第1話 勇者べー・カーリー編
魔王城の広間で、勇者と魔王の決戦は最終局面を迎えていた。
「くらえ魔王!クロワッサンスラッシュ!」
勇者の剣撃が魔王城の広間を切り裂く。しかし魔王は余裕の笑みを浮かべた。
「残念だな勇者。私には物理攻撃は効かんのだよ
少し遊んでやろう。ダースボール」
「ベーグル・シールド!」
「まあ、そのくらいはやってもらわんとな」
――うそーーーーーーん。私の最大火力が防がれた?。
勇者は再び剣を構える。
「くらえ!コロネドブレード!」
「かっかっか!何度やっても同じこと。」
「かかったな魔王」
勇者がニヤリと笑う。
「コロネドブレードは、斬撃の中に魔力を仕込んだ二種類の攻撃。斬撃の渦の中の魔力を喰らえ」
「何ーーーーーーーーーーーーー!?」
衝撃が魔王の身体を貫く。
「ぐはっ!」
やばい。やられる。普通に強い。予想外の実力だ。
我が腹心や仲間たちは何をしているんだ。
勇者は聖剣を掲げた。
「今まで魔族にやられた仲間たちの恨み……今ここで返させてもらう。聖剣の力よ、今ここに――バゲットッ……!」
やばい。やばい。
このままだとわし死ぬ。何か、何か策はないか
謝る?
いやそんなことで許されるはずがない。
自爆して他の魔王に託す?
いやそもそもわしが死にたくない。
何か……何かをせねば。
例えそれが……悪あがきだとしても。
「待て勇者」
「待たない。悪あがきはよせ」
「お前の人生、本当にそれで良いのか」
魔王は這いつくばりながら言った
「……なに?」
勇者の眉間がわずかに動いた。
「私を倒せば、お前は勇者として称えられるだろう」
「そうだ。それの何が悪い」
「だがその先はどうする」
「……」
効いてる??
「私はあくまで6魔王のうちの1人。お前はわしを倒したら他の魔王に挑むことになるだろう、お前の人生は魔王討伐のための人生になる」
「そ、それがどうした……勇者の使命だ」
「本当にそれでいいのか」
2人の間に静寂が落ちた。聖剣に込められた魔力のバチバチという音だけが魔王城に響く。魔王は立ち上がった。
「勇者よ。お前はこんな言葉を知っているか!人は剣のために生きるのではない。己の望みのために生きるのだ!」
勇者の魔力に満ち溢れた聖剣がぴくりと動いた。
「勇者よ。お前のしたいことを聞かせてみせよ、勇者としての人生を死ぬまで続けたいのであればその剣を振り下ろせ!。勇者お前のしたいことはなんだ!」
「おらぁーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
勇者は全力で剣を振り下ろした。その斬撃は魔王のすぐ横を掠め、魔王城の壁を破壊した。
「くっくそ、魔王な、なぜなぜ分かった」
あぶねーーーーーーー
嘘でしょーーーーーーなんか悪あがきの説得が効いてるんですけどーーー
壊された魔王城の壁から月の光が差し込み、勇者の顔を照らした。
「パ、パンだ」
「パンダ?」
「パン屋だ!俺が本当にしたいことはパン屋なんだ!」
えーーーーーーーーー確かにーーーーー全然気づかなかったけど。技名パンすぎるもんね!
「勇者よ、気づいておったぞ、其方の本当の願いを・・」
「うっう」
「涙を拭け勇者」
勇者の頬を撫でる涙が月の光に照らされて美しく輝いていた。
「ま、魔王〜」
ふぅーーーーーーーあぶねーーーー死ぬとこだった、明日を迎えられないとこだったーーー
後日。
「魔王様!新たな勇者が近づいております!」
腹心が慌てて報告してくる。
「魔王様!」
「あっ、はい」
「パンを食べている場合ではございません!」
「ごめんごめん」
また勇者?なんかうちの城、防衛ゆるくないか。
まあそれにしても……
このパン、うめーーーーーーー。
魔王の手には、勇者印のパンがあった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
魔王の悪あがきシリーズとして、今後もいろんな勇者や人物を説得していく予定です。
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