「オークを切ったら婚約破棄」と幼なじみの婚約者に脅されました。僕だけが初恋の思い出を忘れていたようです
「あなたの邸宅に生えている一番古いオーク。
あれを切ったら、婚約を破棄する」
「は?」
エドワード・アッシュフォードは目を剥いた。ティーテーブルを挟んだ向こうには、幼い頃からの婚約者――ヴィヴィアン・ブラックウッドが座っている。艶やかな黒髪にシックな紺のドレスを着た彼女は、その細い腕を組んで彼を見据えていた。
エドワードが目を見開いたまま彼女を見つめると、ヴィヴィアンはすっと顔をそらす。そして、口を引き結んだ。
エドワードは自分のキャラメル色の髪に手を触れ、それから口を覆う。しばらく逡巡したのち、琥珀の瞳でもう一度ヴィヴィアンを見つめた。
「待ってくれる?
えっと……僕たちは比較的関係は良好だったと思ってるんだけど……。
こ……“婚約破棄”だって……?
しかも、木を切ったら婚約破棄ってこと?」
ヴィヴィアンは大きく頷く。
「……どういうこと?」
愕然としたままのエドワードが彼女を見つめるも、ヴィヴィアンは静かに席を立った。
「待って!
その……ほら……婚約破棄って……例えば浮気とか、何か悪いことを僕がした場合にするものじゃないの?
せめて理由を――」
「帰るわ」
「嘘!」
ヴィヴィアンは席を離れ、アッシュフォード家のサロンの扉へ迷いなく向かう。彼もその後を追うために立ち上がるが、椅子が足に掛かり、その場に膝をついてしまった。
「ヴィヴィ!」
黒髪の後れ毛が揺れる。ヴィヴィアンは足を止めて一度だけ振り返るも、何も言わず、部屋を出ていった。
扉が閉まる。
「なんで!?
嘘でしょ!?」
彼は床に手をついた。
「オークを切ったら婚約破棄って、どういうこと!?」
エドワードは、私室の革張りソファに座り、肘掛けにうなだれるようにして身を預けていた。
その脇に、彼の従者であるオスカーが片膝をつく。
「お可哀想なエドワード様のために、とりあえず庭師から話を聞いてまいりました」
「……なんて言ってた?」
エドワードは項垂れたまま、身体は微動だにしない。
「アッシュフォード家の庭園奥に生えているオークはかなり古いものです。このアッシュフォード邸が建つ前から生えていたものを先々代のご当主がお気に召し、そのまま残したものだそうですよ。
今では中が腐って空洞化しており、倒木のおそれが高いと。
庭師の話では一刻も早く切り倒すべき……とのことでした」
「……そう。
僕もその話は聞いてた……」
エドワードは身を起こし、長く、大きなため息を吐いた。その目の下には色濃い隈。突然突きつけられた婚約破棄の話がショックで、昨夜は一睡もできなかった。
「なんで……オークなんだと思う?」
オスカーは静かに主であるエドワードを見つめる。
「そ……それとも、そんなのは表向きの理由で、やっぱり僕が彼女に何か嫌われることをしてしまったのでは?」
「普通は……そう考えますね」
エドワードは顔色を悪くさせてオスカーを見つめ返した。そして髪をくしゃくしゃにさせて頭を抱える。
「ここ最近の言動を思い返そう。
贈ったドレスが気に入らなかったのかな。いつも会うのがアッシュフォード家だから? いや、でもそれは彼女の希望だし。エスコートが下手だったとか。僕の服装のセンスが気に入らないとか。それとも、紅茶を新しくしたのがいけなかったのかもしれない。出した茶菓子がいけなかった可能性も。でもチョコレートが好きだって前言ってたし。あぁ、そうか、ここのところチョコレートが続きすぎてしまったから……。
――婚約破棄はチョコレートのせい!?」
「ちょっと落ち着きましょうか」
エドワードは顔を上げる。オスカーと目を合わせると、また項垂れた。
「なんだよ……オークって……」
オスカーはエドワードの肩に手を置くと、優しくさすった。慰めようとしてみたが、何をどう慰めればいいのか分からなかった。
「ブラックウッド嬢はほら、“黒魔術令嬢”って呼ばれてるじゃない」
エドワードは眉を寄せた。
彼は、アッシュフォード邸サロンにて、夫人たちに囲まれていた。母が開いたティーサロンに無理を言って通してもらい、経験豊富な彼女たちから何か助言をもらおうと考えたのだ。
彼女たちはいくつも並んだダマスク柄のソファに思い思いにゆったりと腰掛け、その中央のソファにエドワードを座らせていた。
「エドワード。ヴィヴィアンは、少し……浮いてるじゃない?」
母は気遣わしげにエドワードを見るが、ほかの夫人たちは面白そうに若い彼を見つめていた。
「いつも黒や紺のドレスばかりですものね」
「それは――」
「邸宅には恐ろしい数の黒魔術の蔵書があると聞いたことがありますわ」
「それだって――」
「黒魔術の話ばかりするから同年代のご友人も少ないでしょう?」
「……」
夫人たちが口々にヴィヴィアンについて話し出す。エドワードが口を挟めずにいると、母は彼の隣に移動し、その背に触れた。
「オークの木と黒魔術が、何か関係あるのかもしれないわね。
ちゃんとヴィヴィアンとお話してみなさいな」
「しかし、ヴィヴィは……」
「お話なさい」
「……はい」
ティーサロンを追い出されたエドワードは、廊下に出るとため息をついた。
長い廊下にいくつも並ぶ窓。その向こうには少し遠くに、例のオークの木が見える。
「……エドワード様」
オスカーが隣に並び、背に触れた。
「僕は……黒魔術は関係ないって思ってるんだ」
エドワードが歩き出す。廊下は、歩くたびに鈍い音を響かせた。
「来週も、ヴィヴィは……ちゃんと僕に会いに来てくれるかな……」
「ブラックウッド嬢は約束はしっかり守られる方です。
……来てくださいますよ」
窓の外では風が吹いている。
オークの葉も、静かに揺れていた。
アッシュフォード邸の車寄せにブラックウッド家の馬車が時間通りに到着し、御者が開けた扉からヴィヴィアンが出てきたとき、エドワードはほっと息を吐いた。
レースたっぷりの真っ黒なドレスをまとったヴィヴィアンにエドワードが手を差し出すと、彼女は躊躇なくその手をとった。手を握り合い、その結んだ手を下におろして歩き出す。“エスコート”というより、ただ“手を繋いで”歩き出した。
――幼い頃から、彼らはそうだった。
手を繋いでアッシュフォード邸の庭園を歩き、軽いハグもよくする。二人は気が合い、たくさん話もしていた。
キスや、熱のある抱擁はしたことがないけれど、二人は誰の目から見ても仲がよかった。
だからこそ、エドワードは“婚約破棄”の話が信じられなかった。
「ねぇ、ヴィヴィ」
サロンに向かう途中で、エドワードが声をかけると、ヴィヴィアンは静かに隣にいる彼を見た。
「……オークを見に行こうか。倒木の可能性があるから、あまり近くにはいけないけど」
「うん。見に行く」
エドワードは彼女の手を引き、向かう先を変える。視線を落とし、握られたままの手を見つめた。
「……手、繋いでくれるんだね。
僕のこと、嫌いになったわけじゃないのかな」
ヴィヴィアンも視線を下げて手を見つめる。
「……昔からの習慣だから、気にしてなかった」
「そっか」
一瞬離れそうになった手を、エドワードは逃さないように強く握った。ヴィヴィアンの視線を横顔に感じたが、エドワードは、ただまっすぐ前を向いて歩いた。
彼女を見るのが、どうしてか、怖かった。
古いオークの木の周りには、柵が立てられていた。木そのものにも倒れないように支柱が添えられている。
エドワードとヴィヴィアンは手をつないだまま並び、木を見上げた。
――幼い頃、よく二人でこの木に登ったりしたな。
「ヴィヴィ。どうして……この木なの」
「切ってほしくないから」
「どうして切ってほしくないの?」
「……言いたくない」
「なんで――」
エドワードが、ヴィヴィアンを見る。
彼は、息を呑んだ。
木を見上げるヴィヴィアンの瞳は、見たことがないくらい――綺麗だった。
彼女の黒い瞳はよく澄み、昼の白い光を返して、まるで夜空に星を散らしたよう。
そしてその瞳は――切なげに細められている。
幼馴染の少女というより、大人の女性のような横顔に、エドワードは胸が締め付けられた。
「……ヴィヴィ」
彼は身体を彼女の方へ向けると、眉を寄せた。喉が張り付いたように、うまく言葉が出てこない。
ヴィヴィアンがゆっくりと、彼の方を向いた。
「……他に……好きな男ができたの?」
「……え?」
ヴィヴィアンの眉も寄る。
「だから……婚約破棄なんて……言い出したの?」
「エド?」
「誰? 僕の知っている人? いつから? どうして?」
「エド……ちが――」
「そんなの……あんまりじゃないか!
僕たちは婚約をしているのに!
他の男を見るだなんて!」
「違うって言ってるじゃない!」
ヴィヴィアンは繋いでいた手を振り切ると、エドワードを見据えた。
「じゃあ……なんであんな顔でオークを見てたの?」
彼女はエドワードに背を向ける。
「……もういい。私……帰る」
「ヴィヴィ!」
エドワードがもう一度手を取ろうとするも、ヴィヴィアンはそれをするりと躱し、駆け出した。
「ヴィヴィ! 待って!」
「来ないで! さよなら!」
エドワードは髪をかきむしり、自分の服の胸元を強く掴む。
歯を食いしばり、俯いた。
「……今のは、言い過ぎた。
僕が悪い……」
耐えられず、その場に膝をつく。
「でも……ヴィヴィはどうして教えてくれないんだろう……」
巨大なオークの木。
それはかすかに、軋む音をさせていた。
その次の週。
その日も、アッシュフォード邸の車寄せにブラックウッド家の馬車は定刻通りに着いた。馬車の扉から紺のドレスを着たヴィヴィアンが降りてくると、エドワードは先週同様にほっと息を吐き出し、彼女に手を差し出す。ヴィヴィアンは、その手を普通に取った。
「ヴィヴィ……」
「オークを……見たいの」
「……分かった」
手を握り、二人は並んで歩く。
オークの前。
支柱は、先週より二本程増えていた。
「このオーク……もう、寿命なんだ」
「そう……。やっぱり……だめだったのね」
風が吹く。オークの葉は小さな音を立てて、葉同士を擦り合わせた。
「この木……切らないとだめだって……庭師が……」
「……うん」
「……僕、婚約破棄だなんて……」
エドワードがゆっくりと隣に立つヴィヴィアンを見ると、彼女の瞳は潤んでいる。
「え」
エドワードは彼女の肩をつかんでこちらを向かせると、指で落ちそうになっている涙を拭った。少し迷って、そっと、ヴィヴィアンを胸に抱く。
「ヴィヴィにとって……この木は、なんなの?」
「エド……ごめんね」
エドワードは眉を寄せて、ヴィヴィアンの顔を覗き込んだ。彼女は潤んだ瞳で彼を見上げる。
「この木は……私にとっては、すごく……すごく大切な木だったの」
「僕の家の木なのに?」
「そう。……エドは、全然覚えてないみたいだけど」
ヴィヴィアンはエドワードの胸を軽く押して離れると、オークの方を向いた。
「この木の下で、エドから初めてプレゼントをもらった」
「え!?」
エドワードは眉を歪める。
「初めては、サロンで、ピンクの花束を贈ったよね?」
「違う」
「え?」
「トカゲの尻尾」
「トカゲ!?」
ヴィヴィアンがふっと笑った。
「エドがトカゲの尻尾を見つけて喜んでた時に、それを私は近くで見てた。
私の視線に気づいたエドがくれた」
「それ“プレゼント”かな……」
「でも、トカゲの尻尾を家に持ち帰ったら怒られるか取り上げられるんじゃないかと思って、木の下に埋めたの。
次来た時に掘り返したら、尻尾は無かった。
幼かった私は思ったの。
“何かすごいことが起きた”って。
それで黒魔術について調べ始めたら楽しくなっちゃったの」
「それがきっかけだったんだ」
ヴィヴィアンがエドワードを見る。瞳は潤んだままだが、口角を上げて笑っていた。
「黒魔術の本は変なことばっかり書いてあって面白かった。
でも、分かってくれる同性の友達はいなかった。
エドだけ。私の話に付き合ってくれたのは」
「僕も面白かったよ。
黒魔術の話自体も面白かったし。
“呪いなんてバカみたい”って笑ってる君は可愛かった」
エドワードが隣を見ると、ヴィヴィアンの頬がわずかに赤らむ。
「それ全部含めて、エドからのプレゼントだって、私は思ってた」
「それって――」
「それから」
「あ、まだあるんだ」
「初めてキスした場所」
「キス!?」
エドワードは手で口を覆った。
「……相手は僕だよね?」
「当たり前でしょ」
「え、記憶にない。僕はまだファーストキスは……」
「あの太い枝」
ヴィヴィアンが腕を伸ばして指さし、エドワードもその先に視線をやる。
オークの木に生えた、太い枝。幼い頃、よく並んで座っていた場所。
「エドが立ち上がろうとしたときに、足を滑らせた。
それで私の方に倒れてきて――」
「うん?」
「私の頬にエドがキスをした」
「それ……事故じゃないの?」
「初めてエドからキスされたの」
「そっか……。頬か」
エドワードは腕を伸ばすと、ヴィヴィアンを抱き寄せた。
「つまり……つまりさ。
ヴィヴィは僕のことが大好きってことだよね」
ヴィヴィアンは目を合わせない。
「……なんで婚約破棄なんて言ったの」
「エドが少しも覚えてなくて腹が立ったから。あと――」
「あと?」
「私ばっかり覚えてるみたいで……なんか……」
「うん」
「エドが、私を女性として見てなくて、腹が立ったから……」
「なにそれ!?」
「だから、さっきごめんて謝ったの……。
やりすぎちゃった……」
エドワードは大きくため息を吐くと、ヴィヴィアンを強く胸に抱いた。髪をそっと撫で、耳元に言葉を落とす。
「ヴィヴィ。
僕に一週間ちょうだい」
ヴィヴィアンが彼の胸を押すが、エドワードは彼女を離さなかった。
「ヴィヴィ」
「……わかった」
「うん」
葉擦れの音。
強く胸に抱いたヴィヴィアンはこんなに華奢だったのかと――エドワードは鼓動が煩くなるのを感じていた。
一週間後。
その日も黒いドレスを着て馬車から降りてきたヴィヴィアンは、エドワードの後ろにいるオスカーが何か大きな包みを持っていることに気づいた。
「それは?」
「……おいで」
エドワードは彼女の手を取って歩き出す。
「エド」
エドワードはヴィヴィアンの呼びかけには答えず、ただ、手の握り方を少し変えた。指を絡めて、キュッと握り直す。ヴィヴィアンは驚いて視線を下げ、少しだけ頬を染めた。
二人が向かったのは、アッシュフォード邸の庭園の中でも少し開けた場所。
「ここだよね」
「はい」
エドワードがオスカーに確認すると、彼は従者から手袋を受け取り、ヴィヴィアンにも白い手袋を手渡した。ヴィヴィアンは不思議そうな顔でそれを受け取る。
「ヴィヴィ、僕と一緒に植えよう」
オスカーが、手にしていた大きなものから白い布を取り払う。
出てきたのは――小さな木。
「オークの苗木なんだ」
「え」
「ヴィヴィ、土いじりなんて、子どもの頃以来だね」
エドワードが手袋をはめてしゃがみ込むと、ヴィヴィアンも慌ててその前にしゃがみ込んだ。オスカーから小さなスコップを渡され、二人で穴を掘り始める。
「ふふ、ヴィヴィ、頬に泥がついてる」
ヴィヴィアンが顔を上げると彼女もふっと笑った。
「エドもついてる」
「え? 本当に?」
エドワードが汚れた手袋のまま頬に触れると、ますます汚れが広がる。それを見てヴィヴィアンは声を立てて笑った。
「お二人とも……お顔に泥がついていますね。後ほど濡らした布巾をお持ちします。
ふふ……似た者同士で、お似合いですよ」
「そうでしょ?」
オスカーの言葉にエドワードが満足げに言うと、ヴィヴィアンは驚いて顔を上げた。目が合い、互いに微笑み合う。
オスカーは少し離れたところに下がり、静かに二人を見守った。
苗木を植え終わると、二人は立ち上がった。エドワードはヴィヴィアンに向き合い、そっと、彼女の指を取る。
「ヴィヴィ……。この木は、きっと何十年も生きる」
「そうね」
「一緒に、育てていこう」
ヴィヴィアンが彼の琥珀の瞳を見ると、それはまっすぐに彼女を見つめていた。少年の頃とは少しだけ違う。瞳の奥に言葉にできないような、見たことがない熱が灯り、どこか、大人びて見えた。
彼が、少しだけ顔を寄せる。
「ヴィヴィ、キスするよ」
「え」
熱がゆっくりと触れていく。
唇が、そっと重なった。
唇が離れると、
額を当て合い、エドワードは小さく笑う。
「……僕は、口へのキスは初めてした。ヴィヴィは?」
「……初めて」
「古い木で、初めて渡したプレゼントのことも、頬へのキスのことも、僕は忘れちゃってた。
でも、この新しい木の前でキスをしたことは、僕は一生忘れない」
視線が絡む。
「ヴィヴィ、僕と結婚してください」
「エド……」
「返事は?」
「……はい」
エドワードはまた、唇に短くキスを落とした。そして、彼女を抱きしめる。
「大好きだよ、ヴィヴィ」
「私も……エドが大好き」
エドワードの肩が、ヴィヴィアンの涙で少しだけ濡れた。
「……君が気づいていないこと。一つだけ告白する」
「え?」
ヴィヴィアンの身体に回した腕に、少しだけ力を込められる。
「ヴィヴィが今着てるドレスも含めて、君が持ってる外着、ほぼ全て僕が贈ったものだよね」
「うん……そうだけど」
「それ、普通じゃないからね?」
「え?」
「普通はそこまでしない。
君が昔、黒のドレスがかっこよくて好きだと言ったから贈ってたけど……。本当は君の肌がすごくきれいに見えるからずっと黒を贈ってたんだ」
ヴィヴィアンの顔が真っ赤に染まった。
「どうして女性として見られていないなんて思ってたのか、僕は本当に不思議」
「エド……婚約破棄だなんて……ひどいことを言って……ごめんなさい」
「君からキスしてくれたら、許してあげる」
少しだけ身体を離して立つと、ヴィヴィアンが背伸びをした。
幼い頃は同じくらいの身長だったのに、いつの間にか、こんなに彼は背が高い。
唇が触れる。
二人で、小さく笑う。
小さな木についた葉が、風に揺らされてさわさわと鳴っていた。
――僕の婚約者は今日も、オークの木のそばで、笑っている。
そして、僕のそばでも。




