57 門番
投稿するの忘れてた(°▽°)
ずっと同じ体勢で、全身が痛い。冷たかった石床はもう緩くなっていた。
「で、俺に何か用か……不死者達の王」
目の前にいる男は檻越しに俺を見ている。
「いや、大した事では無い。この後死ぬかもしれなぬお前に精々勝ち残ってみよと言うしか無いからな」
「勝ち残る……?それは一体どう言うことだ?」
俺の問いが可笑しかったのか、無表情だった男は盛大に笑った。しばらく腹を抱えて笑っていたが、やがて平静を取り戻して答えてくれた。
「なに、ただの俺の民達の為の暇潰しよ。もちろん俺の暇潰しのためでもあるがな」
「だから何のk――」
「では武運を祈ろう」
そう言って男は去ってしまった。勝ち残ると言う単語が気になる。それに民の為の暇つぶしと言っていた。だが、そう言って楽しみにしているわりには、男からは疲れているように見えた。
「出てこい」
「あいよ。で、こいつはどうするんだ?」
牢屋の枷を外され、また新しく枷をつけられながら言う。
「ふんっ、そんな――」
「王は拘束を解いておいてそのままにしろとしか言っていないのかな?」
「……さっさと行け」
「今度から獄中飯が美味しくなるなら」
俺は笑顔を崩さずにそう言った。苛立ちを抑えている兵士達は、強引に俺を繋げている鎖を引っ張ると、大きな広場に連れて行った。
「見るからに円形……周りには観客席……で、この広い足場の上は天井が無い」
兵士の目付きが厳しい。
「あー……別にここから出るわけじゃ無いよ?」
「……そうか」
兵士は単調にそう応えると、武器を運んできた。種類は長剣、短剣、刀、籠手、鎌、斧の六種類。選べと言う事だろう。
「遠距離系は無いのか……んじゃ一度使ってみたかった鎌で」
そう言って大きな鎌を手に取る。ズッシリとした重量感。扱えるかは不安だけれど……問題無い。
『さーて、お待たせしました皆様!本日はお集まり頂き、誠に感謝を申し上げます。さて、いきなりですが今回は、絶滅されていたと言う骸鬼と!あらゆる挑戦者をねじ伏せてきた我らが門番!』
やけにテンションの高いナレーション。だが、今広場にいるのは俺だけだ。門番と呼ばれている何かは見当たらない。だからあたりを見回していると、空気が重く振動した。その振動を感知した観衆は大盛り上がり。どうやら今、向かい側の大きなゲートから登場するらしい。
「グォォォォオオオオオ!!!!」
重く、猛々しい咆哮を上げながらそれは陽の光を浴びて姿を見せた。象のような大きな両足、胴はサイに似ている。両腕はそのまま化け物の様に大きく、人の様な手の指は5本あり、どれも爪は黄ばんでいた。顔は角と一体化している様で、口は小さく、はしたなくそこから涎が溢れ出ている。目は両側面に三個づつあった。肌は全体的に灰色で、見た感じの感触はゴムの様にブヨブヨしていると思われる。
俺は静かに鎌を構え、門番を見つめる。お互いが先手を取るために様子を伺っているのだから、この静寂は心地良い。この緊張感は癖になりそうだ。もともと戦う術は、この世界に来て身に付いた物だが、すんなり馴染んでしまったようだ。
「グルルルルゥゥ……グウォン!!!!」
両手を地面につけ、俺を狙う門番。はじめに動いたのは奴だった。犬が駆ける様に突進をしてきた門番は、俺を薙払おうと片腕を振り上げた。
「先手は取られたか……っと」
門番の腕が側面から迫る。俺は少し、立っていた一から数歩前に出て大鎌を振り上げた。
その時にはもう、門番の掌は俺が先程立っていた位置に来ている。
「ヴァウゥウ⁈」
俺が振り下ろした大鎌の刃は、門番の手首を的確に引っ掻いた。
「ブヨブヨとした肌とはやっぱり相性が悪いなぁ……」
それでも俺は攻撃を止めない。引っ掻き傷を負わされた程度で門番は動じないからだ。
奴はだらし無く涎を垂らしながら再び殴り掛かる。後ろ足だけで己の身体を支えるように立ち、今度は俺が攻撃していない方の腕を振り上げた。
「……駄犬みたいに涎垂らすとか気持ち悪いな……お前」
だが、その腕は振り下ろされる事はなかった。腕が落ちたからである。
「ゔぁう?」
切断されたのに、門番は痛みでのたうち回らない。しかも、自分の切断面を直接触って確かめている。
「痛覚は無いのか……」
もう傷口を弄るのは飽きたのか、奴はまたこちらを目掛けて突進してきた。
「けど、こちらとしては都合が良い……!」
口の端が釣り上がっている感覚がする。こういう楽しい命のやり取りというものはやっぱり生きている実感を感じさせてくれる。
大鎌に〈付与魔法:毒〉を掛けて大きく薙ぎ払う様に構える。内側を向いた刃が丁度門番の方へ向く様に後ろに回し、駆け寄る。助走から徐々に脚へ力を込めて接近する。
門番の突進は地面を揺らすが、そんな些細な揺れは問題ない。
「蠱毒よ……彼のモノの身体を蝕み、生を侵し、永遠なる死へと誘い給へ……」
口から零れた詠唱。所持していない記憶から無意識に口ずさんだそれに自身で驚いた。だが、記憶を確認する時間は残されていない。力いっぱいにスイングされた大鎌がもう、門番の腕の切断面に突き刺さってしまったのだから。
門番くん?ちゃん?の名前絶賛募集中(๑╹ω╹๑ )




