表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暗闇に沈む陽  作者: sakura
55/1015

蟻の事務所

 昔々、一匹の蟻がいました。


 蟻は、夏の暑い日も、冬の寒い日も毎日、毎日働きました。

 僕が働けば皆喜ぶ。僕が働いて、皆が喜んで、僕もご飯が食べれて幸せ。


 蟻は、昼も夜も働き続けました。


 ところが、ある日、貴族蟻が来て言いました。

 「大きな仕事がある。従事させる為に一時的に蟻を各小隊から5匹召集する。なーに大きな仕事は来年には終わるから。」

 その日から、仲間の蟻が5匹いなくなり、定員30匹いた仲間が25匹になりました。


 これからは30匹分の仕事量を25匹でしなくてはいけません。

 でも蟻はキツくても気にはなりませんでした。

 だって皆が喜んでくれるし、皆の為になることだから。


 ところが、それで終わりませんでした。貴族蟻の手下蟻が来て言うのです。

 「他の所に何匹か手伝いに行かせる。」

 こうして25匹いるはずの蟻のうち、5匹が藉はここにありながら、余所に手伝いとなりました。

 こうして30匹分の仕事量を20匹でやることになりました。


 ここまではよろしいか?


 大きな仕事は、再三の延期により終わらず、5匹は帰って来ませんでした。

 蟻達は30匹分の仕事量を…20匹で、やり遂げました。

 いつしか仲間が帰ってくるんだ、それまでは頑張らなければ。


 それを見ていた貴族蟻は、思いました。

 なんだ、20匹で大丈夫じゃないか。


 何年も経ち、大きな仕事が終わりました。

 蟻は喜びました。だって仲間が戻ってくるから。


 喜んでいる蟻に、貴族蟻から手紙が届きました。

 「定数を25匹とする。」

 他所に手伝いに行っている5匹も、籍はありながら戻っては来ませんでした。

 これからも、30匹分の仕事量を20匹でするのです。


 ここまではよろしいか?


 自殺と事故が相次いで起き、常態化しました。

 隊長蟻が言いました。

 「休もう。このままではまずい。」

 交代で3匹ずつ休むことにし、30匹分の仕事量を17匹ですることになりました。

 更に、貴族蟻がチョクチョク現れ、継続的な新たな仕事を命じていきます。予算と新たな蟻は無く。

 更に、体調不良や手伝いを理由に一時的に15、6匹になることありました。

 こうして30匹+α分の仕事量を15〜17匹でやることになったのです。


 ここまではよろしいか?


 貴族蟻は、蟻達が命令通り仕事をしているか監視に来ます。特に蟻達が寝ないで働いた翌朝に来ます。

 ある日、貴族蟻は、思いつきました。

「そうだ、予算削減の為、蟻達の基本給を減らそう。減らした分、一時的に手当を上げれば金額は変わらねからバレない。基本給を減らすと元にして算出する退職金等も当然減るから、大分削減できる。そして休日手当は休日を振替にして出さないようにしよう。振替休日を休むか休まないかは蟻達の自由にすれば責任転嫁できるし、実際に代休を休むのは無理だとしても。あと残業しないことを奨励すれば,残業代を出さなくてもいい。残業するなと言ってるのに勝手にするのは本当に困った奴らだ。あっ、また一つ仕事を思いついたから奴らにやるように言っておこう。しかし普通仕事するには、予算と場所と蟻が必要なのに全部無しでも平気なのは不思議だな。そうと決まったら、今まで奴らに支払っていた出さなくてもいい無駄な手当を回収しなくてはいけないなぁ。回収金額は膨大な金額になるに違いない。」

 実施されました。

 最後の項目だけは、一度決定された後、撤回されました。


 蟻は、思いました。

 よくある話だ、たいしたことはない。

 でも、何かが間違っている気がするのです。

 でも疲れきった蟻の頭では、いったい何が正しくて、何が間違っているのか分かりませんでした。


 蟻は、今日も夜空を見上げ感謝します。

 今日も無事に過ごすことができました。

 ありがとうございます。



 ここまではよろしいか?

 



 私は、よろしくないと思います。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ