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俺の転生体は異世界の最凶魔剣だった!?  作者: まさみゃ〜(柾雅)
三章 神を冒涜する腐敗都市
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52 いざ腐敗都市へ

 今日は授業がない休日。学園の寮に居ても暇なのでアトラと一緒に街へ出かける。決闘以来、勇者とはあまり絡みが無く、ごく平穏な日常が緩やかに流れていた。

 街はいつも通り人がたくさん行き交っていて賑わいを見せているが、最近はどこか様子がおかしい。何かを噂するような雰囲気が漂っている。


「あーあ、結局お前の母さんには満足されなかったよ……」


 冒険者組合(ギルド)に向かう足幅は一定。あの決闘が終了した後、俺の戦い方がお気に召さなかったのか、アトラク=ナクアからは記憶に関して何も教えてもらえなかった。


「それにしても……なんか変な感じだな」


 いつもなら昼間も酒を飲んで酔っ払って賑わっている冒険者組合が、今日は物寂しい。酒を飲んでいる人がいたとしても、独りで物静かにしているのが少なからずいる程度。


「なんか……空気が重い……」


 活気のない冒険者組合の受付に向かうと、受付嬢のサーシャさんまでも元気がなかった。


「あの……」


「あら? ケイト様こんにちは。今日はどういったご用件で?」


 俺が声をかけると一気に営業モードになった。ただ、元気が無いのは変わりない。


「いえ、特に暇なので来てみただけです。ところで、どうしたのですか? 活気がないみたいですが……」


 俺の質問はどうやら聴いてほしそうな内容ではなかったらしく、質問の内容を聞いてサーシャさんは少し困った表情をした。


「いえ、特に……」


「そうですか、では手頃な依頼でも受けますね」


「依頼ですね、ケイト様の今のランクだとこれらが良いでしょう」


 さ、流石受付嬢さん……すぐに用意してくれたよ………えっと、依頼の内容は……


 ◆ダンジョン《腐敗都市:ゴモラ》の調査

 ◆ダンジョン《腐敗都市:ゴモラ》周辺の森林調査

 ◇屍鬼(ハイ・グール)の討伐

 ◇食屍鬼(グール)10体の討伐

 ●薬草採取


 ほとんど不死者(アンデット)系かよ!


「あ、アンデット系が……多いですね………」


「あら? そうでしょうか?」


 あー……うん。これはあれだな。この辺に関する所で何か問題が起きたんだな。


「まぁ取り敢えず薬草採取以外全部受けます。期間の方は……」


 その台詞を待っていました! と言わんばかりの表情にパッと変わったサーシャさんが、質問に答えてくれる。


「今回のは諸事情があって期間は特にございません。しかし、あからさまに依頼を達成しようと言う様子が見られない場合は……いえ、ケイト様なら問題ないでしょう。ただ、一つだけ忠告しておきますと、この依頼は勇者様も受ける予定のものですので、くれぐれも無礼の無いようよろしくお願いします」


 そう言ってサーシャさんは調査系の依頼二つを指差す。


「ええ分かっていますよ。彼の邪魔は(・・・)しません」










 さてやってきました、ダンジョン《腐敗都市:ゴモラ》周辺の森。


「結構静かな森だな……」


 特に目立つ匂いはしない。ただ広く仄暗いだけの森林に見える。植物に異変はない。普通に歩いていても、怪しい影は見えない。


「なぁアトラ。お前は何か気になるところとかあるか?」


 懐に抱えているアトラは、前足で森の奥を指差す。指差された先を目を凝らして見るが、ただ暗いだけで何も見えない。


「確かこの森の先はダンジョン扱いなんだっけ? しかもアンデット系の……一度戻って二人を連れてくるか」


 森に背を向けて学園に戻ろうとした。だがその時、森の方から羽音が聞こえた。


「羽音? 貰った情報だと不死者が彷徨っているはずなんだが……」


 振り返って見ると、森の方から赤い眼を輝かせて来る何かが集団になっていた。


「はぁっ!? ちょっと、くっそっ」


 急いで走るが、着々と距離が詰められている。徐々に大きくなっている煩い羽音。流石に逃げるだけでは生存できる確率が低い。

 だから俺は、刀を抜き構えた。


「来い!」


 物凄いスピードでこちらに向かって来る羽音の正体は、生前の世界の本で見た魔物だった。

 翅は蝙蝠の羽のような形をして、胴体は黒い芋虫を連想させる。その胴体から鎌のついた二本の腕を生やし、腹部にめり込まれた顔がある。顔に付いている眼は四つでどれも赤く、口からはみ出ている犬歯にあたる牙は暗紅色の血で汚れていた。


「ッ――――!!!!」


 刀は構えた。けれど、刀を使うとは言っていない。

 スキル〈音響砲(ハウリング)〉が金属を引っ掻いたような音を上げ、奴ら【忌まわしき狩人】の動きを麻痺させる。その後、仕上げとして毒を撒き散らす。


 [スキル〈毒吐息(ポイズンブレス)〉を入手しました]


 遊び半分で口からドラゴンブレスの様に毒を撒き散らしただけなのに、入手してしまった……反省はしていない。


「ハハッ……スキル入手しちゃたよ…………」


 毒で地面に落ち、忌まわしき狩人らはのたうち回っている。とても苦しそうだ。


「………………」


「…………」


「……」


「…ふははは、いい気味だーー(棒)…………」






「こちらが勇者様への指名依頼になります」


 勇者様は依頼の紙を受け取る。


 ◆ダンジョン《腐敗都市:ゴモラ》の調査

 ◆ダンジョン《腐敗都市:ゴモラ》周辺の森林調査


「ふーん。で、調査中にダンジョンのボスとか倒しちゃっても良いの?」


「それは構いませんが、あくまでも“調査”なのでオススメはしません」


 このクソガキ……さっきの男の子の方が愛嬌があって良かったわ…………彼の後ろにいる(肩まで黒い髪の毛がの掛かっている)女の子も大変ねぇ……


「それはそれで……受付嬢さんのお名前は?」


「ちょっと貴方!」


 勇者様が私を口説こうとした時、後方の女の子が止めようとしてくれる。

 けれど、その心配には及びません。


「申し訳ないのですが、ここは依頼に関係の無い事を訊く様な場ではございませんのでお答えできません。私が休みの時は街で買い物をしているので、運が良ければ会えますよ?」


 作り笑顔を浮かべて私は答える。


「ええ〜俺さぁ、エルフの女の子が好みなんだけどなぁ〜」


 何このガキ気持ち悪い。ケイト様の方が紳士で素敵ね。でも、側には白戦姫と聖女様が居るのよねぇ……


「良い加減にしなさい! 受付嬢さんが困ってるでしょこのバカ勇者!」


「イッテ! 殴る事ねぇーだろ!」

「すみません、このバカ勇者が! ほらあんたも迷惑かけたんだから謝りなさい!」


 お、女の子……強い…………

 女の子と口喧嘩しても負けることが見に見えたのか、勇者何も言わずにこの場を去った。おそらく依頼を遂行しに向かったのだろう。


「はぁ……本当にあのバカ勇者が…………あ、私は律子と言います。先程はあのバカ野郎が迷惑をお掛けしました……」


「リツコ様……ですね。私はサーシャと申します。先程の勇者様の件はありがとうございます。ところで私に何か訊きたい事がある様ですが?」


 長年、受付嬢をやっていたから分かることではあるが、この子の様な可愛い子が驚く顔を見たくてつい言ってしまう。


「えっ? 分かっちゃうんですか? 凄いです! あ、でも依頼とは関係の無いことなので……」


「大丈夫ですよ。あれは対ナンパ用です」


 私は笑顔で答える。

 あーもう超良い子!可愛いし、丁寧で!あの勇者とは釣り合わない!


「そうなんですか。凄いですね! あ、それで訊きたいことなのですが、人を捜していまして……」


「人捜し……ですか?」


 少し顔が赤いけど、好きな子なのかしら?


「えっと、名前は『ケイト』って言う男の子なのですが……冒険者登録されていたりしますか?」


「ケイト様ですね、少々お待ち下さい」


 私はケイトという名前に該当する冒険者の情報を探す。そして一つだけ引っかかった。彼は私の知る人物だった。


「ケイト・オリサカ様でしょうか?」


「はい! それで彼は今どちらに!」


 表情がパッと明るくなった。ははーん、つまりそう言う……


「先程、此方にいらっしゃいましたよ。おそらく今は勇者様の向かわれた場所に居ると思われます」


「《腐敗都市:ゴモラ》ですね! ありがとうございますサーシャさん!」


「いえ、また困った時はいつでも相談に来て下さいね!応援しています!」


 私がそう言うと、リツコさんは顔を赤く染めた。あーもう可愛い!

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