プロローグ:男子、ガス爆発にて旅立つ。
R15はと残酷な描写タグは“保険”かも、です。
(※食べ物を扱うので一応)
その日は実に、有意義だった。
午前中は朝から大学で、200人前の給食実習。
40人クラスで男子が3人しかいないため、20人ずつの班分けで俺は女子19人に男1人…といった状況だ。
男は主に、力仕事。…のはずが、どういうわけか割り振られたキャベツの千切り。
危なっかしい包丁捌きで実習担当の助教の先生を戦慄させ、終わったら、担当であるデザートのブランマンジェが焦げ付かないよう、ひたすら木べらで大鍋の中身を練りつづけ。
悲喜こもごも、トラブルありナイスリカバリーありで出来上がった給食は、安いということもあり先輩方の食券買い漁りにて満員御礼、めでたく完売。
なぜかお客様には他学部の先生方までまじってた。…食券の横流しかな?
検食という名を冠した“昼食”を済ませて調理場を片付けたあとは、午後の研究室通いである。
本来ならば今日は飼っているラットさんのための餌作りをする予定なのだが、どうにも熱っぽいので、朝のうちに研究室の教授に早退願いを出し、許可をもらっておいた。
冷蔵冷凍室がある、準備室に居る研究室の同期の子と後輩に断りをいれると、俺は一人暮らしの自宅アパートに向けて歩みを進めた。
そして。
自室のあるアパートの2階に上がり扉を開ける。
「ただいま」を誰ともなく言い、玄関のドアを閉めた瞬間、爆音とともに身体が扉に打ち付けられ、身体が軋むのを感じた。
緩慢に進む時間の流れのなか、舐めるように身体を這い上がる焔を眺めながら、あぁ、と思った。
そういえば湯を沸かしたまま消すのをわすれていたな、と。
火災補償、どうなるだろう…
次第にまぶたが重くなり、俺の意識は闇に沈んでいった。