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俺が通う高校は人外魔境だった  作者: はるゆめ


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ep.39 一難去って……

 昭和のいつか。どこかにある町。季節は冬。


 瑛子の謎家に俺たちは集まる。


「……逃げられた」 

「アンネに連絡は入れたわ。国際指名手配ね」


 あいつとんでもないこと言いやがったからな。


『神がいらっしゃればこの星に住む生き物の半分を供物として捧げます。人の数だけはとてつもなく多いこの星は良き神の星となるでしょう』


歴史上大虐殺をやった王や独裁者が可愛く思えるぐらいだ。


「やつの話を整理しとこう。色々ありすぎて頭がパンクしそうだ」


 今朝起きてすぐ書き留めたノートを出す。


「まず異次元から来てる」

「私たちの観測でもこの宇宙は、唯一のものではなく無数にある宇宙のひとつだと結論が出てます」


柚木によって多次元宇宙論があっさり肯定された。


「そもそもあの気色悪い触手が神……」

「お兄ちゃん、ここの土地ってどんなとこか知ってる?」

「その辺は詳しくないけど……」


 「ずっと昔、悪鬼が封じられたとされる場所。だからここは神社の数が多いんだよ」

「そうだったのか。その悪鬼というのは?」

「聞いた話の特徴からすると、河野涼子が呼ぼうとしたアレ」

「あ、一度来たことあるってそういうことだったか……」

「うん。神剣を持つ皇子と神が一緒になって戦って封じたってことだけど……」

「別次元へ逃げてたってことか」

「うん。アレを見た時わかっちゃった」

「とんでもないヤツじゃないか、アレ。そう言えば柚木が何か言ってたよな」


 柚木を見やると無表情な顔で教えてくれた。


「侵食型生命体ですね。他生物を取り込み、惑星は言うに及ばず恒星系や星団まで支配域を拡大していきます。意思疎通は不可能ですね」

「怖いわ! あれがもし出てきてたらどうなってたんだ……」

「地球なら数日で飲み込まれたかと」

「地球上の生物半分を捧げるとも言ってたな」

「同化して他の星への尖兵とするのでしょう」

「……撃退出来て本当に良かった」

「この次元に降りてくる為に肉体を伴っているから与し易いですけど」

「河野も柚木が忌々しいって言ってたが、何をしたんだ?」


 すると。

 急に頬を紅くした柚木が困ったような顔して


「もう先輩! デリカシーないですね。乙女の秘密です!」


 ……と叱られてしまった。


「飯田、俺なんか変なこと言ったか?」 

「ううん、けど私はわかるから……触れないであげて」


 飯田まで顔が赤い。なんだそれ。


「あっあのっ!」

「どした王戸ちゃん?」

「私たちの一族は全国にいます。河野涼子を捜します!」

「イタチすごいんだな。頼むよ」

「それと契約の方も……」

「あ、うん。考えとくよ」


 とは言ったものの、さっぱり思いつかないけど。


「あと河野涼子に手を貸した存在、この世界の一部の神? 悪魔みたいな存在?」

「悪魔じゃないわね」


 佐藤優子にあっさり否定された。


「佐藤さん、もしかして知り合いに……悪魔がいるとか?」

「いないわよ。あれらも別次元の住人。人間を揶揄って遊んでるだけの存在」

「な! それほんと?」

「そうよ。こちらの神とも無関係だし。あの悪ふざけを楽しんでる連中が河野涼子に手を貸すとは思えない。むしろ遊び場を荒らされるから敵対するでしょ」


 またロマンが消えた。大ヒットした悪魔祓い映画を思い浮かべる。あれがたちの悪い悪戯……。これを知ったら悪魔崇拝者たちが卒倒しそうだな。


「飯田さん、あなた達が崇めてるモノじゃないの?」

「えっ」


 飯田に険しい目を向ける瑛子。

 以前、保健室でのやり取りを思い出す。


『そこの女、まつろわぬ者が何を信仰しているか知ってるの? お兄ちゃん』

『いや知らん。ちなみに日本国憲法で信教の自由は認められてるぞ?』 


「わ、私達の祖先に関わってはいる、けど、信仰はかなり昔に廃れてるよ……」

「混沌と破壊の神。お兄ちゃん、鈴木留美子が巨大化してたでしょ? あれもその神の力よ」  


 決して忘れられない記憶。三階建の校舎と肩を並べるほどの大きさになってた鈴木留美子。


「あれは秩序を嫌う。生き物への慈愛なんて全くない。だからこの星の生き物が滅びても、ううん、むしろ滅びを歓迎するでしょうね」

「瑛子、落ち着こう」

「お兄ちゃん、またその女を庇って」

「飯田達は関係ない。そうだろう? 飯田」

「あ、うん。私たちの誰も信仰はしてない……と思う」

「そういうわけだ、瑛子」

「ふん! どうだか」

「瑛子は飯田にきつく当たりすぎだぞ」


 多分神様的に相性が悪いんだろう、その神と。

 考えるのはやめだ。

 さっぱりわからんものはこうするに限る。


「一段落したなら、うちへ来ない?◯◯君」

「え?」

「母がね、あれ以来◯◯君たちを連れてきてって催促するのよ」

「ああ、お母さんが」

「何? その顔」

「佐藤さん、いい娘してるんだなって思うと、ね」

「私、佐藤先輩のお家に行きたいです」

「わっ私も!」


 柚木と王戸ちゃんが乗り気だ。


「んじゃ行こう」


 移動は一瞬だ。


「まあまあ! 皆さん! いらっしゃい」

「押しかけちゃってすみません」

「そんなことないのよ。あら! 可愛らしいお嬢さんが増えちゃって!」

「柚木と言います。佐藤先輩にはお世話になってます」

「王戸です! わっ私もお世話になってます!」


 お母さん、喜んでるのがよくわかる。


「これが佐藤先輩のお部屋。普通です」

「柚木さんも◯◯君と同じ感想?」

「私、人の家にお邪魔すること初めてなので」


 お母さんが部屋へコーヒーとケーキを持ってきてくれる。


「さぁさぁ、皆さん、これ召し上がって!」

「いつもすみません」

「ケーキは私の手作りだけど、お口に合うかしら」

「美味しそうです」


 柚木と王戸ちゃんの目がすごい。

 手作りには見えないケーキだ。お母さん、ご馳走になります。


「お母さん、私がするのに」

「いいのよ、優子さん。お友達の皆さん、優子さんをよろしくお願いしますね」

「はい」


 お母さんに頼まれると弱い。


「お兄ちゃん、佐藤先輩の部屋、好きよね」

「瑛子……その誤解を招く言い方……」

「◯◯先輩、私の部屋にも来てください」

「柚木、その時はこのメンバーでな」

「勿論です」


 一週間後。学校が始まる。


 長いマフラーを一緒に巻いてくれて一緒に登校してくれる彼女が欲しい。

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