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28 聖女だって興味はある

取り敢えず毎月1日には投稿する様に頑張ります(*´꒳`*)

 図書室らしきところに着いた。どこの世界もルールは同じで、図書室は軽い会話、ページをめくる音、本を探す時の足音のみが聞こえてくる。

 俺は左腕の痛みから来る声を噛み殺し、聖女らしき人物を探す。周りからの視線が気になるが、今は無視だ。確かに俺の服装は、この学園の制服ではない。

 まずは医療関係の本棚の辺りを探した。居ない。

 次に神官職関係の本棚の辺りを探した。しかし居ない。

 その次に大衆文学の本棚の辺りを探した。でも居ない。

 ダメ元で戦術関係の本棚の辺りを探した。やっぱり居ない。

 最後に魔法関係の本棚の辺りを探した。だが居なかった。


「はぁ……聖女って呼ばれている人はどこに居るんだろう………」


 その後どう思ったのか、俺は官能小説の雰囲気を漂わせた本棚辺りに行ってみることにした。


「きゃっ」


「ッ、ごめん……ッ………」


 本棚の周辺を歩いていると、よそ見をしていた所為で人とぶつかってしまった。ぶつかった衝撃で、左腕の痛みが強く襲いかかってきた。その痛みで俺は座り込んでしまった。


「こ、こちらこそすみません」


 俺とぶつかったのは、キリカと同じくらいの歳の金髪の少女だった。体型は……うん、キリカよりはスタイルは良いかな?その少女の横には一冊の本が落ちていた。


「あの……その腕は大丈夫ですか?」


 俺が癖で周囲を観察していた時、少女は話しかけてきた。


「え、ええ……ッ…ただの粉砕骨折…ッ………」


「ちょっと見せてもらえますか?」


 少女がそう言うと、雰囲気が急に変わった。雰囲気的に逆らったら強硬手段を取られそうなので、俺は言われた通りに左の袖を肩まで上げる。骨を折られたた左腕の二の腕は黒ずんだ紫色に変色し、腫れていた。


「これがただの粉砕骨折って言うのですか?」


 俺はそっぽを向く。今、俺が探しているのは聖女であって、目の前にいる少女ではない。


「聖女と呼ばれている人を探している。その人に見せたら治してもらえると言われた」


「なら運がいいですね。その聖女と呼ばれている人は私です」


 こんな展開はありなのか?だって聖女様だよ?こんな、官能小説が置いてある本棚みたいな雰囲気を出している所だよ?普通はそんな所には来ないでしょ。

 だがツッコミは入れない。


「出来過ぎな偶然だな」


 素っ気なく俺は言う。まだ本物なのかどうか怪しい段階だから当たり前の反応だと俺は思う。


「偶然なんかではありません。これは我が主である神のお導きです。貴方はむしろ、聖女に合わせてくれた神に感謝すべきです」


「おお……なんか聖女様っぽい」


「むぅ……これでも私を聖女だと思わないのですね……」


 だって、それっぽいことなんか誰だって言えるもん。


「まあいいです。今、その腕を治しますね」


 ―我らの主である神イーナクよ 主の子らの傷を癒し給え 〈復元リストレーション〉―


 少し焼けるように痛いが、黒ずんだ紫色の部分は腫れが治まり、肌の色が元に戻った。しかし、何故が少しだけ不快感を覚えた。その不快感は、治癒に対してのものではなく、どこかにある人間の何かをくすぐる様な不快感だった。

 見た目が治った腕を動かしてみる。二の腕から痛みは来ない。骨がしっかりと筋肉の動きをサポート出来ている事が確認できる。ただの回復系統の神術なのだろうか?

 と言うか、俺の勝手な偏見だったのか、魔素で出来ているこの身体に神聖な物が入って来ているのに全く拒絶反応が無かった。そして復元リストレーションって………


「本当に治った……ありがとう。ところで、やっと聖女様だと認識は出来たのだけれど、一つ質問がある。恩人に対して失礼だと思うが、この本の内容について訊きた…い……」


 俺は落ちていた本を拾ったが、丁度開いたページには大きく絵が描かれていた。その絵は、聖女と思われるキャラクターが、教会に突撃して来たオークに性的な意味で襲われそうになっているシーンだった。その挿絵から官能小説だと俺は確信させられた。てっきり、神法に関するものかと思っていた。

 その瞬間、聖女と思われる少女の華奢な手が本に向かって飛んで来た。反射的に俺の腕は本を持ちながら躱す。


「大丈夫だ、俺は人の趣味を否定しなっ!?」


 また華奢な手が本に向かって飛んで来る。見ると、聖女と思われる少女の顔は赤くなっている。


「わ、分かった、返すから取り敢えず落ち着いてくれ」


 俺は本を床にそっと置き、返却する。少女はそれを自分の他の官能小説だと思われる本に重ねると、無愛想に「付いて来なさい」と俺に言い、本を借りに行った。なんとなく服従したほうがいいと思ったので、俺は彼女の後を歩いた。










 図書室を出た後、俺は敷地内にあるベンチで聖女と思われる少女の隣に座らされた。


「…………他の人に言ったら……分かりますよね?」


「それよりまず、名前を確認したい。君はシャヌアと言う名前の聖女か?」


「ええ、そうです。で、この本の事を他言したら――」


「勿論、言わない。だから、その荒い殺気を仕舞ってくれ……そもそも、俺は他人の趣味には口出しはしないし、興味も無い。だから誰にも言わない。しかも最近来たから知り合い少ないし…………」


 言ってて、不思議と自分の首が苦しかった。そして寂しい……


「そうですか。それなら良かったです。それにしてもどうして左の二の腕を粉砕骨折したのですか?」


 安心したのか、聖女シャヌアからは明るい雰囲気が漂っていた。


「合格した編入試験の実技試験。ローサムって言う筋肉巨人の化け物に蹴られた」


「ローサム先生!? 貴方、どうやってその人に勝ったの!?」


 やっぱり、編入試験は難しいのか……これは後が面倒臭くなりそうだ……


「いや、勝ってない。二割の攻撃力をずっと木刀で受け流して、二の腕を蹴り砕かれた後に自分の武器に毒属性の属性付与エンチャントであの化け物の木の剣を壊した。でも留めを刺せなかった」


「留めを刺すって……それはもう殺し合いじゃ無いの…………」


「え? 試験でしょ? ま、筆記は余裕だったな〜キリカの家の書庫で勉強した甲斐があった……」


「キリ……カ? ハハッ、私の訊き間違えかしら? 今、キリちゃんの名前を呼び捨てで聞こえた気がするわ……」


 急に聖女シャヌアから殺気が溢れ出て来た。何か悪いことでも言ってしまっただろうか?


「あ、もうこんな時間じゃん! アトラを迎えに行かないと! それじゃ、直してくれてありがとう。これは御礼みたいなものだけど」


 俺は聖女シャヌアに暇な時間に作ったクッキーを包装した物を境界スキマから取り出して投げ渡す。そして急足でその場から離れた。










 ― ― ― ― ― ― ―









「くっ、まだ訊きたいことが沢山ありましたのに……」


 私はそう呟いて、キャッチした小布袋を開いてみました。中にはクッキーがいくつか入ってあり、鮮度は良い方です。私は少し複雑な気持ちでしたが、そのクッキーを食べて見ると案外美味しく、なぜか負けた感じがしました。


「悔しいですけど美味しいです………少し妬ましいですね…………はっ、聖女たるもの、その様な感情を抱いてはいけません! もっと、心に余裕を作りませんと!」

個人的にこういう聖女さまも良い気がする(*´꒳`*)

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