第五話 誕生日デート①
読んでいただきありがとうございます。
今日は十二月一日。日曜日だ。
普段と何も変わらない休日のはず・・・だよな?
そう。どうして俺がこんなにも朝から困惑しているのかというと。
チラッ。チラッ。
まただ。
また咲が俺のことをチラチラしている!
今日は朝から咲がソワソワしていて落ち着きがない。
多分だが休日だというのに化粧もしている。
しかも俺が起きてきた六時よりも早く家に来ていたみたいだ。
いや。なんで普通にいるの?ここ俺の家だよ?
まぁそこらへんは置いておこう。
しかし、こういう時の咲は何かある時の前兆なのだ。
つまり今日・十二月一日は咲にとって何かある日なのだが・・・
やっべぇ。全く思いつかねぇ。
こうして俺が考えている間にもこちらをチラチラしている咲。
もし、これで俺が咲の真意を気づかずに今日を終えてしまったら。
俺に明日は来ないっ!
仕方ない。命のためだ。この貴重な休日を使うしかないか・・・
「なぁ咲。今日遊びに行かないk」
「行く!!」
行かないか?と、言い終わる前に行くと言われた。
見ると咲は機嫌良さそうに鼻歌を口ずさんでいる。
どうやらこれが正解か?
しかし油断は禁物だ。バカは何考えてるかわからないからな。
俺は気を引き締め直して準備を始めた。
◇◇◇
「賢兎!見てっ!これもいいんじゃない?」
「なっ、なぁ咲?」
「わぁっ!これも可愛い!」
「咲さん?」
「なんだよさっきから。何かあるの?」
「いやこの腕は何?」
「腕ぇ?」
そう言うと咲は下に視線を落とす。
そこにはガッチリと組まれた俺と咲の腕があった。
結局あの後、俺が行き場所に選んだのはこの街で一番大きなショッピングモールだった。ここなら咲の有り余る好奇心も発散することができるだろう。
しかし今の状況で少し自分の選択を後悔している。
どうしてかというと・・・
「何って、ナンパ対策だけど?私ってほら可愛いから」
「ナンパ対策にしてはやりすぎなのでは?」
いつも以上に距離が近いのだ。
可愛いかどうかはスルーして、一応はナンパ対策らしい。
事実。咲のことを見ていた男たちが俺の姿を確認すると顔を歪めて去っていくのだから効果はあるようだった。
それでもだ。
それでもこれはちょっと・・・
「なぁ?咲。当たってるんだけど・・・」
「へっ!?」
咲は珍しく顔を真っ赤に染めると俺から離れた。
なんだこいつにも乙女心は残っていたのか?
咲を見ると髪をイジイジしている。
少し、意地悪がしたくなった。
「咲。ナンパ対策なんだろ?」
俺はそう言うと咲の手を掴んだ。
さぁ。どういう反応をする咲さんよぉ?
しかし、咲の反応は以外だった。
「・・・うん」
なんと大人しく俺の手を握り返してきた。
その顔は耳まで赤かった。
「おっ、・・・おう」
だからか、俺もそんな反応しかできなかった。
なんだか顔が熱いような気がするが、きっと気のせいだ。
俺たちはまた歩き出した。
俺はしばらく咲の顔を見ることができなかった。
ちなみに、咲たちが見ていた店の彼氏なし店員は、早く帰れ!と思っていたそう。
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