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俺の転生体は異世界の最凶魔剣だった!?  作者: まさみゃ〜(柾雅)
三章 神を冒涜する腐敗都市
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53 聖女さん……(汗)

 忌まわしき狩人らが生き絶えたのを確認して、俺は一応奴らの腕を回収する。牙だと他の魔物と間違えられそうだと思ったから腕にした。回収した片腕を境界(スキマ)に入れる。


「やっと帰れる……ん? アトラ、森の奥がどうかしたのか?」


 森の奥を向きながらただ小刻みに震えるアトラ。何か近づいているのか?


「羽音とかは聞こえないから忌まわしき狩人ではない……じゃあ何だ?」


 アトラはプルプルと震えていると、耐えられなくなったのか俺の背後に回り、近づいていると思われる何かから隠れた。


「△※●ガッ◆ベギュ※☆◁ヴォガ!」


 会話声と思われる大きな鳴き声が聞こえてくる。揺れている木の幹が近づいていることから競争をしているのだろうか?


「ヴォ※ガ▲◇ー★ー!!!!」


 一着目の魔物が雄叫びをあげる。その後からも似たような鳴き声で合計六匹森から現れた。


「ハハッ……何でまた…………そもそもこの奥って不死者の楽園みたいな所だろ? それなのに何でニャル様の眷属とかが……」


 ゼリー状の組織で構築された灰白色の(ヒキガエル)の様な見た目の魔物。目はないが、代わりに触覚が発達しており、さらに厄介なのは知能の高さ。彼ら【ムーン=ビースト】は夢の国の月の裏に生息しているはずなのだが……


「おイ"ニんゲン。いばズguコノ場、お、ばナゲロ! ざずれば、ミドがづでbやル」


 辛うじて会話ができるのか……しかし逃げろ…ねぇ…………


「んじゃ、お言葉に甘えさせてもら――」


 お言葉に甘えて逃げようとした時、突如ムーン=ビーストらの肉片が飛び散った。


「なっ!?」


 一瞬のことで驚いたが、彼らの背後には彼女がいた。


「も〜、探しましたよケイトさん」


 少し不満げな表情でキリカは近付いて来る。


「あはは、ごめんね。さっきキリカを連れてこようと思って戻ろうと思ったら、さっき足止めを食らってね。ありがとう、キリカ」


 頬を膨らませている彼女の頭を撫でる。サラサラとした手触りで撫でやすい身長。顔が赤くなっているのが想像できるほどに耳が赤くなっている。


「あの〜……ケイト(ご主人)様? 私も居るのですが……」


「あ、シャヌアも居たんだ」


 しまった。反応の仕方を間違えた。

 シャヌアは、聖女が浮かべていい表情を現在していない。これはモザイクが必須だ。


「その冷たい反応はご褒美でございますぅ!!」

「シャヌアちゃん⁉︎」


 あ、キリカとアトラが驚いている。

 確か、キリカがシャヌアの本性を知るのは今日が初めてか。それまでは読む本の種類しか知らなかったはず。

 仕方ないのでこのままこの聖女を罵る事にした。


「何喜んでるんだこの駄目聖女が。自分の貞操も守れないで清楚系を演じるなよ?教祖や牧師に(ピー)されまくってこの(ピー)乱聖職者が」


「はぃぃ! 喜んで申し訳ないですぅ!」


 そこに落ちてた手頃なひのきの棒で足を叩く。もちろん跡が残らない様に。肉体の内側には結構衝撃が来る様にしたけど。


「それにしても……なんでこんな奴の種族が天使なんだ………?」


「そ、それは私……にも分かり…ません………」


 はいはいキリカさん。貴方みたいな可憐な少女が叩かれて喜んでいる駄天使を羨ましそうな目で見てはいけませんよー。


「そうか……じゃぁ仕方ないしこのまま戻らずにこの森を進もうか」

「ど、どこが仕方ないのですか!?」


 今日のキリカは活発だと思う。ここは適当な理由でも言って誘導しよう。


「だって、俺が今受けている依頼があの勇者(笑)と同じなんだもん。早く森を突破して《腐敗都市:ゴモラ》に向かわないと合流しちゃうし」


「ならば行きましょう。すぐに行きましょう」


 そ、そんなにあの勇者くんが嫌いなのか……勇者(笑)くんざまぁ。

 そんな訳で、俺とキリカとアトラ、それとおまけにシャヌアの計三人プラス一匹で森を突破することにした。


「っと、向かう前に……」


 最近サナから教わったある事を使って下準備っと……






















「森が……騒がしい?」


 確か人間どもの集団を彼の方が配置したナイの眷属のムーン=ビーストや、忌まわしき狩人らが応戦し、全滅させていたはず。けれど、この音は人間が彼らを殺っているようだ。


「おい、そこのお前」


「はい、何でしょうか我らが()


 ちょうど近くにいた、猫の獣人に似る姿の猟屍鬼(グール)に声をかける。彼を含めてここの民草は、俺を神として信仰している為、命令を下せばその通りに動く。


「森の様子を見てくれ。お前なら、ムーン=ビーストや忌まわしき狩人らに襲われない様に遂行できるだろう?」


「御意に。森と言えば、確かに今朝から少し騒がしい様でしたね。では」


「ああ、くれぐれも見つかる様なことはするなよ?」


 俺がそう行った頃にはもう、猟屍鬼の存在も姿も消えていた。彼ら猟屍鬼はもともと、食屍鬼(グール)以下の存在である下位食屍鬼(レッサーグール)の亜種、食屍獣だった。主に野犬型が多く、猫の食屍獣は珍しい。夜にしか活動できない彼らは食屍獣と見破られない様に、〈隠蔽〉と〈変装〉のスキルを持っている。俺がこの地に降り立った時、獣とは言っても一種の屍鬼なので勿論俺を信仰した。だから恩恵として失われた進化先を与えると、更に信仰を深めてくれた。お陰で俺の力は他の奴らと差を大きく広げる事に成功した。


「……森の方が何やら騒がしい様だが…………」


 欠伸をしながらあのお方が姿を現わす。嗚呼、貴女様はいつ見てもお美しい……


「今、猟屍鬼に調査を頼みました。猫の猟屍鬼なのでそう簡単に見つからないと思われます」


「そうか……それにしても猟屍鬼とは懐かしいな?もう存在しないと思ったが?」


「信仰を受けた身、力を無償で貰うにも些か抵抗がありまして……王とは民の為に有ります。神として崇められていたとしても、王として民に恩は返さねばなりません」


 そこに、先ほどの猟屍鬼が戻ってきた。


()よ、」


「おお、ご苦労様。それで何か分かったか?」


 突然現れて少し驚いたせいか、素が出かけた。


「ええ、それが……」


「どうしたのかえ?」


「いえ、その……裏切り者かと思われます」


「何だと? 俺の民草に裏切り者だと?」


 裏切り者と聞いて、俺は体がかっと熱くなるのを感じた。怒りが腕に集中し、玉座の左側の手摺を粉砕してしまう。


「いえ、あくまで可能性で御座います。人間の女二人を連れていたので私はそう思いました」


「つまり、人間二人を連れる食屍鬼は移住の為に俺への供物かも知れぬ……と」


「いえ、食屍鬼ではなく……」


 食屍鬼ではないだと?では屍鬼なのか?


「食屍鬼でないのなら何だ?屍鬼か?」


「いえ、食屍鬼でもなく、屍鬼でもなく……骸鬼です」

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