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42 霧

( ・∇・)今回のボス戦はぁぁぁぁぁ……(°▽°)誰だっけ?

 依頼を終えたことをギルドに伝えました。序でに、エンカウントした魔物や洞窟オークの肉の買取も行いました。お陰様で懐がとても熱いです………はい。けれど、


「よくよく考えたらお金にはそんなに困ってなかったんだった……」


 ギルドの方々には驚かれたけれど気にしない。さっさと自分の部屋に戻って寝たい。

 アトラは、俺が洞窟に潜っていたり、野営していた時はほぼ森に放っている状態だったから泥まみれだ。後でちゃんと綺麗に洗わないと。


「では、メリア様の事はお願いしますね。私はアトラちゃんと一緒に先に学園に戻っています」


「ああ、分かった。じゃあ、ついでにアトラは洗っておいてくれると助かるかな。俺はメリアさんを様子の変な聖女様と一緒に送ってくるよ」


「…………」


 今朝から少し様子がおかしい聖女様の手を左手で引きながら、俺は未だ寝ているメリアさんを背負い、例の教会へ足を進める。

 早朝なので、街路は人気(ひとけ)がなく静まり返っている。無駄に足音が街路に木霊して、あたかも世界から隔離されたような静けさに呑み込まれている気がする。陽は上がっているようだが、雲が空を覆い被さり、気温が低い。








「……よ……っ………て……………く」


 教会に近づくにつれて、何かが聞こえる。そして俺が今、手を繋いでいる聖女様の口からもその何かが聞こえる。

 だが、いくら耳を傾けて、良く聞き取ろうとしても、言葉として変換されず、音にしか聞こえない。


「五月蝿い……」


 不思議な事に、教会周辺の住宅から声で起こされている者は誰一人いない。けれど、気にする必要はないかな?空耳の可能性もあるし。

 空は仄暗く、雲が覆い被さっているようだ。なので、太陽が今どの辺りまで上がっているのか分からない。それに、風が一陣も吹かないので、耳元には弱い風が当たる音すらしない。


  コツ…コツ…コツ…コツ――


 するはずのない音が響く。音の高さからして、杖の音だろう。しかし、そんな物を持っている人は見回しても居ない。

 聖女様も相変わらず頭を俯けて、俺に手を引かれている。

 無言がこの時間を支配する。言葉に聴こえない声を聞くたびに、言葉を失う。それは、聞いていてそうなるのではなく、言いたくないのだ。それに、変な感情を刺激してくる。言葉を発した瞬間、自分が自分で無くなるのが嫌だから黙る。

 黙り、黙って、黙々と白い教会を目指す。地図では普通ならつける距離のはずなのだが、未だ到着しない。


「……ぃ……や………………」


 音が止んだ。やっと止んだ。耳障りな音が止まった。雑音が消えた。意識が鮮明になった。

 そして教会にたどり着いた。

 未だ、俺の背で眠るメリアさんを取り敢えずそのまま背負い、教会の敷地に入る。


「……開かない」


 どうやら教会の入り口はまだ閉まっているようだ。なら仕方がないのでノックして、修道士を呼ぶ。


「…………」


 が、誰も出てこない。そもそも、扉の向こうから人の気配を感じない。扉に耳を当てても、何も聞こえない。


「どうしたんだ?……――っ⁉︎」


『女破壊血金肉男殺金地位破壊破壊破壊血金金金金飯肉肉女男男男男金殺殺金地位快感色破壊優位目血干水水姦女女女女女女女女女女口飯力酒殺酒酒酒地位子宮金金金体名声金栄誉女女男殺男女男嬲水食楽楽酒遊地位昇進快感鼻口色地位破壊血干干干姦姦姦姦水水骨嬲男金金名誉栄誉英勇勇者勝利力力酒栄誉水英雄地位力勇者王勝利王支配支配子宮目目目脚骨脚生破壊生金楽水鼻食……』


 突然、背後から異様な鋭い気配を感じた。勢いよく後方を確認すると同時に、振り向く時の遠心力を利用しで素手で横薙ぐ。しかし誰もいない。空を切った腕を下ろしジッとする。

 首筋から伝われる冷や汗が気持ち悪い。邪魔なので、負ぶっていたメリアさんを一旦下ろし、寝かせてから気配を探る。


「何も……おかしな所は…ない?」


 誰も居ない。左側も、右側も何もおかしな点は見当たらない。何も無かった。普通に加工された石の街路。霧で視界が悪くならないように灯される街灯。何も変な所はない。

 振り返るが、普通に教会の扉があるだけだ。そう、普通の教会の扉だけ。扉だけ?メリアさんは?あれ?左手で握っていた聖女様の右手は?聖女様は?居ない。誰も居ない。何処だ。何処だ。何処だ。何処だ。何処だ何処だ何処だ何処だ何処だ何処だ何処だ何処だ何処だ何処だ何処だ何処だ何処だ何処だ何処だ何処だ何処だ何処だ何処だ何処だ………


『金力肉男女姦権力地位勇者英雄栄誉脚色血干水骨嬲財破壊生殺酒遊……』


 五月蝿い!何処だ此処は。メリアさんは何処だ?聖女様は何処だ?霧が濃い。見えない。かゆい。霧が肌に触れる度、何かが揺れて気持ち悪い。ドス黒く醜い、粘性をもつ何かが体の中を蠢く。

 冷や汗が止まらない。俺は焦っているのか?何に?分からない。分からない分からない。


「ヤバイ……吐き気が………」


 視界が歪む。暗くなったり明るくなったり、景色が点滅する。霧が徐々に濃くなり、街灯の明かりがウィスプの様に揺らめいている。身体中に何かが纏わり付き、身動きがし難くなってきている。どう動いても身体が重くなる一方だ。

 指先や足の爪先から徐々に感覚が消えてきている。寒い。寒さが気持ち悪い何かと一緒に纏わり付き始める。泥が。汚泥が纏わり付いてくる。服が肌に貼り付く。裾に重さを感じる。体温が吸われる。教会の扉も教会の建物も、街路も見えない。独り?イヤダ。独リハイヤダ。イヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダイヤダ…………


「グッ!」


 後頭部に物凄い衝撃が走った。それで脳震盪を起こしたらしく、俺の視界は一気に暗闇に包まれ、意識は何の抵抗もなく霧散した。

(°▽°)ボス戦はまだ今度ですな

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