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40 洞窟オークの殲滅依頼の終了と◾️◾️教

おや?本文の様子がおかしいぞ?

 聖女は言った。「何故、貴女が生きているのか?」と。ハッキリ言った。それは冗談では無く、真面目に。そして神妙に言い放った。















 メリアはシャヌアを幼い頃から知っている。

 自分が経営する教会の、その祭壇の上で突如現れたシャヌアの幼子おさなごの時から。

 あれはもう十五年もの前の話だ。

 新芽の月。7日目の早朝。メリアは日課である朝の礼拝をしに、教会の礼拝堂の一室に入った。日の出と共に起きた為、部屋はまだ暗い。しかし、彼女は慣れた足取りで崇拝する神を模した石像の前まで歩み寄り、跪く。静寂が占める空間でメリアはただ独り、両手を胸元で編み、祈りを捧げる。そして、次第に陽の光がステンドグラスを透過し始めた。

 色鮮やかなステンドグラスの影は次第に礼拝堂の空間を彩らせる。その光景は神秘的と言う表現には劣るが誰もが見惚れるものだろう。


「……っ!?」


 突如、メリアが祈りを捧げている時に眩い光が礼拝堂を包み込んだ。それは何の前ぶりもなく、陽が丁度、メリアから見て太陽を模したステンドグラスとピッタリ重なった時だった。

 一、二分ほどしてやっと光が収まった。その間、何故か礼拝堂には誰も駆け付けて来なかった。


「……すぅ…すぅ………」


 幼い子の様な寝息が礼拝堂に響く。

 突然現れた寝息にメリアは戸惑うが、それが自分たちが崇める神、◾️◾️◾️◾️の姿を模した石像の前からだとすぐに分かった。彼女が石像の足元に目をやると、六、七歳ほどの幼い、純白の(はね)を生やした金髪の少女が丸まって寝ていた。

 メリアは慌てて少女に駆け寄るが、目立った外傷は無く、また、状態異常の類も見られなかった。少女の種族はおそらく天使だろう。だが、神界に属する彼らが下界と呼ぶこの世界に、幼いまま降りてくることは全くと言っていいほど無い。


「っ!? はい……◾️◾️◾️◾️様の御心のままに」


 メリアが慌てていると一つの神託がおりた。それは“彼女を◾️◾️なさい”。メリアは懐からナイフを取り出すと、刃を下に向け高く翳す。そして少女に向かって振り下ろした。





























「あ、メリアさま〜」


 メリアが教会の営む孤児院に訪れと、少女が駆け寄り、抱きつく。名をシャヌア。あの純白の翼を持った天使の少女だ。

 メリアはあの時、少女を◾️◾️なかった。いや、◾️◾️なかった。

 あの時、振り下ろしたナイフは確かに少女の首を捉えた。が、メリアはナイフの矛先を少しずらし、少女を◾️◾️なかった。


「最近の孤児院はどう? シャヌア」


「みーんな優しくしてくれるよっ!」


 メリアは自分と同じくらいの身長になってしまったシャヌアの楽しそうな雰囲気に安堵しつつ、注意する。


「そうなの? なら良かったわ。あ、でも、誰にも貴女の翼は見せちゃダメよ?」


「約束のことは分かってますっ」


 シャヌアはメリアに抱きつきながら、約束を守っている事を伝える。

 楽しそうなシャヌアの声を毎日聞いて、メリアは嬉しくて幸せだった。こんな日々が長く、最期まで続いて欲しいほどに。










 しかし、幸せは有限である。

 有限故に、楽しい日々は『幸せ』に思える。

 ただ長く続く幸せは幸せではない。その幸せはただのまやかしで、楽しいと言う感情の延長にすぎない。

 そう、メリアは教会の中で『死んだ』。司祭を務めていた彼女は『死んだ』とされた。


 ――死因は謎の病。


 ただ教会の人間は、メリアの死について調べるのを拒んだ。それもそうだろう。

 何故なら…………

 メリアは現に、教会の地下に閉じ込められているのだから。



 人の欲は恐ろしい。理性が止められなくなった欲は、時間が経つに連れて肥大する。それはゆっくり、指の爪先からじっくりと侵食して。たった数ミリの侵食でもいくら欲を満たしてもその次に同じことをしても満たされなくなる。

 権力、金に対する欲はさらに恐ろしい。

 権力は強いが人を駄目にする。人は強さを求め、その強さで自身を守る。弱いくせに他者を蔑むものが権力を得てしまえばいずれ訪れるのは独裁。権力と言う名の力に呑まれ、自身が絶対とする傲慢さから道化に成り下がる。



 そして、その様な欲に漬け込む悪行の神がいる。しかし、アレは神ではない。邪神だ。

 毒と死を司る魔剣が討った、深淵蜘(アトラク=ナクア)と同じ幻神級の魔物だ。

 その欲に漬け込む邪神は、自分の信者に悪行を行わせる。暴行、窃盗、強盗、殺人、強姦、と、数え切れないほどの悪行を行わせる。そして素質ある者には、今の体が壊れた後に移る依り代にするのだ。その邪神の名は悪行神(イゴールナク)

 ただ、深淵蜘も悪行神もただの我へ辿り着くための鍵にすぎない………

 おっと、少し話しすぎたようだ。

 私は誰かって?それは今は知らなくていい事ですよ…………そう、『今は』ね……………………





















「はいはい。その話はまた今度にして今日はさっさと寝よう」


 空気が重かったので、俺は場の空気を変えるために声を出す。それに、もう仕込みは終わっているから明日は朝早く潜って死体を回収したい。


「…………そうですね。信じられない事で少し気が乱れていました」


「しゃ、シャヌアちゃんが気にする事ないですよ。それと、メリア様もご無事で良かったです」


 二人は先にテントの中に入っていった。


「ちょっと貴方……」


「なんですか? メリアさん」


 俺もテントの近くに寄ろうとした時、メリアさんに声をかけられた。


「その……さっきはありがとうね。久し振りにシャヌアに会えたわ………それじゃ」

「待ってください」


 メリアさんは俺に礼を言ってテントに入ろうとした。俺は、彼女が俺をぬかした所で声をかける。


「何かしら?」


「ちょっとだけ……話をしません? 明日は依頼を完了させた事を報告するだけですし」


 まだ足りない。まだ、この世界の情報が足りない。

 彼女は何か知っている。その内容を知るために必要な代償は大きいが、この世界をさらに理解するためには………

 何か、俺には情報がまだ足りない。その情報が何かは分からないが、知らなければきっと、後で大きな悪い何かがありそうで、その原因が俺である可能性が高そうだから。

(°▽°)あの語り主は誰だったのだろうか……

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