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Red Blue~灼碧の瞳~  作者: 麦畑葉月
始まりの刻-。
6/13

第一部 第四話 逃亡へ-③

次で第四話終わります。 長くてすいません(;´Д`)

今回は、ちょっとドロドロしています。

でも、今後の展開にかなり重要なシーンなんで、我慢してほしいです(;・∀・)・・・。

 「お~いっ!司!」

 とぼとぼと高校への道のりを重い何かを引きずっているような足取りで司が歩いていると、そんな彼に一樹が背後から声をかけて来た。その声を聞いて司は、何故か苛立ちを感じずにはいられなかった。今まで感じていなかったのだが、一樹の話し方がまるで素人の芝居のように感じるのだった。司はそんな彼の喋り方への苛立ちを隠す事なく、一樹の方を振り向いた。

 そこには、アホみたいな顔している一樹が呑気に立っていた。それにもまた、司は苛立った。

 

 「あぁ、一樹。何かあったのか?お前の顔と喋り方。いつもにも増してムカつくな。」

 「まぁ、それが俺の特技だしな?」


 司は、彼に対する暴言を本気で言ったのだが、一樹はそれに気づかなかったのか、冗談だと思ったのか、笑って肯定した。それが、さらに司の神経を逆なでしていた。実の所、司はこの一樹からも濁った色をした魂を感じていて、その奥底には光り輝く魂を感じていたが、今ではそれは全く無くなっていて、その部分が一樹への嫌悪感を招いていた。


 「お前の特技ねぇ。てか、よくそんなに呑気でいられるよな。万年馬鹿。遥が死んだって言うのに。」

 

 司はいまだに馬鹿面をしている一樹に腹が立ってさらに彼を罵った。さすがの一樹もこれには怒ったのだろうか。司の顔を思いっきり力を込めて殴った。そのせいで吹き飛ばされた司は、殴られた部分を手で押さえながら尻餅をついた状態で一樹を見上げた。一樹の顔には、今まで見た事のないような怒りの表情を垣間見えた。

 

 「痛いじゃねぇか。さすが馬鹿だな。何もかも暴力で解決しようとする。だから、お前は嫌なんだよ。」

 「黙れ!!!!」


 尻餅をついたまま司は、さらに何故だか一樹を罵った。罵るつもりは無かったハズなのだが、口から突然その言葉が出てきたのだ。殴られた瞬間から、司は彼に対する嫌悪感はまるで憑き物が取れたように無くなっていたはずなのだが、その言葉が現れた。その言葉を聞いた一樹は、さらに司の腹に蹴りを入れた。それの痛みは壮絶で、司は腹を咄嗟に庇って、その場に俯いてしまった。


「お前なぁっ!遥が死んだのは分かってるよ!!!でもな、死んだ人間を悪口の種に使うな!!!お前には、心が無いのか!?もしくは、あれか!?KYってやつか!?」


 一樹の言葉に司は、遥の事について深い後悔の念を感じたが、しかし、なぜかまた一樹への悪口の言葉が口から放たれようとしていた。そして、司は動く気もさらさら無かったハズなのだが、突然体が動きだし、一樹と睨み合うように立ち上がった。その司の行動すべてが自分の意思を反していた。何かに操られているように感じた。司は、そこからさらに馬鹿にするように一樹に嘲笑していた。そして、また再び口から言葉が漏れ出た。


 「KYはお前だろう。それに、KYみたいな死語使う方がKYだよ。っていうか、察しろよな。俺は、お前と会話したくないんだよ!!!そういう空気が俺から出てるだろうが!!!察しろよ!!!KYが!!!!」


 一樹はこの言葉にさらに切れて、今度は司に暴力をふるう事は無かったが言った。


 「お前なぁっ!言うけどなぁ?お前の方が圧倒的にKYだろうが!!!」


 司はさらに対抗するように言う。しかし、司はもううんざりしていた。もうこれ以上、一樹を傷つけたくなかったのだ。一樹の魂に司の言葉が突き刺さる度に心に傷が入っていた。


「もう何も言わなくて良いぞ。KY。KY菌が移るからな。」



 一樹は司の言葉を無視して言った。その声は悲痛な叫びに変わっていた。司は本当に止めたくなったのだが、何故か止める事が出来ないでいた。


「俺からも、慰めてほしいって空気出てるだろうが!!親友なら、気づいてくれよ!!!」


 一樹の言葉は、司の心を突き刺した。一樹の言葉からは、悲痛な助けを求める叫び声のような物を感じた。しかし、司にはそれを助ける事が出来なかった。そして、彼にさらに追い打ちをかけるような言葉が口からあふれ出た。


「出てない出てない。全く出てないぞKY野郎。お前の体中から気色悪い物が溢れ出てて、構ってチャンオーラを微塵も感じないぞ??だいたい、俺らは親友じゃねえよ。カスが!!!」


 違う。違うんだ。そう頭の中で否定していても何故か口から言いたくもない最悪な言葉が溢れ出ていた。自分が御霊なんかより恐ろしく感じた。それに親友の一樹に、親友じゃないなんてありえない言葉を言ってしまった。もう嫌だ。

 司の心はズタズタに引き裂かれていき、最後の言葉を放った瞬間に、目からは涙が溢れ出ていた。それは、一樹も同じだったようで、彼の目からも涙があふれていた。その量は、司の比にならないほどの量となって溢れていた。司はもう何を言おうとしても悪口しか出ないので、歯で思いっきり唇をかんだ。そこからは血がにじみ出ていた。


 「俺たち、親友だと思ってたのに・・・。」


 司は一樹の顔を見た。その顔は、もう何も語っていなかった。まるで魂がすっぽりと抜け落ちたかのようであった。魂の方も、濁っても光り輝いても居なかった。真っ暗闇になっていた。司の言葉がこれを行ってしまったのだ。もうどうしようも無かった。そして、最後の一樹の言葉は、一樹から司への最後の審判のように感じた。しかし、「勿論だ。」とか「俺たちは親友だよ!!!」と言いたいが、違う言葉が口から出そうになってしまう。

 司が何も言えずにいると、一樹はそのまま何処かへ走り去ってしまったのだった。司は、しばらくその場で立ち尽くしていた。司の口の中には血の味が広がり、唇からは血がしたたり落ちていた。



☆★☆★☆


 一樹は司から逃げるように森の中を走っていた。司の事を親友と思っていた分、その悲しみは大きかった。一樹は走っている時に、とある事に気づいた。司は泣いていた事に。そして、これ以上何も言わないように唇と血がにじみ出るくらいに噛みしめていた事に。何かあったのかと突然心配になった。


「一樹・・・?」


 しかし、そんな心配もすべて、後ろから聞こえてくるありえない人物からの自分を呼ぶ声にさえぎられた。その声の人物は遥であった。何故、遥の声が聞こえるのか。死んだはずなのに。恐る恐る後ろを振り返ると、違う事なく遥がいた。死ぬ前よりも綺麗な姿かたちをしていた。


「遥・・・・・?なんで、死んだはずじゃ・・・?」


 実は、一樹は遥の事が好きであった。そのショックたるや、司より強い物だっただろう。そんな好きである人物が自分の前で立っていた。一樹に笑いかけながら。そして、遥は一樹に近づき、彼の頭をソっとなでた。


 「一樹・・・。私は死んだよ確かに。だから、ショックなのは分かるけれど・・・・。それに、何か言いたげにしてるけど、今は黙って聞いてね。司はね、大変な事に巻き込まれているの。それも大きな何かに。そのせいで司は一樹にあんな事を言ってしまっただけなの。だから、司を許してあげてね。それじゃ、私は行かないといけないから。」


 遥はそう言うと、一樹の前から一瞬で姿を消したのだった。そして、一樹の頭に彼女の手の感触だけが残っていた。一樹は、消えた途端に、周りを見回して彼女の姿を探したが、見つかる事は無かった。


 「遥・・・・。遙・・・。何処に行ったんだよ・・・。」


 一樹はその場にしゃがみ込むと、目の前が光ったのを感じた。そこには、ただ笑っている遥の姿があった。一樹は涙を流しながら、嬉しそうな笑みを浮かべながら、その遥を追いかけた。遙は、どんどんと深い森の奥へと走って行った。それに追いすがるように一樹は走った。

 そして、一樹は吸い込まれていった。深い霧の立ち込める森の奥へと-。

 


 翌日の早朝。一樹は、村の森の入り口で幸せそうな笑みを浮かべながら死んでいる姿が発見された。


 その一樹の死体を電柱の上から見つめてみる少年がいた。御霊だ。


「祐樹一樹 死亡

死亡推定時刻 不明

死因     不明

僕が魂を食べたからだけど。」



御霊は美味しそうな物を見るような目で、一樹の死体を見て、笑いながら言った。その声は、高く無邪気さを感じる声であったが、何処か常軌を逸しているような声であった。



「クスクスクス、祐樹一樹♪おいしかったよぉ♪ 君の傷つき、狂った魂~♪まさか、こんな素晴らしい魂を司君が拵えてくれるなんてね!!!」


 しかし、司の名前を出した途端に御霊の表情は険しくなり、不機嫌になった。そして何故か考え込むような姿を見せた。



「それにしても、あいつ邪魔だなぁ。神鳴 司―。あいつは、僕の本性が見えてるみたいだし。何でかなぁ?」


 しばらく司について考え込むような姿を見せた御霊であったが、一樹の元へ泣きながら走りよっていく司を見て、考えるのを止めて、クスっと忍び笑いをもらした。しかし、その笑い声が聞こえたのか、司がこっちを振り返った。それに驚いた御霊は、司から逃げるように瞬間移動し、高校の校舎の中へ移動した。そして、頭から流れる冷や汗を制服の袖で拭った。そして、大きな声で愉快そうに笑った。


「いやあ。焦ったなぁ。なんで僕の事分かっちゃうのかなぁ?これは、もうちょっと様子見ようかな♪面白そうだしねぇ♪」


 そして、御霊は司の魂を見た時の感覚を思いだした。真っ白に光り輝く魂。しかし、その中には真っ暗で見ているこっちが吸い込まれそうなくらいに真っ暗な魂がそこにはあった。御霊は、その魂にひどくそそられる物を感じた。そして、とある事を心に決めたのだった。



「そうだ、最後に食う魂は、あいつにしよう♪」


 そう最後に食べる人間をこの場で御霊は決めたのだ。最後に喰われる者。

 それは、神鳴司・・・。



神鳴司が喰われるまでの人数―。

992人―。

喰われた者―。

7人―。

次で第四話終わります。

すいません。長くてw


ちなみにこの話は、かなり伏線があり、物語の中心部分なので、しっかり読んでほしいです(;・∀・)

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