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奈落
怨叉の声がサイレンの様に響き、骨ばった手が天を指す。
此処は何処だ?
天空は闇色の雲が溶けて渦巻く、辺りは霧のような黒いなにかが流るる。
街灯の光がめん滅し、黄色く小さくか細く、今にも消えそうだ、まるで今にもしにそうな老人のように。
寒い、身体のエネルギーが吸い取られるように寒い。
地面から寒さが身体を伝い登って来る。
なのに身体の熱は天空に吸い取られるかの如く。
夏は来ない。
花は咲かない。
鳥は飛ばない。
朝日は昇らない。なぜなら昼間だから。
なのにこの暗さは何故なのだ。
天が落ちるのではない。
世界が落ちているのだ。
底に向かって
喉から悲鳴だ、まるで喇叭のよう
誰のせいだ、俺は無関係だ、助けろ
いったい何を間違いたのか。
いったいいつから間違えたのか
誰かわるい、償えよ
重い、身体から何かが抜けていくのに、重くなっていく。
世界全体が落ちる、気づいてるのか
脱出は不可能だ、気づいているのか
ここはまだ先の時、みな見えているのか
静寂にサイレンの音が鳴り響く