表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
暗闇に沈む陽  作者: sakura
458/1030

雨に沈む

雨に沈む


シトシトと雨が降る

空が白く瞳にうつる

白いのに暗い

灰色なのか 濃淡のない暗くて白い雲が天を覆っている

それは人類が逃げられないように蓋をしているのだ


このまま降り続ければよい いつまでもいつまでも

雨が降る音が好き

全ての雑音を吸い込み消してくれるから

アンインストールだ

リセットだよ

空間から、音を消して掃除をしてくれている

綺麗も汚いも関係なく全てを消して流して無くしてくれる


ああ、だから雨が好きなのか


このまま降り続ければ良い いつまでも

そして地面を覆うのだ

何もかもが多過ぎる


水よ、雨よ、その恵みで流してしまえばよい

だってこの星は、水の星なのだから

小煩い大陸などは沈めてしまえばよいのだ

海は敬うもので、支配するなどと傲慢に過ぎる

借りているだけなのに勘違いも甚だし

自然のものは自然に、神のものは神に返すべし

そんな怒りが穂口の火のようにジリジリと焦がす


相応しくない


そんな怒りも哀しみも理屈も正義も欲望も、何もかもが水の底に沈めば全てが平等で静かな世界が出来上がるだろう

それは皆が望んだ理想郷そのものだ


そこでは何もしなくてよい

ただゆらゆらと揺蕩いし

心配も苦労も疲労も束縛も誘導も何もかもがありえない


ああ、だから雨よ、そのまま降り続けたまえ

しばし降り続け人類を心胆震わせたまえ

僕も私も君もあなたも、その全てが青い海の底に沈み消えていく

そんな夢想を、猫が眠るように夢見ています


ああ、なんて素晴らしい世界であろうな

恍惚としながら夢見る





溜め息をつく


…なのに残念ながら、止まない雨はないのだ

灰色のなんでもない空を見上げる


明日はきっと晴れであろう



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ