ヒーロー&ヒロイン祭り―Hero & heroine festival ―
※この作品はフィクションです。地名は一部が実名になっておりますが、実在の人物や団体等とは一切関係ありません。一部でノンフィクションでは…と突っ込まれる要素もあるかもしれませんが、この作品におけるフィクション扱いでお願いします。
※コメントに関しては『ほんわかレス推奨』でお願いします。それ以外には実在の人物や団体の名前を出したり、小説とは無関係のコメント等はご遠慮ください。
※ピクシブ版と同様に、一部で固有名詞になってしまう関係上で変更している単語があります。変更前の名称に関してはホームページで掲載中のヒーロースピリット本編の方をご覧ください。
※小説家になろうへ投稿するにあたって、各話にエキサイト翻訳の英文を追加しております。 それに加えて、一部のセリフ(コメント)を変更している個所があります。
※第1話のみ、サブタイを小説家になろう仕様で変更しております。まさか、サブタイトル被りが出るとは…。
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・2015年5月23日午後10時21分付
行間+各種微調整
『彼は、地球を救う為に宇宙からやってきた伝説のヒーローである―』
ネット上ではあまりにも有名なナレーションの一部―今から45年前、ある特撮番組が大ブームとなっていた。その名は…。
【電攻仮面ライトニングマン】
当時の少年たちにとっては、実在のスポーツ選手等よりもヒーローと言えばライトニングマンを挙げる割合が多かったのである。
電攻仮面ライトニングマンとは、埼玉県内で起こった謎の怪人による事件が発生、それらに対抗出来る手段を持たなかった地球人を見て、自分の力ならば…と宇宙からやってきたヒーローである。身長は170センチ台と地球人と同じ位なのだが、彼の能力は地球で存在するどの兵器での倒す事の出来なかった怪人軍団をあっさりと撃破出来る程に想像を絶する物だった。
主な必殺技は100万ボルト以上の電撃を怪人に叩きつけるライトニングパンチ、超高速のジャンプと急降下キックで相手を貫くハイパーライトニングキック等…。
普段は県内の喫茶店で本郷という仮の姿としてバイトをしており、怪人に関係する事件が起こるとライトニングマンに変身して現れた怪人と戦うと言う基本的な流れの中で子供たちにも分かりやすいドラマ展開、題材等が広く受け入れられ、同時間帯にやっていたドラマ番組よりも視聴率は高かったらしい。
そのライトニングマンを語る上では、最終回は外せない存在だろう。最終回直前で悪の秘密結社を壊滅させたライトニングマン、彼の目の前に予告もなく現れたのは、異星人の集団だったのである。
ブラックホールの中から現れたという異星人の集団。彼らの放った戦闘員クラスのザコにも苦戦するライトニングマン。遂には親衛隊長らしき怪人との戦いでライトニングマンは力尽きてしまった。
「ライトニングマン…遅かったか」
親衛隊長が健在の中で現れたのは、ライトニングマンとデザインコンセプトが似ているヒーローだった。彼は、高速とも言えるような動きで親衛隊長を軽々と撃破し、ライトニングマンの元へと駆け寄る。
「私は…この力を回復させる為にも、しばらく眠りにつかなくてはならない―」
ライトニングマンからのメッセージを受け取った彼は新たにライトニングマンを名乗る事になった。後の、ライトニングマンシューティングスターである。
そして、翌週からは電攻仮面ライトニングマンSSとしてスタートし、昭和を代表するヒーローとして定着したのである。
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昭和が終わり、時代は平成に移り変わった頃―特撮ヒーローはライトニングマンシリーズ以外にも、様々なヒーローやヒロインが現れては消え…というサイクルを繰り返していた。そんな状況の中で、西暦2010年にはホーリーフォースと言う特撮要素を取り入れたアイドルが誕生した。今までは架空の世界だけの物とされていた物が―強化型装甲製のパワードスーツの出現で特撮内だけの存在だったヒーローをより近い現実の物へと変えていった。
ライトニングマンシリーズのロケ地として有名となった草加市、ライトニングマンの生誕20周年には特撮ヒーローが一堂に集まったヒーロー祭りを展開、その後は毎年開催をしていたのだが、最近は熱心なファン等のみで新規客層を獲得するにはインパクトが不足していたのである。
『ホーリーフォースのようなショー的な要素を取り入れれば―』
『一般参加者もコスプレが出来るように参加資格を緩和―』
さまざまな意見を取り入れ、近年では2日間でリピーターを含めないで2万人程だった来場者が5万人に増えたのである。
『今年はライトニングマンの生誕45周年というメモリアルデー…。去年のヒーロー&ヒロイン祭りを超える物を行いたい』
運営委員会も、今年がライトニングマンの生誕45周年に加え、ライトニングマンが秘密結社を壊滅させた日が丁度9月1日と言う事もあり、ヒーロー&ヒロインフェスティバルとイベントタイトルを変更、更には古今東西のヒーローやヒロインの展示等を強化することで一致した。
草加市も、新たなる街おこしイベントを行うにしても予算的な事情、組合等との企画会議がスケジュール通りに進んでいない等の理由がある為、何とかしてヒーロー&ヒロインフェスティバルを草加市公認のイベントにして観光客を呼び込もうと考えていた。
ホーリーフォースで成功した東京23区と埼玉県の実例、その他にも草加市は過去に音楽データの運び屋を動画サイトと協力して全国ネットで中継したという事もあり、今回のヒーロー&ヒロインフェスティバルは初めてのイベントと言う訳ではなかった。
『では、ゲストの方は―』
委員会の方は順調に進んでいた。
8月31日、イベントを明日に控えている中で妙な事件がネット上に掲載されていた。
【ライトニングマン伝説の最終回に、実は商業的な駆け引きがあった?】
内容はライトニングマンの最終回に関係する物で、シューティングスターとの交代劇はライトニングマンを継続放送しようと考えていたテレビ局側、新シリーズで商品展開を更に強化しようとする玩具メーカー側の駆け引きが影響して完成した物では…と。
『1号ロボが倒された後に2号ロボに乗り換え、2号ロボと次回作の主人公が助けに入るような展開ならばロボットアニメではよくあるケースなのだが…』
『まさか、この手の交代劇を特撮で見る事になろうとは―』
『当時はインターネットもなかった事を考えると、それだけライトニングマンの交代劇が衝撃的だったのかは分かる』
ネット上でも、このタイミングでライトニングマンの交代劇に関する話が今頃になってピックアップされる事になったのか…謎に包まれたままだった。
そんな中、ある女性コスプレイヤーのホームページに設置されている掲示板に妙なメッセージが書かれていた。
【お前を必要としている人物がいる】
このホームページへ来た訪問者にとってはメッセージの意味が理解出来ない一方、このホームページの管理人である女性コスプレイヤーにとってはメッセージの意味が理解できていた。
「これの事か…」
彼女の手元には、ヒーロー&ヒロインフェスティバルのチラシがあった。本来であればイベントでのコスプレは…と思う彼女だったのだが、今回は謎のメッセージやネット上に出回っているニュース等を見て、裏では何かあるのでは…と思っていた。
その一方で、同じニュースを見て誰かに電話をかけている人物もいた。
「ロケは既に今回分は収録済…ならば、特に自分が日曜に出ていても大丈夫だな?」
彼も、今回のヒーロー&ヒロインフェスティバルに何かある…と思っている人物―。
9月1日、既に草加駅は大勢の参加者であふれかえっていた。事前受付でエントリー済みのメンバーは5000人以上、今日の駅に集まっている3000人規模に近い人数は当日参加のキャンセル待ちや事前受付で書類不備となって、当日に再提出をする参加者が半数だった。
「書類に関しては受理いたしました。システムに関しては、こちらのパンフレットをご覧になっていただければ、すぐに把握出来ると思いますので―」
受付の女性も特撮ヒーロー作品に登場したサブキャラ等のコスプレをしている。仕事を選べなかったのかな…とは思いつつも、黒いジャンバーにジーパン、白のスニーカーという一見して特撮ヒーローを思わせるような格好をした女性が受付を終えて、辺りの様子を見ていた。
「パンフレットを見る限りでは、戦闘員クラスはCG、ネームド幹部に関しては実際に使用されたスーツのレプリカを使う…と言う事みたいだけど―」
数百メートル歩いた所で、彼女は敵の気配を感じ取った。これも、今回のイベントの仕様なのだろうか…と。
「貴様のようなロートルヒーローに遅れを取るようなハンソーク帝国ではない!」
彼女の目の前に現れたのは、ビデオカメラのような頭部にマントと言う特徴的なデザインを持つ、ハンソーク帝国の幹部であるサーチ補佐官―。
「この私、蒼井隼人の本当の実力を見せてやる!」
本来はオレという一人称だが、周囲は違和感なく目の前にいる蒼井隼人をギャラリーが受け入れる。ハンソーク帝国と言えば本来は別の作品に出てくる悪の組織―。今回のヒーロー&ヒロインフェスティバルでは原作と同じ善玉と悪玉の対決が行われないようにマッチングの調整が行われている。これが今回のイベントで最大の特徴のようだ…。
「さすがにドミノ兵では無理か―!」
サーチ補佐官の目が光りだし、そこから現れたのは蒼井が見覚えのある怪人だった。
「本来であれば、今回の作戦では別世界の怪人を召喚するのがルールだが、これは一種のサプライズと言った所だ―」
彼がサプライズとして召喚したのは、80年代頃を思わせるような古いデザインをしたロボットだった。蒼井の方は、まさか…と言うような顔をしている。
「時空犯罪者キングレコーダー…!」
《時空犯罪者、それは宇宙や異世界等で犯罪を起こしている者の総称である。彼らは特定の身体を持たず、犯罪を起こす惑星に存在する無機物と合体する事で実体を持ち、犯罪を起こす―。キングレコーダーは地球にあるカセットレコーダーと玩具のロボットを合体させて誕生した時空犯罪者である》
何処かで聞き覚えがあるような声が設置されているスピーカーから流れて来た。これも一種のサプライズなのだろうか?
「まさか、あのパンフレットに書かれていたあの項目は…?」
蒼井は思った。今の声は間違いなく当時の番組で使われていたナレーションである。目の前には第1話に登場した時空犯罪者、本当に偶然とはいえ出来過ぎなのでは…。
「一か八か、やってみるしかない!」
蒼井は右手をグーの状態にして空に向かって右腕を突きあげる。そして、すぐに突きあげた腕を振りおろして叫ぶ―。
『閃着!』
叫んだあとで蒼井は、まさかの光景を目の前にして声にも出せないような驚きを感じていた。目の前に見える光景は、全てバイザー越しの物だったからだ。そして、彼女は頭の中で覚えているポーズを構える。
『時空騎士団、レッドプラズマ!』
《蒼井隼人が時空騎士団レッドプラズマに閃着する時間は1秒よりも早く、一般の人間が変身プロセスを確認する事は困難である。そんな変身プロセスを、スローモーションを使ってもう一度見てみよう―》
蒼井が閃着と叫んだ直後にナレーションが流れ、周辺にある特別モニターには彼女がレッドプラズマに変身する一連の流れがスローモーションを駆使して再現されていたのである。彼女が閃着と叫んだと同時に、地球上にある時空騎士団の母艦がスーツを転送する位置を固定、その後にハイブリッドスーツを転送、蒼井にメタリックレッドをベースとしたハイブリッドスーツが装着され、時空騎士団レッドプラズマに変身する。
スローを駆使して約15秒という一連の流れが瞬間的に行われていたという事実は、周囲のギャラリーも驚き、更にはサーチ補佐官も衝撃を隠せなかったのである。
「原作とここまで同じなのか…」
「脅威の再現度だな」
「ひょっとすると、強化型装甲アイドルの技術が流用―?」
変身プロセスを見ていたギャラリーからは色々な声が聞かれた。ホーリーフォースの技術が流用されている可能性があるのでは…と思う者も何人かいたようだが…?
《時空騎士団、はるか未来から地球へやって来た彼らは、地球へ逃亡した時空犯罪者の逮捕と彼らを手引きした組織を壊滅させる為に現れたのである―》
レッドプラズマの名乗り後、再びナレーションが流れだす。この一連の流れを見て当時を懐かしむファンも少なくはない。今、目の前ではハンソーク帝国と言う第3者の存在はあるものの、間違いなく時空騎士団レッドプラズマの第1話が再現されていたのである。
「がんばれー!」
「カッコ良かったぜ、姉ちゃん!」
「本物のレッドプラズマみたいだ―」
様々な声が彼女にかけられるが、肝心の本人は極度の緊張で上手く動けないでいる。しかし、この動きがわずかに第1話とリンクしている…と言う風にこの光景を見ていたファンは語っている。
『レッドブラスター、転送!』
レッドプラズマが叫ぶと、1秒も満たない時間で小型の光線銃であるレッドブラスターが転送されてきたのである。
《レッドブラスター、リミッター解除の許可が時空騎士団から出る事によってフルパワーを引き出す事が出来る。実際のフルパワー時には、時空犯罪者を瞬時に粉砕可能である》
ナレーションが流れる中、手際良くレッドプラズマがザコを次々と撃ち落とす。時空犯罪者相手には、ダメージこそ与えられるのだが…致命傷には至らない。
『こうなったら、この技を使うしかない―』
左腕のアーマー部分から1本の棒のような物が射出され、レッドプラズマが右手に持つと、赤い光で出来た剣が現れた。そして、レッドプラズマは時空犯罪者にめがけて突撃をする。
『必殺、レッドプラズマスマッシュ!』
《レッドプラズマスマッシュは、母艦より転送されるプラズマブレードによる、レッドプラズマが放つ一撃である。その一撃は時空犯罪者の実体を消滅させる程の威力を持ち、通常では使用が認められない、文字通りの必殺技である》
レッドプラズマの一撃は、見事に時空犯罪者を一刀両断―。その様子を見ていたサーチ補佐官と残った戦力は撤退していった。
「これが、私のあこがれていたヒーロー…」
スーツが再び転送され、元の姿に戻った蒼井がつぶやく。ここまで原作と同じ能力が再現可能なのだろうか―と。
変身を解除してから数分後、重装備をした女性がこの場に現れた。本来であれば、この場に出現したハンソーク帝国の刺客は彼女が倒すような流れだったのか…という気配も見られたのだが、何かを確認しただけで姿を消してしまった。滞在時間10秒の間の出来事だった。
「自分の手柄を横取りして…」
彼女が、そんな事をつぶやいているようにも見えたのだが、気のせいだろう―。
「あの重装備はホーリーフォースの…?」
蒼井は見覚えのある重装備の女性に、ホーリーフォースのナンバー5であるダークネスレインボーを重ねていた。しかし、デザインの細部やカラーリングはオリジナルと異なっている部分もある為、本物と言う訳ではなく単なるコスプレか試作型か量産型なのでは…という結論に至った。




