26 会戦 5
《諸宮連合軍野戦陣地/クララ・シャンセオン》
「敵、抵抗陣の展開を確認! 三重火焔弾を無力化。効果なし!」
「『魔術士隊、術法撃止め! 後方に下がり再編後、待機!』」
やはり、防御系統の魔術士を伴っていましたか……。
しかも予想より抵抗陣の強度が高い!
練度の低い抵抗陣ならば簡単に突破もできるはずなのですが、三重火焔弾まで無力化するとなると相当の強度。
その強度を捻り出すほどの手練【しゅれん/熟練した技量・手際】な使い手が、帯同しているのだろう。
なんと面倒な……。
・
・
・
この抵抗陣自体は、別段珍しいということはない。
魔術を行使できる者ならその強弱を別にすれば、誰でも行使できるものなのだ。
ただ抵抗陣を始めとした防御系統等に特化して、その強度や効果を上げることにひたすら邁進【まいしん】し、驀進【ばくしん】し続ける行動やその信念が驚異なのだ。
何せ撃ち抜けなければ無効化するのだから、その効果も正【まさ】に脅威とも言えるほどに特筆すべきものがある。
魔術・魔法と一言で括られてしまいがちであるが、便宜的に『防御重視の白系統魔術・魔法』と『攻撃重視の黒系統魔術・魔法』と分けられてはいる。
ただし、この分類はあくまでも便宜的な分類なのである。
そしてその大まかな分類は、天秤を思い浮かべるのが簡単だ。
どちらかの天秤皿に、加重が加わり傾いている状態。
その状態こそが、(あくまで便宜的呼称ではあるが)黒魔術と白魔術を分ける基準なのだ。
そしてその白魔術に分類される術式には、抵抗陣や破魔封陣、治癒術、祝福といった補助系統の術式が多く分類される。
基本的には『維持・回復・再生』が術式の基調であると言える。
そして白魔術の志向は、自己の信仰や信念を『契機【きっかけ】』として『神や精霊の権能を術者を通じて具現化する』ことにある。そして、ここに『神の恩寵や精霊の祝福』等が加味されると、その効果が飛躍的に増大することになるのだ。
対して黒魔術は、火球に代表されるように『変化・変動・破壊』が基調となっている。そして黒魔術の志向は『自己の意思・力』による『変化の実現・革新』に集約される。無論、黒魔術とて『神の恩寵や精霊の祝福』が加味されると、その効果が飛躍的に増大することになるのはも同じではあるのだ。
ただし、その『神の恩寵や精霊の祝福』を用いて『変化の実現・革新』を実行するのは、あくまでも『自己の意思や力』であるという前提に立っているのだが。
この様に述べると、『神や精霊』を軽視しているかの様に聞こえがちではあるが、決してそうではない。
白系統の魔術や魔法が『神の権能・恩寵を具現化する』すなわち神の一端を世界に迎えるという受動的発想なのに対し、黒系統は『自己の意思・力』により世界を変革し、もって神に近づくという能動的発想に依拠している。
つまりは立場の違いだった。
この白黒ともに共通する『神の恩寵や精霊の祝福』だが、必然的にその多寡や軽重により効果など左右される事になる。
また由来する神や精霊によって、顕現される力も異なることになる。
本来、この『神の恩寵や精霊の祝福』は誰にでも分け隔てなく、その恩恵に浴されるものはずだった。
だが、ここに白・黒問わず術者の様々な『意思』が多かれ少なかれ介在してしまう余地が生まれてしまった。
結果として幾多の争いが起き、『勝者と敗者』『優勢と劣勢』が生み出されていく。
戦いの趨勢によっては『神の恩寵や精霊の祝福』は衰えていくとともに、その神や精霊を信仰していた者たちも衰退していく。
そして信仰する者の減少と共に、その恩寵もまた低下していくといった負の連鎖に陥っていったのだ。
そして時の流れと共に争いの潮流は激しくなり始めていく。
様々な思惑と様々な権益が絡み合い、そして純化していく。
勝者は己の優勢を保とうとし、敗者は劣勢を覆そうとしたのだ。
『契機』と『自己の力』
『神や精霊の権能を具現』と『変化の実現・革新』
『維持・回復・再生』と『変化・変動・破壊』
完全に相克の関係になり、互いが互いを糾弾しあうという中で、両者が闘争状態になるのには大して時間はかからなかった。
さらに事を複雑化したのが、この『変化・変動・破壊』に属する系統の『神の恩寵や精霊の祝福』をもってしても、効果の大小はあれど抵抗陣や破魔封陣、祝福などといった防御・補助・治癒を与えることができることだった。
これらは、一般には暗黒祭祀術と総称されており、白魔術の代表ともいえる神聖魔術と対極を成すものとされている。
この暗黒祭祀術を執り行うのが実態不明、実在も不確かな暗黒教団・漆黒教会であるという概念が白魔術側から提起されて成立し、そこに連なる者として『変化・変動・破壊』をもって『(自己の意思や力により)既存世界を革新する』という教義らしきものがあると想定されると共に、当然の帰結として暗黒教団・漆黒教会
内部では熾烈な闘争もあるだろうと、まことしやかに推測されていた。
対して人間以外の大多数の各種族は、白黒などという不可思議な分類は無く、当然ながら片方のみに偏るということはない。
自然現象の一つとして現れる精霊や自然神に仕える祈祷師【シャーマン】や自然祭祀僧【ドルイド】や、各地の土地神などに仕える巫女・巫師・神官等がいた。
そもそも精霊自体に白黒等は存在せず、事の善悪も判断しない。
春の微風もあれば、暴風もある。
恵みの慈雨もあれば、災害を引き起こす大雨もあるのだ。
白黒片方のみに偏るということはないのが当然である。
本来、神も『事の善悪』を判断しないはずなのだが、人の矮小な意思が『神の意志を伝える代弁者』を自称する始末であり、 故に人間の推奨する神への『信仰』等は一部の祭神を除いて、各種族には人気がなかった。
このようなことから、祈祷師【シャーマン】や自然祭祀僧【ドルイド】、神官・禰宜【ねぎ】・巫女等は個人差により得手不得手はあったが、白黒の両方の術式を使えるのが普通であったのだ。
但し、両方の術が使えるためにその習熟速度は遅く、それに比例して効能もまた低く抑えられてしまっていたのだが。
このような状況下、ベルザルの強みというか人間の強みは、この強力な『抵抗
陣』と特化した『治癒術』、そして『人口増加率』に集約されるといえる。
強力な『抵抗陣』で各魔術・魔法などに対抗するとともに、特化した『治癒術』で負傷兵を無理やり回復させて、再度戦場に向かわせているのだ。
この『治癒術』は各種族にも当然あるが、その名称は千差万別で、『治療術』だったり『回復促進術』だったりする。
そして人間のいう『治癒術』に比べて効能が弱いという特徴があったのだ。
そして特に光神教会はこの事を捉えて、――『人間以外の種族、すなわち各種族は神に見捨てられた』や『人間が各種族を教え諭し導くために、効能に差があるよう神が定められた』――等と喧伝しているのだった。
各種族は憤激し、失笑し、哄笑【こうしょう】していたのですが、問題は少なくない人間がそれを信じ込んでいる、または信じ込み始めているということなのです。
その結果、真顔で『各種族を導くのだ』などと宣【のたま】う人間が、志願して戦に赴き戦傷を負うのですが、その傷を治癒術で回復させていく。
剰へ【あまつさへ/それのみならず】――『神の恩寵により傷は癒えた、奮い立て勇士よ。神は、選ばれし君のような勇士と共に、常に在る。恐れるな。たとえ倒れたとしても、勇士と認められた君は、約束の地へと迎えられるだろう』――等と吹き込み、再度戦場へと送り込むのです。
もっとも『再度戦場に投入されること』を兵士当人が望んでいるかは、全くと言っていいほど考慮されてはいない。
そしてこの傾向は、近年殊【こと】に強まっており、各地で、『人間』対『各種族』間での抗争が激化する要因・遠因ともなっていた。
・
・
・
「敵前衛と増援の兵力は合流。意図は不明なれど留まっています」
「ふむ? (なんのつもりだ? 問題はこの後に、突入してくるか後退するかだが……。重装歩兵を多数投入してきたってことは……、強行突入かしら?)
『獣術士隊、大蠍【ジャイアントスコーピオン】と黒尾狐を前衛に布陣させよ! 弓隊は、展開の援護と牽制!』」
百の大蠍【ジャイアントスコーピオン】と三百を数える幻像の大蠍【ジャイアントスコーピオン】が陣地前に布陣するため、ぞろぞろと進んでいる。
大蠍達の進出とともに投擲された槍が飛来してくるが、その多くは三百の幻像である大蠍を貫き、地面に突き刺さっている。
人間が遠投するにしては、やけに飛距離が伸びる投げ槍だが、逆に遠距離まで到達するため目視での正確な状況が判別できていない。
恐らく遠目には、多数の大蠍に槍が突き刺さっているように見えるはずだ。
当然、後方に配されている本体の大蠍百体と黒尾狐五十体は全くの無傷である。
ゆらゆらと揺らめく毒針の尾を除いても体長三メルトル台に達する大蠍の身体の影に、体長二五~三十セントルくらいの黒尾狐が入り、佇む光景が思い浮かぶ。
大蠍の甲殻ならば弓程度は弾いてしまうだろう。
黒尾狐達が創り出す幻像は対象を正確無比に映し出すのだが、当の黒尾狐達がまだ子狐なので、黒尾狐一体につき創り出せる数が限られている。
その上に、黒尾狐一体で創り出した幻像(今回の場合は六体の幻像)全体の動きが、全く同一という欠点があった。
リンが言うには、まるで六体一組のラインダンスを観ているようだとの事ですが、いったい何を言っているかわかりません。
もっともそんな同じ動きをする幻像でも、間隔をあけて適度に混ぜてしまえば判別しずらいのです。
「クララ殿、クララ殿! そろそろ俺らの出番かと思うんだが、どうだい?」
歩兵・戦士隊総監のルイム・アスワム殿が、そんなことを言いながら弓兵指揮所に飛び込んできた。
「(ハッ!?) まだです! と言いたいところですけど、このままの膠着状態で取り付かれたら厳しいのも、また事実でしょう。ルイム・アスワム殿、援護しますので出陣してください」
そうだ、いまは戦闘の最中!
考え事よりも、まずは目先の勝利をつかむことに集中しなければ。
「よーし、やるぞ! クララ殿、援護してくれよ!
『第四歩兵団と第五混成兵団、左翼から進出するぞ。準備しとけ! 敵前衛の側面を突っつくぞ!
それから第二槍兵団は正面のクララ殿の隊を支援だ。
取り付こうとする奴等がいたら蹴り落ちしてやれ!』
それからクララ殿、本営に来てくれ。指揮を統合するんだとさ」
「え? だけど、この作戦図はどうするのです?」
陣地周辺が大きく描かれている作戦図を見やりながら述べるが、
「本営でも用意されてる。通信は本営でも聞いてるからな。それに向こうの方が図版が大きいから全体の戦況と部隊配置が見やすい」
「え? もうそこまで戦局が進んでるのですか?」
「そういう事! ザムル殿がやってくれた。敵の騎兵団は壊滅状態だそうだ」
ニヤッと不敵に笑いながら教えてくれた。
・
・
・
本営に合流し、戦況報告を受けながら作戦図を改めてみる。
そんな中でルイム・アスワム殿が装備を整えているのですが、まさか歩兵隊総監が自ら出撃する気なのでしょうか……。
「ルイム殿? 一体何を?」
総大将の凛が怪訝な顔で尋ねているのですが、至極もっともな質問ですね。
「な~に、ザムル殿も戦功を挙げたからな。まッ、俺もな?」
「……指揮はどうするのです? ルイム殿は、連合軍の八千五百もの兵を束ねる歩兵・戦士総監ですよ……」
「一当てしてくるだけだ。すぐ戻るさ。そうそうクララ殿、剣歯虎【サーベルタイガー】と弓兵の隊を左門側に集めておいてくれないか?」
「いったい、なにをするのです?」思わず私も尋ねてしまいました。
ですが「ザムル殿の、真似事!」と、陽気に返されてしまいました。
凛が他の報告を聞いて、ノリス殿やリリムル殿と打ち合わせをしている合間をみて、本営から自分の率いる部隊の元へと赴くルイム・アスワム殿に打ち合わせと称して同道し、策を聞くついでに真意を探ることにしました。
「ルイム殿、いったいどうしたのですか? 今更、一時の戦功を誇るような貴方ではありますまいに」
ルイム・アスワム殿は、まだ若いといっても、すでに幾度も戦場働きを重ねており、冷静さも兼ね備えた将器なのですが……、どうしてしまったのでしょう?
そんなルイム殿といえば、先ほどとは打って変わって鋭い眼光と共に、いつになく真摯な顔【かんばせ/顔つき】で応えてくれた。
「クララ殿。クララ殿にはわかるかな?
この戦いは今までとは違う。俺たちが考える闘いとは、一線を画す戦いになるだろう。時代が変わるかもしれない。
俺たちが『考えられる』戦いは、今回が最後になるかもしれない。
時代の流れについて行ければいい。だが、もし流れについて行けなかったら……。
最後のアスワム単独での大蟻との戦いに、俺は参戦できなかった。
だが、あの大蟻とは幾度も戦ったので解る。あれは強いッ!
その強い大蟻どもを、あのアイアンゴーレムは一蹴したようだ……。
笑ってくれてもいい、俺は怖いんだ。この戦いで勝てば、イザヨイ宮はこの地域に覇権を唱えるかもしれん。
その時、俺たちはどちら側に分類されるのかな? 『敵』か『味方』か?
敵になるとしたら『手強い』という印象を、抱かせなければならない。
味方として共に歩むならば、この戦いで幾許【いくばく】かでも戦功を挙げ、発言力を確保したい。
クララ殿。聡明な貴女なら、すでに気がついているんじゃないか?
この戦いは、『敵』か『味方』かを計る一種の試金石だと俺は見ている。
そして『味方』なら、『頼りになる味方か、単なるお荷物か』を見分けるね」
「!? ……そ、それは……」
「クララ殿は、知っているかい? 内々に参陣を打診された際、イザヨイ宮はスケルトン系列の最大動員兵力がいかほどか明かしてくれた。俺は、先代の宮主と共に聞いていたんだが……、三万と少しはイケるらしい……。おそらくは、各宮にも同じく明かしているはずだ」
「!? さ、三万以上?! では、我らは騙されたのですか!」
「いや、そうではない。ベルザル単独の相手ならそれなりに持ち堪えられようが、それでも長期となるとイザヨイ単独では厳しいのだろう。加えてグラン王国が陥落して他の人間国家も進出してくるとなれば、この地域全体が危なくなる。まあ、先に手を打っておくって感じか……。この分析と対応は、俺も意見を同じくする。いずれ戦うなら今しかなかったのは事実だろう。
ああ、それと三万って数字は、あくまでも最大だ。補充を考えずに一気に数を揃えようとすれば、だそうだが……。これってゴブリンどもを帰順させたのも関係してるんだろうな。ちなみにその時点での領内に駐留している兵力は一万六千。つまり予備兵力は一万四千。このほかに領民も直接動員できることを忘れてはいけない」
「……」
「なあ。俺達はどうすればいい? いっそ『宮』ごと、イザヨイに帰順するのも悪い手ではないかもしれない。どう思う?」
「……」
・
・
・
ルイム・アスワム殿率いる歩兵隊二千が敵前衛約五千五百の側面を突くため進撃したが、相手の将も然る者【さるもの/侮れない者】で、即座に対応する兵団約二千五百を分派投入して応じてきた。
最初の接敵時の愚かな突出の意図がわからないが、それ以後の応手は見事としか言いようがない。
そんなことを思いつつ、いまは左の防壁上に上りルイム殿率いる歩兵隊の戦況を見ている。
予定通り、壊走した振りをしているルイム殿率いる歩兵隊を追って、敵の兵団が進撃してくる。
そして『風の加護』と『送風陣』により射程距離が増加した弓の攻撃範囲内に踏み込んでいた。
「まだよ……もう少し……もう少し……。
『左翼弓隊、斉射3連! その後は自由射撃。第一斉射、撃て!』
『魔術師隊、再度『風の加護』と『送風陣』をかけよ、効果持続時間に注意!』」
「クララ様、凛様より言伝【ことづて】です。
『マキナ隊出撃待機中。本営に戻られたし』とのことです」
副官のマメルが、言伝を持ってきた。
「あー、もう! 忙しいわね! 大体、総大将の凛まで出撃する必要があるの?」
「この作戦では、アイアンゴー……、失礼。マキナを一機でも多く投入したいのでしょう。凛様の隊の負担は重くなりますので」
そんなことを愚痴りながら、左翼の戦況を確かめるのだが……。
「……うん?
『左翼弓隊、矢衾【やぶすま/隙間なく一面に矢が飛ぶ様】が薄い! なにやってんの?! 相手は移動してるんだから、狙うんじゃなくて移動先を見越して矢を置いておくように射掛けなさい! そうすれば勝手に突っ込んで当たってくれる! 撃て撃て!』」
移動先を見越して矢を置くように射掛けろッ! などと自分で言ってはいるが、そう容易い事ではないことくらいは判っているのです。
それでも、ここにきてイザヨイ宮と各宮の練度の差が出始めてしまう。
正面に配されている弓隊はイザヨイの弓隊が中心で、両翼に配されているのは各宮所属の弓隊であり混成隊なのです。
そして、その右翼に配置されている弓隊から、部隊を抽出し左翼に集中投入しているのです。
ところが、そんな左翼弓隊はどうにも矢を射る速度が一定ではなく間隙が出始めてしまい、その間隙に合わせて敵が動き始めているのです。
敵の部隊は、確か国境警備に就いて居た精兵とのことですが、確かに良い動きをしている。
だからこそ、あの敵の先遣隊と思【おぼ】しき部隊の無謀な突出が解せない……。
まさか懲罰部隊送りになった死兵【境遇的に退路も無く、死を覚悟せざるを得ない兵】だったのかしら?
そして懲罰部隊の死兵を前進させて、矢の消耗を誘われた?
確かに弓矢の消費が急増したのは事実だが……。
いや、まさかそんな。……死兵を囮にしたというの?
普通、そんな事をする?
いや、普通の任務じゃないから、死兵を投入したのかしら?
そうだとするとあの後続の隊は、督戦隊【とくせんたい/敵前逃亡や降伏をする自軍部隊に対して攻撃を加え強制的に戦闘を続行させる任務を負った部隊】という事なのかしら……。
困惑しながら、そんなことを考えていると
「ク、クララ様! あれを!? 敵歩兵隊が、左門の正面五百の距離にまで接近しています! 信じられません。ルイム殿が見事、敵を引っ張って来ました!」
副官のマメルが、ある方角を指差しながら驚いている。
「なんですって!? すぐに開門して出陣させて!
『獣術士隊、剣歯虎【サーベルタイガー】隊を誘導して! 信じられないけど、敵が左門正面の距離五百まで来た!』」
それと同時にルイム殿より通信が入る。
「『ハッハー! クララ殿聞こえるか? 敵を引っ張ってきたぞ。この見事なまでの壊走を演じたんだ。主演優秀賞は、この部隊に決まりだな!』」
「『さすがです、ルイム殿! すぐに開門して剣歯虎隊を誘導し敵後方を遮断、敵部隊の退路を断ちます。そこで持ち堪えてください!』」
「『応よ! 任せておけ! それから右翼の『各宮』の歩兵隊から部隊を抽出してこっちに回してくれ。後詰めにする』」
「クララ様。剣歯虎隊五百、敵後方遮断のため左門より出ました。接敵するまで、およそ2フン!」
「よし!
『左翼弓隊、撃ち方止め! 撃ち方止め! こらそこ、撃ち方止め!
……止めろって言ってるでしょうがッ!』」
そのまま撃ち続けたら、味方にも当たるでしょうがッ!
こんなところでも、イザヨイの弓隊との差が出てしまっていた。
お読み頂きありがとうございました。




