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Red Blue~灼碧の瞳~  作者: 麦畑葉月
始まりの刻-。
11/13

第一部 第五話 黄泉返り―。②

 司の背後をソロソロと音を立てずに、慎重に近づいて来る人物がいた。その存在を気付いていたが、あえて無視した。何故なら、その人物の正体に気付いていたからだ。その誰かさんは、司の目の部分を小さめのかわいらしい手で覆い隠した。その手を払いのけて、背後を振り返り、その人物をみると、案の定予想通りの人物で妹である呼詠観であった。呼詠観は中学2年生で、顔は美しく同じ年代の中で群を抜いていた。そして、身長は158cmあり、低くも高くも無い丁度いい背格好であった。

 

「だぁ~れだ!!!」

「いや、呼詠観・・・。俺が払いのけてから言っても何の意味も無いだろう・・・。」

「あ、本当だっ!!!お兄ちゃんあったま好い!!!」


 そして、呼詠観。彼女は、頭が少しばかり弱い。勉強の方面でならば、天才なのであるが、私生活では支障を来すぐらいに、頭が弱いのだった。そんな呼詠観は、自分に何の用があったのか皆目見当のつかない司は、訪ねた。


「お前、本当に。勉強以外は、頭が弱いな・・・。」

「えへへ~。」

「というか、何の用だ?何かあったのか????」


 司が尋ねた途端、呼詠観は、寂しそうな表情をした。どういう事なのかよく分からなかったが、何を言うのか待ってみることにした。しかし、返って来た言葉に、司は目が点になった。


「ひっど~い。お兄ちゃんに、頭弱いって言われるなんて・・・屈辱!!!ねぇ、望兄!!!司兄ちゃんったらひどいんだよ!!!」


 呼詠観はそう言うと、実は先ほどから司の部屋の扉にもたれかかっていた望という男に声をかけた。呼詠観に呼ばれて現れた望はいくらか不機嫌に見えた。そして、彼は高校1年生で、身長は176cmで、顔はとてつもなく整っており、村で一番の顔のつくりをしていた。というよりも、村中から司を含めた3人の兄弟は、“神に作られた兄妹達”と呼ばれるほどに、美しい顔立ちをしていたのだった。


「お前な。俺の名前を出すなよ!!!だいたい言っただろうが!呼詠観!兄貴にはすぐばれるってさ。兄貴、どうせすぐ分かったんだろ?兄貴は、感が好いからな!」

「あぁ・・・。お前の予想通り、一瞬で分かったよ。呼詠観の可愛い手がお前の手のような野球のしすぎでゴツゴツした手に一瞬でなる訳無いしな。」

「ゴツゴツで悪かったな!!!」


 望はそう言いながら、司の頭を叩こうとした。しかし、それを紙一重で司はよけた。


「お前は、相変わらず、攻撃が一方通行だな!その程度、いくらでもかわせる!!」

「くそ・・・。また当たらなかった・・・。今まで、一回も兄貴に攻撃当てた事が無いんだよなぁ・・・。なんで、分かるんだろう・・・。絶対、一方通行以外にも理由がある気がするんだけどなぁ・・・。」


 そう。望の言うとおりであった。最近の件があるまで司は気付いていなかったが、司は普通の人よりも異常なくらいに感が良く働くのだ。言及はしていなかったが、望は身体能力。呼詠観は、頭脳の方面で、それぞれ普通の人を凌駕する異常さを見せつけていた。司の両親は、亡くなっていないのだが、その二人にも何かがあったのではと最近、司は感じ始めていた。そんな司の物思いは、望の声で打ち消された。


「まぁ良いや。呼詠観!兄貴は、何か用事があるみたいだし。なぁ、兄貴?」


 望の同意を求める目を感じた司は、我に返って、うなづいた。


「え・・・。あぁ、そうだな・・・。」


 司が、返事をすると、望は我が意を得たり!とばかりに、呼詠観に部屋から出る事をせかした。


「ほらな!ほら、部屋に戻るぞ!!!呼詠観!!!」

「えぇ~。望兄だけ、先に言ってて!お兄ちゃんに用があるから!!!」


 呼詠観が嫌がると、望は観念して、勝手にしろ!!と言わんばかりに、肩をいからせながら、部屋を出て行った。望が部屋を出ていくのを確認した呼詠観は、司の耳元にソっと耳打ちした。


「お兄ちゃん、思い出して。」

「え・・・?」

「そうじゃなきゃ、終わらないから・・・。この嫌な事は・・・。」


 司は、呼詠観の言った事に訳が分からず、間の抜けた返事をした。そして、呼詠観は悲しそうな瞳を司に向けながら、更に気になる事を言い残すと、部屋を静かに出て行った。司は、その呼詠観のいた処をジっと見つめて、彼女の言った事を考えた。呼詠観の言い方を考えると、もしかしたら妹は気付いているのでは無いかという結論に至った。また、望はそれを話させたくなかったように感じる所からも、望も今のこの変な状況に気付いているのでは無いかと思い至った。しかし、本人たちはあれ以上、何かを話してくれる事は無さそうに思えたので、司は、どうしようも無いと思い、宿題に再び向かったのだった。


☆★☆★☆


 司の部屋を出た呼詠観は、階段を降りてリビングに行くと、そこで不機嫌な顔をしている望を見て、驚いて目を丸くさせた。そして、その後。自分のした事に少しばかり後悔して、顔を俯かせた。


「おい。呼詠観。お前な・・・。それを言っちゃいけないだろう。それは、俺とお前だけで隠さないといけないって母さんに言われただろう。」

「そうだけど・・・。お兄ちゃんだけ覚えて無いっておかしいよ!!!」

「そうだけどな・・・。母さんが言ってただろう。思い出させてはいけないって。時期があるんだからって。」

「でも、その時期が来たら教えても良いって言ってたよ!?今は、その時期なんじゃないの!?」

「違う。母さんは言ってた。それは、ほかの人達が導いて行かないといけない事だって。それによって、兄貴は大きな選択を迫られるって・・・。それに、俺達もな・・・。」

「そうだった・・・ね・・・。私は、赤ん坊の時に聞いた話だったから、完全に覚えて無かったから・・・。ごめんね・・・。」


 呼詠観がそう言って、涙を流すと、望は呼詠観の頭を愛おしそうにやさしくなでた。呼詠観は、望に抱きついた。何か心地よい気分になった。


「良いよ。だから、もう泣くな。」

「うん・・・。ありがとう。でも、望兄の手・・・。優しくて痛い・・・。」

「お前な・・・。」

「えへへ。」


 そして、兄弟がこうしている間にも、人は死んでいた・・・。それが終わるのは・・・・。

第五話 ②をお送りします@@;

ここでも、伏線が現れました。実は、ここの伏線は、当初は無い物だったので新しく作りました。これで、更に物語が分かりやすく複雑に進むかな~って思ってます。そんな訳で、次回もヨロシクです。

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