ホーリーフォース-The force-
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・2015年5月23日午後10時25分付
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《9月1日、草加市にてヒーロー&ヒロインフェスティバルが行われていた。それは、草加市が過去に電攻仮面ライトニングマンのロケ地としても有名だった事がイベント開始のきっかけとされている。実際、生誕20周年というタイミングで第1回が行われ、その時には大勢の家族連れやファンが集まったという…》
「あの重装備はホーリーフォースの…?」
この一言を聞いて、ある人物が蒼井の目の前に現れた。彼は実際に歩いて来たのではなく、何かの転送装置を使ったかのように現れたのである。
「ホーリーフォースか…」
蒼井の前には黒服を着た身長180センチ位の体系がスマートな男性がいた。
「私の名前は―メタトロン、過去に何かしらの事件で聞き覚えのあるような名前かもしれないが、向こうとは関係はない―」
彼―メタトロンが指を鳴らすと、二人は近くの喫茶店に転送された。彼も何かの特撮に出ていた登場人物だろうか…と蒼井は思う。
「あなたの目的は何ですか? ホーリーフォースは政府から分離したとはいえ、その技術は国外流出を恐れて謎のままになっている部分も多いと聞きます。その情報を聞きまわっているという事は―」
蒼井は直球で彼に尋ねた。ホーリーフォースに関しては色々と情報が不明確な部分が多く、それを追求しようとした政治家数名が謎の襲撃を受ける…というニュースも過去にあったからだ。その為、ホーリーフォースの情報は知らない方が良い…と内部事情に詳しい人物は言う。表向きになっている強化型装甲を装着した特撮系アイドル以上の事は存在しないとするのが普通だったからだ。
「私は残念ながら、この【世界】に詳しくはない。今回のイベントを一回りし、参加者やギャラリー等の証言を聞いただけに過ぎないのだが―ホーリーフォースが狙われているという話を聞いた―」
蒼井もメタトロンの発言を聞いても分からない事だらけである。彼の話を聞いて分かったのは、ホーリーフォースの技術を使って何者かがプロジェクトを進めているらしい事と、草加市内ではホーリーフォースの強化型装甲が使えないという事だけである。
「ライトニングマンの亡霊が、この街にヒーローやヒロインを実在化させているという話がある―。君も例のパンフレットは持っているようだが…」
メタトロンが持っているパンフレットは一般向けや参加者向けとは違っている特殊な仕様だった。
「登録しているヒーローやヒロイン等の能力が現実になっている原因は…?」
特殊仕様のパンフレットをパラパラとチェックしている蒼井は書かれていた内容に衝撃を受けていた。
「これだけの物を草加市だけで作る事が出来るか…と言われると不可能だろう。過去に大きなイベントをやった時には民間の技術提供もあったようだが、この技術は民間だけで簡単に完成させるには難しい代物―」
メタトロンはコーヒーを飲みながら、蒼井と話を続ける。この技術がホーリーフォースの流用である事は疑いの余地はない…と。
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同時刻、メタトロンと同じ疑いを持っている人物が秋葉原のホーリーフォース事務所にいたのである。
「ヒーロー&ヒロインフェスティバル…?」
記者向けのパンフレットを目の前にいるドラゴンの覆面をした政府秘書に渡されたミカドは、また面倒事を押しつけるのでは…と思っていた。
「我々としても本格的な調査をして、技術が流出していない事を確かめたいのですが、政府が介入する事でイベントが中止になるような事があれば、草加市や関係各所からの抗議は確実でしょう―」
ホーリーフォースは過去にあった一連の事件等を踏まえて、現在は政府とは無関係の組織と言う事になっている。その為、彼女たちならば何とかしてくれるのでは…と総理も判断したのである。
「こっちも、調べようとは思っていたが…」
ミカドは事務室にあるテレビのスイッチを入れて、DVDプレイヤーに1枚のDVDをセットした。映像は、ナンバー5ことダークネスレインボーが草加市へ潜入をしようとしていた時の映像である。
「これは…?」
ドラゴンの覆面は表情には出さないが、目の前で起こった事に驚きを見せた。
「市内に入ろうとすれば、強化型装甲が機能停止してしまう。機能が止まれば、ホーリーフォースにとっては鬼に金棒とも言える強化型装甲は、ただのお荷物になってしまう。こんな状況で調査すると言うのは無茶な注文だと思うが―」
ミカドの発言中、横やりを入れるかのように現れたのはセミショートの髪型に背広と言う人物―瀬川アスナだった。
「確かに、強化型装甲では市内へ突入しようとしても機能を無力化されるのは事実。機能を無力化されないような特殊装備で調査をすれば…特に問題はないでしょう」
アスナは発言の後に、資料の束をミカドとドラゴンの覆面の目の前に置いた。その量は週刊漫画雑誌5冊分という所か。
「既にリボルバーさんが、今回のヒーロー&ヒロインフェスティバルにエントリー可能な特撮ヒーロー等を調べてもらっています。参加者にまぎれる事が出来れば、調査も可能ではないでしょうか?」
アスナの提案を聞いて、その手があった…と2人は思った。ホーリーフォースのダミースーツを使う手もあったが、これは別の意味でもギャラリーの目を引いてしまう為に逆効果と思っていたからだ。
数分後、スケジュール的に草加市へ向かう事の出来るメンバーに招集をかけた結果、アスナ以外には1名が集まったのみであった。
「さすがに急なスケジュール変更は、無理だったという事か―」
ミカドも頭を抱えるが、この辺りは仕方がないと判断した。
「強化型装甲が使えないと言う事は、どうやってこの会場へ…」
唯一、アスナ以外でイベントに参加出来るのはフリーズだけになった。改造メイド服を私服に、銀色のショートヘアにメガネ―彼女の外見はその手のファンにとっては、あこがれの的にもなっている。
「そこで、これの登場―ヒーロー&ヒロインフェスティバルにエントリー可能なヒーローをリストアップした資料よ」
アスナが束になっている資料の1冊を手にとって説明する。どうやら、ヒーロー&ヒロインフェスティバルにエントリー可能な作品をピックアップした物らしい。
「リボルバーがイベントの参加条件をチェックして、その後に登録可能な特撮作品等をリストアップした物だから、ここに入っている作品は間違いなく登録可能―」
「この資料にない作品はエントリー不可能と言う事ですか?」
アスナが説明している途中でフリーズが挙手をして質問をする。
「個人のホームページで発表しているオリジナル作品、海外のライセンス作品は無条件で参加不可能―。海外作品は当日限定で許可を取るケースもあるけど、その際は手数料等が取られる。それ以外にもご当地ヒーローに代表されるような物、ご当地のマスコットキャラクター、非戦闘系作品アニメやゲーム、原作がアダルト作品の物は登録不可能―。アダルト作品に関しては全年齢対象として移植されていれば、その仕様としての参加ならば許可がされている…。他にも色々と条件があるけど、この資料にリストアップされている作品なら問題はないと思う」
アスナがフリーズの質問に答える。非戦闘系アニメやゲームは通常のコスプレイベント等と違い、本来のヒーロー&ヒロインフェスティバルの趣旨と異なる為、ご当地ヒーローやマスコットは都道府県から使用許可が下りるか…という事情が存在する。
「ご当地ヒーロー等が許可されていないケースは、草加市としても今回のイベント趣旨に反する…と考えているのかもしれない。都道府県の使用許可という点も一理あるのは間違いないのだが―」
ミカドは、今回のイベントが草加市の許可を得ているという点に注目していた。草加市も市のマスコットキャラがいるのだが、今回のイベントに限っては登場させない事を約束している。そう言った点も、ご当地ヒーロー等を断っている理由なのでは…と。
アスナ、フリーズ、ミカド、ドラゴンの覆面という4人以外にも事務所には事務担当のスタッフ等が数人いるのだが…彼らから見ても4人が本当に仕事をしているのか―と疑っても良いようなオーラを4人のいるスペースから感じ取っていた。
「日本のスーパーヒーローの走りとも言える白銀ウルフはOKなのか…。紙芝居や白黒アニメ辺りで知名度は高い物では―」
ミカドが気になっていたのは、白銀ウルフという狼のマスクにマント姿と言う元祖スーパーヒーローだった。この作品は1950年代に誕生したヒーローであり、ライトニングマン等のご先祖にも当たる。彼の強さは文字通りの無敵とも言える存在―最近ではカラー放送されたアニメ版等がネットでも気軽にみる事が出来る。しかし、知名度はあってもデザインが目立ち過ぎて作戦には合わないと判断された。
「これなんかどうでしょうか…電攻仮面ライトニングマンシャドウ―」
ドラゴンの覆面が気にしていたのは、電攻仮面ライトニングマンの昭和時代ラストとも言える作品、ライトニングマンシャドウだった。デザインはライトニングマンとほぼ一緒だが、ブラックを主体としたカラーリングに特徴がある。
「ライトニングマンも該当するが、超人ブレードシリーズ、時空騎士団、レスキュー部隊みたいな長期シリーズ物は人気シリーズである以上、かなりの人数がエントリーするのは予想出来るわ。見分けが可能で、調査も行いやすい作品にした方が有利なのでは―」
フリーズがシリーズ系は色々な意味でも避けた方が良いのでは…と提案するが、それを却下したのは意外な人物だった。
「確かにライトニングマンはシリーズ物と言う事で多くの参加者がエントリーするのは確定でしょう。しかし、逆にエントリーが多い作品だからこそ敵に気付かれずに作戦を行える…という風には解釈できませんか?」
フリーズの発言に意見したのは、何とドラゴンの覆面だったのである。彼の言う事には一理あるのは間違いない。エントリーが多ければ多い程、気付かれる確率も低くなる。反対に、エントリーが少なければ早いタイミングで特定されて作戦が失敗する事も考えられる…。結局は、フリーズもドラゴンの覆面の意見も正論である―と判断し、特に人気作品と言う事で反対する事は止めることにした。
10分が経過し、ようやく1名の作品が決定した。
「人気作品でも大丈夫…と言う事ならば、これはどうだ?」
ミカドが見つけたのは、ホワイトナイトと言うSFに出てきそうなパワードスーツを着た中年のおっさんにも見える人物―。
「自分が好きな作品を指定されても困るのですが…。着るのは私達―」
フリーズがミカドに向かってツッコミをしようとしたのだが、その途中に割り込んできたのは全長20センチ程の四角形ベースのロボットだった。
『今回は他のメンバーのスケジュールも入っているから、非番になっているミカドさんにも行ってもらうわ。その方が、こちらとしても色々と動けるので―』
この声の主は、資料をまとめていたリボルバーである。割り込んできたロボットに付いているスピーカーユニットから声が出ているらしい。
「ホワイトナイトって―確か、最近になって第3期が放送されたアニメですよね。今も放送中の作品で大丈夫ですか?」
フリーズが懸念していたのは、現在放送中のアニメや特撮作品もエントリー可能なのか…という点だった。
「こっちだって、作戦に適したコスプレを探すのに手いっぱい―」
ミカドが逆ギレ気味の状態でフリーズに向かって反論する。作品としては第2期までは終了しているという事で、ミカドのコスプレはこの作品に決まった。
「所で、ホワイトナイトってどんな作品ですか?」
フリーズがミカドに質問する。彼のお気に入りと言う事もあるが、それ以上に聞き覚えのないタイトルだったのも若干気になっていたからだ。
「スポンサー付きのヒーローと言う事で、一昔前のホーリーフォースと似たり寄ったりになるかもしれないが―」
時代は近未来、ヒーローは過去に存在していた物とは形を変え、1企業のイメージキャラクターとして定着していた。それぞれの企業は自社の商品を売り込む為、企業イメージを上げる為、ヒーローのイメージアップの為等の目的を達成する為にヒーローコロシアムという戦いの場を作り出し、それぞれのヒーローが戦うように仕向けるのだが、その方向性に疑問を持ったのが、ホワイトナイトだった―。ミカドがストーリーを簡略化して3人に説明する。
『確か、この作品って深夜アニメで放送されて―ネット上で爆発的にヒットしたという話があるみたいね。前回辺りのヒーロー&ヒロインフェスティバルでは登場するヒーロー達のコスプレイヤーが大勢いたのを覚えているわ―』
説明の後に若干の補足を入れたのはリボルバーだった。前回のイベントでは、第2期も放送されていた時期に開催されていた為にコスプレイヤーも多かったという…。
次にコスプレが決まったのはアスナだったのだが…。
「アスナの場合は、ヒーロー物よりも…こっちの方が似合って―」
ドラゴンの覆面が指さしていたのは、プラスデビルという作品に出てくる暗殺者の主人公、サクヤだった。衣装としては、セーラー服に悪魔の翼、全長2メートル以上はあるような巨大な刀だった。
「アスナは、このタイプの方が似合っていると思うが―」
ミカドが3人に見せたのは、エンプレスセイバーというゲームブック作品なのだが、登場する女性キャラの露出度が物凄い事になっているのが特徴である。露出度を抑えたアーマー装備の女戦士や忍者もいるのだが、この作品の最大の特徴は―。
『この作品はコスプレイヤーも多くて需要があるかもしれないけど、さすがにアスナでは無理があると言うか…』
リボルバーが若干言葉を選ぶような形でミカドを何とかしようとしている。エンプレスセイバーの特徴としては装備破壊と言う物があり、それがキャラによっては―。
「確かに、それも一理あるか」
ミカドは自分が選んだホワイトナイトを取り下げられるのでは…と言う思いから意見を取り下げた。その一方でフリーズは色々と資料を探し、1つの作品を見つけた。
「これなんかどうでしょうか?」
彼女が見つけたのは、ブレイズハートと言うロボットに近いようなデザインをしたヒーローが主人公の作品だった。
「それは、さすがにイベントに出せるかどうか問題があるような―」
ドラゴンの覆面が懸念していたのは、ブレイズハートが変身ヒーローとは違い、完全なロボットである事だった。本来の主人公である少年はブレイズハートを修理後、アンノウンと呼ばれるコンピュータウイルスに襲われているのだが…。
「ブレイズハートは、元々ホバーユニットだった物が3メートルの巨大ロボットに変形すると言う―主人公の少年は、コントロールユニットで命令を出しているだけだったような気配もします。仮にブレイズハートを実用化出来たとしても、会場まで持ち込めるかどうかという部分も…」
ドラゴンの覆面が言う事にも一理ある。ブレイズハートは主人公の少年がコントロールユニットに指示を出して動かすタイプのリモコン系ロボットである。リモコン系ロボットと言っても、半分位は自分の意思を持っているらしく、主人公のピンチに駆けつけた事もあった。
『実は、既に製作済―』
リボルバーが完成したブレイズハートの写真をテレビに送信する。その完成度はオリジナル以上なのでは…という気配さえある。
『ただし、公道では走らせる事は出来ないので草加市内に持ち込む…という事になる可能性は否定できないので、この辺りはどうするか悩む所ですが―』
唯一の問題点は輸送をどうするか…という箇所にあるとリボルバーは言う。アスナは特に衣装を気にする必要がないという利点もある為、ブレイズハートに決定した。
唯一、コスチュームが決まっていないのはフリーズだけなのだが…彼女が悩んでいたのは強化型装甲と極力同じ感覚で戦えるようなヒーローだった。
「ナンバー9は、元々射撃タイプに属する強化型装甲…とはいえ、射撃系の特撮ヒーローと言うのはサポートキャラが比較的多く、主役系と言うのは少ないと思うが―」
ミカドの言う事も一理ある。特撮の主人公は大抵が素手か武器を使用した近接格闘メインで、銃火器に代表される遠距離武装はサブで使う場合が多い。他のシリーズでは、必殺武器にバズーカ砲が登場するケースも存在するのだが、基本的に5人チームで運用をするケースが大半であり、単独運用と言うのは非常に稀である。
「これは、どうでしょうか?」
アスナがフリーズに資料を手渡す。まとめた冊子の中から取った物ではなく、アスナが独自にまとめていた資料らしい。
【インフィニティ・ブレイカー】
手渡された資料を見る限りでは、他のSFアニメ作品とは違うような異色のスーツデザインや武器等が目立つように思える。それ以外にも特撮では見かける割合の少ない鋭いエッジが特徴のアーマー等は、ヒーロー&ヒロインフェスティバルには不向きなのでは…と意見が分かれるような気配を感じる。
「デザインは他のSFヒーローのタイプとはずいぶん違うようですが…」
フリーズは従来のSFアニメテイストなデザインとは若干かけ離れたパワードスーツのデザインに驚くばかりだった。
「これは確か、特撮系のデザインを担当していた人物がスーツデザインをした事で有名になった作品だったな…」
ミカドも若干の見覚えがあり、スーツデザインを担当した人物が特撮作品のスーツデザイン等も過去に担当していたと言う。
「特撮系のデザイナーが担当した、全く違ったタイプのスーツデザインか―」
フリーズは、これならば自分の思い描いていた動きも可能なのでは…と思っていた。
【地球上に突如として現れたアンノウン、現代兵器も無効化する正体不明の敵に誰もが地球は終わりだとつぶやく。そんな状況を覆したのが、無限のエネルギーを持つというヒーロー、インフィニティ・ブレイカー…】
作品の説明を見てみると、最近のアニメも特撮色をメインにしたのか…というような印象をフリーズは受けた。
「この作品は本編の途中で、アンノウンが宇宙人ではなく地球で作られた兵器であるという内部事情の暴露が…」
ドラゴンの覆面は若干だがあらすじとは別に内容の補足をする。アンノウンは宇宙から来た生命体等ではなく、実は地球側がインフィニティ・ブレイカーの有効性をアピールする為だけに作り出した存在である…と。
「そう言った意味では、今までの超有名アイドル等による事件の多くは自分達が莫大な利益を得る為だけに…という部分があったのかもしれないだろう。それは、アイドルではなくヒーローでも例外ではない―」
ミカドは、インフィニティ・ブレイカーの一件と今まで起こった超有名アイドルによる事件を重ねて、何かを話そうとしていたのだが…。
『フリーズは、ブルーウィンド―。後でスーツのサイズ合わせをするから、私の部屋まで来てね…』
ミカドの話に割り込みをかけたのは、リボルバーだった。その後、四角いロボットは携帯電話へと変形したのである。
「リボルバー、ロボットが携帯電話に変形したが、これはどうすればいいんだ?」
ミカドの質問にリボルバーは、電話越しに答える。
『この電話はシルバーセブン、特撮とはちょっと違うけど一応はイベントでも登録されている作品だから、持ち込みしても特に問題はないはずよ。私との連絡は、このシルバーセブンを通じて行ってね』
どうやら、この携帯電話もヒーロー&ヒロインフェスティバルにエントリー可能な作品に登場するヒーローらしい。どうやって作ったのか…という驚きもあるのだが、一応はコスプレも決まったので、今回は解散と言う方向になった。
「我々もイベントが中止にならない範囲で警戒はしますが、期待には答えられないと思います―」
政府が介入する事で今回のイベントが中止になれば、他の類似イベントを含めて大幅に規制されるのでは…という動きが広まってしまう事も否定できない。これは、地域経済の活性化が遅くなってしまう原因にもなりかねないだろう。
「それ以前に、向こうのイベントは過去にアイドルがメインになっていた特撮番組をドラマ扱いにしてエントリー不可にしたという前例もある―」
過去にヒーロー&ヒロインフェスティバルに解明する前の例だが、ある特撮番組が有名アイドルをメインにしていた為に、審査手順を一部スキップしてドラマ扱いとしてエントリーから除外した経緯がある。実はホーリーフォースに関しても同じような事情で除外される危機があったのだが、こちらに関してはファンの支持や説明等で除外を回避されている。
「有名アイドルを起用しただけでも、利益を得る為に…とか、広告塔に利用されているのでは…とか疑われるような現状では、本当の意味でのヒーローやヒロインが何人存在するのか―という話にもなるか」
ミカドがドラゴンの覆面に対し、今のアイドル事情とヒーロー事情は一緒なのでは…と本音を漏らしていた。
「時代によって、ヒーローは何かを訴える為に戦い続け、そして子供たちや大勢のファンに愛されてきた。視聴率やグッズの売り上げなどは2の次だったのが、今では…」
ドラゴンの覆面もミカドの本音に流されるかのように、不安を漏らす。
「それでもヒーローは、必死になって何かと戦い続け、人々の助けとなっている。本当は表舞台に立っているヒーローより、裏舞台で戦っているヒーローが多い―」
ドラゴンの覆面の言葉に対し、ミカドは自分の言葉で答えた。