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俺が通う高校は人外魔境だった  作者: はるゆめ


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ep.46 商店街の決闘 前編

 昭和のいつか。どこかにある高校。 季節は冬。 


 俺たちは音のする方へ歩くいていく。

 商店街の入口左側にパチンコ屋、その奥にステージがある。

 いた。 

『感情警察』の面々がゆったりしたリズムのアフリカンミュージックを演奏している。

 見た感じ変なとこはない。

 が。

 こんな時間に、人っ子一人いない状況でそんなことしてること自体が充分異常だろう。


 不意に人の気配。

 五人、いや六人か。

 おい山根じゃねぇか。あとは他のクラスで見た顔だ。

 俺を睨みつつ歩み寄ってくる山根、正気の目をしていない。

 真っ赤な顔。


 やがて六人とも走ってきた。

 姿勢を低くしてデアソードで山根の足を払う。

 一人は勝手に転んだ……いや、王戸ちゃんだ。

 佐藤優子と飯田がそれぞれ地面に転ばせる。


 残る二人は後ろから伸びてきた何かに顎を殴られ、首を掴まれたかと思うと、上へ放り投げられた。柚木?

 ちらっと見たら彼女の腕がありえないぐらい伸びていた。ろくろ首の腕バージョンか。


「ふぃぎぃぃっ」


 叫びつつ起き上がって掴みかかってくる山根にデアソードを打ち下ろす。

 気に入らん奴だが、罪悪感もよぎる。でもお前はもう山根じゃないんだ。


「はぎゃあぁぁっ」


 剣道の突きで鳩尾みぞおちへ一撃。


「げはっ」


 息ができないだろう?

 顎を横から払うように薙ぐ。

 一歩、二歩、仰向けに倒れる。脳震盪狙いが決まった。


「お兄ちゃん、この人達、魂が無いよ」

「えっ?!」

「もう死んでる」


 瑛子が指差した山根を見ると、口から何かが漏れていた。


「……これは」


 口から流れ出る深緑色の液体。

 そして山根は黒っぽい粉の塊と化す。


 やってくれるな河野涼子。人間じゃないモノに作り変えてるのか。

 腹が立ってきたので前へ……なっ! 足にうまく力が入らない。


「お兄ちゃん、落ち着いて」


 瑛子が触れると元に戻った。


「あの音楽、そういう仕掛けみたいよ」

「音波兵器か。ならあいつらの演奏を止めよう」


「◯◯先輩、もうやめましょう?」


『アナザーワールド』や顔合わせにいたバンドのメンバーが出てくる。


 リードギターの子が幼児をあやす母親みたいな顔で


「私たちはさっきの未調整個体とは違いますよ」


 と言うが早いか姿がブレた。

 金属と金属がぶつかるような音。

 反応出来なかった俺と違って、飯田と王戸ちゃんが三人の人間を止めていた。


 ちらと横を見ると佐藤優子が二人相手に格闘中。


 俺の身体は後ろへ跳ぶ、いや引っ張られたんだ。

 直前まで俺のいた場所へ二人が飛び掛かってる。

 俺はそのまま柔らかいものに受け止められ、


「先輩、危ないところでした」

「助かる柚木」


 とやり取りする。柚木の伸びる腕だ。

 すぐにパチンコ屋の屋上へ俺ごと飛び上がり、見下す形になった。


 佐藤優子が次々と四人の首へ手刀を入れていく。吹き出す血がほとばしる。


 飯田は両手両足を硬化させ、四人の腹を突き破った。

 王戸ちゃんは見えない速さで動いてるらしく、敵が都合よく佐藤優子や飯田の前に行くよう誘導している。


 瑛子の身体が一瞬だけ光る。

 残りはそれで崩れ落ちた。


「いきなり先輩にキスした仁科って人のこと、後で詳しく教えてくださいね?」

「すまん。あの時には柚木に知らせない方がいいと思った」

「私、そんなに頼りないですか?」

「悪魔って憑依するみたいだからさ」

「プロテクトは万全です。しかも反撃機能付きですから」


 俺を抱えたままステージの方へ飛び降りる柚木。


「同じ学校の生徒に容赦ないわねぇ」


 紀子さんだ。

 今やっと気がついたよ。

 楽器店の店長に娘さんはいるさ。五人な。

 一番上の子はまだ中学生だ。


「既に死んでいるし、もう生徒じゃない。ただの動く遺体よね」

「あなたの道具として使われるよりずっといい」


 佐藤優子が冷ややかに、飯田が毅然と言い放つ。

 それを聞いて俺は目が覚めた。

 そこまで割り切れないところだった。

 顔見知りに対してどこか躊躇していた。

 覚悟が足りないな、くそっ。


「もう邪魔されたくないの。消えてくれる?」

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