第一部 第四話 逃亡へ-②
逃亡へ-。は、ページ数少なめで進もうと思います(;・∀・)
じゃないと、すんごくテンポ遅く感じる気がするんで。
司は、家の中で一人椅子に座って思案していた。その思案している姿は、あまりにも鬼気迫る物があった。彼の目下の思案対象は、勿論、御霊という名前の少年とその両親についてである。あの家族が来てからというもの、周りのすべてが変わってみえるのだ。何処をどう考えても変わってしまった事に司は気づいた。しかし、司以外の人間はそれには気づいていないのだった。この状況に、司はかなりの気持ち悪さを感じた。
しかも、御霊の存在自体はおかしいというレベルを超えているのだ。御霊はクラスメイト全員を見渡しながら、3日連続で彼らを「美味しそう・・・食べてしまいたい・・・。」と涎を垂らしながら言っているのに、誰もそれを気味悪がらない。というよりも、見えていないのだった。彼の自分を食べ物でも見ているかのような熱い視線に、司は胸やけを毎日感じていた。最初の2日くらいは、自分だけが空耳で聞こえるだけ。もしくは、幻聴を聞いているのだと思っていた。しかし、3日目にはそれは顕著になり、目の下には大量の隈があり、目は寝てないのか窪んでいた。あまりにもの飢餓感が彼にはあり、我慢している結果に感じる。
そう考える司は、ありえないとばかりに首を思い切り振った。違うと自分の中で反芻する。しかし、どうやって自分を否定していても、御霊の気持ち悪い姿を思い出して、それは幻想では無いと頭の中で反響するのだった。
司は、イライラして、髪の毛をくしゃくしゃにして、イライラを紛らわせた。
そして、丁度その時、五十嵐卓巳は死に、その死体は、その日の夜中に発見されたのだった。
☆★☆★☆
翌日の早朝、司は五十嵐卓巳の遺体が発見されたと言う、司の家の目と鼻の先の畑のある場所へ向かった。遺体はまだそこにあり、外傷は全く無く、死因が不明だとその場にいた親戚の叔父さんに教えられた。その叔父さんは、最近の夏野家の遺体も死亡判定もしている吉田健二叔父さんである。彼の死因は、『心不全』とされるだろうと吉田は悔しそうな顔で声を震わせて言った。ふと吉田の手を見てみると、悔しさからくる怒りの感情のためか小刻みに震えていた。その様子に違和感を感じた司は、思い切って聞いてみた。
「なぁ健二叔父さん。健二叔父さんって確か、一時期都会にいたよな?その時に、『心不全』とされる遺体が無駄に多くてビックリした。っておどけた感じで言ってたけどさ。今の叔父さん。なんか、あの時とは全然感じが違う気がするけど。五十嵐の遺体に何かあるのか?」
そんな司の問いに吉田は、突然憑き物が取れたかのように、震えが止まり、力を抜いて盛大なため息を吐いた。そして、司の方を向いて悲しげに微笑んだ。
「司君にもばれてしまったか。正仁の奴にもばれちまったよ。ただな、君の事を思うと怒りが込み上げてくるだけなんだ。」
「まさか、この事件、俺と何か関係があるの?」
「あるよ。」
吉田の言った言葉に、司は心の何故かで納得している自分を感じた。この事件を起こしている人物が、あの御霊であるならば、自分に関係ある事にしっくりくるからである。しかし、吉田はどうしてその事に気づいたのだろうか。その事について司が訪ねようと口を開く前に、吉田は続きを話し始めた。
「何故この事件と君が関係あるのかについてだけどね。犯人については、全く分かっていないけれど、被害者には俺だから気づく共通点があった。君だよ。まずは、遥ちゃんだね。君のガールフレンドなのだから、君と関係があって当たり前だ。」
「違う!ガールフレンドじゃない!!!」
司は、話の途中であるが、遥が自分のガールフレンドである事に対してツッコミを入れた。勘違いも甚だしい。自分と遥が付き合うなんてありえない話である。多分・・・。遥が自分に気があるそぶりを一回も見せていなかった。見せなかったハズだ・・・。そんな司の葛藤を、吉田は挑発するような笑みを浮かべると司の頭をくしゃくしゃした。司の身長は172cmあるが、吉田の身長はそれより遙かに高く、190cmもあった。それゆえのこの行為だろうが、司はかなりの恥ずかしさを感じ、顔はユデダコみたいに真っ赤になっていた。
「おうおう。違うだよなぁ。ガールフレンドじゃないんだよなぁ。」
「そうだ!!!てか、この頭なでるのやめろよ!!!」
司が噛みつくように言うと、おお怖いと思ってもない事を言いながら吉田は続きを話し始めた。
「それでだ、遥ちゃんと君は幼馴染だな。そして、その次の夏目美香さん。彼女は、君のご両親ととても仲が良かったはずだ。そして、五十嵐卓巳君は、君と同級生だな。それに、卓巳君は君とだけ仲が良かったんじゃないか?他の誰もが当たり前のように彼を避けてたが、君だけは違ったから彼も君にだけは心を開いていたと思うよ。遥ちゃんや美香さんだけなら、君との共通点とは別に言えなかった。しかし、卓巳君に関しては、あの二人から考えると君しか共通点が無いんだよ。後あるとしたら、君の弟妹の望君と呼読視ちゃんくらいだ。」
司は、吉田の説明にただただ頷いた。そうなのだ。共通点は、どう考えても自分しかいないのだ。弟たちも、彼とは知り合いではあるが、司ほどの仲ではなかった。この吉田の説明は、司の考えをすべて肯定していた。しかし、少し疑問が残る。実は、卓巳は地蔵を壊したと疑惑がかけられていた。そっちは、どうなっているのだろうか。
「健二叔父さん。そういえば、卓巳って仏像とか壊したとか言われてたけど、それはどういう方向に進んだんだ?」
その問いに答えるかのように、吉田は無言で司に一枚の手紙を手渡した。それは、メモ帳に文章を殴り書きしているだけのものであった。それには、こう書かれていた。
遺書
皆様、ごめんなさい。
地蔵を壊したのは私です。
死んでお詫びいたします。
五十嵐卓巳
こんな事が書かれていた。しかし、司にはこれはありえない事であると分かっていた。卓巳は、遺書を残すような人間は自分以外にはいなかった。それに、死因が不明なのに自殺である訳が無い。自殺なら死因がわかるような死に方をしているはずである。それに、卓巳は例え俺にしか遺書を残せないとしても、遺書を書くような人間じゃ無いのだ。これは、ますます御霊が関わっているようにしか感じなかった。ただ不思議なのは、同じである事だった。卓巳と筆跡が全く一緒なのだ。そっくりかどうか以前の問題で、違う所がないくらいに一緒なのだ。それに書く手が震えていたのだろう。そういう状況でペンを握る時の字のくせが出ていた。誰かにでも書かされたようだった。これも御霊が何かしたのだろうか。
そして最後に卓巳の顔をあえて怖いので見なかったのだが、ソっと見てみると、その顔を恐怖で見開かれていた。いったい何を見てしまったのだろうか。そして、もう一つ気づいた事があった。
彼には、“魂”が無かったのだ。小さい頃から、人の魂を見る事が司にはできた。それは、軽く濁ったような色から軽く光り輝く物まであった。しかし、村の人間のほとんどが軽く濁ったような色をしていた。司の関わる人物だけは、不思議と光り輝いていた。卓巳も勿論、光り輝く魂を持っていたのだが、それがごっそりと無くなっていたのだった。顔を見てそれに初めて気づいた。
司は、ここで自分という存在以外の共通点を見つけた。“魂”が3人共光り輝いているのだ。他の夏野家の人間は薄く濁っていたが、美香だけは光り輝いていた。それを吉田に伝えたい衝動を司は感じたが、吉田はいたって普通の人間なので何も言う事が出来ずに、司は、吉田に対して挨拶もそこそこに学校へと向かった。
その足取りは、誰から見てもわかるくらいに悲壮感にあふれていた。
③へ続きますww
多分、③か④で終わりますんで、よろしくです<m(__)m>
てか、この調子だと 第一部だけで 100部いく気がします・・・。