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46 魔王の早すぎた再誕

お待たせしました!

徐々に元のペースに戻せるように頑張ります_:(´ཀ`」 ∠):

 疲れた。ただ疲れた。意味の無い怒りの様な冷たい苛立ちは既に収まり、俺はただその場に突っ立ていた。


「呆気ないなぁ……ただ痛みが続く毒だけなのに五分も経たずに消えちゃったよ………」


 イゴールナクはアトラク=ナクアの最後の様に、青黒い粒子となって消えてしまった。これで今回の首刈りの事件はそのうち収拾がつくだろう。俺はその事件には関与していないから知らない。そうなればあとが楽だ。断じて、黒幕が分かったらかイゴールナクを苦しめながら殺そうとした訳ではない。そこを間違えないで欲しい。


「さて……起きろ」


 床にうつ伏せになりながら倒れている天使、もとい聖女さまの胴体を踏みつける。しかし、全く反応がないので俺は溜息を一つ吐いてから足を退かし、再び踏みつける。ちなみに今度は少し強め。


「おい起きろ」

「んあっ♡」


 強く踏んだことによって、聞いてはいけないものを聞いてしまった気がした。血の気を引く様な思いをしながら確認としてもう二、三度踏んでみた。


「あっ♡んっ♡んふっ♡」


 恐る恐る聖女の顔を覗いてみると、それは幸せそうな表情で満ちていた…………いや、気持ち悪⁉︎


「ぐへへへ……もっと…もっと私を踏んでください!」


 そう言って聖女は勢い良く飛び起きる。しかも、背中から生えている翼を利用して。


「黙れ変態」


 咄嗟に聖女の頭頂に拳骨を落としてしまった。その所為か、聖女は幸せに満ちた表情で気絶していた。いや、もう聖女って呼べないや。

 俺はシャヌアを背負い、何処からこの空間の出口は無いか見渡す。しかし、ここは扉らしき物はない閉鎖された空間だった。


「出口は無いか……」


 困ったものだ。今すぐ戻ってアトラを愛でたいのに……


「あれ? そういえばメリアさんは?」


 今居るこの空間に来るまでの記憶が無い。確か気色悪いあの白い霧に包まれて……


 ――ピキリッ

「っ!?」


 突然、目の前の視界に亀裂が走った。そして前触れもなく窓ガラスが衝撃を与えられたように空間がパリーンと、甲高い音を立てて砕けた。そしてそこから、仔犬サイズの白い影が俺を目掛けて飛び出してくる。


「アトラ!?」


 俺の天使、アトラク=ナクアの娘だ。どこぞの変態な天使みたいな奴とは違い、俺にとっての正真正銘の天使。

 割れた空間の穴は景色が変わり、教会の入り口の扉前の景色だった。その景色には、横になっているメリアさんとキリカが写っており、とても安心した。


「ありがとう。アトラ」


 優しく撫でながらこの仔を褒める。気持ちよさそうに俺の懐にしがみつくアトラごと、聖女を負ぶりながらアトラの来た道を引き返す。

 確認の為、境界から顔を出してみるとちゃんと外に繋がっており、安心した。顔を引っ込めて今度は右足から出す。右足が地面を踏んだことを確認するとそのまま上半身と一緒に一人と一匹、左足を境界に潜らせた。


「ケイトさん!」


 境界から出た瞬間、キリカの声がしたのと同時にお腹辺りに鈍い衝撃が訪れた。キリカが抱きついて来たのだ。

 俺の懐にしがみ付いていたアトラは、キリカがぶつかる前に俺の頭上に避難していた。


「心配していたのですよ! アトラちゃんが急に飛び出して教会に向かったと思えばメリア様が教会の扉の前で横になっていて、中を探してもシャヌアちゃんとケイトさんが見つからなかったのですよ! 本当の心配したのですから!」


「はは……なんかごめんね………」


 そんなに心配してくれていたなんて嬉しいと思ったが、同時に申し訳なさもあった。誰かに気にかけられたことはあるが、キリカほどの心配はされた事が無かったから新鮮だ――


「ゔっ……」


 突然、頭に強い衝撃が走る。視界が少し砂嵐がかかったように鈍くなり、ノイズもうるさい。そして視覚情報が完全に砂嵐で覆われると、今度はアナログテレビの様に映像が流れ始めた。

 音声は相変わらずノイズが邪魔で聞き取れない。映像も砂嵐が殆どで、少し人型や動物が動いているような薄い影が見えるくらいだ。ただ、最後の最後でノイズも砂嵐も止んだ。



 音の無い、かつて暮らしていた空間に、鮮血色の水溜りが広がる映像………



 ―………さ…! ケ………ん…ケ…トさん!


 誰かが何か叫んでいるような声が聞こえる……


 ―ケイ…………イトさ…! ケイト……!


「ケイトさん!」


「っ!?」


 誰かに呼ばれていたかと思えば、キリカに呼ばれていたようだ。


「先程からどうしたのですか?」


「いや、様呼びからさんに代わって懐かしいと思っていただけだよ」


 俺は笑顔で誤魔化しながら、先ほど見た映像を忘れようとした。


「そう…ですか……いえ、それなら嬉しいです」


 不安そうな表情をしたキリカであったが、すぐに笑顔で応えてくれた。


 [称号〈神にし(The world )て世界(of The god)〉を贈呈されました]

 [スキル〈魔王(Satan)【封印】Ⅰ〉を入手しました]


「っ!?」

 ――はぁっ?!


 変なものを贈られた。詳細は後で確認しておこう……


「さて、学園に戻ろうか」


 俺はすぐに笑顔を作り、メリアさんを背負いながらキリカと学園へ向かうことにした。アトラは自分で作った境界を修復し終えると、すぐに俺の所まで追い付き懐にしがみつく。シャヌアはと言うと、キリカに起こしてもらい、自力で歩いてもらっている。だってキリカやメリアさんより重いんだもん。


「シャヌアちゃん、もう大丈夫ですか?」


「え、ええ。ちょっと記憶があやふやですけど大丈夫ですよ」


 俺の前方には友人関係が良好な二人……


「猫被らなくても良いぞー、せいじょさま」


「っ!?」


 俺の台詞で動揺するシャヌア。足が止まり、ジッと固まっている。あ、決してあの二人の中の良さに嫉妬したわけじゃ無いよ?ただ、ちょっとしたいたずら心でだな……


「ふふっ、そうですシャヌアちゃん。ケイトさんが居てもいつも通り砕いた口調で大丈夫ですよ」


「俺があんたが猫を被っていると言ってもメリットがないからな〜」


 よしよし。キリカには嫉妬していたことがバレて居ないようだ。


「それにっ」

「はぁっ!?」


 キリカは突然、俺の下へ来ると胴に抱きついて来た。


「ケイトさんが寂しがって居ますからね!」


 俺のお腹辺りに少し顔を埋めていた麗しき少女は、とびっきりの笑顔で俺の内心を言い当ててしまった。

 俺の動揺を見てシャヌアが笑う。俺を動揺させる事に成功したキリカが笑う。


 ――嗚呼……こんな時間が欲しかったのか………


 学校からの帰り道。◼️◼️と一緒に楽しく騒ぎながら己がそれぞれの家路を歩む。


 ――邪魔するモノは……◼️さないと



 ―第2章 了

スキル〈魔王〉

ここだけの話ですが、このスキルは主人公は一切使いません。ただのあるだけのスキルです( ˘ω˘ )使い方は結構後に明らかになります

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