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俺の転生体は異世界の最凶魔剣だった!?  作者: まさみゃ〜(柾雅)
三章 神を冒涜する腐敗都市
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60 死に寄生する虫

 次の対戦相手はゲートを壊して登場してきた。そして陽を浴びて大きくなる。

 怪我の方は結局、休憩室の様な場所では治療をしてもらえなかった。だから次回は自分でやろうと思った。因みに怪我は自分で簡易的に治療したよ。折れた骨を戻すので限界だったけどね。

 さて次の対戦相手は、先程倒した門番よりも巨軀な二足立ちの鬼だ。背丈はゲートの二倍まで伸びると肥大化が止まった。ただ、肥大化が原因か鬼の皮膚は無く筋肉と骨が剥き出しになっていた。肩や腹の動きから呼吸はしていない様なので不死者(アンデット)の類だと思われる。

 名前は確か……『死寄生』とこの催しの実況者が呼んでいた。筋肉の色は血の抜かれた人と同じ白に近い。しかし、所々腐蝕して蛆が湧いていた。頭部の角は白く鋭いのが一つ。屈強な四肢を持ち、右手には大きな鉈の様な物が握られている。


「あれは……あ、斬馬刀みたいなものか」


 簡単に言えばる〇剣に登場する斬馬刀に似ている。本当に斬馬刀なのかは知らないけど。

 俺はそれに対して刀を選んだ。刃が地味に欠けているが、例え戦闘中に刃毀れしても殴る分には問題ない強度はあるだろう。

 刀の大きさは大太刀。構えは金の構え。刃を下に向け、刀身を後方に向けて持つ。

 俺は鬼に対峙する様にやだジッと構えている。そしてコングが殴られ、甲高い音が響き始めたと同時に鬼が迫ってきた。

 一歩一歩が重く、鬼が地面を踏むたびに会場も空気も揺れる。振り上げられた鬼の得物は日光を反射させる。

 俺は振り下ろされてくる斬馬刀の様なものを受け流せる様にタイミングを合わせれ大太刀を振るう。刃と刃が擦れる気持ちの悪い音と振動が直に響く。鳥肌が立つが、最後まで受けきると俺は、そのまま流れる様に攻撃に転じる。

 桐花様の加護のお陰で大太刀も扱い易い。鬼の股下を潜りながら、加護で指定された様な気がする部位を大太刀で斬る。

 潜り終えても息が切れる様な感覚はない。それに、鬼は斬られた部位の所為で大きく倒れていた。

 また観衆の声が聞こえない。〈思考加速〉を使用していないはずなのに、時の流れが遅く感じる。

 チラリとゴモラを治める王を見るが、キリカたちは楽しそうに会話している様だ。それを見て俺は安心できた。


 ―彼女達があの様子なら問題ないか……!


「〈剣舞:臥龍桜〉」


 大太刀を水平になるように横に構える。そして深層領域にある一人の男の記憶を掘り起こす。が、その記憶は俺の物ではない。しかしサナ、《魔剣:メラン=サナトス》の彼女はその男の記憶を持っている。

 鬼にゆっくり歩み寄りながら、その記憶の動きに己の身を重ねて大太刀を振るう。


 起の舞は母の土壌を斬る。

 承の舞は恵の水を斬る。

 転の舞は力となる幹を斬る。

 結の舞は散り舞う桜の花弁を斬る。


 あっという間に巨軀は起き上がれなくなるほどボロボロになった。まずは立ち上がれなくなる様に、所々にある腱を斬る。さらに次の舞でも動けなくなる様に肉を削ぎ落とす。そして骨を頭骨のみを残して全て砕いた。

 すると、さっき切り散らかした肉片や骨から虫がたくさん飛び出してきた。虫は蛆よりも大きい。

 骨肉を突き破って飛び出した虫どもは真っ先に俺へ突っ込んでくる。それは新たな宿主を求めての行為だろう。『死寄生』という名から勝手に不死者(アンデット)だと思っていたが、不死者(アンデット)にしては動きが変だった。あの腐敗しきった身体が形も崩さずに歩けるのが不思議……だよね?

 あぶなっ。いくら思考加速が働いても余計な事はかんがえないようがいいか。

 顔ギリギリまで虫が近づいていたことにかがつかなかった。だが、反射でギリギリ対応した。

 しばらくして、数多くの虫の攻撃は止んだ。辺り一面には、屍肉と虫の体液が散乱している。けれど、本能的にまだ警戒心が解けない。

 ジッと地面に散らばる虫の体液と肉を眺めていると、僅に動いているのが分かった。ただ、俺がそれに気が付いたと同時に虫も勘付かれた事に気が付いたのか、勢い良く集合し始めた。


「っ!? やっぱりか……!」


 虫は鬼の骨や肉を置き去りにして混ざり合う。グチョグチョプチプチと気色悪い音を立てながら形を象り始めた虫達は、やがて一つの魔物の姿となる。


「それが本来の姿か……」


 通りで散らばる鬼の肉が巨大化した時の肉の量が合わないわけだ。

 目の前にいるのは虫といえば虫なのだろう。太く長い蚯蚓の様な胴体に、外骨格のない虫の脚が多数。顔は蛭の様で、背中からは触手が四本ほど伸びている。そして波打つ様に皮膚に紫色の光が流れていた。


「〈付与魔法(エンチャント):火〉」


 大太刀に火属性を付与する。適性があまり無いから雑だが、虫には荒くても火は効くだろう。

 そして土の構えで虫の様子を伺う。

 虫は背中から生やした触手を不規則に揺らしながらこちらの出方を伺っているらしい。


 ―ならばちょっと騙されてもらおうか……


 俺は土の構えを解く素振りをした。その様子を見て、虫は背中から生やした触手を一気に伸ばしてくる。

 まんまと騙されて攻撃してきた虫の触手を向かい討った。伸びてくる触手は思考加速と桐花様の加護によって、どう捌くべきかが見て分かる。


「〈無影の断ち〉」


 全ての触手を斬り伏せ、おまけに脚を全て切り落とさせてもらった。『死寄生』の脚や触手の切断面からは血液の代わりに死んだ蛆や蛭が雪崩出てくる。

 そこで丁度、付与魔法の効果が切れてしまった。なのであとは物理で殴るしかない。


「〈送りの断ち〉」


 まあ殴るといっても、ただ虫を真っ二つに割るだけの話なのだが。

 死寄生が真っ二つに割れて絶命した事によって闘技場を歓声が巻き起こる。


「……とりあえずか勝てたみたいだ」


 俺は死寄生の肉を踏み、本当に死んだのか確認する。踏まれた死寄生の肉は、グチュっとした感触があり、踏まれた部分はすぐにボトボトと崩れた。屍臭はしなかったが、別に甘ったるいシロップの様な香りが漂ってきた。

 シロップの香りはとても食欲をそそる様な香りだったが、目の前にあるのは崩れた虫どもの死骸の山。俺は死骸の山を背にしてその場から離れた。このまま匂いを吸い込んでいたら、虫の死骸を食らいそうになるから……

闘技場の魔物との戦闘は次回で最後(๑╹ω╹๑ )

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