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38 洞窟オークの殲滅依頼3

そろそろストックが尽きる……

 辺りを凍らせる黒いモヤは、聖女様に纏わり付いている。それを纏っている聖女様はと言うと、ただの人形の様に虚を漂わせ、左右にゆっくりと揺らいでいる。


「け、ケイト様………シャヌアちゃんは…………」


「分からない。ただ、本能的にあのモヤは危険だと思う。それに、あの聖女様は今、何か違う気がする」


 そう、何かが違う。一見、ただ俯いて揺らつきながら何かをつぶやいている様に見えるが、あの黒いモヤの所為で異様に見える。

 幸い、今いる場所は跡地の近くにある森の入り口。いざ戦闘になった時、遺物に傷をつける心配が必要ない。それに、聖女様は未だその場から一歩も動いていないから大丈夫だろう。


「とりあえず……少し離れて様子見しよう」


 俺たちは聖女様をその場に置いて、森の中へ少し潜った。




 少しの間、森の中から様子を伺っていたが、黒いモヤ以外は特に何も起こらなかった。黒いモヤは次第に薄れてきている様だし、そろそろ隠れてないで出てきても良い頃だろう。

 俺とキリカが出てきた時に、丁度聖女様の周りに溢れていた黒いモヤは収まっていた。それに、黒く凍っていたはずの草花にも色が戻り、森の空気が軽くなった。今回の現象には謎が多すぎる。しかし、今はそんな事より殲滅か、拠点を作るか決めておかないと。


「シャヌアちゃん……大丈夫ですか?」


 キリカが突っ立ったままの聖女様に声を掛ける。


「はっ、いえ、大丈夫ですよ。ちょっと疲れちゃったみたいです」


 我に返った様な反応をした聖女様を見て、少し不自然に思った。だが、今は拠点を作ろう。疲れているみたいだし。





 拠点は簡単なもので、定員二人のテントと一人用の寝袋、それと焚き火セット。焚き火セットは予め作り置きしておいたスープを温めるのと、灯の確保のみに使用する。

 ここの魔物は火があるところにも近づくらしいので、魔物除けの結界を焚き火中心に聖女様が展開した。

 あ、スープは塩加減がちょうど良くて普通に美味しかった。


「さて、この後のことだけどどうする?そのまま凸る?一回休憩する? それとも、巣の入り口から予め下拵えとして強い麻痺毒を送り込んどく?」


「麻痺させる為の毒なんてあるのですか?」


「私は早く教会に戻れるのなら一番最後の案が良いと思いますが、私も麻痺させる為の毒は聞いたことがありませんね」


 桐花さん桐花さん。貴女は知っていますよね?まさかじゃないけど、戦闘用の技術しか知らないとか無いですよね?


「一応あるよ。でも、どうする? 一番最後の案でいいのか?」


 俺がそう聞くと、二人は首を縦に振った。ならば実行しよう。

 俺にとって初の依頼内容は確か洞窟オークの殲滅。以前、本の知識で得たオークは“豚頭族”と表記されていた。しかし、今回の依頼ではその表記ではなく、“オーク”となっていた。ならば、普通に豚頭族の方は交流があるのだろう。

 そんなことを考えながら俺は、依頼書に書いてあった場所まで一人で来た。二人は付いて行くと言っていたが、今回生成するのは危ないから、大人しく待ってもらった。


「さて、情報によればこの辺りの洞窟に……お、あった」


 入り口に松明が灯され、見張りをしているオークが二体いる。そう言えばオークって女性を攫うんだっけ?ちょっと心配だから一回潜入してみるか。

 思い立ったが吉日。俺は早速見張りを排除することにした。


「〈属性付与(エンチャント):毒〉、〈投擲Ⅰ〉」


 最近覚えた〈投擲Ⅰ〉を使用して、サナが貰って来てくれた投擲針二本に、テトロドトキシンを付与した物をオークの額に向かって投げた。

 こういうのに関しては俺には運が良いらしく、二本とも、一発で眉間に刺さった。そして二体ともすぐに倒れたので、死体から針を回収して侵入する。

 洞窟内は一定間隔に松明で明かりが確保されていて明るい。ただ、自然に生成されたところらしく、通路は入り乱れ、天井が高かったりしていた。


「た…………けて……」


「ん?」


 足音を殺して歩いていると、乾いた声が聞こえた。ただ、気のせいだろうと思い、俺はそのまま通過した。


「……た…す………て……」


 また聞こえた。さっきより、声が大きい。近いのだろうか?

 それにしても、何故か巡回しているオークがエンカウントしない。普通なら、こういう場所では巡回する個体がいるはずだろうに。

 俺は聞こえてくる音を頼りに足を進める。


「いやぁ……来ないでぇ………!」

「っ!」

 左の壁の向こうからそうはっきりと聞こえた。確かに少女の様な声が聞こえた。ならば、


「〈黒百合(クロユリ)〉」


 通路の壁に入り口兼出口を作る。斬り抜かれた壁は木端微塵に砕かれ、土煙をあげる。


「さて、予定変更するしか無いか」


 作った入り口から入ると、大広間に出た。作られた入り口の右隣には、声の主と思われる少女がギリギリ切断面の近くにいた。危なかったね(他人事)。

 突然の介入に驚いたのか、オークらは騒いている。


「ピギピギ、ピギピギと五月蝿いなぁ……」


「ニンゲン、オス、ドウシテ……!」


 カタコトだが、人語が話せる個体はいる様だ。ん、よく見ると人骨で作られた王冠?


「普通に見張りを突破して入った。巡回をさせなかったからここまで侵入を許したんじゃない?」


「ワレラ、ノ、タイセツナ、ギシキ、ヲ―――」

「はいはい、それはすみませんね。こちらとしては殲滅の依頼が来ているもんで」


 抜刀したままだった打刀(ウチガタナ)の状態の魔剣を納刀し、俺は構える。〈桐花の加護〉のおかげで、構えが何となくしっくりくる。

 完全に生き絶えた人族の女性らが腐り果てていたものがチラホラと見える。それに、助けに来たであろう人族の男性らの腐り果てたものもいくつか見えた。とても目障りだ。


「さて、一気に片付けたいところだけど……」


 少女の状態を確認する。腰が抜けている様で逃げられないらしい。そうなると、神経毒ガスのVXガスが使えない。

 一応確認として潜入しておいて正解だった。もし、あのまま入り口でそのガスを送り込んでいたら、ただの無差別殺戮だった。


「もう少しで解放する事が出来るから待っていて……」


「コロセ! サッサト、オス、ニンゲン、コロセ!」


 少女を背中に置いている俺に攻撃を仕掛けろと、偉そうな洞窟オークが他のオークに命令した。その一声で、オークの集団が、木の棍棒を振り回して突進して来た。

まだ依頼は続く……てかそろそろヤンデレをぶち込みたくなる…………だが我慢する私であった。

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