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Red Blue~灼碧の瞳~  作者: 麦畑葉月
始まりの刻-。
9/13

第一部 第四話 逃亡へ-。⑥

これで、完全に第四話終了となります。次回は、第五話です<m(__)m>

 司は恐怖を抱きながらもその真面目な性格からだろうか。翌日には、ちゃんと高校へと登校したのだった。たくさんの生徒がいる中、優人の姿が目に入った司は、ホっと安心のため息を吐いた。今の司にとって優人だけが心の拠り所となっていた。最近の同じクラスの友達は、とてもじゃないが一緒の空間でいれる気がしないのからであった。彼らの雰囲気は、日ごとに混沌とした雰囲気が醸し出されていた。

 司は優人に近付くと、彼は司に気付き振り返るとニコリと嬉しそうに微笑んだ。

 

 「おはよう司!ちゃんと来たんだな!!!」

 「そりゃあな・・・。今日くらいは出ないといけないだろ。」

 「まあね~」


 そうだった。今日は、終業式なのだ。宿題などが出るので、それを聞いたりとか見たくもない真っ赤なファイルに包まれた通知表ももらわないといけなかった。御霊に対して、とてつもない恐怖を感じているのは確かなのだが、自分の心の中で何処か大丈夫だろうという気持ちも同居していた。おかげで通知表も怖いと感じ、今日しぶしぶ来たのである。


 「しかし、司は御霊が怖いと思っているはずだから。来ないと思ってたんだけどね。意外と余裕があるんじゃないの?御霊に対してさ・・・。」


 司は優人のするどい指摘に関心して頷いてみせた。確かに御霊に対して司はかなりの余裕を感じていた。正直のところ、自分の何処にこんな余裕を感じる部分があるのか自分でも不思議な気持ちである。優人はそんな司を何故理解るのかも司の不思議に感じるところであった。最近の司の中で優人は、遥のような立ち位置に感じるときがあった。彼女が死んでからは特にそう感じていた。


 「そうかもしれない。けれど思ったんだが、お前ってそんなに俺の事理解ってたか?この旅行の前には、そんなこと無かった気がするんだけどさ。」

 

 司のそんな問いに優人は困ったように微笑んだ。

 

 「そうかな?俺的には、司の事を知っているつもりだったけどなあ。その時は、そこまで踏み込んだ話をしなかったからじゃないかな?それにさ、知っていると言っても対してそういう話はしてないんじゃないかな?司の細かいところの話までさ。」

 「そうだな・・・。お前の言う通りだけどな。御霊の話ばっかだからな最近。」


 優人の答えは、曖昧にされてしまったように感じたが、司はとりあえず納得することにした。


 「あ~。そういうば、噂をすればもう来るんじゃないかな?御霊。」


 

 優人はそう言いながら、教室の扉のほうを見た。司は、「ああ、知ってるよ。」と言いそうになったのを堪えた。優人には、自分は御霊が近付いて来たら何故か御霊の存在を今日たった今から感知出来てしまった事をどう伝えたらいいかに迷ったからであった。そして、優人の言った通り、司の感じた通りに、御霊が教室の扉を開いてやって来た。

 御霊が現れた途端、司と優人以外のすべてのクラスメイトが御霊の元に駆け寄り、御霊に「おはよう。」などのあいさつをしに行った。その光景に、司はまるで“やらせ”の三文芝居を見ている気分になった。それを見て思わず、舌打ちをした。


 「ッチ。何だよ、バカバカしい。何だあれ。やらせくさいにもほどがあるぞ。」

 「・・・・・・・・・」


 司はそう言って同意を求めるように優人を見たが、優人はニコリともせずに司も見ずに、何か考え込ながら、御霊の方をまるで監視でもしているかのように睨みつけていた。こういう状態の優人はどうにでもならないので、しょうがないとばかりにあきれたようにため息を吐くと、司も一緒に御霊の方向を見た。

 こちらの視線に気づいた御霊は、他のクラスメイト全員を押しのけて、こっちにやって来た。その足取りは、何が嬉しいのかスキップしており、弾みに弾んでいた。


 「おはよう!!司君と名字めんどくさいからこれから優人君!!!」


 途中の微妙な説明はいらないような気がしたが、司はわざわざそれをつっこまずにただただ頷いた。一方の優人はお前のすべてを知っているぞと牽制するかのような意地の悪い笑みを浮かべて、「おはよう。黒樹君。」とわざとらしく、名字で御霊の名前を言った。

 昨日から優人は御霊の何かを知っているのではないかという気がしてならないのだが、実際に知っているように司は感じていた。その考えを肯定するかのように、御霊は忌々しそうに優人を睨みつけると、彼を無視して司の方を見て、ニコリと微笑んだ。


 「司君。明日から夏休みだね!!!通知表も返って来るね!!僕の場合は天候したばかりだから、成績が返って来ないと思うけどね!!!」

 「いや・・・。ああ。ええとだな、お前テスト受けただろう?だから、成績は返ってくるぞ。テストの分の成績がな・・・。」


 いや返ってくるわボケ!!という思いを司は押し込めると、懇切丁寧に説明した。傍から見ればまったくもって丁寧でも何でも無いのだが、司にとって御霊にいろいろと話をするのも厭なので、これでもかなり譲歩しているので、かなり丁寧な部類なのである。


 「そっか・・・。ショックだな・・・」


 そして司の丁寧な説明に、ショックを受ける不気味な物体が司の前に転がっていた。とても蹴りつけたいという素敵な衝動に司はかられていたが、それをやるととんでも無い事にされそうなので、司は我慢して、御霊が立ち上がるのを待つと言った。


 「お前の頭がどれほどかは知らないが。別に大丈夫だって。何故かこのクラスの連中。みんな同じ成績で50点くらいだし。違うのは優人と俺と死んだけど遥と和樹くらいだったしな。」

 

 司がそう言うと御霊は今まで見せた事の無い考え込むような表情を見た。


 「そうなんだ・・・。そこにまで・・・。」

 「ん?どういう事だ?」


 御霊の反応が気になった司は聞いてみたが、御霊はそれに答える事なく、自分の席に突然戻って行った。司は聞きたい気持ちも多かったが、聞いてはいけないと思わせるような気を御霊から感じた。彼は思わず優人の方を見たが、優人も御霊を監視するので忙しいようで、ずっと御霊を見つめていたので、司は仕方が無いので、自分の席に戻ったのだった。そして、それを見越したかのようにそれと同時に担任が入ってきたのだった・・・。


 そして、その日は何事もなくすべてが終わったのだった―。


 ただひとつ。御霊の初めて見せた不可解な表情を除いては・・・。

次回の第五話からは、学校のシーンが極端になくなります。よろしくです<m(__)m>

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