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魔王(裏)
お風呂に入っていたら、小さな薄翠色の魔王が、宙に浮かびお出ましになった
翡翠色で小さいから、宝石のように綺麗で可愛い
偉そうに曰う
「お主の望みは、人類滅亡で地獄送りであったな…?」
「いえ、違います。それぞれの所行の報いがありますようにデスよ。」
勝手に望みを変えるな…全然違うので即座に訂正する
正直者が馬鹿をみる世の中に辟易して、僕は魔王に願い事をした
それを自己都合で勝手に改竄すな
「ならば、一緒ではないか?」
魔王は、当たり前の如く言い切った
「… … …。」
…そうなのか?
まさに魔王の悪魔的な言い回しに言葉が出ない
久しぶりに姿を現したと思ったら、昔と変わらない言いようが懐かしい
魔王は、子供の頃から、聴こえてきた幻聴の類い
但し、その声の主は、精神体であると自称し、魔王であるとうそぶく
僕の中に寄生して、人類を滅ぼす算段を練っていると曰う
「…実は、御別れなのじゃ。」
なんですと?
「出会いがあれば、別れもあるは必定。」
先程より魔王の姿が小さく、そして透けていっている