僕と毛玉
喉がいがらっぽいから、ある時、咳をした
ゴホン、コホン、ケホッ…
黒い玉が口から、コロンと吐き出された
綿の毛玉のような10センチ大の球状の物体が、床に落ちて跳ね返り、コロコロと転がっていって、止まった
…
な、なんじゃ、こりゃ?!
驚きで、思わずはしたなき言葉遣いとなる
毛玉には…
目が二つ付いていて、こちらを見た
見つめ合う
どうやら敵意はないらしい
だが、あまりの出来事に硬直する
それは、ポンポンと跳ねながら、部屋を探索していた
しばらくしたら、落ち着いたのか、目を瞑り、リビングで動かなくなった
近づきて、観察する
…寝たらしい
そこで初めて、毛玉について、しばし、考えた
世の中は摩訶不思議
だから何が起こっても不思議ではない
これは、もしかしたら世界線が錯綜しているのかもしれない
…あり得る
なにせ世の中に絶対などはないのだ
だが一番可能性が高いのは…つまり、僕の疲れから来る幻想であるな…
…よし!寝よう
起きたら万事元通りだ…きっと
そして、僕は寝た
…
…
…
…起きると、リビングの床を、黒い毛球が遊ぶようにコロコロ転がっていたのが見えた
…
…
…存外、楽しそうだ
どうやら、幻想ではなかったらしい