め手となったのか、双頭の獣は血を吐きながらその場に膝から崩れ落ちた。


「……剣から注ぎ込むとかできるとは思わなかったな……でもなんでその感覚を俺は知っている?」


 しかし、その問いに答えてくれる声はない。


「まぁ、いいか。使えるということは分かったし……と、馬車の方は……問題無いな」


 被害状況を確認する。

 盗賊らはアトラの糸で縛られており、被害はない。

 ピュルテさんもヨグさんも無事のようだ。

 まぁ、多分俺が居なくても二人は平気でこの状況をやり過ごせそうな気がするが……これ以上考えるのは止めておこう。


「ライくんお疲れ様、お姉さんが撫でてあげましょう」

「いえ、遠慮しておきます」


 拒否したらピュルテさんが強引に俺の頭を撫でようと、何かの力を使った。

 その瞬間、俺は身体を地面に押し潰されそうになる感覚に襲われる。

 何とかそれに耐えながらヨグさんの方を見るが、彼はピュルテさんの行動に溜息交じりに諦めているだけだった、

 ヨグさん、マジで助けてください。












 ◇


 ケイト=オリサカに割り当てられていた寮の部屋は魔物に荒されているようだった。

 そして床には血痕が残っており、その量は致死量に達していることが分かる。

 その部屋に水銀色(みづがねいろ)の髪の少女がポツリと立っていた。

 手には握り締められた一通の便箋。


「私を……置いていくのですね」


 声色は怒りで染まっていた。

 握りしめた便箋を開封し、その内容に目を通す。

 皺くちゃになった便箋を読んで彼女の表情は一変した。


「あら、私ったらはやとちりしていたようですね。そうです、ケイトさんは理由もなく私から離れていきませんもの」


 頬を赤らめるが、手紙で口を隠してその喜びの感情をこらえる。

 しかし、乙女の想いは溢れ隠しきれていない。


「ケイトさんには常に私(の加護)がいますし、今回の騒動はおそらくアナタの計画の一つなのでしょう。ですが……自由に生きて欲しい反面、もっと私の傍にいて欲しいと思ってしまいますね。

 卒業したらいつか……いえ、すぐに見つけて合流しますからね」

マンハッタンカフェが悪いんだ私は悪くねぇ(他サイトで怪文書生産してた)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ