31 若作りは女性の基本らしい
(*)´꒳`(*)嗚呼……ストックが底を尽きそう…………
やっぱり、キリカは小動物みたいに愛くるしかった。
現在は宿屋。明日から編入だと言うのに、俺は夜更かし的な何かをしていた。
「なぁ、サナ」
『なぁに、ケイト。今、恋の行方が気になって仕方がないのだけれど』
おい、何してんの?この魔剣さんは。それ、100%俺の記憶だよね?ね?
まぁ、どうでも良いか。
「いや、結構どうでも良い事なのだけれど。俺たちってさ、結構生き物や武器を壊して魂を喰べたでしょ?」
『んーまぁ、私だけの時も含めて魂持つモノは沢山ね』
「それでさ、当たり前だけど馬とか狼とかの魂も喰べたよね?」
『勿論あるわよ。それがどうしたの?』
どうやら俺の考えが分かってもらえてない様子。
因みに俺の考えはこうだ。
以前、サナがバイトしてみた時の話をアトラク=ナクアから聞いたことがある。
その時、サナが本体に向かって魔力を流して短剣に変えたらしい。第三者からの映像的な何か付きで。
で、その短剣は、丁度俺の魂が喰われそうになった時の荒野に見た記憶がある。
そこで、
魔力を流して、喰べた魂の元をイメージすれば魔剣の形がそれに変化するのではないか?
と、俺は考えた。
「ちょっと本体を使って実験する」
『はぁ!? ちょ、ちょっと――!!』
まずは魔力を右腕に集中させる。イメージは体温を一箇所に集める様に…………よし、右腕だけ他と比べ異様に暖かい。
次は掌に。そしてそれを魔剣に送る…………その時にイメージするのは日本刀。しかもそれは、邪竜の魂と対面したあの場所で見かけたモノ…………
「うん、成功だ」
『何をしたの? 貴方』
そこに置いてあったのは、今まで扱い難かった片手剣の姿ではなく、鍔の無い日本刀の姿をした魔剣だった。
刀身の反り具合と艶、柄の長さと重さ…………
「うん、申し分の無い、美しい刀だ。大きさ的には……打刀かな?」
『ねぇねぇ、何をしたの?』
刀を持って構え、刀身を少しずつ横に倒してみる。
「おお! 本当に刀身が消えた! て事は、元の刀を作った人は神に違いない……」
『……ねぇ、聞いてる?』
「ん? あ、ごめん。聞いてなかった」
『貴方……私の扱いが酷くない?』
うん……なんかゴメン。今のは本気で聞こえなかった。結構前に得た知識の実証と、サナの使ってたヤツのやり方を覚えたのでテンションが少し上がってしまっていた。
「で、どうしたの? サナ」
『さっきから言っていた通り、何をしたの?』
「サナが前に使ってた本体の形を変えるヤツ」
『それは分かるは、重要なのはどうしてケイトがそれを使えるのかって所よ』
ああ、そう言う意味だったのか。でも実験って俺、ハッキリ言ったよね?
「使えるようになったのはたった今だよ。てか、さっき実験するって言ったよ?」
俺がそう言うと、サナは黙り込んでしまった。
ま、この事は気にせずに明日の準備をしよう。
「制服は帰りに貰ったから大丈夫として、お弁当は……朝、宿屋の厨房を借りるか」
新しい朝が来た。希望は特に無いけど朝はk(ry。
日の出と同時に俺は起きた。
そしてコッソリ部屋の扉を開け、厨房まで下りる。厨房に入ると、
トン、トン、トン、トン……
っと、朝早くからリズム良く響く包丁が切る音と共に、朝食を作る女将さんの姿が見えた。
「おはようございます」
「あら? おはよう…思ったより早かったじゃない」
女将さんはそう言って、少し驚いていた。
確かにこの時間に起きる若者は少ないだろう。現在の時刻は、前の世界で言うと朝の4時半頃。病弱な親を養うために働く少年少女は、大抵の子が5時頃。だから明らかに早すぎると言われるぐらいだ。
「習慣ですよ。もうこの歳だと朝が早くて……」
「何言ってるのよもう……おばさんの方が歳なのに……」
「ははって、まだ十分お若いですよ。では調理台借りますね」
見た目二十代の女将さんが言ってもねぇ……
「あら? それってプロポーズかしら?」
女将さんは、少女の様な嬉しそうな表情で揶揄ってくる。しかし、実年齢が五十と云々だと分かっていると…ね………魔女かな?実は百歳位以上だって言われても俺は驚かないよ?驚くけど。
「残念ながら、俺にそんな気はありませんって」
「冗談よ。冗談。ま、この位の女は若作りが基本だからねぇ……」
はて、若作りだけでそんなに若々しくなれるものなのか?
まあ、女将さんはそう言って厨房を貸してくれた。
昼食(2人分)が完成した。そして序でに朝食を摂った。
今は、泊まっていた部屋で荷物の整理をしている。と言っても、境界に入れるだけの簡単な作業だけど。
「さて、荷支度も終わったしアトラ。行こっか」
荷支度が終わったので、ボールで遊んでいたアトラに呼びかける。
「うん、今日も良い子だ。そうそう、今日から新しい部屋に行くから楽しみだな」
ボールを押ながら俺の所に来るアトラに癒されながらボールを片付け、アトラを抱え上げると俺は女将さんにお礼を告げて学園に向かった。
道中、人の集りを見かけた。
おそらくまた首刈りとかその辺りだろう。辺りの匂いは果物や香水の匂いが漂っていたが、微かに鉄分を含んだ液体の匂い……血の生臭い臭いが漂っていた。
「首刈り……ねぇ…………」
そこで思い出した。
「そう言えばあの血がこびり付いた小さな祭壇………」
結構最近、首刈りの被害現場の近くを通った時に祭壇がぽつんと置いてあった。
その祭壇にはまだ新鮮な血がこびり付いていて、そう古く使われてない物では無いことが見て分かる。
だが、俺は直ぐに祭壇を境界に仕舞った。
「ま、今は遅刻しない様に急がないとな」
興味はあるが、今は気にしない。どうせ新しい死体が出てくるし、出てこなくても自分が夜中で歩けばイイだけの話だ。
そんな事を思っていると、背後から耳覚えのある声に声をかけられた。
アンチエイジングおそるべし。