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ラウンド4・前半:勝利への代償〜策略の光と影、倫理観〜

(スタジオ。ラウンド3で語られた、国を動かす知謀の壮大さと、その裏にある政治の非情さ。その余韻が残る中、あすかはさらに深いテーマへと切り込む)


あすか:「国を動かすほどの大きな力を持つ『策略』…。しかし、その力は、使い方を一歩誤れば、多くの人々を巻き込み、大きな悲劇を生む可能性も秘めています。このラウンドでは、そんな『策略の光と影』、そして皆さんの『倫理観』について、踏み込んでお伺いしたいと思います」


(あすか、真剣な眼差しで対談者たちを見渡す)


あすか:「偉大な目標を達成するため、あるいは国を守るためとはいえ…『勝利のためなら、手段は選ばない』のでしょうか?そこに、守るべき一線というものは存在するのでしょうか?…カエサル殿」


(あすか、カエサルに視線を固定する。クロノスが、ルビコン川を渡るカエサル軍のイメージと、「賽は投げられた(Aleaiactaest)」の文字を壁面に映し出す)


あすか:「あなたは、元老院の命令に背き、軍を率いてルビコン川を渡りました。それは、ローマの法を破り、内戦へと突入することを意味する決断でした。そして最終的には、終身独裁官として、共和政に事実上の終止符を打ちました。これらの行動について、批判の声も少なくありません。あなたご自身は、この決断をどう捉えていらっしゃるのでしょうか?そこに、倫理的な葛藤はなかったのですか?」


カエサル:「(フッと息をつき、少し挑発的な笑みを浮かべ)葛藤、かね?私がルビコンを渡った時、考えていたのはローマの未来だけだ。当時のローマは、一部の特権階級による腐敗と派閥争いで、もはや国家としての機能を失いかけていた。このままでは、ローマそのものが滅びる。誰かが、この混乱を収拾し、秩序を回復させねばならなかったのだ」


あすか:「それが、ご自身の役目だと?」


カエサル:「そうだ。元老院の命令?それは、旧態依然とした体制を守ろうとする者たちの、私利私欲にまみれた言い分に過ぎん。法を破った、という批判もあろう。だが、時には、旧い法を破ってでも、新しい秩序を創り出す必要があるのだ。内戦という犠牲は払った。だが、その結果として、ローマには平和と繁栄がもたらされ、広大な帝国として発展する礎が築かれた。歴史が、私の決断の正しさを証明しているとは思わないかね?」


(カエサル、揺るぎない自信を持って言い切る。その目には、自らの行動への絶対的な肯定が見える)


ハンニバル:「(皮肉っぽく)…歴史は勝者が書くものだからな。お主が勝ったから、そう言えるだけのことかもしれんぞ」


カエサル:「(ハンニバルを一瞥し)フン、敗者の妬みかね?だが、結果が全てだ。私はローマを救い、そして強くした。その事実は動かない」


あすか:「目的のためには、法を破ることも、内戦という犠牲も厭わない…それがカエサル殿の覚悟なのですね。…では、諸葛亮殿。(諸葛亮に視線を移す)あなたは『仁義』を重んじられた方として知られています。しかし、あなたにも、非情とも言える決断をされた逸話がありますね。『泣いて馬謖ばしょくを斬る』…」


(クロノスが、諸葛亮が涙ながらに命令を下すイメージと、俯く馬謖の姿を映し出す)


あすか:「街亭がいていの戦いで、あなたの命令に背き大敗を招いた愛弟子・馬謖を、涙ながらに処刑された。軍律を守るためとはいえ、そこには大きな葛藤があったのではないでしょうか?あなたにとって、守るべき『規律』と、個人の『情』、そして『仁義』は、どのように両立するものなのでしょうか?」


諸葛亮:「(目を伏せ、深く息をつく。その表情には、当時の苦悩が蘇っているかのようだ)…馬謖は、確かに才気煥発さいきかんぱつにして、将来を嘱望された男。亮にとっても、我が子同然に目をかけておりました。しかし…」


(諸葛亮、ゆっくりと顔を上げる)


諸葛亮:「軍律は、国家の根幹にございます。一度ひとたびこれを曲げれば、示しがつきませぬ。全軍の統制は乱れ、それこそが、より多くの兵士たちの命を危険に晒し、ひいては国家の存亡に関わる事態を招きましょう。…彼一人の命を惜しんで、おおやけの規律を破ることは、丞相じょうしょうたる亮には、断じてできませなんだ」


あすか:「私情を捨てて、公を選ばれた…」


諸葛亮:「(静かに頷き)…断腸の思い、とは、まさにこのことでございました。しかし、これもまた、蜀という国を守り、先帝(劉備)の御遺志を継ぎ、漢王朝を復興するという『大義』のためには、避けては通れぬ道であったと、信じております。仁とは、ただ甘やかすことではございません。時には、厳しさをもって臨むこともまた、真の仁義に通ずる道と、亮は考えます」


(諸葛亮の言葉には、深い悲しみと、それを乗り越える強い意志が感じられる)


あすか:「大義のための、非情な決断…。カエサル殿とはまた違う形で、重い代償を払いながらも、国のために決断を下されたのですね…」


(あすか、カエサルと諸葛亮のそれぞれの覚悟に、改めて思いを馳せる)


あすか:「目的達成のためには法をも破る覚悟、そして大義のためには私情をも断ち切る覚悟…。どちらも、計り知れない重圧の中での決断だったことでしょう。では、勝利そのものに全てを捧げたとも言えるハンニバル殿は、この『勝利への代償』について、どのようにお考えなのでしょうか…」

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