白昼夢
トーチカからライトが辺りを照らす
チカチカと灯りが明滅してる
合図だ 支援物資を送るという
おお、ありがたい
上層部も、前線を支えてる私達下っ端の気持ちを分かってくれたか…
支援物資を楽しみに待つ我々の元に、高みにあるトーチカの灯りが見えている辺りから、ドンッという音と共に、何かが打ち出された
シューと掠れた音を引き摺りながら弾頭が地面に激突す
チュドーン!
受け取ろうと集まっていた何人かが吹っ飛んて千切れ飛ぶ
かくいう僕も、もう少し近かったら危なかった
爆風に吹っ飛び、後方へコロコロと転がる
何、何、何なんなの?
訳が分からぬまま上半身を起こす
ドンッと又、音がした
トーチカの方を見ると、弾頭が煙をたなびかせながら、うねるように向かって来る
これは、ロケットランチャーだ
慌てて、起き上がり逃げ出す
後方で、又、爆音がした
今度は前方へ吹き飛ぶ
身体が浮き上がり、地面に転がりながらも着地できた
何?なんなの?
それからもロケットランチャーという名の支援物資が、あちこちに撃ち出され着弾して爆発している
さっきまで、一緒にいた仲間達が、千切れて付近に転がっている
トーチカの灯りから、笑い声がした
何故だ?
何故味方を撃つのだ?
この爆発で、およそ三分の一が犠牲になった
残った人員では、戦線を支え切ることは難しい
トーチカから拡声器で声がした
慰労で、戦線を支えるお前らに抽選で休暇を与えてやった
当たったものは、おめでとう 有り難く思え
当たらなかったものらは、より一層我らの手を煩わせないように、肉壁となりて、敵と戦い近づかせないように
以上
最後に笑い声が漏れ聞こえてきた
…
黒い雲が空に蓋をし、土煙りが風に巻いて、硝煙の匂いが辺りを漂う
一緒に戦った仲間の遺体がアチコチに散らばっている
さっきまで生きていたというのに
支援物資が来ると喜び笑いあっていた
あいつらは写真を見て家族の元へ帰ることを、楽しみしていたんだ…
…
脚先から震えが起こり伝播して、上半身まで震えた…
トーチカの灯りを睨む
荒い息遣いが聞こえる
オマエらの血はぁ…何色だ?
オマエらにぃ、守る価値はあるのか?
まだ、正々堂々と戦う敵の方が、上等だぁー!
僕は毅然として立ち上がり、トーチカの灯りに狙いを定め、1発撃った
…
銃声が辺りをコダマする
微かにくぐもった声、カン高い悲鳴と慌てふためく音がした
「…お返し申す。」
流された血は、オマエらの血で贖え…




