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イメージオブヒーロースピリット  作者: 桜崎あかり


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ヒーローの意味-A hero's meaning-

ピクシブ版ではバイクレース場の決戦(6話)とヒーローの意味(7話)で分離しているエピソードですが、小説家になろうでは7話のサブタイトルに統一して1つのエピソードにしております。


>更新履歴

・2015年5月23日午後11時18分付

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《我々の祈りは、かつてブラックホールの使者に倒された伝説のヒーローを、遂に復活させたのである。全ての原点にして…列強―》


『その名は、電攻仮面ライトニングマン!』


 劇場版でも流れたナレーション、その途中を知っていたホワイトナイトが流れているナレーションに自分の声をアフレコして、列強の部分より後はその場にいた、ヒーロー軍団全員で彼の名を叫んだのである。


「待たせたな。ここからが、本当の戦いだ」


 ライトニングマンが叫ぶと、ヒーロー軍団が一斉に動き出した。初代ライトニングマンが現れた事で、彼らの士気も上昇し、劣勢だった状況を一気に押し返したのである。


「まずは、彼らを何とかしてイクスライドをフォローしないと」


 アスナがブレイズハートにイクスライドを取り囲んでいる敵を誘導するように指示を出す。そして、誘導されてきた4体に対してアスナが指示を出した。


「ブレイズハート、リニアナックル!」


 ブレイズハートの右腕が変化し、超高速で放たれたロケットパンチが4体のライトニングマンのバリエーションを一気に撃破する。


「今度は、自分が!」


 ブルーウィンドがウインドブレードと肩に装着されたサーペントエッジを合体させた武器でライトニングマンのバリエーションを一刀両断にし、1体撃破した。


「先輩、危ない!」


 SFに出てくるようなシャープなデザインを持ったロボットがベースとなった、フリーズの強化型装甲ことナンバー9…。ブルーウィンドの背後を狙っていた1体を背中に搭載されているビット兵器で撃破する。


「まさか、自分の強化型装甲に助けられる事になるとは…正直複雑ね」


 助けてくれたコスプレイヤーにはお礼は言うものの、フリーズ本人としては複雑な気持ちだった。


「次は、俺が決めるか!」


 ホワイトナイトは、今まで使用していなかったフルパワーモードを発動する。発動時間は3分だが、1体を撃破するには十分な時間だろう。


「ナイトハンド!」


 フルパワーモードで変化した右腕を使った必殺技は、ライトニングマンのバリエーションを粉々にするだけのパワーを持っていた。


「どうやら、こいつらはリモコンで動いているロボットのようだな…」


 中に人がいなかったのを不審に思ったホワイトナイトは、今まで使っていなかったシルバーセブンを使う事にした。


「こいつの残ったデータを保存して、リボルバーに送っておいてくれ―」


『了解した!』


 シルバーセブンが残骸から残っているメモリーなどを保存して、リボルバーに転送を開始した。


 その他のヒーロー達も得意技などでライトニングマンのバリエーションを撃破する。そんな中で、初代ライトニングマンが他のライトニングマンをリモコンで操っている本体を発見していた。


「お前も同じライトニングマンならば、本当の正義と言う物を知っているはずだ!」


『正義と言っても、本来あるべき正義以外にもダークヒーローが持つ正義もある。全てがライトニングマンと同じ物を持っているとは限らないだろう―』


「確かに…私が伝えてきた正義と他のヒーローが持つ正義では異なる物であるのは間違いのない事実だろう。しかし、その正義は元々一つだった物だ!」


『いつまでも正義論を語り合っていても時間の無駄だ。これで決着を付ける!』


 ライトニングマンと話をしていたのは、意外な事にライトニングマンの2号となったライトニングマンSSだった。この巡り合わせは神のいたずらだったのか―。


『シューティングスターキック!』


「ライトニングキック!」


 2人のキックがお互いに交差する…。


 ダークエンジェルとイクスライドの戦いは続いていた。このままではイクスライドが不利なのでは…と言う状況で、誰かの声が聞こえたのである。


『お前の真の力は、そんなものではないだろう!』


 何処からかライトニングマンの声が聞こえた。次の瞬間にはイクスライドが輝き、周囲にいたヒーロー達もその光景に驚く。


『まさか、これは…!』


 ダークエンジェルが恐怖する。登場するのが大分先のはずの武器が…。


「これは、ゴッドブラスター…?」


 イクスライドが手に取ったのは、実際に本編で使われる物ではなく、クロスシステムで作り出したゴッドブラスターに近い武装だったのである。近い武装とは、ホーリーフォースのナンバー6であるショットが使うロングレンジビームキャノン―。


「いけぇぇぇぇぇっ!!」


 イクスライドがゴッドブラスターの引き金を引くと、高出力のビームがダークエンジェルに向けて放たれた。この威力の前では強化型装甲のコピーでも歯が立たず、ダークエンジェルの暴走は停止したのである。


 それから数分後、これらは全てCG等を駆使して製作された事が何故かネット上のつぶやきサイト等で流れていた。ヒーロー速報では、特にCG等に関しては言及されていないはずなのだが…。


「やっぱり、ホーリーフォースと同じような手法で黒歴史にするつもりね―」


 リボルバーは、ある人物へと電話する。その後に事情を説明し、ネット上に拡散している偽情報の出所を抑えるように指示した。


『既に別の人物が特定していたようで―少しの誤認情報は出たかもしれませんが、先程ウイルスを撃退した所です』


 リボルバーからの電話に出たのは、ドラゴンの覆面だった。


「特定って……自分は、つい数分前にミカドから情報をもらったばかりだけど」


 リボルバーには訳が分からなかった。偽の情報を流して黒歴史にしようと考えているらしい―という情報を聞いたのは、ドラゴンの覆面へ電話をかけようとしていた数分前の事である。


 それが、最小限で抑えられているという事は…既に数時間前には出所が特定されていない限りは不可能である。


『自分もメタトロンさんが作業をしている時にミカドさんから連絡が入って、複数の不正サイトが作られて、そこから情報が流れているらしい…と』


 どうやら、ドラゴンの覆面も何のウイルスを撃破しているのかはミカドの連絡が来てからだったようだ。それ以前にメタトロンが漫画喫茶に仕掛けられたウイルスを発見、それを不思議な力で除去していたのである。


「本当に不思議な事もあるものね――」


 リボルバーはドラゴンの覆面にサーバーの差し押さえと漫画喫茶に残っているデータの残骸の回収を要請、一連の事件は一部を除いて何とか解決したのである。


 その夜、リボルバーはメタトロンと言う単語が気になってネット上を調べた。その先でたどり着いたのは、個人の小説サイトのようだったが…?


###


 9月15日、午前中にはコンテスト部門のヒーロー投票の結果が発表される。その後には、初代ライトニングマンや歴代のスーパーヒーローを交えたヒーローショー、ホーリーフォースによるスペシャルライブ等も行われる予定だ。


 その一方、今回の事件に一番関わったとされるダークエンジェルが逮捕された。ダークエンジェルと言う名前ではなく、本名で公表された為に一部の人間以外は、この事実を知る事はなかったようだ。


 ヒーローショーの第一部が終了し、そこで歴代特撮俳優のトークショーが行われた。その場に現れたのは、山札カツミ、本郷カズヤが2人、蒼空ハヤテの4人だった。


「ああ、そういう事だったのか―」


 ミカドが何かについて納得していた。それが何なのかアスナが聞いてきたが、それに関しては無視する事にした。


「今回のヒーロー&ヒロインフェスティバルは色々な意味でも大成功だったと言えるでしょう。私が草加市長に色々と相談し、その他にも声をかけたスポンサーやホーリーフォースの皆様…本当にありがとう、とお礼を言いたい程です―」


 本郷の話を聞いて、アスナとフリーズが疑問を持つ。ホーリーフォースの事務所に本郷カズヤの姿はなかったはずだが―。


「リボルバーが本郷にメールで連絡を取っていたらしい。そして、ブレイズハートをはじめとした設計図を提供し、それに加えて一連の事件で謎になっていた部分も…彼が判明してくれたような物だ」


 ミカドが若干の脚色を加えて種明かしを二人にする。設計図の提供は本当の事らしい。


「僕も少しですが、カズヤさんのアシスタントをしました。まさか、あの本郷カズヤさんと一緒にこういった事に参加できたのは非常にうれしく思います」


 そう話すのは、リメイク版のライトニングマンで本郷カズヤを演じた俳優。彼も今回の一連のイベントに関係していたようだ。


「私はスケジュールの都合で、今回は参加できませんでしたが、次のチャンスがあれば参加してみたいです」


 ハヤテの言葉を聞いて、ミカドは疑問に思った。イベント会場であったハヤテと彼は別人なのか…と。


「今回のイベントでは様々なヒーローが、それぞれの思いを持って部門別に参加したりしてくれました。中には、勝利の為には手段を選ばず…と言うような手法でポイントを荒稼ぎや投票の操作を画策していた人物も存在しました。その為、本来のイベント趣旨とは違う方向になるのを百も承知でポイントに関しては途中から集計を行わず、投票に関しても該当の人物には委員会の方から指導勧告を出す事で、事件に発展せずに何とか無事に終了しました―」


 カツミのコメントからは、どのイベントにもいる荒らしと呼ばれる人種の存在や、何処かのアイドルグループと被るような人気投票の操作などが浮き彫りになった。


 トークショーが終了した後には、ホーリーフォースのスペシャルライブが行われた。スケジュール等の都合で、アスナ、フリーズ以外に会場入りできたのはナンバー11、ナンバー12、ナンバー3、ナンバー4の合計6人になった。


「今回はスペシャルライブに来てくれてありがとうございます。ヒーロー&ヒロインフェスティバルには初登場になりますが、このような機会を与えて下さった関係者の皆様に感謝をしたいと思います―」


 最初にフリーズがスクール水着のようなインナースーツを着用している。これは、強化型装甲を装備する際に着ている衣装である。


「さぁ、ステージの始まりよ!」


 フリーズが指をパチンと鳴らすと、彼女の背後にフリーズの強化型装甲が姿を現す。それ以外にも、スーパーロボットをベースにしたナンバー12、西洋騎士を連想させるデザインのナンバー11、戦国時代の侍を基本デザインにしたナンバー3、忍者ロボを元ネタにデザインされたナンバー4の強化型装甲も同時に現れる。フリーズ以外の4人は既に強化型装甲を装備済みである。


「私達もライトニングマンのヒーロースピリットを受け継ぎ、活動していく事をここに宣言します! これからも応援よろしく」


 最後に姿を見せたのは、8枚の翼を連想させる誘導兵器に三又の槍を連想させるビームスピアを持ったナンバー13こと瀬川アスナが駅ビルの屋上からゆっくりと降りて来たのである。


 彼女はナンバー1としての顔も過去に持っていたが、現在はナンバー13として活動するのがメインになっている。


 特撮ヒーローのようなアイドルというコンセプトを持って生まれたホーリーフォースは男性ではフルパワーを発動出来ず、最終的には女性が装着する事が前提とした物へと変更されていった経緯がある。


 一方でレスキューギアは、災害救助等を特化して開発が進められていたと言う。本来は誰でも装着できる事をメーカーも売りにするつもりだったらしいのだが、開発が一時期中止に追い込まれた時、開発部の1人が偶然にもホーリーフォースのデータを手に入れたという…。最終的に、このデータは競争他社がこの技術を流用する際に欠点をどういう形で克服するのか等を調査する為の物だったらしい事が、後の警察調査で判明した。


 そんな週刊誌や色々なネットの掲示板でも議論を呼んだホーリーフォースとレスキューギアの存在。これらが戦争の道具に利用される恐れはなかったのか…。過去に議論された際はホーリーフォースにはプロテクト等が厳重にされており、流出しても技術応用は不可能だと言う―。その一方で、レスキューギアにはプロテクトは用意しなかった。他の国等へ売り込むのにプロテクト等は不要と判断した結果だろう。


「力は使い方一つで正義にも悪にも変化する事が、今回のヒーロー&ヒロインフェスティバルを通じて証明された。人間が誤った使い方をしなければ、レスキューギアはホーリーフォースが失敗した過ちを繰り返す事は―」


 トークイベント終了後、大物俳優はレスキューギアの事件に関しては、ヒーロー&ヒロインフェスティバルとは無関係とコメントを発表した。


 ホーリーフォースのイベント終了後、バイクレース場を調べていた警察は押収したパソコン等から、ダークエンジェルの情報を入手したのである。それによると、彼女は過去に瀬川アスナが在籍した事もあるアイドルグループに在籍していたという―。


 9月16日以降、新聞やスポーツ紙等はイベントの成功よりもダークエンジェルの逮捕や超有名アイドルとの関係等を連日報道していた。これは、政府が一番懸念していた部分でもあり、下手をすれば…という状況でもあった。


「やっぱり、こうなったか」


「週刊誌の売上アップ狙いだろう」


「また、音楽ゲーム楽曲や同人シューティングゲームの楽曲がクローズアップされる時期になるのか―」


 ネットでは色々な声が出ていた。ヒーロー&ヒロインフェスティバルの成功等を報道しているのはごくわずか…と言うよりも一部のコミュニティだけと言ってもいい状況になっていた。


『それは、本来の問題を別の問題に向けさせて最終的には闇に葬ろうと考えている―』


 大物俳優は、自身の所属する団体を通じてダークエンジェルの一件は、本来危険視されるべきレスキューギアの話題を出させない為の陰謀である…と彼は訴える。


 この発言をめぐって、レスキューギアを推進派と反対派で大論争になり、遂には政府に売り出す事までも明らかにされたのである。


「我々としては、レスキューギアが某企業を通じて購入の検討をして欲しい、と報告があった事は事実ですが、実際に政府公認で売り出す部分は全くの事実誤認と―」


 一連の大論争に対し、政府はレスキューギアの購入検討を薦められた事は認めたが、政府公認とする部分に関しては否定し、最終的には総理大臣がレスキューギアに技術流用及び欠陥個所があるのでは…と調査を要請したのである。


『関係会社って、何処があったか?』


『資本提供だけで複数社、超有名アイドルをプロデュースした事のある事務所がメインだったらしいが…』


『これで、しばらくは動けなくなる―』


 関係会社を調査した結果、政府野党に多額の裏金が回っていた事実、レスキューギアのCMに資本提供をしている超有名アイドルを起用、更には特番編成…と色々な事実が浮上する事になった。最終的にはレスキューギアの開発は中止される事になった。現在の状況で開発を困難と判断したのか、トカゲのしっぽ切りなのかは不明であり、調査中との事だった。


 9月20日、草加駅近くの映画館で緊急の記者会見が行われる事になった。レスキューギアの開発中止に加え、ダークエンジェルの逮捕、更にはヒーロー&ヒロインフェスティバルにない事が噂される等の被害も拡大しつつある。このままでは情報戦に潰され、これからのイベント開催にも支障が出るような気配さえある。そんな状況を、大物俳優は懸念していた。


「何だ、アレは…」


「アレは確か―」


 会場となるホールの入り口から現れたのはサーチ補佐官だったのである。何故、彼がこの会場に現れたのか記者達は戸惑う。


「皆さんにお集まりいただいたのには、理由があります―」


 中央の舞台に登壇したサーチ補佐官は、そう切り出した。このタイミングで重要な話と言うと…ひとつしかない。


「10月にもヒーロー&ヒロインフェスティバルを開催する事になりました!」


 サーチ補佐官が発表したのは10月にもヒーロー&ヒロインフェスティバルを開催すると言う事だったのである。そして、補佐官がヘルメットを取ると、そこから顔を見せたのは大物俳優だったのである。どうやら、前回のイベントで登場したサーチ補佐官は彼だったようだ。密かにイベントの進行を見守っていたと言う事だろう。


「今回のイベントでは、運営上に若干のミスがあった事、下手をすれば一部芸能事務所の話題つくりのイベントに利用される可能性があった事は否定できません―その上で、さまざまなヒーローやヒロインを支持してくれているファンに対して、改めてヒーローとは何なのかを伝える為にも10月にもイベントを開く事を決意いたしました―」


 芸能事務所の話題つくり、スポンサーの商品を売る為の宣伝材料…様々な要素がヒーロー&ヒロインフェスティバルにあった事はまぎれもない事実だと肯定した上で、彼は10月にもイベントを開催する事を発表したのである。改めてヒーローとは何なのか、それぞれのヒーローやヒロインが抱えている問題は何なのか…。今度はパネルディスカッションのような物も追加して内容を充実、更にヒーローの事を深く知ってもらおうというイベントにするのだと言う。


 今回の大物俳優による記者会見はネット上でも生放送で配信されており、イベントの開催を歓迎する者が半数を占めていた。一方で今回起こった事件が再発しないような仕組みを確立するように…と注文を付ける場面もあった事は事実である。


「事件が再発…と言っても、全く起こらないと言う事はあり得ないだろう。それこそ、人のやる事である限り…」


 ミカドは思う。事件が全く起こらないと言うのはあり得ない。再び起こらないように再発防止策を行ったうえで、発生確率を減らすのが限界なのでは…と。


「政府としても、レスキューギアのような事は2度と起こって欲しくはないと…総理も思っているようでした―」


 事務所にやって来たドラゴンの覆面が、今回の一連の事件に関して報告をする。本来のホーリーフォースの技術流出という部分としては失敗と言う事だが、その技術を流用して作られたレスキューギアの開発中止に追い込んだ事は拾い物だった。


「事件は何度も繰り返す…という言い方をしてよいのかは分からないが、繰り返させない努力をする方が一番大切だろう。若い連中が学習してくれれば…」


 ミカドは若干愚痴っぽくなりつつも、大物俳優が目指すべき道筋に関しては賛成のようだった。


『次回は、ヒロイン路線とかよさそうな気配がしますが…』


 そんなコメントをネットの生放送でもらったのは蒼井隼人の中の人だった彼女―青井春香あおい・はるかである。


「次回はまどかも出るらしくて、今回はコスプレ予定だった作品がNG受けていた―とか本人は言っていたような…」


 春香の言うまどかとは、コスプレコミュニティ主の名前である。まどかが出るならば…と春香も同じ作品のペアで出る予定があったからだ。しかし、エントリー可能作品からは残念ながら弾かれていたという結末が待っていた。原因はエントリーしていたゲームブックにもなっている某作品のキャラの衣装がセクシー過ぎたかららしい。全裸ではないのだが、流石にブラジル水着を思わせるようなデザインの水着が―。


「結局、あれが影響して一か八かと言うのもあってレッドプラズマをやったら、これがエントリー可能になっていたのが…全ての始まりだったのかなぁ…って」


 春香は、裏では記者会見がOAされている中でヒーロー&ヒロインフェスティバルの感想を話していたのである。


「次回は、どうしようか…」


 10月にもヒーローヒロインフェスティバルが行われると聞いて、少年は再びイクスライドをやろうか…と考えていた。


「今度は、本人も来る噂が浮上しているから…別のヒーローを模索するか―」


 彼は、公園のベンチで考えていた。


「ここも案外楽しかったと思う。何かの機械があれば、今度は別の人物でも呼んできたい所だ」


 同じ公園の別のベンチに座っていたのはメタトロンだった。彼の目の前には、フリーズとアスナの姿があった。


「結局、彼女は現れなかったな―」


 メタトロンの言う彼女とは、レッドプラズマの蒼井の事である。


「彼女にも事情があるから、この辺りは仕方がないとは思うけど…」


 フリーズは言う。メタトロンの話では、彼のいた世界でも同じような名前をしたメイド服の女性を見かけたのだと言う。


「まぁ、楽しかったよ。今度は、君達が私のいる世界にでも着て見るかい?」


 メタトロンは誘いを入れたが、フリーズもアスナも断った。今の世界で自分にできる事がある限りは、ここで頑張っていく……と。


 そんな話をしていると、春香が駆け足で現れたのである。生放送終了後、自宅の前を横切る彼の姿を見たのだと言う…。


「これ、似合いますか?」


 春香は着ていた上着を脱ぎ、何と黒のインナースーツ姿になったのである。彼女がおかしくなったのではなく、この世界を去ってしまう彼に一目見て欲しかったのだと言う…。


「なるほど……。確かに、彼女を上手く再現出来ていると思う。本人に会う機会があれば伝えておく事にするよ」


 上着を脱いだ時にはどういう反応をすればいいのか分からないメタトロンだったが、彼女の格好を見て、ある一人の女性を連想したのである。それに対して、彼女に会う事があればメッセージを伝える…と答えた。


 しばらくすると、メタトロンの気配は完全に消えてしまった。何が原因だったのか未だに分からないでいるフリーズだったが…。


「ここは、何処だ…? 今まで、何をしていたのだろうか」


 目を覚ました彼は、ルシファーと言うアスナにとっては戦友とも言える仲だった。外見はメタトロンそっくりなのだが…。


「不思議な事があるのですね……」


 事情を聞いたフリーズは驚きを通り越して…と言うような表情をしていた。ルシファーは草加駅にあるスタジオで新曲収録を終了した際に倒れ、そこで記憶は少しの間途切れている。その後、草加市内で色々な情報を収集し、春香に出会った。その後は、平日に収録していなかったヒーロー&ヒロインフェスティバル用の担当分ナレーションを収録したのである。ナレーションだけでもオリジナル声優を起用し、その数は50人以上。ある意味でこういったおまけのような部分にも力を入れていたのが、このイベントが成功したきっかけになったのかもしれない。


「その後は、漫画喫茶にドラゴンの覆面を案内した所はわずかに覚えているが、そこから先は―」


 どうやら、メタトロンとルシファーでは意識の共有がされていない部分もあり、一部の記憶が不完全のようだった。


「結局、アレに関しては解決していないような気配がする―」


 本来の目的は初代ライトニングマンがヒーロー&ヒロインフェスティバルで変貌したらしい…というつぶやきサイトの情報を確認してカツミはイベントへと向かったのである。


「しかし、真相は謎のままだったな―。一部で流れていたヒーロー&ヒロインフェスティバルに関する話も、一部の超有名アイドルのファン等による暴走が根も葉もない話をつぶやいていき…最終的には、あの事件が起こるまでに至った」


 カツミの隣でコーヒーを飲んでいたのはリメイク版ライトニングマンの本郷カズヤを担当した俳優―。


「父の知り合いが初代本郷カズヤの俳優と兄弟で…彼がライトニングマン最終回の脚本を担当した。その路線で暴走したのでは…と考えていたのだが、実際はそんな事実は存在していなかった事が初日に分かった。メタトロンと言う人物が教えてくれたのだが、聞き覚えはないか?」


 カツミも実は初日にメタトロンと遭遇しており、そこから一連の事件はつぶやきサイト等を悪用しての情報戦を展開しようとしていたのでは…と思った。


「メタトロン…。そう言えば、1冊の本にメタトロンと言う人物が出ている話を聞いた事があるのだが―」


 彼がカツミに見せた本、それを見たカツミは驚きを隠せないでいた。彼の持ってきた本には一連の事件が、これになぞられていたのでは…と思わせるような部分もいくつか見受けられたからだ。


「強化型装甲にも似たような装備、真犯人は超有名アイドルを思わせるようなポジションに…メタトロンか」


 その本には、メタトロンと言う人物が登場していた。彼のポジションは語り部であり事件の真犯人と真相を話す役割を持った―。


「この本に関しては偶然かも知れないが…10月のイベントは、想定されるような事態を何とか防ぐような体制を作る必要があるのかもしれない―」


 カツミは思う。今回の事件で学んだ事を教訓にして、同じような事を起こさないような体制をつくる事は重要である…と。二度と起きないようにする…という発言の後に同じ事件が起きてしまっては、信用問題になるかもしれない。


 10月12日、10月のヒーロー&ヒロインフェスティバルが幕を開けた。


「これが、新たなるスタートだ!」


 カツミの開会宣言を聞き、観客の盛り上がりは最高潮に達していた。


「まさか、また呼ばれる事になるとは―」


 ミカドは再びホワイトナイトとして、ヒーロー&ヒロインフェスティバルの会場に姿を現した。周囲からは歓声も聞こえる。


「とりあえず、前回のファン投票で1位になった分は頑張らないと…ね」


 今回のアスナは、ブルーウィンドのコスプレで登場。これはフリーズが参加しないと言う事ではなく、アスナが一度着てみたいと要望をだしたからである。


「これならば、今度は…」


 前回はレッドプラズマでエントリーしていた春香、今回はホーリーフォースのナンバー5ことダークネスレインボーで登場した。それに対してのまどかはナンバー9ことフリーズで出場するのだが…。


「本当に、このコスプレが来るとは…」


「そんな衣装で大丈夫か?」


「大丈夫だ、ここはヒーロー&ヒロインフェスティバルだからルール違反ではなければ問題ない」


 観客に囲まれていたのは、フリーズだったのである。何のコスプレで参加したのかと言うと、ミカドが前回に発言したエンプレスセイバーの女騎士…。


「私は負けない!」


 騎士の装備は、上半身がブレストプレートに加えて重装備なのだが、下の方はインナースーツとブラジル水着のようなV字ラインが特徴になっている。


「エンプレスセイバーでエントリーする人が本当に来るとは―」


 春香もフリーズのコスプレを見て驚きを隠せないでいた。それ以上に悔しいのは前回で同じようなコスプレを考えていたのに参加出来なかったまどかの方かもしれない。


「これは凄い対決だな―」


 観客が街頭スクリーンのヒーロー速報を見て驚いていた。何と、電攻仮面ライトニングマンEXRIDEが2人いるのである。


『先輩だからって、負けませんよ!』


 ゴッドアームを装備しているイクスライドに向かって話すのは、オリジナルキャストのイクスライド。そして、もう一方のブレイズハートを呼びだしている方が最初にイベント参戦したイクスライドである。


『オリジナルキャストだからと言って、手加減をするつもりはありません! 全力で行きます』


 お互いの激闘が始まろうとしている瞬間だった。


 その一方で、パネルディスカッションや講座といったイベントが行われているのが、今回のイベントの特徴でもあった。


 内容に関しては、ヒーロー&ヒロインを取り巻く環境、ライセンスビジネスをどう変えていくべきか、レスキューギア事件から学ぶべき事、シリーズ物ヒーロー作品が抱える現状等…。講座を行う先生も豪華で、特撮作品に関係した有名俳優やデザイナー等も大勢参加した。これらの講座は人数制で、無料の物から1000円と言う料金設定まで色々な物が存在する。


「過去にはライトニングマンがあこがれのヒーローだと言う子供たちが大勢いました。今ではあこがれのヒーローと言うと海外で活躍中のサッカー選手や野球選手の名前が出てくると思います。その中にはホーリーフォースのフリーズも入っているという―」


 会議室で登壇しているのは、リメイク版ライトニングマンで本郷カズヤ役を演じた人物である。名前は、皆本トウマ…。


「みんながあこがれるヒーローは、人それぞれであり同じではない…。過去にライトニングマンがあこがれのヒーローと言っていた人たちは、今、この瞬間にもヒーローとしてライトニングマンの意思を受け継ごうとしているのかもしれないわね―」


 リボルバーは1冊の本を読みながら、ヒーロー速報をチェックしていた。


 本のタイトルは【ヒーロースピリット】で作者の名前は本郷カズヤ―。

瀬川アスナシリーズは、ヒーロースピリットで一つの物語は終わりを告げた。


しかし、超有名アイドル問題は解決したと断言出来ない。今、改めてコンテンツ業界を見直すべきと考える人物もいるだろう。


果たして、超有名アイドル商法を変える事のできる人物は現れるのだろうか…。

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