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俺の転生体は異世界の最凶魔剣だった!?  作者: まさみゃ〜(柾雅)
三章 神を冒涜する腐敗都市
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62 聖剣召喚

 久し振りに〈実体化〉を切る。俺が消えたことによって観衆は驚き、騒ぎ始めた。まだ後には試合があるのに、俺が消えたことによって折角の娯楽が台無しになった事が相当来たらしい。

 しかし、そんな民衆の騒ぎ声を王はたった「黙れ」と言う一言だけで制す。そして、立て掛けておいた俺の本体をステージに投げ捨てた。突然の王の奇行に民衆は驚くが、そんな事も気に留めずに王はステージまで飛び降りた。


「俺の可愛い民達よ、これまでの試合は愉しんでくれたか?」


 と、王が語り始めた。俺は大人しく其の声に耳を傾ける。


「俺が用意した剣奴。そいつは決して裏切り者では無い。何せ奴はお前達と同種族では無いからだ。それに、俺は一言も裏切り者とは言っていない」


 民を憂う眼差しで王は淡々と語る。其の姿を見て俺は、民の事を思う偉大な王だと思った。


「今現在まで奴はお前達を楽しませてくれたことにまずは俺から感謝の言葉を魔剣に贈ろう。そして、お前達には謝罪をしたい。

 俺は今までお前達を守ってきた。攻め入るヒトの軍を滅ぼし、食糧難の時に多くの肉を用意し、退屈な日々を潤す為の闘技場を作った。だが、もう俺は疲れてしまったようだ。もう、お前達の願いを聞き入ることが難しい。

 他にもまだ演目があったのだが……これで終いにしよう。なに、心配する必要はどこにも無い。俺と魔剣、これが最後の演目だ。それと、万が一の時は心配する必要はない。あのお方がお前達を守ってくれるそうだ」


 そう言ってモルディギアンは真なる自身の異形の姿を解放した。






 勇者:武雄(タケオ)は牢屋内で、空腹により目が覚めた。確か自分は異常をきたしたダンジョン、《腐敗都市:ゴモラ》の内部に入った筈だった。しかし、現在自分が置かれている状況に彼は未だに思考が追い付いてはいなかった。


「こ、ここは……」


 うつ伏せの状態で意識が覚醒し始める。腕をついて起き上がろうとするが、腕が動かない。やっと思考がクリーンになった時に武雄は自身の状態を知った。


「な、なんだよこれ!?」


 簀巻状態で放置されていたのである。しかも武具は没収され、今は手元に何も無い。

 転がりながら壁まで移動し、壁を頼りに身体を起こす。

 息を切らしながら体勢を整えて、今の自分の状況を武雄は把握しようと努力する。


「た、確か依頼を受けてそれで……ダンジョンに入って……」


 大きな城に潜入した所までは覚えていた。しかし、その後からの記憶が怪しい様で、武雄は懸命に思い出そうとしている。





 武雄は暫く己の記憶を整理していた。そして思い出す。


「っ! そうだ、俺は確かあの時……獣人みたいなのに見つかって……」


 やっと思い出した出来事に、自身の弱さを思い知らされた。恐らく奴なら反撃出来ただろう、と自身と比べる。

 しかし、そんな自身の弱さを悔やむ暇は彼にはなかった。


「彼奴なら俺と違って……っ!?」


 突然来た揺れと騒音が襲いかかってきた。何かが建物を壊した様だ。しかし、建物が崩れる様な音を搔き消す様に歓声と言う名の騒音が聞こえてくる。


「な、なんなんだよ……」


 定期的に、何かが戦っている様な震動が牢獄まで伝わってくる。その為、石煉瓦の壁や天井から塵埃などが舞う。










 やっと収まった。あれからも少し似た様な震動が伝わってきた。隣や目の前の牢屋は崩れて、自身の居る処がまだ崩れていない事は武雄の不安であった。いつ、自分の天井が崩れ落ちるかもわからない状況、未だに力の無い己を恨んだ。


「クッソ……俺に…俺にあれが使えたら……!!」


 召喚された勇者は皆、〈聖剣召喚〉と言うスキルが使用できる。そのスキルで召喚された聖剣と契約を結ぶ事で魔王にやっと対抗できるのだ。

 しかし、どういう訳か、武雄にはそのスキルがまだ使用できない。


「こんな所で終われないんだ……ここで終わったら……」


 ここで終わってしまったら誰にも認められなくなる。自分が元の世界でしてきた事と変わらなくなってしまう。

 そんな嘆きがだらだらと武雄の口から溢れ出る。

 後悔で終わる人生は嫌だと、誰もが自分を認めてくれる世界を望んだのに……


「バカな俺が生きちゃダメなのか……?」


 己の人生を顧みる。後悔だらけが積み重なった人生。そんなのは嫌だ、と必死のこの状況から脱しようと思考を巡らせる。


『確実に生きられる方法が欲しいかしら?』

「っ!?」


 突然、女性の声が武雄の耳に響いた。声の主は見当たらない。


『確実に生きられて、尚且つ強くなりたい?』


「ああ……! 欲しいさ! 強くなりたいさ!」


 藁に縋るような気持ちで、自分に語りかける声に応える。


『なら私を召喚しなさい。さすれば貴方の一時の力となりましょう』


「召……喚? 無理だ。俺にはまだそれが使えないんだ!」


『それは貴方がまだ未熟だからです。それに、今までの勇者達もすぐに聖剣を召喚する事が出来た訳では無いのですよ?』


 今までの勇者達は直ぐに召喚出来ていたのだと武雄は勝手に思い込んでいた。スキルとして、当たり前にそこにあったことが原因だろうが、王宮で過去の事を調べなかった自分の方が明らかに悪い。


「……分かった。やってみる」


『言っておきますが、特別に今回だけですからね? 貴方はまだ未熟ですから』


「ああ……! “聖剣よ 我が呼び声に応えよ”」


 願う様に聖剣を呼ぶ。己の阿保さを知り、無力さを感じて変わろうと決意する。

 そして聖剣は呼び出された。天井が水面のように揺れ、光の門から剣が降り立つ。そして、呼び出された聖剣は地に刺さった。その衝撃は武雄を縛る鎖を壊し、彼の空腹を癒した。


『我が名は《聖剣:ゼーン=レウコン》。白と生を司る神器なり。我が力、一時程お前に貸そう』


 白く輝く聖剣が語りかける。武雄はその光景に声失うが、その柄を握ろうと腕を伸ばす。

 生き延びられる希望が其処にある。その希望を今度こそ後悔しないように、強く握りしめた。

ス、ストックが切れた……(;´Д`A

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