流石、全国常連
部長がタクトを振り上げる。
「星条旗よ永遠なれ」
私を含め、新入生は皆、上級生の合奏に時を忘れた。それほどまでに彼らのそれは、美しかった。
「わぁっ」
ピッコロのソロパートに突入した。
それは、鳥の囀りを彷彿とさせ、観客全員の意識を向けるのは容易で、あの独特のリズムを、プロのそれと寸分違わずこなしていた。
やがて、ソロパートが終わると、新入生、そして部室の後ろで立っている-----あ、宮原先生だ。先生も一緒に拍手喝采。
合奏はクライマックスになる。低音パート、特にユーフォニアムの高音は、奏者にとってかなりキツいはずなのだが、
「まじか」
なんか、すっごい涼しい顔して演奏しているんだけど。
流石は全国常連。
「「すごい」」
完全に脱帽をした私の、心からの言葉に被さるように、隣に座る女生徒が弱い拍手をしながら言っていた。
演奏が終了して、室内のみならず、廊下、中庭にいる生徒、先生達も、この素晴らしい演奏に拍手を送った。
「改めまして、小川学院高校吹奏楽部です」
コンダクタ――部長がこちらに体を向け、続けて話し始める。
「演奏を聴いていただき、ありがとうございました。経験者でも未経験者でも誰でも大歓迎です!明日から部活動は始まりますので、お気軽にここ、音楽室まで足を運んでください!是非ご検討の方をよろしくお願いします」
なんとも丁寧な言葉に綺麗なお辞儀。部員はそれに続き座礼をして、
「「よろしくお願いします」」
――パチパチパチパチ
再び拍手喝采。
「では、新入生の皆さんは退室をお願いします」
先生の言葉に、私を含め、新入生たちは、
「「ありがとうございました!」」
皆声を揃え、感謝を伝えた。
終