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43 独立は突然に

 《 Side:ラルキ伯爵領伯妹、リーナ・デ・ティリス臨時領主 》



 夜陰に乗じてラルキ城砦に押しかけてきて、伯妹殿に会いたいという者達がいると、諸宮軍の番兵が取り次いできた。

 夜陰ゆえに何か邪な企てでもしているのかと思い、諸宮軍の方にも一報を入れておくことにした。

 開城してから小規模な『いざこざ(主に冒険者の騒乱)』があったが、概ね市中は安定している。

 そんな中で、ラルキ側が『内通している』や『謀議を図っている』等と疑われては、全てが水泡に帰すことになってしまう。

 その為、急遽エミナを叩き起こして同席させ、護衛隊長にも同席を願う。

 詩織殿はどうしようと思案したが、押しかけてきた者達は詩織殿の事を知らないはずだ。

 見知らぬ者ということで無用な警戒を抱くかもしれない事を考慮し、詩織殿には説明したのち同室するのは辞退していただくことにする。ただこの面会を求めてきた相手が『刺客』という疑いもある事から、隣室に控えていてもらう事にする。 

 また諸宮軍からは、リリムル殿がスカウト・アイという魔法生物を連れてきて、こいつを同席させろと述べて帰ってしまった。部屋の片隅でスカウト・アイはチョコンと、おとなしく座っている。

 試されているという事なのかしら……。

 ちなみにこのスカウト・アイという魔法生物は、見た目はそのまんま大きい眼球であり、その眼球を薄い筋肉層と被膜が覆って、そこから足と羽が生えているという、あまり夜陰には出会いたくはない外見をしている。

 事実、リリムル殿が連れてきたスカウト・アイを見た侍女は『ヒィ~ッ』と叫んで腰を抜かし、すこし失禁したらしい。

 ……気持ちはわかる。実は私も危なかったのだ……、夢に出てきそう……。


 ・

 ・

 ・


 面会のために訪ねて来た者の身体検査も終わり、室内へと通された者は唯一人で私と面会している。

 着ている物は薄汚れてはいる。だが、元来は『上質な召し物』であったと事がそれとなく判る位には、仕立てが良い。

 顔色と言えば、死相が出ているのではというくらいには悪く、疲労と焦燥ゆえか頬もこけている。

 挨拶もそこそこに会話を始めるが、その要点は『唯一つ』であり、それはラルキ城市への『入城の許可』だった。


「伯妹殿下。何卒宜しくお願い致します」


「あの何か、勘違い成されているのではないでしょうか? 

 私は言うなれば城を明け渡した降将ですよ。膳をとることにすら許可が必要なのです。何の権限すらありません」


「……殿下。我らには、奴らに抗する『力』も『術』もありません。抵抗する者は殺され、女達は多数に辱められ事切れました。子らは連れ去られ……行方すらわかりません。奴らは『獣』同然であり、そしてまたやって来るでしょう。何卒我らをラルキ市内へと退避させていただきたい……何卒!」


「……」


「殿下、無血開城でラルキ城市のみが一応の安定を保っているのです。言い換えれば、それ以外の領域は、もはや野獣が徘徊する無法地帯。ある村は略奪後に放火され、村人は離散しました。ある宿場町は野獣が居着いたままで、叫声と啼声、怨嗟の声のみが木霊しております」


「生地【せいち/生まれた地】から離れるか、ベルザルの本営に助けを求めては……」


「殿下、すぐに冬がやって来るのです。『種子』すら奪われました。冬の中で、明日の食べ物さえ危ぶまれるこの現状で、全てを失った者たちに流民として彷徨【さすら】えと仰られるのですか……。助けを求める? 父や夫・兄・弟・子・想い人を奴等は戯れ半分で殺しているのです。母や妻・姉・妹・娘・恋人を、衆人や家人の前で獣欲に任せて凌辱しているのです。そんな野獣の元締めに『助けを求めろ』と申されるのですか?」


「……」


「三日後……、ラルキの『受け入れの可否』に関わらず、私たちは生きるためにラルキ城砦へと、その歩を進めます。途上にて『野獣の群れ』に襲われようとも、その歩を止めはしないでしょう」


「それは、脅迫ではないか!」


「脅迫? ……たしかにそうなのかも知れません。ですが私達には『それしかできない』のです。殿下が無血開城をしたように、もはや『それしか残されてはいない』のです。飢えと寒さが、すでに足元にまで寄せてきているのです。乳飲み子は、もはや声を挙げて泣くことすらできません。残った子らも含めて皆が憔悴しきっております。あと一〇日……いえ七日も持たないでしょう……」


「……」


「『死ね』というならば、せめて人として死にたい。

 道具としてではなく、搾取の対象としてではなく……、『自らの意志で選んだ結果』として……、せめて人として……死にたいのです」

 俯きながら斬り落とされた腕を見やり、途中から独り言のように呟いている避難民の代表者。

 この者は男爵の嫡子だという。

 乱入してきたベルザルの軍勢から、領民と共にそれなりに大きい領を防衛をしようとしたが抗しきれずに、領地が荒らされていく様を、畑が炎上していく様を、己の眼前で母と姉が辱められ事切れていく様を見させられ、最後には見せしめに左腕を斬り落とされたという。

 治療を受けたくとも、すでに教会の司祭らは去っていた。

 そのため出血を止めるために、焼灼止血法【しょうしゃくしけつほう】を選択し、炎上している居館からの火で剣を熱し『傷口を焼いた』のだと、自嘲気味に語っていた。

 母と姉の遺体もその館と共に焼け落ちたが、領民が落ち延びたことを知るや探し出し、更には近隣の集落・町・村から避難民を集めて逃げ回っていたという。その際にも幾多の現場を目撃するが、止める事もできず声を挙げる事すらできず、ただ隠れて『滂沱【ぼうだ】の涙』を流すしかなかったのだと……吐露していく。

 虚ろな眼には、希望どころか生気すらない……。

 領主の嫡子としての『義務感』のみで動いている感すらあった。

 その虚ろな眼には、私は映っていない。

 何を視て何を思っているのか、独り言のように呟いているのが恐ろしかった。


 夜が明ける前に突然の面会者は、帰路に就いた。

 齎【もたらさ】された計画について善後策を論じているとき、リリムル殿が来訪してくる。

 このリリムル殿、エミナが交渉に赴いた際に取り成してくれた御仁で、発言力もかなり強い高位軍人であり女傑であるとエミナは評している。

 さきほどの内容はスカウト・アイを通じて知っておられるはず。

 何か『良案でも聞ければ』と期待していたが、リリムル殿から伝えられた『報せ』に、図らずとも真逆の感情を抱く結果になってしまった。

 なんでも、諸宮軍の輸送隊が襲撃を受け撃退したのだが、その際に捕虜にした兵から得られた『報せ』であり、リン殿から『此方【ラルキ側】にも情報提供をするように』と指示が出ているとの事で、リリムル殿が手ずから持ってきてくれたのだ。


「……つまりその捕虜から得た報せによると、ベルザルは『ラルキ領を見捨てる』方針ということですか?」


「『見捨てる』という言葉が当てはまるかは判らないが、後続の補給部隊が到着次第、撤退するとのことだ」


「「「……」」」

 同席している私、エミナ、隊長のラルキ勢は絶句してしまい、反応がない。


 ベルザルから見れば確かに『ラルキ城市は陥落した』が、まだラルキ領自体は健在であり、そのラルキ領内を防衛するのが大公国の本義のはずだ。

 だが……、ベルザルから急派されてきた増援軍といえば、ただ単に領内を荒らしているだけなのだ。

 一体何のために来たのか……、皆目わからない。

 藁にもすがる思いでリリムル殿にも意見を求めたが、肩をすくめるのみだった。

 そんな仕草の後で『ラルキ内での話もあろう』と席を外して退室していく。

 

 状況に困惑しながらも、リリムル殿が来訪した際に同席を願った詩織殿にも、意見を聞くのだが……、

 ――「単に補給計画に誤算が生じて略奪に逸【はや】っているのかもしれない。だが偶発的とはいえ結果として、曲がりなりにも『焦土作戦の体裁』を成してしまっている。もっとも焦土作戦にしては、あまりにもお粗末だがな。此れでは、ただ単に反発と反感を助長するだけだろう」――と、言っていた。


 だが私には『焦土作戦』という言葉自体が解らない。

 『籠城』……とは違うようだ、という事は何となくわかる。

 エミナと隊長も、聞きなれない言葉に当惑しているのが一目瞭然だった。


 あとで聞くか兵書で調べようとおもっていたが、当惑している私達に気がついたのか詩織殿が教えてくれた。

 う~ん、さすがラルキの誇る客将。エミナの言に従って迎えられたのは本当に良かったと、思っていられたのも束の間だった。


 『ギリッ!』と強く歯を噛み締めた音が、口腔から漏れた。

 誰かはわからない、もしかしたら私かも知れない。

 それほどまでに、憤っている。

 理由は『焦土作戦の要諦』を詩織殿に教えてもらったからだ。


 その内容と言えば――「焦土作戦とは、奪取されるであろう地域の生活・経済・農業・社会基盤・食糧などを事前に意図的に且つ組織的に大規模に破壊し、敵軍占領後の利便性を著しく低下させ、以て敵軍の現地調達を困難たらしめることにより、円滑な占領政策と戦力転用並びに展開に対し、遅滞乃至は痛撃を与えることを主眼とする戦術・戦略の一形態だ。つまりは、奪われるくらいなら自領に火をつけて後退することだな」――だそうだ。


 続けて詩織殿曰く「ただし、この場合は現地住民を避難させることが第一の鉄則だ」と補足された。

 そして、「だが……」と言葉を区切り、私たちに視線を流してきた。

 ――『避難させなければ、どうなるかは解るだろう?』――という無言の応えだった。


「「「……」」」 

 焦土作戦の要諦を聞き、ラルキの三名は黙すしかない。

 領主が、己の治める領地を『破壊し棄損する』等それこそ想定が出来ない、出来るはずがないのだ。

 そんな策を強行すれば『何のために貴族として領地を治めているのか?』という根源的な問いが、自他ともに出てくるだろう。

 『領民は貴族が居なくても生きてはいけるが、貴族は領民が居なければ生きてはいけない。同じく領民は土地が無ければ生きてはいけない』のは自明だろう。

 だからこそ己の治める領地を『破壊し棄損する』こと等、真面【まとも】な貴族であればあるほど『想定できない』のだから、焦土作戦に対処のしようがないとも言える。

 それでも、意図せずとも『そのような状況が現出されてしまう事』に、ラルキの三名は三者三様ながらに『戦争の非情さ』を垣間見る思いだった。

 問題はそんな『想定できない作戦』を、偶然とはいえ曲がりなりにも成してしまうベルザル国軍である。

 更には詩織殿の言説によると、策の要とも言える『第一の鉄則』すら行わずに『ラルキの領民、則ちベルザル大公国の国民』から強奪しているのが、殊もあろうに当のベルザルの国軍なのだ。

 ラルキは、……ラルキは『乱取り自由の慮外の地』とでもいうのか?


 思わず手直にあったコップを掴み、感情に任せて壁に投げつけたくなる。

 ギリッ! ふ、ふざけやがってッ!

 これではどちらが侵略者なのか、判らないではないかッ! 

 握りこんだ拳が、怒りの激情で震える。


 ・

 ・ 

 ・


 日が改まり変わらぬ朝が来た。

 そこに今度はベルザルよりの特使が、突如ラルキ主城を訪れた。

 事前の先触れさえなく、余りに突然すぎて今度は何事かと緊張が走る。

 件【くだん』の特使は、敵情視察を兼ねているのか、非常にゆっくりとした歩で周囲に視線を這わせながら、ラルキの城館へと到着したそうだ。

 ラルキ街中の様子を道すがらに目にしてきたのか、苦悶とも憤激とも忸怩【じくじ/恥じ入る様子】とも解される表情を浮かべている。

 街中を占領軍のスケルトン歩兵や獣歩兵やらが、隊列を成して警邏【けいら】しているのが、お気に召さない御様子であったという。


 そのラルキ街中といえば『商業活動は停滞気味』ではあるが、これは如何ともし難いのが現状だろう。ラルキ自体の残存兵力も少なく、治安の維持に不安があるのは隠しようもない事実ではある。

 『治安の悪化は商業活動の停滞を生み出し、結果として喰い詰める者が出始める。喰い詰めた者は生きるために犯罪行為に及び、治安が悪化する』という悪循環が出始めていた。


 そこで一案が、エミナから提言されたのだ。

 傭兵たちは退去したが、冒険者達は残った者も多い。

 そこでその冒険者に治安維持に協力させることにし、公需として従事させている。

 治安維持に協力してくれる冒険者達は勤務が開けると、直ぐに散財するため経済の活性化につながるのだという。なるほど、そういうモノなのかと納得してしまった。

 また市中での本格的武装は禁止されているが、治安維持に従事する冒険者達は『木の棒』そして『木の盾』で武装? はしている。もっとも冒険者たちは、これこそ『真の勇者の装備』だと自嘲気味に揶揄していたが、私には意味が解らない。

 『真の勇者の装備』が『木の棒』や『木の盾』である訳がないでしょう? 英雄譚を観るなり聞くなり読むなりすれば、直ぐにでも理解できる事でしょうに……。


 様々な施策を打ち、同じく街衆の協力もあって治安は回復傾向で一応安定しており、懸念された占領軍による狼藉もあまりない。

 『あまりない』というのは、主に獣人たちが酒場で冒険者と乱闘騒ぎをしたくらいだが、重大性など皆無であろう。

 まあ、それは蛇足として、街中はそこそこ落ち着いてはいる。


 だが市外となると、それは『全く別な状況』となっている。

 まさに地獄が現出してしまっており、その原因はベルザル国軍にあると言える。

 その原因たるベルザルの使節が『のこのことやってくる』のだから、厚顔無恥の極致であるッ!

 占領軍たる諸宮軍も同席して、城の大広間でベルザルの使者との面会となった。

 定型通りの挨拶を取り交わし美辞麗句が飛び交っていく。

 だが交わす言葉の端々や口調の裏に『微かな苦みとも毒ともとれるモノ』が混じっている。


「此度はラルキに大きな危難が訪れ、多くを失ったことにつき我がベルザル大公国は大変憂慮しております。ですが、その一方において新たな未来と希望が誕生しました事は慶事ともなりましょう。伯妹殿下が我が身を呈し、偏【ひとえ】にラルキの安定に寄与している事、正に貴人の範を示す義挙。我がベルザルでは、かかる義挙に際し『感嘆の思いと共に称賛の声』が上がっております事、伯妹殿下にお伝え致します」


「またラルキに『逗留』されております皆様にも、ご挨拶申し上げます」


 一応の社交的礼節は守ったようだが、内心は匪賊盗賊如きに礼節に則り相対するなど『考えられない』という態度が露骨に判る。


 事ここに至っても『占領されているという事実』を認めたくないという事を、態度と言葉で示唆している。

 ダンジョン勢力を国家と認めていない、認めたくない捩【ねじ】れが此処で発現してしまっているのが見てとれる。

 ベルザルという国家の一都市たるラルキが、殊もあろうに『盗賊匪賊如きに占領されている』という捩れだ。

 これが国家間の争いであるならば、それこそ『条約なり、和議なり、外交交渉なり』でまだ話のしようもあり、合意できれば『ラルキの返還』という選択肢も、その俎上【そじょう】に上がる可能性もあった。

 だが公然とダンジョン勢を『盗賊匪賊』と罵っている以上、そのような交渉事が難航するのも当然と言える。


 そして『盗賊匪賊と話はしない』という方針故か、この使者は主に伯妹たる私に話を振ってきているのだが、これは非常に困るのだ。

 占領軍を無視して頑なに私に話を通そうとしても、そもそも私には『決定権』がない。ダンジョン勢より意見を求められれば述べるが、それはあくまでも『参考意見』であって影響を及ぼす『助言』ではない。

 そんな状況下では、まわりまわって結局は私が占領軍から不興と猜疑の目を向けられて、ラルキの立場がより一層苦しくなるだけではないか……。


 如何なる意図で、このような対応をしているのかまでは判りかねるのだが、ここまでくると――『敢えて不審と不興を煽り、圧制に耐えかねたラルキが暴発し、暴動を起こさせる』――等という迂遠な策を弄しているのではないか? とすら思えてくる。

 だが私でさえ『奇異に思えてくるような策』を、果たして本当に考えてくるものだろうか……。


 ――『ベルザルは一体、何を考えているのか?』――

 その真意と意図を推し量ろうとすればするほど、困惑の度合いが深まるのを自覚する。もしやこのような『思考の空転』を狙っているのか? とすら勘繰りたくなってくる具合だ。


 そんな釈然としない感情を抱きながら、何を言い始めるのかと慎重に黙って聞いていたのだが、美辞麗句と定型文を取り除き要点をまとめるとこうなる。


 ――『 ラルキ領を独立自治都市として認める 』――


 独立都市領として、自由に勝手に生きろと言う。

 領民を殺し、犯し、奪っていった者達が、独立を『認めてやる』と有難くも言ってきて、些少の祝賀金を送りつけて『祝ってやる』と言ってきたのだ。

 この言い分に『ラルキの意志など全く考慮はされていない』事などは明白だろう。

 そもそもラルキが『独立したい』などと、ただの一度とて言ったことなど無いはずだ。

 だいたい、占領され軍政下に入っている都市に対して、占領軍の面前で『独立を認める』などと言っている自体が意味不明なのだ。

 それにも関わらず、この言い様。これは一体なんなのか……。

 私は、とにかく努めて笑顔を維持して話を聞いていたが、内心は腸【はらわた】が煮えくり返っている。

 だがそれとて、もはや限界だった。

 最早ひび割れた笑顔の仮面は剥がれ落ちて、感情が欠落したかのような無表情で……絞り出すように言葉を紡ぐ。


「……それはラルキに、民に……『死ね』と言っているのでしょうか」


 声が激情で震えそうになるのを、自制する。

 ただ声の震えを『自制する事』に、これ程の精神力を費やす事になるとは……、今初めて知ったほどだった。


(すぐに冬が到来する。民達は略奪の憂き目にあい食糧さえない。さらには来期の作付けに回すべき『種子』すら奪われているのだ。いまの絶望的状況を乗り越えたとしても、何処からか種子を調達しなければ、来期の収穫は無いに等しい。つまりは飢饉、いや、それ以上の惨状になる。そしてラルキが独立してしまえば、ベルザルからの支援は望めなくなる。その事を、この使者は……理解して述べているのだろうか……。おそらくは……『理解している』のでしょうね)


「どのように内容を解釈されようとも、それは貴国(・・)の御随意に。我らはベルザル大公閣下の御言葉を伝えているに過ぎません。閣下(・・)


 殊もあろうに占領軍を無視して、占領軍の面前で『独立を認める』などと言われたら、これを嚆矢【こうし/物事の始まり・端緒】としてダンジョン勢から攻撃されるかもしれない。ベルザルは本当に何を考えているのか? 

 困惑のみが、ただただ拡がっていく。


 その一方で無視される形になった諸宮といえば、全くの蚊帳の外に置かれている。     

 そして唯々、沈黙を保っている。……そんな様子が、妙に不安を掻き立てる。

お読み頂きありがとうございました。

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