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暗闇に沈む陽  作者: sakura
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蔵中

 蔵中は暗い


 高窓から一部に光り差す。

 誰も居ず、時が止まったような雰囲気を醸し出している。


 比較的空いている箇所を歩いて奥に行く。

 箱や建具、荷物の上に、うっすらと埃が堆積している。

 年月と歴史が堆積しているのだ。


 足元を見ると、足跡が着いている。

 しばらく誰も来ていないのだ。つまり、ここは既知なのに未知なる地なのだ。

 人工なのに未知。情報や人の想いや人生が雪のように降り積もり山となっている。


 墓場なのか。


 ここは、静かに眠っている。墓所なのか。

 なるほど。ただの蔵中に荷物が無造作に置かれてるだけに、厳かさを感じてしまうのは、これなのですか。


 部屋の奥に着く。

 ここからは、更に別の部屋に続いている。

 入いると、右手に折れるので、更に奥と行くと、入って来た出入口が見えなくなってしまう。


 不安感がもたげる。


 奥を見る。

 更に埃が堆積しており整理もされずに物が散乱積み上げられている。高く積まれた向こう側は見えない。

 誰もいない。

 誰もいないはず。


 出入口を見る。

 ああ、この場所が分岐点なんだ。

 と感じた。


 この場所からは、引き返すことが可能だ。

 これ以上進めば、引き返すことは出来ないかも知れない。


 一人だ。

 判断も一人だ。

 責任は勿論一人に責がある。つまり我。


 個はなんて小さくて弱くて、儚いのだろう。

 集団や社会はセーフティネットだ。

 優しくて緩くて温くて生きやすい。生存可能な領域だ。

 ありがたい。


 人は、ありがたさを忘れると、腐るのだろう。

 だから、腐った物言いをする者は、たまには山に一晩装備品無しで置き去りにして、バカンスに送り出してあげれば良いのだ。


 ないすな考えだ。我、冴えてるじゃん。

 是非検討お願いしたい。


 結局引き返すことにした。ヘタレだ。でもこれで良いのだ。

 自分で判断し、自分で決断し、自分で行動したのだ。

 偉いぞ、子供の頃の我。


 奥から何かが見ている気がした。


 引き返し出入口に戻った。



 今では、其処は改装されて、綺麗な畳敷きの和室になってしまっている。

 

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