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ダークヒーロー―Dark hero―

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・2015年5月23日午後10時48分付

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 9月8日、自宅にいた蒼井はテレビを回しながら着替えていた。


「もうすぐ、ライトニングマンエクスライドが始まるか―」


 出かける準備をしながらテレビを視聴しているのだが、再チェック用にHDDデッキにも録画済みである。そんな中、オープニングテーマが流れる中で一つの違和感があった。


「どういう事なの―?」


 それは、エクスライドの主人公であるハヤテのクレジットを見た時だった。デュエルブレードのレッドデュエルは間違いなくオリジナルキャストだったのに…である。


「じゃあ、あの場にいた蒼空ハヤテは…?」


 

 受付の方では、連日の混雑具合…という状態だった。イベントが来週の土日でラストと言うのも混雑具合が凄い事に拍車をかけているのかもしれないが…。


「あの作品は数年前にDVD化された…」


 蒼井は偶然見かけたヒーローを見て、あの当時にDVD―BOXが買えていれば…と思った。


 今回に限った事ではないが、ヒーロー&ヒロインフェスティバルには数多くのヒーローやヒロインがエントリーされている。その中には、深夜に放送されていた特撮作品やネット上でもマイナーと言われるようなヒーロー等が必ずと言っていい程に登場する。


「今回も何かの形で再評価されれば―」


 そんな事を思っていた蒼井の目の前に現れたのは、ヴァンパイアのコスプレをした1人の男性だった。ドラキュラのコスプレは多数存在するが、マントのデザインや杖を持たない部分を見る限りでは…。


「有名ヒーローを倒して、大量のポイントを得る―」


 彼の口から何故かポイントと言う言葉が出てきた。ポイントは怪人を倒す事で得られる物であって、ヒーローを倒すと逆にペナルティが発生するはずなのだが…。


「何か別の方法は―」


 蒼井が閃着のポーズを取ろうとした、その時に何者かが複数人で乱入してきた。姿を見る限りでは、あの時に現れたレスキュー部隊そっくりの謎の人物に似ているのだが…?


「こいつら、まさか…!?」


 ヴァンパイアの方が若干おびえているように見えるのは気のせいだろうか。彼らは無言でヴァンパイアを1分足らずで撃破したのである。撃破したのを確認すると、彼らは何処かへと向かうように消えていった。


「あれが、ネット上でも言われていたレスキューギア―」


 レスキューギア…近年増加する凶悪犯罪の規模拡大や危険なエリアでの災害救助を目的とした特殊パワードスーツを実用化する為に複数のセキュリティ関係の会社等が集まって開発を急いでいる話がある。それに使われている技術の中にホーリーフォースの強化型装甲に関する物が使われているのでは…と週刊誌が報道していた事もあったが、真相は闇の中に消えている。


「ネット上でも写真や実験中の動画を見た事があるけど、あれは…」


 蒼井は何かを懸念していた。レスキューギアが量産され、それが戦争の道具に利用されてしまうのでは…と。


 その頃、県内にあるバイクレース場を借りて一連の状況を見守っていたのは、黒髪に眼光の鋭い眼、ジャケットという外見の本郷カズヤである。彼は過去に電攻仮面ライトニングマンとして地球の為に戦ったと言われており、特撮界でも英雄とされている人物の一人である。


「あのレスキューギア、何処の所属か分かるか?」


 モニターでレスキューギアのバトルを見ていたカズヤは隣にいるナンバー5の強化型装甲を装備している女性に声をかけた。


「レスキューギアは複数の企業が合同で製作した所までは判明していますが、それ以外は全く―」


 彼女の報告によると、セキュリティ関係や情報コンテンツ系の企業が合同で計画を進めた事と出資したのが資本金1000兆円規模にも及ぶ某芸能プロダクションである事だけだったのである。そう簡単には尻尾を掴ませない…という所だろうか。


「こちらとしては、莫大な金や名声等を手に入れる為だけのヒーローにはヒーローと名乗る資格はないと思っている」


 しばらくすると、彼の元に1体の小型ロボットが姿を見せた。黒のカラーリングをしている部分、悪役のようなメカデザインが特徴になっているようだが…。


『例の連中がこちらの周囲を嗅ぎまわっているようだ。どうする?』


 どうやら、こちらの動向を探っている存在はレスキューギア以外にも複数存在するようである。しかし、カズヤは一部に関しては放置していても問題はないと判断している。


「レスキューギア以外は、特に目立った動きを見せない限りは手を出さない方がいい。逆に返り討ちになってしまっては、作戦が台無しになってしまう―」


 カズヤはレスキューギア以外の何かに警戒しているような…そんな感じの口調で彼女に指示をした。


「しかし、ホーリーフォースは―」


 カズヤの指示に対して不満を見せる彼女だったのだが…。


「ダークエンジェル、君はホーリーフォースが何を調べているのか知っているのか?」


 ダークエンジェルの慌てる様子を見て、カズヤは何か自分の知らない情報を持っているのでは…と思った。


「いえ、全く…」


 本来の目的を見破られる訳には…とダークエンジェルは判断し、この場は何とかごまかす事にした。


「君には、引き続きレスキューギアと我々の周囲をうろついているネズミの監視をお願いしたい。出来るな、ダークゼロ」


『心得た』


 カズヤは小型ロボット…ダークゼロに指示を出し、自分は別の部屋へと移動した。


「ホーリーフォース―瀬川アスナだけでも許すわけには…」


 カズヤがいなくなった後、ダークエンジェルは何かをつぶやいた。しかし、この一言はダークゼロによって録音されていた。


 レスキューギアに関しては、カズヤ以外にもホーリーフォースが調査を開始していた。


「まさか、向こうから現れるとは…」


 アスナもレスキューギアの方から行動を起こした事に関して驚きを隠せなかった。


「ホーリーフォースが政府と組んで強化型装甲技術を開発していた頃には、向こうは何も行動をしていなかった―。理由の一つには政府と組んでいた事が後ろ盾に思われていたのかもしれないが―」


 過去にもレスキューギアがホーリーフォースの技術を盗用している疑いが出ていたのだが、当時は政府という後ろ盾の影響で動けなかったのでは…とミカドは推測する。


「政府に睨まれては開発したレスキューギアも宣伝が出来なくなる。そんな判断を当時はしたのかもしれない。しかし、計画は途中で挫折―理由は開発費が底をついた事だった」


 開発費を理由に計画が止まったレスキューギアが、今になって開発ラインを再開して実用化レベルまで完成させた事にはミカドも驚いていた。ホーリーフォースでも強化型装甲の技術を実用化する為には長い時間がかかっているからだ。


「そして、実際に運用されたのはナンバー9を含めて―ナンバー5、ナンバー1等のわずか数体にとどまっていた。それだけ強化型装甲を量産ラインに乗せる事が困難を極めていた―」


 フリーズは思う。2010年に運用が開始されたホーリーフォースも、政府等の資料では12体全てが強化型装甲を使用しているという表記がされているが、実際は一部分に使用した物が半数で、アスナの使っていたナンバー1、フリーズのナンバー9、それ以外にはナンバー5とナンバー6、ナンバー7の限られた物に限って強化型装甲をフル使用していたのである。それだけ、量産ラインを完成させるのに時間がかかっていた。


「向こうの目的は、何処かにレスキューギアを売り込む事だろうが―」


 ミカドが話している途中で現れたのは、超人ブレードシリーズのデザインをベースにした5人組のヒーローのようだが…?



「今、レスキューギアの話をしていたな。こちらは連中を何とか倒したいと考えているのだが、協力してくれないか―」


 レッドの人物がミカドに協力を要請するのだが、彼らの様子を見てミカドはすぐに要請を断る事にした。


「申し訳ないけど、レスキューギアには関わらない方が―身の為よ」


 アスナは既にブレイズハートを起動させた状態で待機していた。流石のレッドもブレイズハートを相手では…と退却を考えていたのだが―?


『我々を探していたのは、お前達か?』


 そこに割り込む形で登場したのは、青のレスキューギアだった。他にも黄色、黒、ピンクがいる。しかし、この場にはレッドがいなかった。どうやら、4人で行動していた所を例のチームに目を付けられたようだ。


「丁度いい所に来た。お前達を倒せば…俺達が優勝するという事だ!」


 レッドの言葉を聞いて驚いたのは意外な人物だった。


「まさか…ルールが変更された?」


 アスナが驚く。途中でルールの変更があったのか、偽物の情報に踊らされているヒーローなのか―どちらにしても確実な情報を得なくては、下手な行動は出来ない。


「この場にレッドが不在なのが気になる。お前達は何処かにいるレッドを追え!」


 ミカドが既に交戦中となっている超人ブレードの5人には聞かれないように、無線でアスナとフリーズに指示を出す。


 その戦いを見ていたのは、大物俳優とリボルバーだった。2人は2階のハンバーガーショップで食事を取りながら何かの話をしている途中だったのだが…。


「手を貸さなくていいのか? 仮にも同じ仲間が戦って―」


「レスキューギアの狙いは、他の有名なヒーローやヒロイン、ホーリーフォースは有名だけど…狙うのは最後にするつもりみたいね」


 大物俳優が手を貸さなくていいのか…とリボルバーに尋ねたが、全てを話す前に彼女は手を貸す必要はないと答えた。


「あれだけのデータ、本当にこっちにも流してよかった物なの?」


 リボルバーは設計図のデータ提供を受けた事について、どうしてホーリーフォースに提供したのかを聞こうとしたが…。


「あのデータは、元々はホーリーフォースで実用化する予定だった物。返却をするのは当然の事だが―」


 彼の返却と言う言葉に疑問を持ったが、一応は信じる事にした。


「ホーリーフォースの技術は政府の後ろ盾があった時代には、盗用が発覚しただけでも会社が潰されるような事態が起こりそうな状態だった。実際には、周囲が沈黙していた事で潰されると言う事は回避された―」


 リボルバーは、政府の後ろ盾があった時代にも極秘に入手したデータを利用していた企業が存在していた事を話した。当時は政府の後ろ盾もあって無用なトラブルを避けようと言う流れで誰も訴える事はなかった。


「それだけ、当時はホーリーフォースの技術を喉から手が出る程に欲しがっていた―と言う事ね。政府がホーリーフォースから撤退した現在でも、密かに政府関係者に第2のホーリーフォースとして認めてもらおうと言う動きはある。断言は出来ないけど、レスキューギアも同じような目的で動いて―」


 リボルバーがコーヒーを飲み終わった辺りで外にも動きがあった。アスナとフリーズが別行動を取ったのである。外でレスキューギアと戦っているのは、5人チームのヒーローとホワイトナイトのみである。


「そろそろ、こちらもお開きにしますか」


 リボルバーはハンバーガーが入った袋を片手に、1階へと降りて行った。


「政府関係者…その辺りも調べてみるか」


 大物俳優は、持っていた携帯電話をテーブルに置く。数秒後には携帯電話はロボットへと変形―その姿は、ダークゼロに酷似しているようにも見えるのだが…?


「このイベントに参加している政府関係者をリストアップして欲しい―」


『了解した』


 声が似て…と言うよりも同じ為か、人形劇をやっているようにも見える光景が展開されていたのだが、周囲の客は何も見なかったかのようなリアクションをしている。


 フリーズとアスナは周辺を捜索している途中でレスキューギアのレッドを発見したのだが、向こうの逃げ足が素早くて追尾するのがやっとという状態だった。ブレイズハートの方はホバーモードに変形して追尾した方が速いと思われるが、ホバーの方が人を乗せた状態では上手く動作しない弱点があった。


「やっぱり、逃げられた―」


 フリーズがレーダーにレスキューギアの反応がなくなった事をアスナに伝える。


「どういう事なの…?」


 アスナは目の前にあるスクリーンに流れているヒーロー速報を見て、驚きを隠せなかった。何と、先ほどまで追跡していたはずのレスキューギアのレッドが別のヒーローと戦っている様子が映っているのである。


「右上のアイコン、アレって確か…」


 フリーズが映像の右上にあるアイコンを指さして、まさか…と思う。アイコンにはLIVEと書かれており、何処かのエリアで戦っている様子が生中継されているという証拠である。


「まさか、レスキューギアは複数存在しているという証拠―?」


 仮に量産ラインが完成されていた場合には最悪のプランも考えなくては―アスナは自分達が思っていたよりも事件は重大な物に変わろうとしている事を、ヒーロー速報を見て思った。


 9月9日、ホーリーフォースの事務所にはドラゴンの覆面の姿があった。リボルバーが重大なデータを渡したいと言う事で、彼を呼んだという事らしい。


「これを警察へ持っていって情報の解析を依頼したいけど…頼めるかしら?」


 リボルバーが彼に手渡したのはメモリースティックだった。


「このメモリースティックは…?」


 リボルバーは中身が何かを尋ねようとするドラゴンの覆面に対して、無言でスティックを渡した。


「では、私はこれで―」


 ドラゴンの覆面は何かを急ぐかのように事務所を後にして、近くの警察署へと向かっていた。


「何を渡した? 機密書類か?」


 ミカドがリボルバーに尋ねるが、彼女が答えをあっさりと言うような気配ではないのは既に分かっていた。


「とりあえず、ブレイズハートの調整は終わったわ。ホバーモードも使用可能になっているはずよ―」


 リボルバーは、再びデスクワークに戻り何かの書類をチェックしているようだが…。


「レスキューギアに関しては、色々と黒い噂が後を絶たない。そんな噂が出てくるようなヒーローに需要があるのかどうか―」


 今日の新聞でもレスキューギアの完成披露会が明日に開かれると言う事で、記者会見の模様がカラー写真で掲載されている。そこには何故か有名アイドルとツーショットになっているレッドの姿があった。


「資本金を出しているという芸能プロが何処かと言うのは…特定されている物か」


 ミカドは、やはりか…というような表情でつぶやいた。

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